差出人:山本 喜一
送信日:97年7月28日
宛 先:鬼塚 野中 林
件 名:科教協’97年全国大会レポートについて
こんばんは、山本です。
いよいよ全国大会と、アルケの合宿が近づいてきましたね。全国大会レポートは、去年に続いて、環境関係の実践を出したいと思っています。今日は、その前書きを送りますので、読んでみて下さい。
7月26日から30日まで、東京の科学技術館で「青少年のための科学の祭典・全国大会」に出ています。そこでも私は、参加者に、窒素酸化物やCOD、プラスチックとダイオキシンの話などをしています。青少年よりも、お母さんやお父さんが熱心に聞いてくれています。
「楽しくて、よく分かる」だけでなく、「生き方(生活の仕方)」まで考える化学を、高校生や一般の人に語りたいと思っているのですが、みなさん、いかがお考えですか。これは、いつか野中さんから提起された「教えるに値する化学」に対する、私の答えでもあります。
<以下レポート前文>
科学教育研究協議会’97年度 全国大会レポート(化学分科会)
環境を考える化学の授業
千葉県立柏高校 山本 喜一
はじめに
これまで、環境学習は意識のある一部の教師によって授業に持ち込まれ、その授業を受けた一部の生徒に、社会や家庭生活のありかたを考えさせる機会を与えてきました。しかし、ここ数カ月の間にダイオキシン問題が急浮上し、学校の焼却炉を撤去する自治体もでてきました。いよいよ学校生活にも、環境問題が具体
的な形で顔を出してきたわけです。そして、ゴミをどう処分するかということを、児童、生徒に指導しなけらばならなくたったのですが、これを道徳としてではなく、科学的に扱い、生徒に納得させ、行動に移させるにはどうしたらよいでしょう。
また、ダイオキシンは、ご存じの通り、今から20年以上も前から、その危険性が指摘されていた物質です。ドイツではその対策が進み、日本のはるか先を歩いています。このことは、私の学校にドイツから長期留学にきていた生徒が、「日本の家庭では、庭先でゴミを平気で燃やしているので驚いた。ゴミを燃やすと有害物がでるということはドイツでは常識だ」といった言葉にも現れています。なぜ、日本は環境後進国になってしまったのでしょうか。
このように、環境教育の必要性はますます強くなっていると思います。というより、私は必要不可欠だと考えています。しかし、実際に授業をしている人が少ないのはなぜでしょう。多くは、環境問題は受験とは関係ないから、でしょうが、必要性は感じつつも、二の足を踏んでいる理由としては次のようなことが考えられます。
(1)環境問題を取り上げる時間的な余裕がない。
(2)環境問題を取り上げても、生徒が消極的である。
(3)ひとつひとつの問題が科学的に難しく、生徒に理解させるのが困難である。
(4)環境問題に対する視点、見通しがない。
これらの問題について、私は次のように考えます。まず、(1)、(2)ですが、私は、去年から、化学の授業の流れの中に色々な環境問題を少しずつ取り入れて、授業を組むことにしています。何時間か集中してこの問題を授業しても、受験と関係ないため、生徒はついてきません。そうではなく、各単元で学んだ法
則や概念を応用してみる形で、所々で少しずつ環境問題を考えさせると、生徒に興味を持たせることができます。このことは(3)にも関係します。例えば、ダイオキシンなどはその構造や環境エストロゲンとしての作用をきちんと説明しようとすれば、かなり大変ですし、時間もかかります。そしてこれは、有機化学や
プラスチックを勉強してからでないと説明できないと考える人もいると思いますが、私は「原子と元素」のところで持ち込みました。これがよいかどうかは分かりませんが、環境問題はそれぞれの発達段階で、それぞれに応じた扱いはできるはずだと思います。(4)については、私もはっきりした見通しがあるわけでは
ありません。ただ、生徒に不安と絶望だけを与えるようなことは避け、少しでも環境問題を解決する試みは意識して取り入れるようにしています。
化学の授業で何を学ばせるかという議論になると、「概念形成」とか「自然を豊かにとらえる」とか色々な意見が交わされますが、私は、科学的な法則や概念を学んだら、それを身の回りのものに当てはめてみるということが、大切だと思っています。そうすることによって、改めて物質の持つ面白さを発見したり、ま
た、その法則の本質が理解できることがあります。さらに、概念や法則を環境問題に当てはめてみることによって「より心豊かに生きる」ためには、どんな社会でなければならないか、個人はどんな生活を送るべきなのかを考えさせることができるのではないかと思うからです。
レポートの構成
(1)化学U(3学年、2単位、選択科目)で扱った窒素酸化物の授業
(2)化学TB(1学年、4単位、必修科目)の1学期の授業プリント
(3)化学TB、化学U両方の生徒に配布した新聞記事
私のレポートは授業の流れの中で、環境問題をどう扱ったかという内容ですから、化学TBの1学期の授業プリントはすべて印刷しました。大部分は縮小印刷しましたが、環境問題のところだけはそのままの大きさにしてあります。