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98A−012
差出人:鈴木 久
送信日:98年8月24日
件 名:アルケ事務局より第1声
アルケミストのみなさん。こんにちは。今期の事務局を仰せつかった鈴木 久です。
行き届かない点があろうかと思いますがよろしくお願いします。メールを積極的に活用してみなさんに連絡・相談することもふえるかと思いますがよろしくお願いします。
昨日、やっとコンピューターが修理から帰ってきました。
なお、きょう郵便局でアルケ用の通帳を作ってきました。郵便局を通じて送金される方はメールで鈴木まで連絡ください。19日に伊藤 昇さんに天文の講演会であった時にもらった会費と私の会費合わせて6000円を入金してきました。
98A−013
差出人:山本 喜一
送信日:98年8月30日
件 名:液体酸素の恐怖
こんばんは、山本です。
今日、「化学」(化学同人)の9月号を読んでいましたら、液体酸素による爆発事故が出ていました。液体窒素を使っているうちに、液体酸素がそこに溶け込んで、液体窒素の蒸発とともに液体酸素濃度が上がり、事故につながるということが多いそうです。いくつかの事故事例が載っていますが二つほど書いてみます。
・1979年頃、英国の食肉加工場。豚肉を刻みやすくするために、あらかじめ肉を液体窒素で冷やし、ミンチ器にかけていたところ、突然ミンチ器が爆発。2名死亡。原因は豚肉の表面に空気が液化凝縮し、ミンチ器の駆動による摩擦熱で液体空気と豚肉が反応して爆発したもの。実験の結果、豚肉に凝縮した液体空気中の酸素濃度は70%以上に達していた。
・1991年1月17日。岐阜県のセラミックス工場で、ベンゼンを含んだセラミックス基盤を液体窒素で凍結して取り扱っていたところ、突然爆発。2名死亡、1名軽傷。原因は時間とともに冷却に用いた液体窒素に酸素が凝縮して入り込み、ベンゼンなどの有機物を混合して爆発性の物質をつくったものと思われる。
液体酸素は有機物を接触させておくと、爆発するということを聞いたことがありますが、実社会でそういう事故が起こっていたんですね。液体窒素の実験で、酸素を冷却して青い液体酸素を見せたあと、火のついた線香をその中に入れてみせるという実験をしていますが、こういう話を聞いていたら、他人がやって安全だということを確認するまでは、絶対やらなかっただろうと思います。でも、この線香の実験では爆発しませんよね。不安になってきました。
98A−014
差出人:佐藤 琢夫
送信日:98年8月31日
件 名:不可知論と液体酸素について
岩手の佐藤です。
私の近代科学の『論理』と化学教育に対して、林さん、山本さんからコメントをいただきました。
林さんより:ひとつ気になることがあります。「縫い目のない織物」という表現です。このたとえは「不可知論」的印象を与えませんか。私は近代科学が確立した「分析」という認 識手法そのものは高く評価しています。問題は「多面的で高次な分析」の必要性と、であるが故に科学がすべてを知っているわけではないという「謙虚さ」ではないでしょうか。
山本さんより:「自然は縫い目のない織物」という言い方には、私も林さん同様「不可知論」的な臭いを感じます。佐藤さんは、この前のメールでアルミニウムを例にして「自然は縫い目のない織物」とはどういうことかを書いておられましたが、あれは、それぞれの場面を分析し、総合すれば見えてくるものではないでしょうか?
近代科学の論理はこの「不可知論」は認めたくないし、その克服で成果をあげてきました。今後も第一線で活躍する科学者にとって近代科学の論理は力強く、この手法で武谷三男の三段階の認識理論が示すように、自然が実体から本質へと解きほぐされていきます。この本質というのが自然という全体的な織物の中では限られた領域にすぎないと私は思います。この限定された本質をベースに技術化が行われ、それが結果として自然から突出し、自然の収奪と言われる現状に結びついているのでは・・・・・・。
地球が単なる無機物質の集合体でなく有機的な連関の中でとらえる『ガイア』の理論はもちろん、つい最近放映されたNHKの『海』で取り上げられた『深層海流』をもとに地球を見るとデリケートな自然像が見えてきます。原子という自然の本質が技術化された結果はどうであったのしょうか。環境ホルモンに代表されるとおり環境問題が人類の存続との関わりでクローズアップされています。「不可知論」と言われるかもしれませんが、以上の自然像が「自然は縫い目のない織物」そのものだと思います。
この近代科学の論理に外的な制約を加えない限り、現状はますます後退していくというように私は考えます。これまでの分析と総合というXY座標だけでなく、Z軸が必要だと思います。Z軸として有限な地球のエネルギーまたは地球の環境を考え、「自然は縫い目のない織物」というなかで自然をとらえていかなければというのが私の考えだったのです。
山本さんメールに『液体酸素』が取り上げられていました。この『液体酸素』の取り扱いについては同じ意見です。『液体酸素』に火のついた線香を入れるということは私にはできません。行ってはならないと思います。
岩手大学の先生と高校の先生方で有機化学セミナーという学習会を3ヶ月に一回行っていた時期がありました。実験を紹介し有機電子論のレクチャーを受けるという会でした。私が『ニトログリセリンの実験』を紹介した時ですが、爆発物の取り扱いは細心の注意を払ってほしいと大学の先生から指摘を受けました。数回の実験で安全が確認されても油断はできないのが爆発物であると話されました。
物理化学実験法 増補版 鮫島実三郎著の文献にも『液体酸素』ではなく、『液体空気』としての取り扱いが述べられています。
『液体空気を可燃性物質や有機液体に直接触れさせてはいけない。これはしばしば爆発的に反応することがあるためであって非常に危険である。その取扱い方については後章で述べる。液体窒素を用いればこのような心配はないから,なるべく液体窒素を使用する方がよい。(62頁)』
『液体空気の実験に際して特に注意すべきことは,これを可燃性物質,殊に有機液体とは決して触れさせてはならない。アルコール,エーテル,石油,二硫化炭素,アセトンその他可燃性有機溶媒,または砂糖、ナフタリン,ショウノウのような可燃性粉末を冷やす必要があるときには,必ずその少量を試験管か何かに入れて冷やし,どのような事情があっても,これを直接液体空気中に入れてはならない。また5〜6cc位よりも多量のものを一時に冷やしてはならない。もし容器がこわれるようなことがあっては危険であるから。それでこれらのものを多量に冷やす必要がある場合には,金属製の容器に物質を入れて冷やすか,または§3.6の図3.8のように,金属筒の中に液体空気を滴下するようにするがよい。液体空気と可燃性液体,または粉末との混合物は非常に危険な爆発物である。(418頁)』
以前、液体窒素を5リットル注文したのに、同量の『液体酸素』が届けられたことがありました。以下そのことを書いた化学通信です。(94年9月10日発行)
この日、3年生3クラスの授業を行なったうち、最初の理系の男子のクラスでハプニングがあった。液体窒素の物理的な説明を行なってからジュアービンから1リットルのビーカーに液体窒素を注いだ。間違ったふりをし、液体窒素をビーカーの外に少し漏らし、生徒達を騒がせながら溜めていった。最初からいつもの液体窒素と違うなと思いながら実験に必要な量が溜まった。溜まった液体に薄い水色の色が着いている。薄い水色であれば、もしかしたら液体酸素では。
授業を中断し業者に確認の電話を入れてもらった。以前読んだ鮫島著 物理化学実験法によると、液体酸素への可燃物の混入は絶対に行なわないようにという注意書きがあつた。どのようなきっかけで爆発が起きるかわからないといういうことである。
ローソクを点火しさきほどのビーカーの上部にローソクを近づけた。勢いよく炎が燃えだすのでまちがいなく液体酸素である。この事を生徒達に話すと「これがロケットの燃料に使われているやつか」という生徒どうしの会話が聞こえてきた。業者との連絡が取れたが、この薄い水色の液体が液体窒素ではなく液体酸素であるという確認は取れず、業者の方の言い分は何の液体なのかわからないので使わないでくれという事であった。可燃物を混入しなければ液体酸素で十分できるのではと思い下記の項目の実験にとりかかった。
1 テニスボールを冷却し落下させる
2 バナナを冷却し釘を打ってみる
3 液体空気と液体酸素をつくる
4 スタンドに固定した灰皿に液体窒素を入れると灰皿の底に液体酸素の滴ができる
5 超伝導のマイスナー効果について
残念ながら液体酸素では3〜5の実験についてはできなかった。5について、マイスナー効果の超伝導実験セットが液体窒素用なので超伝導物質を十分に冷却できなかったため磁石の浮上が起こらなかった。
現在この文を読み返し、テニスボールを『液体酸素』の中によく入れたものだと思っています。
液体酸素は5リットルのジュワービンの中にたっぷりと入っている。この液体酸素はいずれ捨てるので残す必要はない。遊びの雰囲気で次の事を行なってみた。水を溜めた水槽の中に液体酸素を注いでみた。注ぐと水蒸気が冷却され多量の白煙が生じ、下敷きを取り出し、バタバタしだす生徒が出たり大変にぎやかになった。
白煙に注意が集中する中、思いがけない様子を見た。液体酸素の薄い水色の液体の塊が上下運動をしている。液体窒素では見られない光景であった。水の中に液体窒素を注ぐと白煙は生じるけれどすぐに表面の水が凍りだし白煙が出なくなる。
この液体酸素は怪我の巧妙というのか私にとっては一つの発見でもあった。授業の終了時間になってから業者の方で液体酸素を間違って届けたということに気づき、午後に再度液体窒素を届けるという事になった。実験できなかった理系のクラスについては放課後再度3〜5について行なった。
午後の授業は予定通り実験ができ、しかも液体酸素と対照実験ができることとなった。先はどの水の中に液体酸素を入れる実験もでき、浮くという比重(密度)の違いを分子量の大小で生徒どうしその理由を説明しあっていた。酸素は32で沈み、窒素は28で浮くという理解である。これらの比重は液体酸素が1.18で液体窒素が0.8である。
生徒達のこの分子量による説明の中で、比重1である水の分子量が18であることに気がついていない。ここの所は教材にできるところでもある。水の分子が何個かの魂になっていなければ水と窒素の分子量による浮き沈みの違いは説明できない。なお、水中の酸素の上下運動よりまちがいなく酸素は無極性分子であることに気づいてほしかった。
病院などで薬品を間違え,事故につながった報道を耳にしたことがある。液体酸素と液体窒素では大変な違いである。このような取り違えが現実に起こりうるという事を実感した。
98A−015
差出人:杉山 剛英
送信日:98年8月31日
件 名:酸素魚雷
お初にお目にかかります。
液体酸素は旧日本海軍の93式酸素魚雷に使われていました{昭和8年正式採用}。魚雷{ガソリンエンジン駆動}の燃焼用に最初は空気が使われていましたが、80%の窒素はそのまま排出されるので泡となって雷跡を残し発見されやすいという欠点を残していました。そこで各国の海軍は純酸素を動力として使おうとしたわけですが、実験中に爆発事故が相次ぎ日本以外の国はあきらめたのでした。液体酸素は一旦爆発すると空気{窒素}を燃やしても燃焼し続けるという事です。そこで海軍は、エンジン内にいきなり酸素を入れるのではなく、最初は空気で{冷走}点火し、少しづつ酸素を増やして最後に純酸素で駆動{熱走}させるという名人技をしたのでした。また、液体酸素を貯蔵しておくことは危険なので、軍艦に酸素製造装置を搭載していたとの事です。
私も私の友人教師も液体窒素を元にした液体酸素の実験を行っていますが、危険に関する認識は無いようです。これからも啓蒙していこうと思います。
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