差出人:林 正幸
送信日:97年3月30日
宛 先:野中 山本
件 名:電池についてなど(その2)
(続き)
次に野中さんのアルケ通信2号(96アルケ年度)の「盛口氏の説」についてです。Cu板とZn板を導線でつないでももともと2つは電気的に中性でまわりの環境(電気理論からはアース)と同電位で、「同電位になる」というのは当たりません。そしてそれを電解質溶液につけると2つの化学反応が起こって、Zn板ではその界面を境にして金属内はマイナス電位に、溶液側はプラス電位に分極します。そして水溶液の中ほどはこの段階では前と同じでアースと同じ0Vという電位です。Cu板ではその界面を境にして金属内が電子を奪われたホールによってプラス電位に、溶液側は残された硫酸イオンによてマイナス電位に分極します。また負極では同時に銅のイオン化によって溶液側がプラスの電位に、金属内がマイナス電位に分極することが起こります。そのどちらの効果が大きいかは私には分りません。しかしいずれにしてもZn板の金属内の電位はマイナスでCu板の金属内の電位より低いことは確かです。同様にZn板の溶液側の電位はプラスでCu板の溶液側より高くなります。しかしこの分極と連動して、溶液内ではイオンの移動が起こり両方の金属板の溶液側もそこから離れた部分もすべて同電位になっていきます。電解質溶液は導体ですから同電位になるのは当然です。ただしこの段階では水溶液の電位は、両方の電極の溶液側のイオンの量が異なるので0Vからはずれています。こうしてZn板は電解質溶液全体に対してマイナスの電位を持った負極に、Cu板はそれに対してプラスの電位を持った、あるいはマイナスでその絶対値がより小さい正極になると思います。そして電解質溶液とまわりの環境との間で電荷が流れて水溶液の電位はアースと同じ0Vになります。このことは電池に限定して考えるなら不要のことです。
<アルケ通信96A−2号の野中さんの資料の引用>
「盛口氏の説」
Cu板とZn板を導線でつなぐと、Cu板とZn板が同電位になるが、これをこのまま電解質溶液につけると、電解質溶液側が同電位になるため、Cu板とZn板の電位が押し上げられる形になって、電位差があらわれ電子が流れ始める。
<以上>
ここまで来ると野中さんの説も一理あることが分ります。しかし金属内の電子だって同レベルで移動しようとしてしているわけで、盛口さんのようにZn板とCu板を導線でつないで電解質溶液につければ、イオンよりも速やかに移動して両方の金属の電位を同じにしていまいます。負荷がつながれていて電子の流れが妨げられたり、あるいは電極が開放状態のときには、水溶液の電位が同じになることが優先するわけです。そしていずれにしても2つの化学反応が継続して起こらなければイオンの移動も起きようがないわけで、やはり電子やり取り反応が電子を流す源の力であると言うべきではないでしょうか。ただし濃淡電池や野中さんが別に紹介しているリチウムイオン電池(これも濃淡電池の一種)では、イオンの『拡散』による移動が電池の原動力になっています。しかしこれも「イオンが『中和』しようと移動する」からではありません。
続いて「酸アルカリ電池」での野中さんの意見(アルケ通信2号)についてです。まず「アルカリのOH−は中和しようと酸側に移動する。つまり酸側が+になる」という説明ですが、話が逆ではないですか。そして酸・アルカリの濃淡電池としてとらえようというのは、実際に電球が点く(図が小さくてよくわかりませんが・・・)程の電池は得られないと思います。この電池はそれぞれの電極でかなり電子やりとり反応が起こってしまっていると思います。しかし一部アルカリ側では電子の放出反応のみが
Al + 4OH− ―→ 〔Al(OH)4〕− + e−
酸側では電子の受取り反応のみが
2e− + 2H+ ―→ H2
起こって、アルカリ側が負極になる電池ができていると思います。そして酸化還元電位はアルミニウムとアルカリとの反応の方が、アルミニウムが単純に電子を放出する反応より
Al ―→ Al3+ + 3e−
大きいのです。
(以上)