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97A−286
差出人:林 正幸
送信日:98年7月20日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 山本
件 名:逆さコップの中の水は減圧にならない(2)
こんにちは、林です。
夏休みに入って、なにか金持ちになったような気分です。自分の自由になる時間が十分にあるということは精神的に良いですね。もっともそれが永久に続くとなると問題で、やがてまた意義の感じられる仕事があるからこそ、充電しておこうと思うのでしょうね。
山本さんから「逆さコップ」いくつか質問がありました。細い管に水銀を入れた場合は、たしかに空気と入れ替わるためには水銀の表面が広がる必要がありますので、表面張力がそれを阻止すると思います。私の早とちりでした。
ところで私の逆さコップのとらえ方は、流体である空気とコップの中の水はすき間を通して連続しており、すべて圧力は同じであるということです。ガラス板の厚み程度の落差は無視できます。だからガラスのふたの上下の圧力は等しい。そして2つのことがあります。ひとつはガラス板をその重力に対して保持するための水の表面張力、これは濡れた空のコップにガラス板が「吸いつく」力の半分です。
もうひとつは「大気圧の空気がコップの中に入って、差し引き水圧分の力でつまりは重力で、水が落下するのを阻止する」ことです。これはふたが変形して空気が侵入できるかどうかです。ガラス板なら明解ですが、はがきでも、コップのガラスの厚み程度の「あそび」があるので、OKになるのではないでしょうか。このときコップとはがきのすき間の水は内部にわん曲して、その表面張力でふさいで空気を通さないこともあると思います。しかし改めて考えてみると、「ふさぐ」というのもあまり重要ではないようですね。それではふたをどんどん薄くしてラップフィルムにしたらどうでしょうか。山本さんの論理ではこの場合も水はこぼれないことになると思います。
ではまた。
97A−287
差出人:山本 喜一
送信日:98年7月20日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林
件 名:逆さコップについて(4)
こんにちは、山本です。
いよいよ夏休みですね。私は、以前にも書きましたが、持っている資料をPDFファイルという一種の画像ファイルにして、データーベースを作っていますので、それをこの休み中に終わらせようと思っています。
逆さコップについて、林さんからコメントが寄せられていますが、もう少し質問させて下さい。
1 逆さコップの中の水の圧力について
林さんは、水と大気がコップの口とガラス板のすきまで接し、そこを通して連続しているので、圧力は低くなっていないと書いていますが、どうもよく分かりません。私はこう考えています。例えば、10m以上もある細長い注射筒があるとします。注射針をつける穴をふさいで、その中に水をたっぷり入れ、空気を追い出してピストンをはめ、垂直に立てたとします。もちろん、ピストンが下になるようにしたとします。このときの大気圧を1気圧としますと、シリンダーの中の水は10m以上には高くならず、上に真空(水の蒸気圧を無視)ができるはずです。この状態で、シリンダーの中の水の圧力は表面が0気圧、ピストンに接している部分は1気圧になっているはずです。その圧力を生み出しているのは、水の重力。
逆さコップの場合は、コップの下(ガラス板)と、コップのすき間の両方から大気圧が水を押し上げているだけで、これと同じに考えられるのではないでしょうか。
2 ”ガラス板をその重力に対して保持するための水の表面張力は、ぬれた空のコップがガラス板が吸い付く力の半分”とありますが、なぜ半分なのでしょうか?
3 たわみやすいふた、特にラップフィルムのようなもので逆さコップができるかどうか。実際にやってみますと、林さんが言うように、ラップがたわんでそこから空気が入るという現象も起こりますが、ラップがたわんだところやしわが寄ったようなところ、つまりすき間の大きなところから水が流れ落ち、空気は入らないので、ラップがコップに吸い込まれていくという変化も見られますね。
厚紙やガラス板をふたに使った場合、コップの口とふたの間にある水の表面張力は、水のこぼれ落ちと、空気の侵入を阻止していて、それがあるから逆さコップが成り立っているのではないでしょうか。ラップのようなふたでは、水の重力によって、簡単にたわんで大きなすき間を生じ、その部分の表面張力が破られて水の流れ落ちと、空気の侵入を許してしまうのではないかと思うのですが。
これはインチキかも知れませんが、ラップをコップの口だけではなく、外壁までぐるりとくっつけて逆さにすれば、逆さコップになりますね。そうしなくても、コップの口の部分に大きな「ふち」のあるものを使えば、逆さコップになるとは思いますが。
以上、実は林さんのこの前のメールの後半部分がよく分からないもので、的外れになっているかも知れませんが、よろしく。
97A−288
差出人:林 正幸
送信日:98年7月21日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 山本
件 名:逆さコップの中の水は減圧にならない(3)
こんにちは、林です。
山本さんがラップフィルムではコップの内部にへこむようになると知らせてくれて、これは私の想像と反対でしたので、やはり実験をやるべきと学校で試してみました。それからもう一度メールを読み返してみて、誤解していた部分にも気付きました。
山本さんが「コップの底の水圧は大気圧より低い」と書いています。私をこれをコップが逆さになっていることを忘れて「ふたの部分」と思い込んだのです。というのは、これは言葉のイメージの問題だけでなく、ふたが落ちるかどうかはふたが受ける力に依るわけで、正しい意味でのコップの底の水圧には直接関係がないからです。コップのふたの部分の「水は減圧にならない」わけで、その意味でふたは上下から同じ圧力を受けます。もうひとつ、ふたの重力が水の表面張力でカバーされます。集気びんとガラス円板で調べてみると、ふたはスライドするし、簡単に引き離すことができます。
したがってこぼれるかどうかは、「ふたの部分」で大気圧の空気が内部に侵入できるかどうかの問題になります。すき間の水は圧力では空気と釣り合っているので、空気の侵入が水の表面積の拡大を伴うことを考えると、あとは水の表面張力を破るだけのかく乱が生じるかどうかです。その意味ではやはり水の表面張力が空気の侵入を「ふさいで」いるのですね。ちなみに水だけが外に出れば、ラップフィルムの例から分るように、内部にへこんで圧力が調節されることも起こります。
それから一部空気が入った水でも逆さコップはできますね。すべて空気でも集気びんやガラス円板が濡れていればできました。ただし空気が増えるにつれて困難になるようです。空気は体積が変動しやすてくかく乱を受けやすいのでしょうか。ちなみにすべて空気の場合は水の表面がすき間の内外2つになるので、ふたを保持する表面張力は2倍になります。
そして最後にすこし変ですが、山本さんが問題にしていることを私は理解していないように思います。できれば改めて説明をしてもらえないでしょうか。
ではまた。
97A−289
差出人:林 正幸
送信日:98年7月22日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 山本
件 名:比例式の立て方
こんにちは、林です。
指導していて気が付いたのですが、生徒はある決まったやり方で比例式を立てるようです。たとえば「水4.5gは何molか?」という問題では
18:4.5=1:x あるいは 1:x=18:4.5
であって
18:1=4.5:x あるいは 1:18=x:4.5
ではないのです。すべての生徒がそうかどうかは確認していませんが、私は後者の方が考えやすいように思うのですが・・・・・。つまり「18gが1molなら4.5gは何molか」といったように自然ですし、比の値も正比例の比例定数になるから合理的かつ発展的ですよね。
こんな違いも生徒にとっては理解のハードルになってしまうかもしれません。前者の立て方にはなにか教育的配慮があるのでしょうか。このことについて情報がありましたら知らせてください。ちなみに、私は比例式でなく分数式を作るように指導しています。
ではまた。
97A−290
差出人:山本 喜一
送信日:98年7月22日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林
件 名:逆さコップについて(5)
こんばんは、山本です。
逆さコップについての私の理解と疑問は次のようなものです。逆さコップの中の水とふたの重力を支えているものは、大気圧と表面張力ですから、それらがどうはたらいているのか、考えを書いてみたいと思います。
大気圧のはたらき
(1)水とふたを下から上へ持ち上げている働き。これは疑いがないと思います。
(2)コップの口とふたの間(すき間)にある水を、横から押す働き。
表面張力の働き
@(2)に書いた働き。
Aすき間から水がこぼれ落ちるのを防ぐ働き。
水がこぼれ落ちる時は、その部分の表面が増えますので、表面張力も大きくなり、結果的にそれを防いでいると思います。
Bコップの口とふたを引きつける働き。
この働きには、コップの口もふたも、水で「ぬれ」るという条件が必要なことは、前に書いたとおりです。ただ、昨日の実験から、表面張力がふたを引き上げているという言い方は間違いだと思います。実験はまず、水で濡らした空のコップの口に、おもりをつけたガラス板をくっつけてみて、それが重すぎて落ちてしまうことを確認しました。そして次に、コップの中に水をいっぱい入れて、同じふたで逆さコップをやってみたのです。すると、この場合はちゃんと逆さコップが成立しました。つまり、逆さコップのふたが落ちないのは、表面張力と大気圧の両方だと言わなければならないと思います。
では、なぜコップとふたが水でぬれ、表面張力が両者を引きつけるという条件が必要なのでしょうか。水銀はプラスチックのふたを落としてしまうという実験結果を書きましたが、なぜ落としてしまうのでしょうか。水銀はプラスチックをぬらさないからと書いたのですが、後で考えてみて、納得がいかないのです。試験管に水銀をたっぷり入れて、プラスチックのふたを乗せ、ふたを指でおさえて試験管を逆さまにします。このとき、ふたは下から1気圧の大気圧を受け、上からは水銀柱の圧力を受けているはずで、当然、大気圧>水銀柱の圧力 です。でも、ふたは落ちてしまうのです。なぜなのでしょうか?
大気圧と表面張力以外に、ふたと接している水の分子が、ふたと弱く結合して、ふたを引きつけているということは考えられないのでしょうか?これが3番目の疑問です。
最後に、林さんは空気の入った逆さコップについて書いていますが、空気は水の重力によって減圧され体積が増えますので、その分、コップの口とふたの間が広がるのだと思います。コップの中の空気が多すぎると、逆さにしたときの体積膨張もそれだけ大きくなり、すき間が広がって、表面張力が弱くなり、水の流出
と空気の侵入が起こるのではないでしょうか。
97A−291
差出人:野中 直彦
送信日:98年7月23日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 橋本 林 山本
件 名:アルケ通信送ります
私には最後の通信の発送になります。
アルケ合宿のレポートはできていません。
明日からバドミントン部の合宿です。
林さんの言われるとおり自由感に浸っています。
次期事務局として松本さんに電話したら「うん・・・ん」でした。
次の事務局をやってくださる方、大募集中です。
過去の事務局(私の記憶のかぎり)
97 野中
96 藤田
95 山本
94 四ケ浦
93 小野
92 林
91 林
間違っていれば訂正してください。
97A−292
差出人:林 正幸
送信日:98年7月23日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林 山本
件 名:まだ続く「逆さコップ」
こんにちは、林です。
まず、物体が受ける力を整理してみます。「ふた」は下から上に大気圧。そして上から下に水圧、これは大気圧に等しいと考えています。さらにふたの重力とそれと釣り合う水の表面張力、ふたがコップの縁と部分的に接触している場合は、そこから下向きに受ける垂直抗力と重力が表面張力と釣り合う。コップの中の水はコップの壁から水圧の反作用として受ける垂直抗力、これは上下(鉛直)方向と水平方向に分けて後者は打ち消し合っている。上からの抗力(A)は、山本さんが書いているように、水柱による圧力分だけ小さくなっている。それからふたから受ける垂直抗力(B)、これは大気圧に等しい(正確には大気圧×面積)。さらに水の重力、これと抗力(A)が抗力(B)と釣り合う。ただしコップの縁とふたの間の水は水平方向に大気圧と水圧が釣り合う。こんなわけで厳密には、水は上下方向に関しては大気圧で支えられているのではなく、ふたからの垂直抗力で支えられています。
以上の整理の上に立って、山本さんが言う「コップの縁(口)とふたの間の水圧と表面張力」について。これは力の釣り合いからは無視できると思います。ただしかく乱によって釣り合いが破られるときにはある程度は意味を持つかもしれません。
山本さんが水銀による逆さコップで「大気圧>水銀柱の圧力」と書いています。私は中が水でも水銀でも大気圧に等しいと思います。連続している流体は、高さが等しければ圧力は等しいからです。ただしここで注目しておきたいのは、水や水銀のような液体は、非圧縮性流体は少しでも体積を拡げられようとするとその圧力が急激に減少します。つまりかく乱によってふたが開こうとすることに敏感に対抗します。これに対して空気は、ボイルの法則に従うのでその効果はわずかなものです。これが一部空気を入れた、あるいはすべて空気の逆さコップが困難な理由だと考えます。
「大気圧と表面張力以外に、ふたと接している水の分子が、ふたと弱く結合して、ふたを引きつけているということは考えられないのでしょうか?」という記述があります。これこそ「ぬれる」ということです。表面張力は、物質の内部に比べて表面が余分に持つエネルギーを表していますが、これは接触する相手によって変化します。水の場合は、空気が相手だと馴染みにくくて表面張力が大きくなりますが、ガラスが相手だと小さくなります。つまりガラスはイオン性物質で、水分子はガラスと引き合って互いに表面エネルギーを減らすことになります。こうして水は空気とは濡れないように、ガラスとは濡れるようにする結果として、水面のメニスカスができるわけです。そして水がコップの縁およびふたと濡れ合う結果として、その表面張力がふたを保持する力を発揮することになります。
続いて次の部分についてです。
<山本さんの7月22日づけメールの引用>
最後に、林さんは空気の入った逆さコップについて書いていますが、空気は水
の重力によって減圧され体積が増えますので、その分、コップの口とふたの間が
広がるのだと思います。コップの中の空気が多すぎると、逆さにしたときの体積
膨張もそれだけ大きくなり、すき間が広がって、表面張力が弱くなり、水の流出
と空気の侵入が起こるのではないでしょうか。
<以上>
実は今日の補習で生徒が「実験を見せてほしい」と言いました。正直、問題の解説ばかりでは面白くないのでしょう。そこで水ばかりの逆さコップを見せてから、半分空気の場合はどうなるかと質問しました。できる、できない分れたので、実験に移りました。ところが集気びんとガラス円板ではかなり困難なのです。私が「はがきのようなものがあるといいんだが・・・・・」と言うと、ひとりの生徒がうすいプラスチックの円板を持っていました。そして今度は簡単にできました。山本さんが指摘した問題が、ふたをすこし内部に押して水を出すことによって解消できるわけです。やはり逆さコップの本道は「はがき」ですね。
以上のように、大気圧はふたの上下で同じように作用しますので、かく乱により水が減圧になるとき以外は、水がこぼれない理由にはならないと思います。
ではまた。
97A−293
差出人:山本 喜一
送信日:98年7月24日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林
件 名:逆さコップについて(6)
こんにちは、山本です。
林さんが力を整理してくれましたので、だいぶ見えてきました。林さんのメールをベースに私の考えを書いてみます。『』内は、林さんからの引用です。
『「ふた」は下から上に大気圧。そして上から下に水圧、これは大気圧に等しいと考えています。さらにふたの重力とそれと釣り合う水の表面張力』
とありますが、私は水圧と大気圧は等しくないし、ふたの重力と水の表面張力も同じ大きさではないと思います。
『ふたがコップの縁と部分的に接触している場合は、そこから下向きに受ける垂直抗力と重力が表面張力と釣り合う。』
こういう状態は考えないとして、ふたが受ける力について私の考えを書いてみます。
┃ 水 ┃
┃ ┃
┃ c ┃コップの縁 ────
┐ ↑ ┌ ↑
│ │ │ すき間
d│ │ │d
n←↑│ ○○│ ○○ │↑→n ↓
┷┷━━━┷┯┯━━┷┷━ふた ────
☆ │↓ ☆
↓e
f
○・・・水分子
c=ふたが受ける大気圧による力 d=表面張力
e=ふたの重力 f=ふたが水から受ける垂直抗力
としますと、 c+d=e+f (本当はすべてベクトル量ですから、(c+d)+(e+f)=0とすべきかも知れません)と考えられますが、ふたを持ち上げている力として、c、d以外に、水分子がふたを引きつけている力があるかも知れません。ここで言う水分子がふたを引きつける力とは、ぬれではないと思います。ぬれは、界面化学の教科書によれば、ふたと水と空気の3つが接触しているところ(☆印の上)で働く力です。しかし、水がふたを引きつける力は、○で示した水分子のように、ふたと水の二つが出合っているところにあるはずです。それから、ぬれはnで示しましたように、ふたの面に沿った方向に働く力ですから、ふたを持ち上げる力にはならないでしょう。
まあ、ともかく水分子がふたと弱く結合して引き上げている力を考える必要があるかどうかは分かりませんので、
c+d=e+f・・・・(1)
としておきます。
ここで、林さんは d=e と考えていると思いますが、そうでしょうか。表面張力の大きさは、ふたの重さと無関係に、すき間の部分にある水表面の曲率半径で決まるはずです。正確には表面張力ではなく、ラプラス圧とよばれ、それは次の式で求められます。
ラプラス圧=表面張力(1/r1 + 1/r2)
r1、r2は水玉になったときの立体的な楕円体の軸の長さ(曲率半径)
つまり、ラプラス圧(表面張力による力)は曲率半径が小さいほど大きくなります。ですから、同じふたと容器を使ったときでも、閉じこめられている水の量が微妙に違えば、すき間の長さが変化し、ラプラス圧(表面張力)も変わるはずです。
それから、この前のメールでも書きましたが、空のぬらしたコップでは重すぎてくっつけられないふたを使っても、コップに水を入れて逆さまにすれば、逆さコップは成立します。林さんの指摘のように、空のぬらしたコップの表面張力は、水を入れた逆さコップのときの2倍の表面張力を出せるはずですから、 2d<e の場合でも逆さコップが成立することになります。こういうことから、 d=e は言えないと思います。
次に水が受ける力を考えてみます。
『コップの中の水はコップの壁から水圧の反作用として受ける垂直抗力、これは上下(鉛直)方向と水平方向に分けて後者は打ち消し合っている。上からの抗力(A)は、山本さんが書いているように、水柱による圧力分だけ小さくなっている。それからふたから受ける垂直抗力(B)、これは大気圧に等しい(正確には大気圧×面積)。さらに水の重力、これと抗力(A)が抗力(B)と釣り合う。ただしコップの縁とふたの間の水は水平方向に大気圧と水圧が釣り合う。こんなわけで厳密には、水は上下方向に関しては大気圧で支えられているのではなく、ふたからの垂直抗力で支えられています。』
┏━━┯━━┓
┃ ↓ ┃
┃ A ┃
┃ ┃
┃ │ ┃
┃ │ ┃
┃ ↓ B ┃
┃ g ↑ ┃ g=水の重力
┐ │ ┌
│ │ │
━━━━┷━━━
ここでは、 B=A+g ですね。
ところで、Bはfの反作用ですから
B=f・・・(2)
また、Bは○で示した水分子を押す力ですから、ふたに接している水分子の水圧(の面積倍)ということになります。すると(1)と(2)式から B=f=c+d−e そこで、たまたま
d=e の場合は、 B=c
になって、水の圧力は大気圧と同じになりますが、
d>e の場合は B>c
d<e の場合は B<c
です。
それらの場合は、すき間の水は次のようになっているのではないでしょうか。
┃
┃
┃
水 ┃
┃
内┃外 ─────
┌ ↑
ア←│→イ
c←──│ すき間
│──→B ↓
━━━━━━━┷━━━ ─────
ふた
Bは同じ力で、すき間の水を外へ押し出しているはずです。そして、大気圧Cも同じ力で、水をコップの内側へ押しているはずです。ここで、
c<B の時は、水面が外に脹らむことによって、表面張力がアの方向に働き、 c+ア=B となって釣り合い、
c>B の時は、水面が内側に脹らんで、表面張力はイの方向になって、 c=B+イ で釣り合うのではないでしょうか。
水銀の場合と、コップの中に水が入った場合についても考えがあるのですが、今日はこの辺にします。
97A−294
差出人:山本 喜一
送信日:98年7月25日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林
件 名:逆さコップについて(7)
こんにちは、山本です。
逆さコップばかり書いていますが、本当は林さんの物質量の教え方を議論した方が、アルケとしては実りが多いのかも知れません。でも、乗りかかった船。もう少し書かせて下さい。
昨日、すき間の水表面が外側にふくらんでいるときと、内側にふくらんでいるときでは、表面張力の力の方向が違うのではないかと書きましたが、これを補足します。
まず、物理学事典には、空気中を落下してくる雨粒内の圧力は、表面張力の分だけ大気圧より大きいという記述があります。これは、雨粒の表面に並んだ分子が、隣の表面にある分子、それから2層目にある水分子の両方と引力を及ぼしあっていることから理解しました。
この考え方を、逆さコップのすき間の水表面に当てはめてみます。もちろん、表面張力はコップの縁とふたを引きつけあう方向にもはたらいていますが、水平方向には、どんな働き方をしているのかを考えようと言うわけです。
┃
┃
┃
水 ┃
┃
内┃外 ─────
┌ ↑
ア←│→イ
c←──│ すき間
│──→B ↓
━━━━━━━┷━━━ ─────
ふた
まず、すき間の水が外方向へふくらんだ場合は、雨粒の例から、表面張力はアの方向にはたらくはずです。すると、すき間の水が横から受ける圧力は c+ア になると思います。
次に、水表面が内側にふくらんだときです。表面にある水分子が、隣の表面の水分子に引っ張られる力を合成しますと、イの方向のベクトルがでてきます。昨日の時点では、これで表面張力はイの向きと書いたわけですが、表面の水分子が2層目の水分子に引きつけられる力(これはアの向き)を考えてませんでした。でも、これはイの方向の力より小さいのではないかと思います。
○
○
◎●
○ 外
内 ○
表面
内側にふくらんだ水表面の●の水分子に注目してみますと、図から分かるように、表面のとなりの分子(○)の方が、2層目にある水分子(◎)より多いわけですから、やはりこの場合、表面張力はイの向きになると思います。するとこの場合、水が受ける圧力は c−イ になるはずです。
次に、かく乱が起こった場合について書きます。
『水や水銀のような液体は、非圧縮性流体は少しでも体積を拡げられようとするとその圧力が急激に減少します。つまりかく乱によってふたが開こうとすることに敏感に対抗します。』
とありますが、話を簡単にするために、逆さコップが成立しているときに、ふたを下に引っ張った時のことを考えてみます。ふたを下に引っ張ると、中の水の圧力が下がるのでしょうか。注射器に閉じこめた水であれば、ピストンを引っ張ると圧力が下がりますが、逆さコップの水はすき間のところで大気圧を受けているわけですから、圧力低下は考えにくいのではないでしょうか。では、ふたを下に引っ張る力に対抗する力はどこから生まれるかですが、これはやはりすき間の水の表面張力だと思います。
┏━━━━━┓ ┏━━━━━┓
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┐ ┌ ─┐ ┌─
│ │←大気圧 │ │←大気圧
━━━━━━━━━ │ │
━━━━━━━━━
ふたを引っ張る
このことから、空気が入った逆さコップについては次のように考えています。空気が入ったコップを逆さにしますと、まず、コップ内の空気が減圧されて体積が大きくなります。すると、空気が入っていないときに比べ、その分だけ、すき間が大きくなります。その結果、すき間の水表面の曲率半径が大きくなり、表面張力が小さくなって、水のこぼれ落ちと空気の侵入が起こりやすくなるのだと思います。
最後に水銀の逆さコップがなぜ成り立たないのかについて。
林さんの指摘で、私の力の考え方が間違っていることがわかりました。水銀の逆さコップは、やはり「ぬれ」がポイントだと考え直しました。水銀を試験管に入れて、プラスチック板でふたをして逆さにした場合、水銀はプラスチック板をぬらしませんから、水銀とプラスチック板の間に空気が侵入し、プラ板の下からの大気圧は上からの大気圧でうち消され、自分の重力で落下するということだと思います。
水の場合は、プラ板をぬらしますので、水の表面張力が、プラ板と水の間に割り込もうとする大気を妨げ、逆さコップを成立させているわけです。これらは、天井にゴムの吸盤を張り付ける例と似ているでしょう。天井にほこりがついていると、ゴムと天井の間に空気が入ってしまって吸盤はつきません。でも、天井の面がきれいで真っ平らであれば、ゴムが、ゴムと天井の間に空気が入り込むのをさまたげます。その結果、ゴムは大気圧を下からだけ受け、天井にくっつく。空気の侵入を妨げるという働きが「ぬれ」とゴムで似ていると思います。
以上、長々と書きましたが、逆さコップはぬれが水とふたとの間に空気が侵入することを妨げ、すき間の水の表面張力が水のこぼれ落ちと空気の侵入を防いでいるのだと思います。
97A−295
差出人:鈴木 久
送信日:98年7月26日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 長野 野中 橋本 林 山本
件 名:おたずね、粉塵爆発実験その後
アルケミストのみなさん、鈴木 久です。
野中さんアルケ最後の通信ありがとうございました。はがき送れずもうしわけありませんでした。ナイターはいまだ迷っていますが、合宿参加は今からでもよろしいでしょうか?
さて、科教協大会の前日まで子どもの学童のキャンプに参加しています。ここ何年か、そこでのファイアーでの親の出し物で粉塵爆発を含めてシナリオを書いています。粉塵爆発のその後できるだけ確実に爆発する方法や材料はどう進化しているのでしょうか?情報があれば教えていただければ幸いです。
山本さんが逆さコップに燃えていますが、以前「愛知理科の会ニュース」で議論が続いたことがあります。夏休み中に見つけて送らせていただくつもりです。お楽しみに。
少しずつ、アルケの資料への感想などを書きこんでいくつもりです。よろしくおねがいします。
鈴木 久 メールはq-suzuki@gb3.so-net.or.jpの方が確実だと思います。
97A−296
差出人:野中 直彦
送信日:98年7月26日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 橋本 林 山本
件 名:今からでも間に合うアルケ合宿
大阪の沢田さんも合宿に参加の予定です。アルケのナイターも頼みました。
今からでも、どんどん都合をつけて参加してください。
97A−297
差出人:山本 喜一
送信日:98年7月26日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 林
件 名:粉塵爆発について
こんばんは、山本です。
粉塵爆発、私は上新粉(米の粉)を使っています。小麦粉や粉糖よりうまく行くと思います。まず、上新粉をホットプレートのごく弱い温度で、焦げない程度に乾かします。十分に乾燥させると、粉にマッチで火がつくようになります(炎は上げませんが)。それを大きめのロートにたっぷり入れ、ロートにつながったゴム管を口でふいて、45リットルのポリ袋の中に舞いあげるわけです。ゴム管も細いと、一気に多量の粉を舞いあげることができませんので、太めのものを使っています。
また、アルミ粉を使っても粉塵爆発ができますが、これは屋外向きですね。
では、逆さコップの資料も楽しみにしています。
97A−298
差出人:林 正幸
送信日:98年7月27日
宛 先:鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 山本
件 名:まだ続く「逆さコップ」(2)
こんにちは、林です。
山本さんは表面張力がいくつかの調節をしていると考えています。私の考えの出発点は前にも書いたように「大気圧とふたの部分の水圧は等しくなる」ことです。その根拠に浸透圧の実験の経験を上げました。
表面張力による力を整理したいと思います。ひとつは水面に平行にはたらく力で、これは表面張力に長さを掛けた数値になります。もうひとつは水面に垂直にはたらく力で、山本さんのラプラス圧を使えば、表面張力を長さで割った数値になります。前者は力そのもの、後者は圧力ですから、長さの2乗だけ単位がずれます。そして前者がふたを保持する力になります。もちろんすき間の水の表面は場合によって、ほぼ平面だったり外にふくらんだり内にへこんだりしていますので、その鉛直成分を採る必要があります。つまりふたを保持している力はラプラス圧によるものではありません。
山本さんが言うように前者の表面張力は、だいたいは一定の数値です。だから力が釣り合うためにはふたがコップの縁と部分的に接触してそれから垂直抗力を受けると考えます。
それから厳密に言うと、山本さんが言うように、大気圧と水圧はラプラス圧だけずれています。しかし私はこれは小さくて無視できると考えています。どのみち、内部の水圧がそれでわずかに大きくなる場合はふたがコップの縁から受ける垂直抗力が大きくなって調節されます。逆に水圧がわずかに小さくなる場合は垂直抗力がその分大きくなります。
表面張力こそがかく乱に抵抗している「本馬」とすると、空気だけの逆さコップがふたが落ちにくいことになります。しかしこの場合がガラス円板が一番落ちやすいのですよね。やはりかく乱に対しては、非圧縮性の水がその瞬間に大きく減圧になることが主要だと思います。ここで「かく乱」を考えるときに注意したいのは、時間のファクターがあることです。かく乱を受けた直後の短い時間ではすき間の水はほとんど移動していなくて、力は釣り合い状態にはないのです。だからかなり大きなかく乱でもその作用時間が短ければよく抵抗できると思います。
ではまた。
97A−299
差出人:林 正幸
送信日:98年7月30日
宛 先:伊藤 鬼塚 風間 四ケ浦 杉山 鈴木 長野 野中 橋本 山本
件 名:科教協大会レポートを作成しました。
こんばんは、林です。
ここしばらく掛けて、科教協大会レポートを作成していました。ひとつは化学分科会の
「思考を引き出すための断片」
もうひとつはナイターUの愛知科教協企画「今、私を夢中にさせているもの!」の
「インターネットで教研情報の発信・交流を!」
です。正直、こんなに時間を掛けてレポートが作成できたのは初めてです。おかげで自分の勉強になりました。そしてどちらも今日の昼に、ホームページに掲載しました。
どうやら梅雨も開けそうで、福岡では暑い日になりそうですね。それに負けない熱い討論と交流ができればと期待をしています。ではまた。
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