差出人:山本 喜一
送信日:97年4月6日
宛 先:野中 林
件 名:Re:電池などについて
林さん、野中さん、今日は。いよいよ新学期が始まりますが、野中さんは学年主任として、しばらくはあわただしそうですね。僕も学年主任ですが、3年目なので、学年集団の雰囲気も、指導の流れもできているので、そんなに負担は感じていません。
今回は、前のメールの続きで、林さんが「電池についてなど(その2)」(3/30)で書いてくれた内容についてです。
まず、林さんが書いた次の部分が、よく分からないので、教えてください。
<引用開始>
次に野中さんのアルケ通信2号(96アルケ年度)の「盛口氏の説」についてです。Cu板とZn板を導線でつないでももともと2つは電気的に中性でまわりの環境( 電気理論からはアース)と同電位で、「同電位になる」というのは当たりません。そしてそれを電解質溶液につけると2つの化学反応が起こって、Z
n板ではその界面境にして金属内はマイナス電位に、溶液側はプラス電位に分極します。そして水溶液の中ほどはこの段階では前と同じでアースと同じ0Vという電位です。Cu板ではその界面を境にして金属内が電子を奪われたホールによってプラス電位に、溶液側は残 された硫酸イオンによてマイナス電位に分極し
ます。また負極では同時に銅のイオン化によって溶液側がプラスの電位に、金属内がマイナス電位に分極することが起こります。そのどちらの効果が大きいかは私には分りません。
<引用終わり>
#質問1
まず、「Zn板ではその界面を境にして金属内はマイナス電位に、溶液側はプラス電位に分極します。」というように、「分極」という言葉が出てきますが、僕はこれを教科書にでているような水素ガスによる「分極」とは別の意味で、金属板を水溶液に入れる前と比べて、入れた後の方が、金属板や水溶液の電位が変
化していることを表していると理解しましが、それでよいでしょうか。
#質問2
「また負極では同時に銅のイオン化によって溶液側がプラスの電位に、金属内がマイナス電位に分極することが起こります。そのどちらの効果が大きいかは私には分りません。」という部分がありますが、なぜ、負極側で銅のイオン化が起こる可能性があるのでしょうか。負極側は亜鉛板であり、溶液は希硫酸なので、
銅がなぜ負極側に関係するのかがよく分かりません。
その他の部分については、この前のメールにも書きましたが、「水溶液中のイオンは水溶液の電位の片寄りを解消する働きをする」、そして、電池の駆動力は「酸化還元という化学反応である」ということを書いていると思います。
#酸アルカリ電池について
次に、野中さんの資料の中にあった「酸アルカリ電池」です。酸アルカリ電池を理化学事典で調べると、
H2(Pt)|H+|OH−|H2(Pt)
の構成で、H+の濃淡電池であると出ています。
つまり、
2H+ + 2e− = H2
の右に向かう反応が酸性溶液中で、左に向かう反応がアルカリ側で起こって、電池が形成されたものではないでしょうか。
これに比べて、野中さんの資料の図を見ると、電極がH2ではなくAlですから、酸アルカリ電池とはいえないと思います。これはおそらく、Alが酸に溶ける反応よりもアルカリに溶ける反応の方が放出する自由エネルギーが大きいため、Alが酸に溶けて放出した電子よりも、Alがアルカリに溶けて放出した電子の方が「いきおい」がいいのではないでしょうか。林さんも「その方が酸化還元電位が高い」という言い方で書いていると思います。ただ、Alと酸、Alとアルカリの反応の自由エネルギー変化を調べたわけではありませんので、学校で調べて、分かったらまたメールを送ります。
ところで、亜鉛と銅を接触させて希硫酸に入れた場合、なぜ亜鉛が溶ける速度が大きくなるのか、理由をご存じでしたら、教えてください。
先日、学校で鉄と鉛を電圧計のリード線の先につけて、希硫酸中に入れたら、鉄が+、鉛が−で約0.2Vの電池になってしまいました。水溶液を食塩水に換えると、鉄が−、鉛が+で約0.2Vを示しました。食塩水と、希硫酸で鉄と鉛の+、−が逆転したのです。これは、鉄と鉛を希硫酸に入れた場合、鉛の水素過
電圧が大きい(1.0V)ので、鉛では水素が発生しにくく、逆に、水素過電圧の小さい鉄(0.3V)で水素が発生するためでしょうか。
考えられる反応式は
Pb → Pb2+ + 2e−(負極)
2H+ + 2e− → H2(正極)
ただし、正極では
Fe → Fe2+ + 2e−
も同時に起こっているでしょう。
さらに、この場合、鉄が+であると言うことは、ここで鉄が稀硫酸に溶ける速さは、鉄だけを稀硫酸につけたときよりも遅くなっているのでしょうか。鉛の方は、鉄があることによって、稀硫酸に溶ける速さは大きくなっているはずですが。
こんなことを考えていると、2種類の金属を接触させ、水溶液に入れた場合、必ずさびが速く進行するわけではなく、組み合わせられた金属の種類、使う水溶液が酸性か中性かアルカリ性かによって、金属のさびの速さは変わってくるような気がします。