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97A−031
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月11日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:ボルタ電池のH2O2の役目について
今日は、山本です。
ボルタ電池にH2O2を加えたとき、どんな反応が起こっているかについては、1学期にもメールでやりとりをしたと思いますが、林さんの「酸化と還元」中の説明と私の認識に、ちょっとズレがありますので、書きたいと思います。林さんは次のように書いています。
・・・引用開始・・・
2e− + 2H+ + H2O2 → 2H2O {35}
この場合には電子を奪うのは水素イオンと過酸化水素の2つということになる。
これからは私たちの電子与奪表にこのような「グループ」が加わるのを認めなく
てはならない。それからこの反応は次の2つに分けることができる。
2e− + 2H+ → H2 {32}
H2 + H2O2 → 2H2O {36}
反応式{36}は、酸素原子の移動として、ないし酸化数の増減としての酸化還
元反応と理解すれば、過酸化水素が酸化剤としてはたらいている。その意味で加
えるべきものは酸化剤である。電池では水素イオンが活躍する場合が多いので、
酸化剤を追加してそのパワーをアップする。
・・・引用おわり・・・
この説明を読みますと、過酸化水素を加えると式{32}のように、まず電子は水素イオンに入り、そこで生じた水素ガスを過酸化水素が酸化するというように理解できますが、そうでしょうか。これは、従来の「減極剤」という考え方と同じだと思いますが、だんだんこの考え方は消えてきたのではないでしょうか。電子はまず水素イオンに入るのではなく、ストレートに過酸化水素に入り、水を作る。そして、水素イオンはその反応の手助けになるという理解の方が拡がってきていると思います。過酸化水素を入れることによって、起電力がアップするのも、式{36}のようにじゃまな水素が酸化されて水に変わるからではなく、電子が過酸化水素に入るので水素が発生しないからという説明になると思います。標準電極電位でいえば、過酸化水素が電子を受け取る反応の方が、水素が電子を受け取る反応より、電位が低いから、起電力が上がるということだと思います。
この辺のことを、教科書ではどんな風に書いているのか、来年度の「化学TB」でいろいろ調べてみました。まず、三省堂「詳説化学TB」には次のように書いてありました。
・・・引用開始・・・
分極を防ぐには適当な酸化剤を加えて水素を酸化し水にすればよい。分極の防
止に用いられる酸化剤を減極剤といい、ボルタ電池では過酸化水素水などを用い
る。
・・・引用おわり・・・
これは従来の説明のしかただと思いますが、多くの教科書では次に引用する第一学習社「化学1B」のように、減極剤を単に水素の発生を防ぐものという言い方になっています。
・・・引用開始・・・
分極を防ぐには、過酸化水素水や二クロム酸カリウム水溶液などを用いて、水
素の発生を防ぐ方法がとられる。この目的に用いられる酸化剤を減極剤という。
・・・引用おわり・・・
さらに、東京書籍「化学TB」では次のような書き方です。
・・・引用開始・・・
希硫酸の中に、ニクロム酸カリウムのような強い酸化剤を加えると電圧は元に
もどる。これは、Cr2O72−がH+にかわって、銅板の表面で電子を受け取
るからである。この時ニクロム酸カリウムは、新たな正極活物質として分極を減
らす役割を果たす。
・・・引用おわり・・・
というわけで、この教科書ではニクロム酸カリウムの役目をH+にかわって電子を受け取るものとはっきり書いています。
以上のようなことから、私は林さんの文の中の「電子を奪うのは水素イオンと過酸化水素の2つ」という部分と、式{35}を式{32}と{36}に分けるという部分が引っかかるのですが、いかがでしょうか。
97A−032
差出人:林 正幸
送信日:97年9月14日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 山本
件 名:「コンピュータ・ウイルス」、そして「肺の内視鏡検査」
こんにちは、林です。
3連休で少しほっとしています。もっとも昨日(土)は、私と家内の両方の学校のAETが結婚したのを祝って、ふたりをわが家に招待してバーベキューをご馳走しました。だからほっとしているのは、今日からということになります。
1週間ほど前の真夜中の12時のことです。電子メールを読んでいたところ、突然に画面が次第に白くなって行くではありませんか。「あれ」と思っているうちに、今度は縦に線が次々に入って来ます。それもさまざまな色で、どんどん書き換えられて行きます。「おかしい。コンピュータ・ウイルスでは?」 マウスを使おうにも、それがどこに表示されているか分りません。仕方なくリセットで対応しました。するとWINDOWSのスタート画面は普通に動き出します。ところがデスクトップに来るやまた「たて線攻撃」です。くり返しリセットしても結果は同じです。
私は大きな脱力感に襲われ、失われたデータのことを思うと眠るにも、眠れませんでした。インターネットに利用している最新のこのパソコンにはハードディスクのバックアップが取れていないのです。(いつか体制を整えなくてはと思ってはいましたが・・・)
そして翌朝、試しにともう一度リセットをかけると、何事もなかったように機能するのです。それでも私はあまり安心ができませんでした。忙しかったのでそのままにしておき、日曜日を待って「スキャン・ワクチン」というソフトをインストールしました。これは春に購入してひとつ古いパソコンに試しにインストールして、その後は手つかずになっていたものです。そしてさっそく実行型ファイルについてウイルス・チェックをしました(すべてのファイルを調べるのは不可能に近いのです)。しかし1匹のウイルスも検出されませんでした。「いったい、どうなっているのだろう。」 私は「5日の未明12時」を気にしています。何か情報がありましたら知らせてください。
週が変わって10日に、私は1泊2日の検査入院をしました。昨年末以来せきが止まらない原因を究明するためです。肺の内視鏡検査というのは胃カメラに似ていますが、麻酔をかけるときがちょっとたいへんです。私の場合はのどが過敏なのでなおさらですが、のどに麻酔薬を噴霧されるとせき込んでしまうのです。しかし麻酔が掛かってしまうと後は胃カメラより大したことはありません。検査は20分ほどかかります。レントゲンで透視しながら、肺につながる細気管支に次々にファイバースコープを入れていきます。「きれいですね」という声が時々聞こえて(目隠しされているのでまわりの様子を見ることはできない)、緊張がほぐれて手を意識的に動かしたりしていました・・・・・。
幸い、がんとか結核といった深刻な病気は無さそうでひと安心ですが、それにしては「いまだに続いているこの咳は何なんだ」と疑問が湧いてきます。医者の処方は、対処療法で薬で咳を押さえていくというものでした。とりあえず、私としては2つ目の病気を背負い込まずに済んで、ほっとしているところです。
ではまた。
97A−033
差出人:林 正幸
送信日:97年9月15日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 山本
件 名:酸化数と電池について
こんにちは、林です。続いてメールを送ります。
ホームページに掲載した「酸化と還元」に対して、ご意見を頂き、ありがとうございます。
<9/4付け野中さんのメールの引用>
、電池のあたりがやや弱い、うまく言えませんが私がイメ−ジする姿ではありませ
ん。言うは易し、ではどうだと言われると何も言えませんが、酸化還元から電子を
イメ−ジしたら、その電子の移動のイメ−ジが溶液という媒体を通すと大きく変わ
ってしまうのでしょうか。電池のイメージをもっとかえないと、新しい電池ができ
ないように思ってしまっている野中です。うまく表現できないので、自分なりの「
電池のイメージ」をまとめたいと思っています。
<以上>
私の「酸化と還元」では、電池は、「7.33円電池」で基本的説明を、そして「8.いくつの電池」で応用的な説明をしています。私は前者については比較的満足しています。起電力の原因は負極・正極を対等に扱っています。そして負荷を接続すると、電池の外の負荷側で電子が流れ、同時に電池の内の溶液側でイオンが移動する。かなりすっきりと説明しているつもりですがいかがでしょうか。野中さんは電池の原動力を別に、とりわけ溶液の中に求めようとしているようですね。教科書などは溶液を無視していますが、私は4つの部分に公平に目を向けているつもりです。でもポテンシャルをつくりだすのは2つの電極部分です。もちろん電極だけでなくその付近の溶液と一体で考えています。そこで電子蓄積状態と、電子不足状態が生み出されるのです。しかしそのままでは回路は閉じていません。そのままでは両電極とも電気的2重層が形成されて正電気と負電気は互いに拘束しあいます。そこで負荷をつなぐと、電子の流れ道ができ、それに呼応して溶液中をイオンが移動します。電子が流れ始めないとイオンは移動できないし、イオンの移動を伴わないと、電子は流れ続けられないわけです。これは仲の悪い夫婦が、それぞれ新しい相手を得られればスムーズに離婚できるのに似ています。いずれにしても負荷側と溶液側は坂道であって、山や谷そのものではないと思います。
<9/9付け山本さんのメールの引用>
私は昔、サークルで有機化合物の酸化数を誰かから聞いた覚えがあります。
それによると、酸化数はHが+1、Oが−2なので
CH4のCは、−4
CH3OHのCは、−2
HCHOのCは、0
HCOOHのCは、+2
CO2のCは、+4
となって、物質が酸化されることと、Cの酸化数の増加が一致します。
炭素数が2個以上の場合は、
C2H6のCは−3、
C3H8では両端のCが−3、真ん中のCが−2
とも聞きました。
でも、こういう酸化数の決め方はどの本にも載ってませんし、メチルアミンのよ
うにNが入ってきたら、どう計算したらよいか分かりませんよね。
<以上>
山本さんは9月11日付けのメールでは、有機化合物では酸化数は計算できないので「水素や酸素のやりとり」で考えるのではないか、と書いています。しかし上に引用したメールでは酸化数に触れています。教科書に載っている「酸化数の計算法」はあくまで便宜的なもので無機化合物に限られています。私は、私の文章の「4.酸化数」で書いたように、異種原子の共有結合をイオン結合に見立てたときの形式電荷と理解しています。だから酸化数は有機化合物でもいくらでも計算できます。その構造式を書いて、すべての価標を電気陰性度に従ってイオン結合にすればよいのです。たとえばメチルアミンはすべての水素原子がT、炭素原子が−U、そして窒素原子は−Vです。そしてアルコール、アルデヒド、カルボン酸の酸化・還元の関係は、上の引用の酸化数を使ってきっちり説明ができます。
むしろ私は、酸化還元の概念に「水素原子の移動」まで取り込むことには反対です。たとえばエチレンに水素を負荷する反応は、「エチレンが還元される反応」です。(ちなみにこれを単に「還元」と教えるのは、酸化還元の概念の逆行で生徒を混乱させるばかりです。) この反応ではエチレン中の炭素原子の酸化数は−Uでありエタン中の炭素原子のそれは−Vになり、酸化数が減って「還元される」ことが説明できます。もっと言うと、有機化学に入ったら酸化還元など程々にしておいて、置換・付加・脱離・転位・閉環・重合といった反応の形式や、できることなら「電子論」的な説明に力を注ぐべきだと思います。
<9/11付け山本さんのメールの引用>
この説明を読みますと、過酸化水素を加えると式{32}のように、まず電子
は水素イオンに入り、そこで生じた水素ガスを過酸化水素が酸化するというよう
に理解できますが、そうでしょうか。これは、従来の「減極剤」という考え方と
同じだと思いますが、だんだんこの考え方は消えてきたのではないでしょうか。
電子はまず水素イオンに入るのではなく、ストレートに過酸化水素に入り、水を
作る。そして、水素イオンはその反応の手助けになるという理解の方が拡がって
きていると思います。過酸化水素を入れることによって、起電力がアップするの
も、式{36}のようにじゃまな水素が酸化されて水に変わるからではなく、電
子が過酸化水素に入るので水素が発生しないからという説明になると思います。
標準電極電位でいえば、過酸化水素が電子を受け取る反応の方が、水素が電子を
受け取る反応より、電位が低いから、起電力が上がるということだと思います。
<以上>
これは春から討論してきた課題ですが、私が訊ねたいのは、電子を奪うのが水素イオンでなく過酸化水素であるという研究結果があるのか、ということです。そのような反応のしくみが解明されていれば、山本さんの意見に同意します。しかしそうでなければ、どちらにも軽重を付けずに「水素イオンと過酸化水素の2つ」が協同してという表現がもっとも客観的だと思います。もうひとつ、これは「電子の移動」の視点で捉えようとしている中に「酸化数の増減」という別の視点を滑り込ませて過酸化水素が電子を受け取ったと決めているようにも思えて不満です。
次に、私の文章の中で、反応式{35}を2つの反応式{32}と{36}に分ける問題に移ります。これは多くの電池で活躍する水素イオンを水素にしないためにどんな薬剤を加えるか、という説明です。それは「酸化数鵜の増減」というすでに学習した視点からすれば、「酸化剤」を加えるのだ、と解説しているのです。これは減極剤をいう概念を導入するためではありません。
そもそも減極剤という用語を避けたいのは、そのもとの「電池の分極」に問題を感ずるからです。ボルタの電池で正極に水素が発生して逆起電力を生じると言います。
Zn + 2H+ ―→ Zn2+ + H2
これは上の反応において逆反応が起こるようになることを意味します。確かに「反応速度論」的にはその通りです。しかし高校ではこれに先立ってイオン化傾向やイオン化列を教えます。これは「平衡論」的な概念です。金属樹の実験を思い出してください。たとえば硫酸銅水溶液に亜鉛板を浸けます。銅が析出するや否や逆反応が起こり始めます。でも全体としては銅の析出が継続します。私たちはこれを基に「亜鉛は銅よりイオン化傾向が大きい」と教えます。つまりこの概念は「平衡論」的なものなのです。(もちろんより厳密には標準酸化還元電位のように、反応物質、生成物質すべてを標準状態において調べるべきものですが。) こうして電池・電解のベースは「平衡論」にならざるを得ないのです。他方で、電池において水素が発生することは「速度論」的にもブレーキが掛かります。その代表は水素過電圧でしょう。それに水素のような気体の発生は、実用電池では別の問題もはらみます。だから正極では水素イオンと酸化剤を組み合わせた電子を奪う反応が利用されます。
私は以上のことに常に留意して授業を展開する必要があると考えています。それは生徒に「平衡論」と「速度論」の両方を認識させようと言うのではありません。生徒にはもっと平易な説明しかできません。しかし教師の方がこれをあいまいにしていてはいけないと思います。
ではまた。
97A−034
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月15日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:酸化還元反応と電子の移動(3)
今日は、山本です。
私の学校は、昨日とおとといが文化祭でした。毎年、文化祭はクラス発表(特に3年生)が盛り上がるのですが、今年も「ピーターパン」や「招かれざる客」(アガサクリスティ)の演劇を行うクラスあり、バッテリーカーや階段を利用したジェットコースターを作るクラスありと、にぎやかでした。ただ、その準備にわれわれも付き合わなければなりませんので、先週は帰宅時間がいつも21時近くでした。今日はやっとのんびりしています。
9月9日と11日に送りました有機化合物の酸化数については、私の理解が足りなかったところがありましたので、訂正したいと思います。私があの文を書いたときは、酸化数と原子価を同一視してしまったため、混乱したようです。原子価という言葉は今の教科書では死語になっていますので、私も意味を忘れてかけていたのですが、その後よく考えて思い出してみました。そして、一つ一つの原子の原子価は、今の言葉で言えば、イオン結合ではイオン価数、共有結合では価標の数に当たるのではないかと思っています。そうであれば、原子価はイオンについては酸化数と一致しますが、分子では酸化数とは違う値になります。私が調べた「化学大辞典」は少し前の本ですから、有機化合物のように共有結合する物質の場合は、酸化還元反応が起こっても、原子の「価標の数」は変わらないと記述するかわりに、「原子価」は変わらないと表現してあったのだと思います。私はそれを読んで、有機化合物では「酸化数」が変わらないと誤解し、有機化学の酸化還元反応は酸化数では判断できないと考えてしまったのです。
有機化合物の酸化数については、林さんの14日のメールのとおりだと思います。そして、有機化合物の化学反応を説明するときは、酸化還元というよりも、置換や付加、脱離などと表現したほうがよいという意見にも賛成です。ただ、”酸化還元の概念に「水素原子の移動」まで取り込むことには反対です”という林さんの文章がありますが、それはどうでしょうか。エチレンのエタンへの変化などは確かに酸化還元反応というより、付加反応と表現したほうがよいと思いますが、アルコールが「酸化されて」アルデヒドを生成するときは、水素原子が二つはずれていますので、水素原子の移動で酸化還元を説明せざるを得ないものもあると思うのです。
酸化還元反応と電子の移動について、これで3回メールを送りましたが、私の理解不足と誤解によって、一人相撲をとっているようなものになってしまいました。しかし、私自身にとっては、酸化還元反応を改めて見直すよい機会でした。まとめてみますと次のようになると思います。
”酸化還元反応とは、すべての化合物をイオン性物質とみなしたとき、電子移動が認められる(=酸化数の変化がある)反応である。そして、酸化または還元された原子では、電子は「本当に」移動している。ただし、電子の移動という概念には、電子が1個1個移動するというもの以外に、電子を電子雲と考えたときそれが薄く(厚く)なるというものも含まれる。”
ただ、この逆の言い方はどうでしょう。つまり、電子雲が薄く(厚く)なるような変化がある反応はすべて酸化還元反応である、という言い方です。これは、だめでしょうね。例えば、ベンゼン環に官能基を導入することによって、オルト・メタ配向性や、パラ配向性を持つようになりますが、そうなっても、6個すべての炭素原子について酸化されたとか還元されたとかはいいません。また、無機化合物でも沈殿ができたり、中和が起こるときには、何らかの電子雲の変化があるはずですから・・・。そう考えると、すべての化学反応において、個々の原子の電子雲の変化は必ず伴うもののように思えてきます。そうであれば、酸化数は酸化還元反応とそうでないものを分ける役目を持つ数字だということになります。・・・。また、一人相撲になりそうですから、この辺でやめます。
97A−035
差出人:鬼塚 公志
送信日:97年9月16日
宛 先:杉山 野中 林 山本
件 名:防虫剤を用いた化学実験について
こんにちは、鬼塚です。
台風が接近していますが、みなさんお変わりないでしょうか。
この3連休中に「防虫剤を用いた化学実験」をまとめ上げましたので、お知らせします。アドレスは
http://www.try-net.or.jp/~konan/botyu1.htm
にアップしました。同じ内容の実験プリントなどを今度、アルケミスト通信に送りたいと思います。今度の送付先は野中さん宛でいいのですよね。
実験1 防虫剤は油の仲間?
実験2 防虫剤のシミ〜凝固点降下
実験3 昇華と樟脳船
実験4 クスノキからショウノウを取り出す
の4つの実験からなります。目的は家庭にあるモノを化学して正しい使用方法などを理解させようと言うものです。実験1は盛口先生の「ロウにアタック」の防虫剤編です。講議と実験をすると1時間の授業では足らないと思いますが、講議の後に実験を行い2時間をめどにするといいかなと考えています。実験2は防虫剤を混ぜたときどうなるか。また、防虫剤の見分け方などの実験です。実験3は以前お聞きした「樟脳玉」などを取り入れた遊び感覚の実験です。実験4はクスノキの葉から樟脳を取り出そうという実験です。リービッヒ冷却管やへばりつくぐらいの量、三角フラスコではほんの少し浮くぐらいの量ですが物質の分離の方法を理解させるのに手頃な実験ではないかと思います。
実は、この実験は東レ教育賞に応募しようとしている実験です。本校では、校舎移転が近くビーカーも試薬も買ってもらえないので、実験費用をこの賞で稼ごうという考えです。初めての応募ですので、まだつめが甘いとは思います。ツメが甘いところはどこがいけないか東レの方で指摘されるようですので、いい勉強になるでしょう。みなさんに意見を聞いて応募するのは、卑怯なやり方と思いますので今日発送します。今後のためにもみなさんにご意見をいただければと思います。
それでは・・・。
97A−036
差出人:林 正幸
送信日:97年9月17日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 山本
件 名:酸化数について
こんばんは、林です。
私の「酸化と還元」にいくつかご意見をいただき、うれしく感じています。さて私の文章は酸化と還元を、中学校の段階の上に、次の3つの視点で書いています。
(1)酸素原子の移動
(2)酸化数の増減
(3)電子の移動
実はこの中で酸化数の扱いに一番迷いました。この春までは「高校化学から酸化数を外すべきだ」とさえ考えていました。教科書の規則の従って酸化数を計算して、それに基づいてその反応が酸化還元反応lかそうでないのかが分ったからと言って、一体どういう意味があるのだろうか。とくに受験問題では、形式的な酸化数のクイズが多すぎる。これに対して(1)と(3)はその価値がはっきりとある・・・・・。
しかしもう一度考えてみました。酸化数は完全に葬り去るべきか。そしていくつかの意味に気付きました。
(a)酸化数は陽性元素と陰性元素の反応をひとまとめにして捉えている。言い換えると、陽性と陰性の意味をより深めている。
(b)注目する元素の各状態を酸化数で区別して考察ができる。だから命名法にも利用される。
これらのことが「5.酸化数の増減としての酸化還元反応」に書いてあります。さらに
(c)酸化数で拡張されたいくつもの化学反応を眺める中で、酸化剤としてはたらきやすいもの、還元剤としてはたらきやすいものが見えてくれば、化学反応を理解したり予測したりする力も付いてくる。
ところで、山本さんは酸化数の変化を電子雲の薄さ・厚さで捉えようとしています(9/15付けメール)。そうしたい意図はよく分ります。要するに「電子論」的な視点で眺めたいわけですよね。これは大切なことです(どこまで高校化学に取り入れるかは、生徒のレベルにも依ります)。しかし酸化数は似て否なるものだと思います。酸化数は結合する相手原子に対して、陽性の立場にいるか陰性の立場にいるかだけに基づいて決定されます。電子雲の薄さが変化しても「立場」さえ変わらなければ、酸化数は不変です。私が言いたいのは「酸化数は万能ではない」ということです。
こうして私は酸化数を無視した文章は書くべきではないと思い直しました。そして「電子の移動」へのつなぎの役割も担わせて、ある程度のページを当てました。これが私の真意です。
もうひとつ、山本さんは「水素原子の移動」に触れています。でもこれは前回のメールでも書きまいたが、たとえばアルコール、アルデヒド、カルボン酸の酸化還元は、酸化数の増減で統一的に理解できますし、エチレンの水素付加もしかりです。余分な概念を持ち込む必要はない、というのが私の見解です。
鬼塚さんの実験に対しては次にさせてください。ではまた。
97A−037
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月17日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:ボルタ電池のH2O2の役目について(2)
今日は、山本です。
今日と明日は文化祭の代休で、休みですが、台風の影響で好きな海釣りに行けそうもありませんので、家で過ごすつもりです。九州はだいぶ台風の影響があったようですが、鬼塚さんのほうは大丈夫でしょうか。
さて、ボルタ電池にH2O2などの酸化剤を加えたときの反応について、以前から林さんとやり取りしていますが、そのことで、もう少し考えを書きたいと思います。14日のメールで林さんは
”電子を奪うのが水素イオンではなく過酸化水素であるという研究結果があるのか”
と質問しています。私は持っている資料をもう一度見直してみたのですが、残念ながら、それを示す研究結果は見つかりませんでした。どの論文も、いろいろな現象を状況証拠として、H2O2が電子を奪っていると考えたほうが自然だ、というような内容です。ただ、逆に、H+が電子を奪ってH2になり、それをH2O2がH2Oに変えている、という証拠もないと思います。というわけで、現時点では、お互いが考えを変えることにはならないと思いますが、今回は、私の考えを2つ述べてみたいと思います。
(1)減極剤という用語は業界用語では?
林さんは、H2O2が直接電子を奪うという考えについて、
”これは「電子の移動」の視点で捉えようとしている中に「酸化数の増減」とい
う別の視点を滑り込ませて過酸化水素が電子を受け取ったと決めているようにも
思えて不満です。
次に、私の文章の中で、反応式{35}を2つの反応式{32}と{36}に
分ける問題に移ります。これは多くの電池で活躍する水素イオンを水素にしない
ためにどんな薬剤を加えるか、という説明です。それは「酸化数の増減」という
すでに学習した視点からすれば、「酸化剤」を加えるのだ、と解説しているので
す。”
と書いていますが、反応式{35}を2つの反応式{32}と{36}に分けて説明するというやり方をするのは、林さんが、電子はいったんH+に入ってH2を作り、それをH2O2がH2Oに変えるという考え(これを林さんは、H+とH2O2が共同で電子を奪うと表現しているのでしょう)を持っているからだと思っています。そして、その考え方はH2O2を「減極剤」とみなしていることと同じだと思います。
”これは減極剤をいう概念を導入するためではありません。”
とありますが、読む側からすれば、この説明文には「減極剤」という言葉はないにしても、「減極剤」の働きを述べていると受け取れるのですが・・・。なぜなら、「減極剤」とは発生する水素を酸化する物質のことですから。
私は、電池の中で発生する水素をH2O2などの酸化剤で処理する、という考え方は電池開発技術者の視点が色濃く現れているように思えて不満です。実用電池では、水素発生が起電力の低下以上に、電池の破裂、液漏れ、それによる電子機器の損傷、そして補償問題とやっかいなことにつながりますから、電池開発者としては、どうしても避けなければならないことでしょう。ですから、電池の専門家の頭には「発生する水素を何とか酸化しなければならない」という発想がこびりついていて、それが「減極剤」という用語を生んだのではないでしょうか。この辺はニフティでも盛んに論議されていますが、電池以外の電気化学の専門家、たとえば金属腐食の専門家などは「減極剤」という用語は使わないようです。ボルタ電池にH2O2のような酸化剤を入れたときは、電子はH+よりも電位が+であるH2O2(H+といっしょに存在するH2O2)に入る、と理解しているようです。
(2)H2O2を加えると起電力があがる理由は?
ボルタ電池にH2O2を加えた場合、まめ電球などを回路に入れて電流を流している状態でも、起電力は1.1V以上になります。しかし、銅板から出てきた電子が、いったんその表面でH+に入ると仮定したら、電池の起電力はHとZnの標準電極電位の差(0.76V)以上には上がらないはずではないでしょうか。H+がH2に変わった後は、銅板から離れ、溶液中でH2O2に酸化を受けると考えますと、H2がH2Oに変化する反応は電池の起電力には寄与しないと思うのですが。
私は、ボルタの電池の起電力の変化を次のように考えています。まず、希硫酸に銅板と亜鉛板をひたした瞬間は1.1V近くを示します。これは、銅板の表面に銅の酸化物や水酸化物などが微量に付着していて、いわば、ダニエル電池ができているためでしょう。この時の起電力は(平衡状態であれば)ZnとCuの標準電極電位の差(1.1V)になるはずです。そして、すぐ、起電力は低下します。これは、微量にあったCu2+がすべて還元されてしまったため、還元する相手がCu2+からH+にかわったからです。したがって、この時の起電力は、亜鉛と水素の標準電極電位の差(0.76V)になるはずですが、どんどん低下し、0.4Vとか0.3Vになります。これは、電流を流すことによる過電圧や電池の内部抵抗の影響でしょう。さらに、そこにH2O2などの酸化剤を加えますと、起電力が「回復」します。これは、還元する相手がH+からH2O2にかわったからです。この時の起電力は(平衡であれば)ZnとH+が存在している条件でのH2O2の標準電極電位差(2.53V)になるはずです。このように、ボルタ電池の起電力の変化が、Znと還元される相手との標準電極電位差と呼応して説明でき、分極とか減極剤という概念を使わなくてもすみますので、私はこの説明のほうを選んでいます。
では、また。
97A−038
差出人:林 正幸
送信日:97年9月18日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 山本
件 名:「減極剤」について
こんにちは、林です。
今日は体育大会の準備股間中の「軽減」ということで、午後は帰宅しました。私の「酸化と還元」がたたき台になって、それで議論がしやすいと感じています。
<9/17付け山本さんのメールの引用>
・・・・・・・・、反応式{35}を2つの反応式{32}と{36}に分け
て説明するというやり方をするのは、林さんが、電子はいったんH+に入ってH
2を作り、それをH2O2がH2Oに変えるという考え(これを林さんは、H+
とH2O2が共同で電子を奪うと表現しているのでしょう)を持っているからだ
と思っています。そして、その考え方はH2O2を「減極剤」とみなしていること
と同じだと思います。
(中略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、電池以外の電気化学の専門家、た
とえば金属腐食の専門家などは「減極剤」という用語は使わないようです。ボル
タ電池にH2O2のような酸化剤を入れたときは、電子はH+よりも電位が+であ
るH2O2(H+といっしょに存在するH2O2)に入る、と理解しているよう
です。
<以上>
正直なところ、専門家が「減極剤」という用語を使わないようにしている理由については、私は知りません。そして私自身の問題意識は、前々回の9/15付けの私のメールにも書いたように、電池の分極の方です。減極剤はその分極を減少させるという意味だからまずいと考えています。これに対して正極では酸化剤が係わるという認識は、むしろ大切ではないでしようか。私が反応式{35}を2つに分けて解釈しているのは、化学の伝統的なやり方だと思います。たとえばもうすぐ、銅と塩酸と過酸化水素の実験をやります。これは普通次のように説明します。
Cu + H2O2 ―→ CuO + H2O
CuO + 2HCl ―→ CuCl2 + H2O
Cu + H2O2 + 2HCl ―→ CuCl2 + 2H2O
つまり始めに銅が過酸化水素と反応して酸化銅ができる。これは塩基性酸化物で酸と反応して塩化銅という塩になる。しかし本当の反応のしくみはきっともっと複雑でしょう。それでも「このように解釈して理解できる」という教え方をします。
話をもどして、過酸化水素を加えたときの正極の反応は、すでに登場した水素イオンが電子を奪う反応と、その水素が過酸化水素で酸化されて水になる反応に分けて理解すると、電池のパワーアップには「酸化剤」が利用できる、としているのです。そもそも電池の正極は酸化剤が反応します。水素イオンだって酸化剤です。それに水素の発生が電池のパワーダウンになることは事実ですから、それに酸化剤を加えて変化させるというのは正当な解釈だと思います。もちろんこれとて本当の反応のしくみは分りません。だからこそ、私は「水素イオンと過酸化水素が協同して」という表現を使うのです。言い換えると、山本さんが解釈するように、まず過酸化水素が単独で電子を奪うとすることには、他にそのような事例が見あたらないが故に、抵抗を感じるのです。
<9/17付け山本さんのメールの引用>
(2)H2O2を加えると起電力があがる理由は?
ボルタ電池にH2O2を加えた場合、まめ電球などを回路に入れて電流を流し
ている状態でも、起電力は1.1V以上になります。しかし、銅板から出てきた
電子が、いったんその表面でH+に入ると仮定したら、電池の起電力はHとZn
の標準電極電位の差(0.76V)以上には上がらないはずではないでしょう
か。H+がH2に変わった後は、銅板から離れ、溶液中でH2O2に酸化を受け
ると考えますと、H2がH2Oに変化する反応は電池の起電力には寄与しないと
思うのですが。
私は、ボルタの電池の起電力の変化を次のように考えています。まず、希硫酸
に銅板と亜鉛板をひたした瞬間は1.1V近くを示します。これは、銅板の表面
に銅の酸化物や水酸化物などが微量に付着していて、いわば、ダニエル電
池ができているためでしょう。この時の起電力は(平衡状態であれば)ZnとC
uの標準電極電位の差(1.1V)になるはずです。そして、すぐ、起電力は低
下します。これは、微量にあったCu2+がすべて還元されてしまったため、還
元する相手がCu2+からH+にかわったからです。したがって、この時の起電
力は、亜鉛と水素の標準電極電位の差(0.76V)になるはずですが、どんどん
低下し、0.4Vとか0.3Vになります。これは、電流を流すことによる過電
圧や電池の内部抵抗の影響でしょう。・・・・・・・・・・
<以上>
この引用にように山本さんは、電子がいったん水素イオンに入って水素ができるとすると、その起電力は0.76V以上にならないのではないかと書いています。しかしそんなことはありません。濃淡電池を考えてみてください。起電力とモル濃度の関係式を見なくても、濃度が起電力に影響することは明らかです。つまり、仮に一時的に水素が生成するとしても、続いて過酸化水素がすぐにそれを水に変えるなら、その水素のモル濃度はきわめて小さく、したがって水素の逆起電力が標準酸化還元電位から大きくずれることは、あり得ることです。そしてこのように捉えるのは、もう「速度論」の立場から考えていることになります。
高校においては、電池・電気分解のベースは「平衡論」の立場にならざるを得ない、と私もいくつか前のメールに書きました。しかしいつも酸化還元電位の数値から説き起こすのは、落とし穴が待ち受けていそうで危険に思います。山本さんの、ボルタの電池の始めの瞬間の起電力が1.1Vになるという説明も、それぞれの物質のモル濃度が「標準」に近いと確認できてのことでしょか。ずいぶん昔になりますが大学の先生から、ボルタの電池の最初の電圧が亜鉛と銅の酸化還元電位の差になるのは単なる偶然で、実際には別の反応のしくみから来ている、と聞いたことがあります。私が「標準酸化還元電位表」という用語を避け、起電力を示さない「電子与奪表」という勝手な名称の表を使うのは、このような理由からなのです。
ではまた。
97A−039
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月19日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:酸化還元反応と電子の移動(4)
今晩は、山本です。
17日付の林さんのメールに、酸化数の扱いについて悩み、考えた末、酸化数の意味を発見したという内容の記述がありました。私も、酸化数には深い意味があることを、林さんの「酸化と還元」を読んで、自分なりに自問自答したり、いろいろと調べて知りました。この辺のことは、前のメールに書いたとおりです。もう少し、この話を続けさせてください。林さんのメールの中でよく分からないことがあるのです。2点質問します。
(1)
林さんのメールの引用
しかし酸化数は似て否なるものだと思います。
酸化数は結合する相手原子に対して、陽性の立場にいるか陰性の立場にいるかだけ
に基づいて決定されます。電子雲の薄さが変化しても「立場」さえ変わらなければ、
酸化数は不変です。私が言いたいのは「酸化数は万能ではない」ということです。
引用終わり
たとえばマンガンは、MnO4^− 中の+7のマンガン、MnO2中の+4、Mn2+の+2などの酸化数を持ちます。それらはすべて「陽性の立場」です。そして、+7から+4、+2と変化すれば、マンガンは還元されていることになります。でも、林さんは”「立場」さえかわらなければ酸化数は不変です。”と書いていますが、どういうことでしょうか。私は、マンガンが陽性の立場を保ちながらも酸化数が減少するということは、マンガンの電子雲が濃くなっていることを反映している、と理解してするのですが。
ただ、同じ+4でも、MnO2のMnの+4と、CO2のCの+4では、同じ電子雲の濃さを持つとは思っていません。Mnなら、Mnに注目したとき、酸化数が減少すれば(立場が陽性でも)電子雲は濃くなると思うのです。
(2)
林さんのメールの引用
もうひとつ、山本さんは「水素原子の移動」に触れています。でもこれは前回
のメールでも書きまいたが、たとえばアルコール、アルデヒド、カルボン酸の酸
化還元は、酸化数の増減で統一的に理解できますし、エチレンの水素付加もしか
りです。余分な概念を持ち込む必要はない、というのが私の見解です。
引用終わり
この文を読みますと、エチレンの水素付加も、酸化数の増減で酸化還元反応として理解でき、したがって、生徒に説明するときも「水素がはずれたから酸化された」と説明することは、余分な概念を持ち込むことだと林さんが思っていると受け取れるのですが、そうでしょうか。ただ、14日付のメールでは
引用開始
この反応ではエチレン中の炭素原子の酸化数は−Uでありエタ
ン中の炭素原子のそれは−Vになり、酸化数が減って「還元される」ことが説明でき
ます。もっと言うと、有機化学に入ったら酸化還元など程々にしておいて、置換・付
加・脱離・転位・閉環・重合といった反応の形式や、できることなら「電子論」的な
説明に力を注ぐべきだと思います。
引用終わり
という文があって、エチレンからエタンへの変化は、酸化還元という扱いをしないほうがよいといっているようなのですが。
97A−040
差出人:杉山 美次
送信日:97年9月20日
宛 先:鬼塚 野中 林 山本
件 名:め−る 楽しみにしています
こんにちは 杉山です
皆さんから送られてくるメ−ルを楽しみにしています。ダンロ−ドの仕方や送信の仕方をテキストを見ながらやっていましたが、やっと、何とか見ないでも、できるようになりました。
林さん、野中さん、鬼塚さん、山本さんの専用のファイルも、今日作りました。酸化還元や電池、化学の情報、学校での報告など貴重な話があり、電子メ−ルの良さを再認識しているところです。
過酸化水素の話などは、私にとっても興味あることなので、メ−ルを読むだけでも大変勉強になります。山本さんが言ってたとおり、発言者がもう少し増えれば、アルケの合宿での討論をそのまま実現していることになるでしょう。私も討論に参加できるように、態勢づくり?にがんばります。
今回は討論の内容でなく、別の報告をします。
1、炎色反応ろうそくを学園祭の後夜祭で使いました。350mlの空かんにステアリン酸10gとメタノ−ル100ml、着色剤 5gをいれたものを10個をひとつの色で用意して、それをワックスの潅に9分目まで砂を入れた上に載せました。このようなワックスの潅を20個作って、後夜祭の会場の演出に使いました。色は赤、緑、紫、黄色の4色です。結構迫力があり、評判が良かったです。
2、現在、化学部の生徒と一緒にCODのパックテストの自作に取組んでいます。市販のCODのパックテストが高いので、授業ではなかなか使えないというのが動機です。0〜1000ppmの範囲の濃度を4つの色で識別できるところまで、できました。今 後精度を高める工夫をしようと思っています。何かよいアドバイスがありましたらお願いします。
追伸:9月にはパソコンを新しく買うつもりでしたが、思わぬ出費でだめになりました。そのためインタ−ネットのホ−ムペ−ジの情報は現在は見ることが出来ません。しばらくはメ−ルだけの付き合いになるかとおもいまずご了承ください。
97A−041
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月20日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:CODパックテストの原理は?
今日は、山本です。
杉山さんからメールのやり取りを楽しみにしているというコメントが寄せられ、うれしく思います。また、炎色反応とCODの話題が書かれていまして、学校でがんばっている様子がうかがえ、こちらの励みになります。酸化還元のやり取りが続く中でも、こんな風に別の話題が差し込まれても、一向にかまわないのではないかと思います。ただ、題名はできるだけメールの内容に合わせたものにして、一つのメールに一つの話題だけを書くようにしてもらうと、後で見直したとき便利ですので、よろしくお願いします。
それで本題なのですが、CODパックテストの原理を教えていただけないでしょうか。アルカリ性でのMnの酸化作用を利用し、その色の変化を使っていると聞いたことがあるのですが。よろしくお願いします。
97A−042
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月20日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:学校の焼却炉の使用禁止と家庭ごみの燃料化
今日は、山本です。
千葉県でも10月1日から、学校の焼却炉が全面使用禁止になります。今日の朝会で連絡がありました。その後のごみ処理をどうするかは、後の職員会議で話題にあがるそうです。
一方、私の家でもプラスチックは分別して出していますが、出した後はおそらくどこかに埋め立てられるのだろうと思っていました。ところが、9月13日付の朝日新聞茨城版で、私の町を含めた7市町村のプラスチックごみは、昨年4月から固形燃料化され、福島県のクリーニング工場で熱源として使われていることを知りました。プラスチックを細かく破砕し、200℃の熱で溶かして固め、燃料化するようです。クリーニング工場では950℃で燃焼させるため、ダイオキシンの発生も防げると書いてあります。環境関係の新聞記事は、化学物質の毒性を指摘したり、滅び行く自然について触れたりと、暗いものが多いのですが、これを見つけたときは思わずうれしくなってしまいました。
こうして、私は家でも学校でもダイオキシンを発生させない生活ができるわけですが、そう思った瞬間、ごみを出すことに対する罪悪感がスッと小さくなってしまったような気がします。なるべくごみを出さない生活こそ望ましい、とは思っているのですが。
ダイオキシン発生をやめさせようと運動している市民グループは、ごみ発電にも反対していると聞きました。プラスチックなどを燃料化して、高温で燃焼させれば、確かにダイオキシンの発生量は激減するのですが、これにより、ごみの総量を減らすことにはならないから、というのが反対理由だったと記憶しています。私は、実は、ごみの燃料化やごみ発電、ごみの広域処理についてどう考えたらよいのか、よく分からないのです。何か情報や、考えていることがあったら教えてください。よろしくお願いします。
97A−043
差出人:林 正幸
送信日:97年9月21日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 山本
件 名:酸化数について(その2)
こんばんは、林です。
土曜の夜はほっとしますね。
さっそくですが、山本さんの質問に返事をします。「酸化数と電子雲の薄さ」は、マンガンについて山本さんが書いたことに対しては、私もおなじ考えです。そして言葉不足だったと思いますが、「陽性の立場」とか「陰性の立場」というのは、相手原子に対してのことです。つまり酸化数を見つけるには、共有結合の場合はどちらの原子が陽性かが問題になります。たとえば、いまエステルを教えているので酢酸エチルの合成を例にします。
CH3COOH + C2H5OH ―→ CH3COOC2H5 + H2O
この反応では、酢酸のヒドロキシル基の水素は水になります。もちろん酸化数はTで変化しません。しかし水素の電子雲の密度は酢酸のときが小さいですよね。なにせ酸性の水素ですから。このように電子雲の密度が変化しても、水素が相手原子に対して陽性の立場を変えない限り酸化数は同じです。山本さんは前回のメールで「ベンゼン環に官能基を導入することによって、オルト・メタ配向性や、パラ配向性を持つようになりますが」などと書いていたので、私は電子雲の薄さの意味をそのような微妙な場合を中心に受け取ったのです。それに電子雲の密度はこのような場合こそ意味があるように思います。
もうひとつは「水素原子の移動」です。私の考えは、酸化数の増減で十分にとらえられるのに、その上に適用範囲がそれほど大きくない酸化還元の概念を付け加える必要はない、ということです。言い換えると、水素原子の移動としての酸化還元反応にあまり価値を感じていないのです。エチレンの水素付加を「エチレンが還元される反応」と扱うかどうかについては、断定的なことを言うつもりはありません。ただ全体としては、有機化学に入ったら、もっと違う視点を重視して授業を展開すべきだと思っています。
話は変わって、杉山さんのCODのパックテストの原理は、私も大いに関心があります。よろしくお願いします。
ではまた。
97A−044
差出人:杉山 美次
送信日:97年9月21日
宛 先:鬼塚 野中 林 山本
件 名:CODパックテストの件
こんにちは 杉山です
CODのパックテストの原理は、市販されている会社からは教えてもらえないと、始めからあきらめて聞いていません。教えたら売れなくなるので、教えるはずがないと思ったからです。でも、いつかダメモトデ聞くつもりです。
私が化学部の生徒と行っているのは、山本さんの言うとおり、アルカリ性の状態で酸化しています。“マンガンのカメレオン反応”で色がいくつにも変色するのはアルカリ性のときという知識で取組みを始めました。
現在は研究の第1段階?で、過マンガン酸カリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液で試験液をつくり、各濃度のブドウ糖標準液で、試行錯誤的に変化を調べています。
第2段階は、アルカリに炭酸ナトリウムを用いるつもりです。この方が、保存や携帯に便利だからです。
現在の精度では、川のCODの比較は無理ですが、生活廃水には使えそうです。
97A−045
差出人:山本 喜一
送信日:97年9月21日
宛 先:鬼塚 杉山 野中 林
件 名:ボルタ電池のH2O2の役目について(3)
今日は、山本です。
ボルタ電池にH2O2を加えたとき、電子がいったんH+に入ってH2が生成しそれをH2O2がH2Oに変えると説明すべきか、それとも電子は直接H2O2に入るとすべきかについては、やはり、新しい事実が見つからないと、これ以上議論の進展はないようですね。
18日付の林さんのメールには、ボルタ電池にH2O2を加えると、発生するH2をすみやかにH2Oにし、H2の濃度が下がるので、起電力は0.76V以上になることもあるという説明があります。また、ボルタ電池の初期に1.1V程度の起電力を示すのは、Cu表面が酸化物などに変わっているからではないかという私の考えに対し、それぞれの物質の濃度が「標準」に近いと確認できるのかという質問があります。この二つはネルンストの式からある程度の情報が得られると思いますので、解説を試みてみます。なお、林さんが18日付けのメールで”起電力とモル濃度の関係式”と呼んでいるのも、このネルンストの式だと思います。なお、ネルンストの式は電池が平衡状態の時の起電力を表す式ですから、以下の議論も電池が電流を流さない状態での起電力の話になります。
(1)0.76V以上の起電力について
私が17日にメールを書いた時、一応ネルンストの式は頭にあったのですが、濃度の影響はそれほど大きくはないだろうと思って、標準電極電位の値だけで判断し、亜鉛と水素では0.76V以上の起電力は得られないはずだと書きました。でも、林さんの指摘があって、もう一度ネルンストの式を見直し、仮に亜鉛と水素の電池で、1.1Vの起電力が得られたとしたら、水素ガスの分圧はどうなるかを計算してみました。
亜鉛と水素の電池は次のようなものを想定します。亜鉛電極は、1モル濃度のZn2+溶液にひたっています。それと別の容器に1モル濃度のH+の溶液があり、そこに白金電極が浸っていて、その白金電極にはある分圧の水素ガスが吹き込まれています。両方の容器を塩橋でつなぎ、電流が流れないようにしながら、起電力を測定したとき、それが1.1Vを示すのは、水素ガスの分圧がどれくらいの時かを求めようというのです。温度は25℃とします。
蛇足ですが、ネルンストの式は、次のような酸化還元反応の電位を求める式です。
O + ne- = R (Oは酸化体、nは係数、e-は電子、Rは還元体)
において、
E = E0 + (RT/nF)ln(aO/aR)
(E:電位、E0:標準電極電位、R:気体定数、T:温度、F:ファラデー定数、aO・aR:酸化体・還元体の活量)
そして25℃において
(RT/nF)ln(aO/aR) = (0.059/n)log(aO/aR)になります。
では計算です。上で想定した電池の亜鉛電極では、
Zn2+ + 2e- = Zn
の平衡状態が生じていますので、この電位は
E = −0.76 + (0.059/2)log([Zn2+]/[Zn])
ここで、[Zn2+]と[Zn]はそれぞれの物質の活量ですが[Zn2+]は1モル濃度なので1、[Zn]は固体なので1になり、結局この電極の電位は−0.76Vです。
一方、水素電極の方は
2H+ + 2e- = H2
の平衡状態が成り立っていますが、この電位(E)が+0.34Vになれば、電池の起電力が1.1Vになるはずです。ネルンストの式から、
0.34 = 0 + (0.059/2)log([H+]^2/[H2])
ここで[H+]は水素イオンの活量ですが、水素イオン濃度で代用して1にします。[H2]は水素ガスの活量ですが、気体の場合は分圧になりますから、これが求めようとしている水素の分圧です。これを計算しますと、およそ10^-11[atm]。
1気圧のもとで、亜鉛・水素電池を組み立てたときは、白金電極に吹き込んでいる水素ガスの分圧も1気圧だと思うので、水素ガスの分圧がこの値になることはないと思います。しかし、この前のメールの電池は、この計算で想定した電池ではなく、ボルタ電池にH2O2を加た電池で、発生する水素ガスをすみやかに水に変えるという話でしたので、林さんの説明と一緒にすると、Cu板上で発生するH2がすみやかに水に変わり、分圧に換算して10^-11[atm]程度の影響しか持たないという状態が起こっているとすれば、説明できますね。ただ”H2がすみやかに水に変わり、分圧に換算すれ10^-11[atm]程度の影響しか持たないという状態”が、どんな状態なのかは、明らかにされなければならないと思いますが。
(2)ボルタ電池の初期の起電力について
初期において、Cu板表面がCuOなどのさびに変わっているため、Cu2+が酸化剤になっていいるのではないかと書きました。そうだとしたら、Cu板での反応は
CuO + 2H+ + 2e- = Cu + H2O
で、この電極の電位は(平衡状態であれば)ネルンストの式から
E = E0 + (0.059/2)log([CuO]/[Cu])
になると思います。ここで、[CuO]と[Cu]は両物質の活量ですが、両方とも固体ですから、活量は1で、表面にある(と思われる)CuOの量とは無関係になるのではないかと思います。
以上、ネルンストの式に基づいて私の考えを書きましたが、式の使い方などで間違いがあるかもしれないと思いまして、くどくどと書いてしまいました。
では。
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