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08A−021
差出人:山本 喜一
送信日:08年10月2日
件 名:フェーリング反応

こんにちは、山本です。
 夏の全国大会でフェーリング反応の発表をしました。しかし、同僚から教えていただいたのですが、最近の教科書では「フェーリング反応」という言葉を使わなくなったそうです。確かに、どれを見ても「フェーリング液の還元反応」などと書いてあります。なぜ「フェーリング反応」という言葉が消えたのかご存じの方はいますか?


08A−022
差出人:伊賀 順子
送信日:08年10月2日
件 名:RE:塩の加水分解

愛知の熱田 伊賀です。

藤田様
 私の解答だけでは怪しくなってきましたので、広島大学の三吉克彦先生に教えていただいてきました。(ただし、私が自分の言葉で書き直していますので、間違いなどがありましたら、私の責任です)
<引用>
@電離定数について
 この値が分からないのであるとすると、AgOHとMg(OH)2の電離定数が大きいとする根拠は何によっているのでしょうか。
<以上>
 やはり、電離定数はないようでした。ここは削除したり書き直したりしているうちに理論が飛躍してしまったところで一番反省しています。ということで、改めて詳しく書いてみます。
 メールで書くと少し式が追いにくいかと思いますが、以下のようになります。ここでは、「ヒドロキソ錯体の生成定数」を使います。(生成定数は、化学便覧の値を使いました)
[(H2O)m]**n+の加水分解定数Kh
  Kh=[[M(H2O)(m−1)(OH)]**(n−1)+][H3O+]/[[M(H2O)m]**n+]
一方、[[M(H2O)(m−1)(OH)]**(n−1)+] の生成定数Kβ
  Kβ=[[M(H2O)(m−1)(OH)]**(n−1)+]/[[M(H2O)m]**n+][OH−]
よって
  Kβ=Kh/[OH−][H3O+]
ここで [OH−]「H3O+」=10**−14より
  logKh=logKβ−14
化学便覧より、AgのKβ=2.30 、MgのKβ=2.58なので
  AgのlogKβ=−11.7 、 Kβ=10**−11.7
  MgのlogKβ=−11.42 、 Kβ=10**−11.42
これより、分子であるヒドロキソ錯体は生成しにくく、[Ag(H2O)4]*+や[Mg(H2O)6]**2+は加水分解しにくいことがわかります。
 加水分解と塩基の強弱については、3ページ目の「5.まとめ」にあるとおりです。(他のヒドロキソ錯体の生成定数を比較のために書いておきます。
  Ca2+=1.46
  Ba2+=0.85
  Cu2+=6.66
  Zn2+=5.04
  Al3+=8.99
  Fe3+=11.17)
<引用>
 それから「Agの水和水の数は2ではなく4だ」ということですが、『コットン・ウィルキンソン無機化学 原書4版』では「水中のAg+イオンは恐らく「Ag(H20)2]+であろう」と書かれています。さらに蛇足ですが、「その配位水はきわめて反応活性であって、塩の水和物は知られていない」と気になる記述があります。
<以上>
 「水和水」は「配位水」のただの書き間違いです。すみません。
 配位水の数については、三吉先生によると「最近の研究では、4であることがわかっている」とのことでしたので、最近わかったのではないかと思います。これについても質問してみたのですが、解答が高度で、私にはうまく要約できませんでした。ただ、Agのように大きいサイズのイオンでは、一般に配位数は大きくなり、Agの場合は、2と4と4以上の配位数の錯体が知られているそうです。
 すみません、これ以上はどなたかご興味をもたれた方、調べてください。
<引用>
A水和アルミニウムイオンについて
 アルミイオンが水分子を配位結合で水和するとした場合、アルミのイオンのどの空軌道に水分子の電子対は収まるのでしょうか。どうも私はアルミイオンは3価の強い電荷で水分子をひきつけているのではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。強い静電気力で水分子がゆがんで重合することで酸性を示すということではいけないでしょうか。以下のような電離式がコットン・ウィルキンソンには書かれてあります。
[Al(H20)6]3+  →[Al(OH)(H20)5]2+ + H+
                         OH
2[Al(H20)6]3+  → [(H2O)4Al/   \ Al(H20)4]4+ + 2H+
                        \  /
                         OH
<以上>
 私が勘違いしていたのですが、遷移金属が配位結合するときにはd電子を使うことが多い、というだけで、d電子が必要ということではなかったようです。Alの場合は、6個のH2Oから6組の電子対が供給され、Al3+の空の4つのsp3混成軌道に4組が供与され、残りの2組はH2Oに所属したままになるそうです。(詳しいことは三吉先生著「化学結合と分子の構造」講談社サイエンティフィックを参照してください)
 どちらかというと素人が「この理論でここまで説明できるんだ」と感動して書いた文章ですので、厳密なことはよくわかっていません。質問してくださった藤田さん、私も改めてわかっていなかったことなどに気づくことができました。ありがとうございました。充分に答えられなかったところもあったと思いますが、機会がありましたら、また深く勉強していきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。


08A−023
差出人:林 正幸
送信日:08年10月6日
件 名:水酸化物の電離定数は計れないか?

こんにちは、林です。
 銀塩やマグネシウム塩の加水分解が話題になっていますが、水酸化物の電離定数を計る方法を検討してみました。以下はブレンステッドの酸・塩基を基にしています。
 希薄な硝酸銀水溶液の場合に加水分解は
    [Ag(H2O)n]^+ + H2O ←→ H3O^+ + Ag(H2O)(n-1)OH
水の配位数はnと一般化しています。右辺の銀の錯体は溶解しているものです(硝酸銀水溶液では AgOH の沈でんは生じません )。この平衡定数は [Ag(H2O)n]^+ の酸としての電離定数で、これを Ka とすると
    Ka = [H3O^+][Ag(H2O)(n-1)OH]/[[Ag(H2O)n]^+]
ちなみに水のモル濃度は一定と見なして式から外しています。他方で Ag(H2O)(n-1)OH の塩基としての電離は
    Ag(H2O)(n-1)OH + H2O ←→ [Ag(H2O)n]^+ + OH^-
その電離定数を Kb とすると
    Kb = [[Ag(H2O)n]^+][OH^-]/[Ag(H2O)(n-1)OH]
したがって
    Ka×Kb = [H3O^+][OH^-] = 10^(-14)  (1)
そして
    pKa = −logKa  pKb = −logKb
とすると
    pKa + pKb = 14
 さて硝酸銀水溶液は中性に近い( [Ag(H2O)n]^+ の電離がわずか)とすると、その [H3O^+] は水の電離
    2H2O ←→ H3O^+ + OH^-
で生成した部分を無視できません。そこで濃度が c[mol/L]の硝酸銀水溶液1Lを想定します。そして電離して b[mol]の H3O^+ と Ag(H2O)(n-1)OH が生成しているとします。また水が電離して d[mol]の H3O^+ と OH^- が生成しているとします。すると
    [H3O^+] = b+d  [[Ag(H2O)n]^+] = c
したがって
    Ka = (b+d)b/c  10^(-14) = (b+d)d
ここで
    B = b+d  したがって  d = B−b
とすると
    Ka = Bb/c  10^(-14) = B(B−b)
前式を b について解き、後式に代入すると
    10^(-14) = B(B−cKa/B)
したがって
    Ka = {B^2 − 10^(-14)}/c = {[H3O^+]^2 − 10^(-14)}/c  (2)
備考:酢酸のように電離定数がもうすこし大きい場合は
     Ka = [H3O^+]^2/c
   となる。つまり水の電離が無視できる。
あるいは
    B = [H3O^+] = √{10^(-14) + cKa}  (3)
となります。こうして c[mol/L]の硝酸銀水溶液のpHを計れば、Ka が、あるいはさらに(1)を使えば Kb が求まることになります。
 具体的に見てみます。c=0.1 として(3)などを使って
  Ka = 10^(-11)なら  Kb = 10^(-3)  [H3O^+] = 10^(-6)    pH = 6
      10^(-12)        10^(-2)         3.3×10^(-7)     6.48
      10^(-13)        10^(-1)         1.4×10^(-7)     6.85
参考:普通は強塩基は、塩基としての電離定数が 10^(-3) 以上のものを指します。
伊賀さんは ヒドロキソ錯体の生成定数(化学便覧のデータ これは Kb の逆数)を使って、[Ag(H2O)n]^+ の Ka(伊賀さんの記号は Kh )を 10^(-11.7) と計算しています(メールは表現ミスがあると思います)。
 マグネシウムイオンの場合は次の反応が関係してきます。
    [Mg(H2O)n]^2+ + H2O ←→ H3O^+ + [Mg(H2O)(n-1)OH]^+
    [Mg(H2O)(n-1)OH]^+ + H2O ←→ [Mg(H2O)n]^2+ + OH^-
マグネシウムイオンの酸としての電離定数は第1段のものに、塩基としての電離定数は第2段のものになります。そして伊賀さんの計算では、Ka は 10^(-11.4) となっています。
 以上、考え間違いがあるかもしれません。検討してください。
 ではまた。


08A−024
差出人:四ケ浦 弘
送信日:08年10月15日
件 名:「盛口襄先生と私」ありがとうございました

 野曽原さん、「盛口襄先生と私」 ありがとうございました。お忙しい中、大変だったことと思います。私は最近、元気がないのです。杉原さんが、病気のことをかいておられますが、私もいくつかの仕事等のストレスから体調がよくなく、先日、胃カメラで胃潰瘍と診断されてしまいました。「お酒をひかえて下さい」「それはー、無理ですね」そんな会話をお医者さんとしました。でも、この文集をじっくり読ませて頂き、皆さんが盛口先生からたくさんのことを学びながら、しっかり自分の世界を歩んでおられるのが伝わってきて、なにやらとてもゆったりした気分になれました。「みんな素敵だなあ!素敵な仲間と素敵な先生がいて幸せだなあ!」そう思え、日常の悩みがとても軽くなったような気がします。甥っ子の結婚式で11月2日に東京へ行きます。翌日盛口先生の都合次第でお見舞いに行こうかなと思っています。皆さんとはまた安房塾でおあいできるかな?


08A−025
差出人:伊賀 順子
送信日:08年11月8日
件 名:RE:水酸化物の電離定数は計れないか?

熱田 伊賀です。
 林先生、すっかり返信が遅くなってしまい、すみませんでした。pHまで求められるようになっていて、便利な式ですね。以下、電離定数についての私の考えを書かせていただきます。
 電離定数をはかる方法ですが、銀のように1価の場合、林先生の方法でも、私が以前書いた文章中の生成定数からでも電離定数を求めることができると思います。(林先生のご指摘のとおり、私の前回のメールには表記ミスがありましたので、直したものを下に載せておきます)
 ただ、マグネシウムなどの2価のイオンになると第2段階(3価の場合は第3段階)の電離定数は求めることができると思うのですが、第1段階の電離定数は求めることができないのではないかと思います。「電離定数」といったとき、第1段階の値が必要であるとすると「求めることができない」となってしまうのではないでしょうか。水酸化マグネシウムの場合、第2段階での電離定数がKb=10^(−2.6)であるので、第1段階はそれより大きいと考えられ、林先生のメールにあるように強塩基は塩基としての電離定数が10^(−3)以上のものであることを考慮すると、水酸化マグネシウムは強塩基である、ということになります。これ以上は、今わかっていることだけでは難しいのではないかと思います。
<10月2日のメールの修正>
 メールで書くと少し式が追いにくいかと思いますが、以下のようになります。ここでは、「ヒドロキソ錯体の生成定数」を使います。(生成定数は、化学便覧の値を使いました)
[M(H2O)m]^(n+)の加水分解定数Kh
  Kh=[[M(H2O)(m−1)(OH)]^(n−1)+][H3O+]/[[M(H2O)m]^(n+)]
一方、[[M(H2O)(m−1)(OH)]^(n−1)+] の生成定数Kβ
  Kβ=[[M(H2O)(m−1)(OH)]^(n−1)+]/[[M(H2O)m]^(n+)][OH−]
よって
  Kβ=Kh/[OH−][H3O+]
ここで [OH−]「H3O+」=10^(−14)より
  logKh=logKβ−14
 化学便覧より、AgのlogKβ=2.30 、MgのlogKβ=2.58なので
  AgのlogKh=−11.7 、 Kh=10^(−11.7)
  MgのlogKh=−11.42 、 Kh=10^(−11.42)
これより、分子であるヒドロキソ錯体は生成しにくく、[Ag(H2O)4]^+や[Mg(H2O)6]^(2+)は加水分解しにくいことがわかります。加水分解と塩基の強弱については、3ページ目の「5.まとめ」にあるとおりです。(他のヒドロキソ錯体の生成定数の対数(logKβ)の値と第2または3段階の電離定数Kbの値を比較のために書いておきます。
  Ag+=2.30(第1段階の電離定数Kb=10^(−2.30)
  Mg2+=2.58(第2段階の電離定数Kb=10^(−2.58)
  Ca2+=1.46(第2段階の電離定数Kb=10^(−1.46)
  Ba2+=0.85(第2段階の電離定数Kb=10^(−0.85)
  Cu2+=6.66(第2段階の電離定数Kb=10^(−6.66)
  Zn2+=5.04(第2段階の電離定数Kb=10^(−5.04)
  Al3+=8.99(第3段階の電離定数Kb=10^(−8.99)
  Fe3+=11.17(第3段階の電離定数Kb=10^(−11.17))
<以上>


08A−026
差出人:林 正幸
送信日:08年11月18日
件 名:「デジタルの世界」

こんにちは、林です。
 9月のおわりに母が転倒骨折し、1ヶ月あまりして硬膜下血腫(転倒時に頭を打ったことが原因である可能性が高い)の手術をし、この間に介護認定を申請したりで、落ち着かない毎日が続いています。
 伊賀さん、水酸化マグネシウムの第1段の電離定数はもちろん求まりません。しかしこの塩の加水分解による液性は、第2段の電離定数が主役になるわけです。そしてご指摘のとおり第2段も強塩基の領域になるので、とりあえずは決着できますね。
 でんきの科学館から来年の春に、小学生(3〜6年)向けの講座を依頼され、どうせなら新しいことをと「デジタルの世界」を体験させるプランを考えました。世の中これだけデジタル化されておりながら、それが何物かまったく学ばないのはおかしいと思ったからです。現時点では具体的な内容は書けませんが、実験装置を数種組 み立ててみました。またこの講座はものを作って持ち帰ることになっているので、そのおもちゃも作りました。  その勢いで、ケニスから出ている3原色発光ダイオードを手に入れたので、そのまま使うのでなく抵抗を加減してかなりきれいに加法混色できる装置を作りました。これは赤、緑、青を同じ光度で混ぜるだけでなく、赤と緑半分で橙色、赤と青半分で紫色などもつくることができます。さらに皆さんご存知の人が多い米沢さんから、 北を示して光るフリスビーの新聞記事を同封して、「林さん、作れないか」という手紙がきました。これくらいならと思い、「方位ブンブンごま」を作りました。フリスビーに搭載するほど軽量化するのは簡単ではなかったからです。
 他方で「ヒトゲノムマップ」(加納著、京大出版)を読みました。著者は「一家に1枚ヒトゲノムマップ」を作った人で、これが付録になっています。この本は発展著しい遺伝学の全体像が学習でき、ごちゃごちゃになっていた私の頭を整理できたよい本であると思います。
 先進科学塾がらみでは、まんじゅうの箱を使った波長が簡単に計測できる分光器、公転で地軸の向きが変化しないことを示す地球ごまを使った装置を製作しました。そして後者に関連して、剛体の回転の運動方程式を再勉強しました。これは角運動量ベクトルを時間で微分したものは回転のモーメントベクトル(トルクベクトル)に 等しいというもので、質点の運動方程式である、運動量ベクトルの時間微分が力に等しいというのに対応します。分かってしまうと歳差運動などが簡単に理解できます。
 またこのところ、大学時代の物理化学の教科書を読み返して(何度かそうしているのですが)、やっと「バンド理論」が飲み込めたように思います。金属結合や電導性がすっきりし、2年前につくった講座プラン「原子はどのように結合するか」をあちこち修正しました。
 母を毎日病院に見舞いながらも、こんな風に理科と理科教育を楽しんでいます。ただし化学的な実験もしなくては・・・。
 ではまた。


08A−027
差出人:林 正幸
送信日:09年12月18日
件 名:電池の電解質濃度

こんにちは、林です。
 母はようやく22日に退院の運びとなりました。病人を抱えると大変です。どうやら退院後の介護態勢も整ってきました。
 濃淡電池に取り組んでみようと、塩化カリウムの塩橋をつくりました。1mol/Lの水溶液を寒天(1%相当を加える)で固めます。クッキングペーパーを芯にすると、厚さが2,3mmの扱いやすいものができました(はさみで切ることもできる)。
 これはセロハンの代わりになるので、ダニエル型ペーパー電池(クッキングペーパーは1枚ずつ 亜鉛側は塩化ナトリウム水溶液)を組んでみると、これは首尾よく豆電球が点灯し、同時にソーラーモーターがブンブンまわりました。性能はアップしているようです。
 濃淡電池の方はすぐにはうまく行きませんでした。そこでダニエル電池の硫酸銅水溶液の濃度を変える実験をしてみました。飽和、その1/10、その1/100とし、硫酸亜鉛水溶液は5%です。
 今日は次のようにしました。クッキングペーパーを4×8cmに切り(金属板からはみ出さない 水溶液が浸み出さない)、3枚重ねたもの(塩橋への拡散で薄まることを妨げる)を6セット準備します。それぞれに3種の濃度の硫酸銅水溶液8mLを浸み込ませ、残り3セットには硫酸亜鉛水溶液を浸み込ませます。塩橋も3枚準 備します。銅板と亜鉛を板の上に置き、予めデジタルテスター(入力抵抗が大きく、計測時の電流は0.1μA以下と少ない)につないでおきます。これにペーパーのセットを載せ、両者を塩橋でつなぐように被せて電圧を計測しました(次に移るときは金属板などをティッシュペーパーで拭き取ります)。結果は
     飽和    1.081V
    1/10   1.060
    1/100  1.037
となりました。濃度の影響は2価のイオンの場合は、常温では10倍ごとに0.028Vの電圧差が理論値です。
参考:ΔE = RTln(c1/c2)/nF
どうやらそれなりの数値が出たと言えるでしょうか。
 続いて2枚の銅板と硫酸銅水溶液で濃淡電池にもチャレンジしてみました。クッキングペーパーを4セット準備し、2セットに飽和溶液を浸み込ませ、残りは1/10と1/100です。飽和溶液を基準とし(正極になる)、同じように実験してみました。
    1/10   0.026V
    1/100  0.042
後者はしばらくするとどんどん電圧が上がるようになります(どうしてかな?)。
 それならと亜鉛板と硫酸亜鉛水溶液で試してみたのですが、こちらは安定せず、プラマイが逆転したりもしました(前に似た実験をしたときはもっとひどかった)。
 電池の起電力は金属板の表面の状態がかなり影響するようです。そこで上のように同じ金属板を使い、電解質水溶液の方だけを取り替えるようにしています。塩橋も使い回すと始めの水溶液が浸み込んでいて影響すると思われます。
 濃度が1/100は薄すぎて安定性が失われるように思われます。今度実験するときは、濃度を1/5と1/25にしようかと考えています。濃度は5倍ごとなら0.020Vの電圧差になるはずです。
 ではまた。


08A−028
差出人:
送信日:09年1月8日
件 名:非金属だけの電池

こんにちは、林です。
 遅くなりましたが、堀さん、アルケ通信の発送ご苦労さまでした。
 さて新しい年を迎えましたが、皆さん、いろいろな計画があることでしょう。私は春の先進科学塾で「電池を作って仕組みを調べてみよう(仮題)」という講座を開くべく、動き始めました。電池は「負極で電子を与える反応が、正極で電子を奪う反応が起こるようにする」ことと、「電池内部の両極間を電導性にする」ことの2つ が基本です。
 今日は非金属だけを使う電池のアイデアを試してみました。一発成功で、苦労がありませんでした。板の上の炭素板にクッキングペーパーを載せて硫化ナトリウム水溶液を浸み込ませ、昨年末に紹介したペーパー入り寒天塩橋(塩化カリウム水溶液)を被せ、またクッキングペーパーを載せてヨウ化カリウム水溶液を浸み込ませ、ヨ ウ素を振りかけて炭素板を被せるとでき上がり。これで豆電球も光り、モーターもまわります。反応は
  負極:S^2- ―→ S + 2e^-
  正極:2e^- + I2 ―→ 2I^-
となります。実際には正極には黄色の沈でんは生じないので多硫化物になると考えられます。
  Na2S + xS ―→ Na2S(1+x)
またヨウ素も三ヨウ化物イオンになって反応するとも考えられます。
  I2 + KI ―→ kI3
反応式から考えると、この電池はある程度充電もできるようにも思われます(試してみます)。
 安房高式燃料電池は、電極のめっきは事前に済ませておいて、他の電池と同じように、その電極を使って電池を組み立てることを考えています。時間の節約ができるからです。電極はくり返し使える形にしました(ちょっと工夫)。
 次には反応するのが鉄だけの電池のアイデアを試してみるつもりです。
 ではまた。


08A−029
差出人:山本 喜一
送信日:09年1月12日
件 名:浸透圧

こんにちは、山本です。
 4月に転勤した学校で、化学部の生徒が実験してまとめた「ギ酸によるフェーリング液の還元反応と銀鏡反応」という論文が、読売新聞社主催の日本学生科学賞において旭化成賞という賞に入りました。ギ酸はフェーリング液を還元しないという結論を出したのですが、要約はアルケの資料として送りますので目を通してみてください。なお、学校のHPに関係する記事がありますので、ご覧下さい。
  http://nc1.ice.or.jp/kashiwachuo-h/modules/menu/main.php?page_id=1&op=change_page
 安房塾で、峰島さんが浸透圧について、どのように分子のようすを説明するのか分からないといって、林さんと私と3人であれこれ考えたことがあります。そのときはこれといった結論が出なかったのですが、その後、次のように考えてみました。
 半透膜をはさんで溶液と溶媒が同じ高さで接しているとき、半透膜を通過する分子数は、溶媒から溶液へ向かう方が多いので、溶液の液面はだんだん高くなる。すると、溶液の下部にはより大きな重力がかかっるようになるので、分子間距離が小さくなる。すると、分子どうしの反発力も強くなるので、半透膜の穴を通って溶媒側へ移動する分子のいきおい(?)が強くなる。こうして、溶液から溶媒へ向かう分子数と溶媒から溶液へ向かう分子数が同じになって平衡状態になる。
 いかがでしょうか。皆さんの考えをお聞かせ下さい。


08A−030
差出人:林 正幸
送信日:09年1月14日
件 名:浸透圧、そして鉄だけの電池

こんにちは、林です。
 山本さん、「ギ酸によるフェーリング液の還元反応と銀鏡反応」は安房科学塾のレポートとして見せてもらいましたが、綿密な内容であり山本さんの指導がしのばれます。
 浸透圧をどう捉えるか。そのときの議論で、物質が変化する勢いあるいは傾向(私は自由エネルギーあるいは化学ポテンシャルを意味する高校生向きのことばとして「勢い」を使ってきましたが、イオン化傾向という用語に「傾向」があることに気付き、これは逃散傾向などと専門用語でも使われているので、現在ではこちらを使うことにしています)について、濃度の影響はイメージしやすいのですが、「圧力の影響は濃度と同等」では済まされないように感じました。私の安房科学塾のレポートでは「物質の状態では温度と共に圧力を」と主張しながら、液体と固体の圧力のイメージははっきりできていません。レポートに書いたのは次のようでした。
<講座プランより>
  「圧力はまわりが分子を押し込めている程度を示す」
     (分子がまわりから押し込められている程度)
と言える。視点を変えれば
  「圧力は分子がまわりを押し返している程度を示す」
     (まわりが分子から押し返されている程度)
とも捉えられる。
<以上>
 科学塾での議論は、分子の衝突による圧力と重力による圧力は矛盾しないということから始まりました。気体では分子の上下方向の衝突は、上側の分子が重力で加速され、下側の分子が減速されて起こる。したがって下方の分子の速度が大きくなり、衝突による圧力もその分だけ大きくなる。しかしそれなら下方ほど温度が高いということになる。上下に長い等温系を考えると、上方では熱エネルギーを得て温度が下がらないように、下方の分子は熱エネルギーを放出して温度が上がらないようになっている必要がある。それなら上下の圧力差をどう説明するか。
 下方の分子は重力によって押し込められているはずである。そのイメージはどうなるか。上方の分子は重力のよって加速されるので下方に侵入しやすく、下方の密度が高くなる。つまり飛行速度は同じに調節されても個数が多くなるので圧力が高くなる。逆に下方の分子は重力によって減速されるので上方に侵入しにくく上方の密度が小さくなり、圧力が低くなる。つまり重力のよる加速と分子密度の関係を物理的につじつまを合わせることが、分子の衝突による圧力と重力による圧力が矛盾しないことを説明できるように思えます。これはいつか検討してみたいです。
 浸透圧に移り、圧力の影響をどう説明するか。上の検討のように等温系では速度ではできません。山本さんは
<引用>
・・・溶液の液面はだんだん高くなる。すると、溶液の下部にはより大きな重力がかかっるようになるので、分子間距離 が小さくなる。すると、分子どうしの反発力も強くなるので、半透膜の穴を通って溶媒側へ移動する分子のいきおい(?)が強くなる。
<以上>
と言うわけですね。気体なら分子密度で話ができるのですが、液体や固体はどうでしょうか。これは圧力概念を液体や固体に拡げようとするときの困難です。分子間力のグラフを考えると、分子どうしはめり込んでいるときは反発力ですが、もう少し離れると引力になり、それがある距離で事実上ゼロになります。そして圧力とは、分子どうしが離れると別の分子に衝突してポテンシャルカーブの手前で跳ね返されることに係わるのだろうか。それが山本さんが言う「分子どうしの反発力」になるのかな。あるいは私が書いた「圧力は分子がまわりを押し返している程度を示す」につながるのかな。良さそうにも思えるが、気体の場合との整合性はどうなるのだろう・・・。今日はここまでにしておきます。
 話は変わって、「鉄だけの電池」もあっけなく一発成功でした。炭素板にクッキングペーパーを載せて塩化鉄(V)水溶液を浸み込ませ、例の寒天塩橋を被せ、さらにクッキングペーパーを載せて硫酸鉄(U)水溶液を浸み込ませ、鉄板が無かったので鉄粉を振りかけて炭素板を被せました。するとやはり豆電球が光り、もちろんモーターがまわるのでした。
 以前に書いていた濃淡電池(銅と銅イオン)も、クッキングペーパーの枚数を5枚と増やしたら、安定な結果が得られるようになりました。電極と接している部分の濃度変化を補うことが重要かな。それに空気中の酸素の影響もあるように思われました。
 ではまた。


08A−031
差出人:山本 喜一
送信日:09年1月25日
件 名:大気圧と分子の運動

こんにちは、山本です。
 安房塾での峰島さんと林さんと私との議論の続きです。上方にある気体分子が重力によって加速されながら落ちてきて、下にある分子に衝突すると、衝突された分子はそれだけ加速されて落ちることになる。そして、その分子がさらに下にある分子に衝突すると、衝突された分子はより加速される。つまり下にある分子ほど温度が上がることになってしまう。これはおかしいはずだ。という議論です。
 これを次のように考えました。この考えが正しければ、下にある分子ほど速度が大きくなるということはなくなるとおもいます。
 大気の分子が存在する最高の高さをh0、それより低いところをh1、さらに低いところをh2・・・とします。そして、最も高いところに存在する分子はh0で速度0、そこから重力によって落ちてきて、h1の地点で大気の分子と衝突し、跳ね上げられて再びh0まで上昇する運動を繰り返しているとします。次に、h1とh2の間にある分子は、h1で上から落ちてきた分子と衝突し、h2まで重力で加速されながら落ちてきて、h2で衝突して跳ね上げられ、再びh1まで上昇する運動を繰り返しているとします。
 ここで、上空ほど分子密度が小さいことを考え合わせます。地上からh0までの細長い円筒のようなものを考え、h0とh1間を運動している分子は1個、h1とh2の間には2個、h2とh3の間は4個・・・の分子があるとします。そして、それぞれの分子はまったく同じ運動をしているとします。つまり、h2とh3の間の4個の分子は同時に上昇し、同時に下降していると考えるわけです。
 ちょっと無理のある仮定かも知れませんが、上のようにすると、次のようなことが言えるのではないでしょうか。  h0で速度0の1個の分子が、重力で加速されながら落ちてきて、h1で速度vに達したとします。その地点でh1・h2間を往復している2個の分子と同時に衝突します。このとき、h0・h1間を運動している分子はvで衝突し、−vで跳ね上げられますから、運動量の変化は−2mv。したがって、h1・h2間を往復している2個の分子には合わせて2mvの運動量を与えられることになります。これは1個あたりにすると、mvですから、−v/2で上昇してきて衝突し、v/2で落ちていったことになります。
 つまり、h0からh1で気体分子の速度はvになりますが、h1で2倍の分子と衝突することによって、下にある分子の速度は半分になるわけです。
 h1・h2間を運動する2個の分子の速度はh1でv/2ですが、重力で加速され、h2でvに達するとします。その地点で2倍の4個の分子と衝突して跳ね上げられれば、4個の分子の速度はv/2になります。その分子が加速されながら落ちてきてh3で8個の分子と衝突すると、8個の分子の速度はv/2になる・・・。こうして、地上まで分子の速度は変わらないままで、分子数が増えることによって圧力が大きくなることが説明できると思います。
 いかがでしょうか。


08A−032
差出人:林 正幸
送信日:09年1月28日
件 名:気体の圧力

こんにては、林です。
 今日は日差しも暖かかったので、春を呼ぼうとたくさん花を買ってきて植えました。回復してきた母も私に同行し、庭が華やぐのを楽しんで眺めていました。
 山本さんのイメージ、分かりますが問題が残っています。そもそも議論のスタートは気体分子の飛行速度が大きくなっては、温度が上がることになってしまうということです。h1、h2など各区分で速度が2倍になってはまずいと思います。分子数が増えることでカバーする点は了解です。
 山本さんのメールを見て、2,3日数式をひねくり回していました。そして答が見えたように思います。説明したいのは、分子運動から捉えた圧力と重量から捉えた圧力が同等であることです(とりあえず気体について)。
 底面が単位長の正方形の高い大気の柱を考えます。圧力は下ほど高いわけですが、温度は一定であっても変化していても構いません。この柱をdhの幅に細かくスライスします(図が描けなくてごめんなさい)。そしてあるスライスに注目します。この中の分子は上下方向か縦方向か横方向に飛行していると単純化します。その個数の比率は、上下方向を1とすると、縦方向と横方向はそれそれdhになるべきです。このスライスの中の分子数密度(単位体積あたりの分子数)を α とすると、上下方向の分子数は αdh/(1+2dh) です。しかし巨視的にみると 1 >> 2dh ですから
    αdh/(1+2dh) ≒ αdh(1−2dh) ≒ αdh
になります。これから上下方向のみに注目します。
 この中の分子はその温度に対応してある速度 v で飛行しているとします。ただし重力の影響を考慮するために、上面には v で衝突し、下面には重力で加速されて v+dv で衝突するとします。それでも巨視的にみればどの分子も v で飛行していることになります。そして分子が上から下に、あるいは下から上に移動するする時間はdtとします(時間に注目するのが重要でした)。分子の質量を m とします。
 そして「力積は運動量の変化に等しい」を使います。
    Ft = Δmv
上面に対する単位時間あたりの力積つまり圧力 P は
    P = 2mv×(1/2dt)×αdh
下面に対する単位時間あたりの力積つまり圧力 P+dP は
    P+dP = 2m(v+dv)×(1/2dt)×αdh
つまり圧力増加 dP は
    dP = 2mdv×(1/2dt)×αdh
となります。そして dv は重量加速度を g とすると
    dv = gdt
ですから、上式の代入すると
    dP = 2mgdt×(1/2dt)×αdh = mg×αdh
となり、これはスライスの中の全重量です。これで説明は一区切りです。
 さてそれでは1つ下のスライスではどうなるでしょうか。もし温度が変わらないとすると、飛行速度は相変わらず v です。そこで山本さんのイメージのように分子数密度を dα だけ増やして考えます。温度が変化していくとしたらどう考えるか。気体の状態方程式は次のように表せます。
    P = nRT/V = kαT
k はボルツマン定数です。したがって圧力の全微分は
    dP = k(Tdα + αdT)
です。dP と T および α と dT が決まっているので、上の式が成り立つように dα を設定すればよいわけです。
 さて浸透現象において「圧力がどのように水分子を透過させやすくするか」の問題は片づいていません。これは液体や固体の分子運動論的な(ミクロな)イメージアップにつながるので重要なのですが、まだ私は頭がはたらきません。
 ではまた。


08A−033
差出人:岡田 晴彦
送信日:09年2月2日
件 名:紫色(?)の雪

名: ご無沙汰しております。名古屋の岡田です。
 職場の国語の先生から質問されて答えられませんでしたので、教えていただければ助かります。国語総合の教材の宮沢賢治著「なめとこ山の熊」のなかに「雪はあんまりまばゆくて燃えているくらい、小十郎は目がすっかり紫の眼鏡をかけたような気がして登っていった。」とあります。「雪が紫色に見えることがあるのですか」と聞かれました。「分かりませんので、調べてから報告します」と返事をし、昼食時に数人の同僚にこの話をしました。
 若い美術の先生が「オレンジ色のゴーグルをはめてスキーをして、ゴーグルを取ったら、雪が紫色に見えました。不思議に思って調べてみたら、目のレンズは白色光を通すように調整する機能があり、オレンジ色の光がレンズを通過するときに、紫色の光を多く通過させるようにはたらくので、ゴーグルを取ると、紫色の光だけが多く通過するので、雪が紫色に見えたらしいです。このことと関連がありますかね」と言われ成るほどと思いました。
 「なめとこ山の熊」のなかにあるように、まばゆい光のなかで、どのような理由で白い雪が紫色に見えるのか、ご存じの方がみえましたら、教えてください。


08A−034
差出人:高橋 匡之
送信日:09年2月3日
件 名:RE:紫色(?)の雪

岩手の高橋です。
 宮澤賢治さんのことなので、少しだけコメントします。光の感じ方って、いろいろあるので、何ともいえませんが。私自身は、雪が「紫色」に見えたことはありません。春スキーなどやっていて、あまりにも天気が良いと雪が太陽の光を反射して、キラキラ輝いて見えます。その色は、白さというよりも、太陽光の乱反射を受けている感じです。あまりの紫外線の強さを、「紫」と表現したのじゃないかなという気がするのですが。
 私も、もう少し調べてみます。


08A−035
差出人:竹野 徹美
送信日:09年2月3日
件 名:RE:紫色(?)の雪

**高・竹野です。

「雪はあんまりまばゆくて燃えてゐるくらゐ
小十郎は眼がすっかり紫の眼鏡を
かけたやうな気がして登って行った。」

ここで賢治は、主人公の小十郎に「雪が紫色に見えた」…とは表現していません。光の反射が眩しくて目を細め、視界が暗くなっている状況を、
「まるで目が見えにくくなって
盲人用の紫の眼鏡をかけてゐるようだ」
…と表現したのでしょう。
 そして、このすぐ後に、次のような表現があります。

「やっと崖を登りきったらそこはまばらに栗の木の生えた
ごくゆるい斜面の平らで
雪はまるで寒水石といふ風にギラギラ光ってゐたし
まはりをずうっと高い雪のみねがにょきにょきつったってゐた。」

ここでは雪に反射する光を直接的に表現しているので、ご指摘の部分は、後の表現との重複を避けて、比喩を用いたのではないかと思われます。


08A−036
差出人:岡田 晴彦
送信日:09年2月5日
件 名:紫色(?)の雪

高橋さん、竹野さん
 ていねいなアドバイス、ありがとうございました。おかげさまで、雪が紫色に見えることはないことが分かりました。
 「紫色の眼鏡」については、質問されたときから分かりませんでしたが、いまでもどういう意味か分かりません。小説は解釈が難しいですね。私は、大学受験の勉強をしているときから、大学入試の問題に小説を出題することに疑問を感じています。


08A−037
差出人:竹野 徹美
送信日:09年2月6日
件 名:RE:紫色(?)の雪

竹野です。
  http://www.geocities.co.jp/Technopolis/4819/body5.html
繰り返しになりますが、賢治は、ここで、眩しくてまともに目を開けられず、暗くなった視界の状況を表現しており、 「紫の眼鏡」とは、上記リンクにある「遮光眼鏡」のことではないかと、私は、考えています。


08A−038
差出人:岡田 晴彦
送信日:09年2月6日
件 名:紫の眼鏡

竹野さん、高橋さん
 お礼をひとつ忘れていました。国語の先生におふたりからのメールの内容をお知らせしたところ、大変に感謝しておられました。
 そして、竹野さん、さらに分かりやすいメールありがとうございました。竹野さんのお考えがやっと分かりました。これも国語の先生に伝えます。


08A−039
差出人:林 正幸
送信日:09年2月20日
件 名:圧力の意味

こんにちは、林まさです。
 久し振りですが、皆さん、いかがお過ごしですか。
 私のとって圧力の概念は昨年の大きなテーマでしたが、今年まで延長戦になってしまいました。物質の状態では温度と共に圧力が重要です。また化学平衡では圧力は濃度に近い概念でした(過去形で書きました)。実際に化学ポテンシャルは
    μ = μ0 + PTln(a)
と表されますが、活量 a はモル濃度で代用されたり、圧力で代用されたりします。しかし浸透現象において、半透膜を挟んで純水と水位の上がったショ糖水溶液が拮抗するとき、ショ糖水溶液側は、水のモル濃度が小さいことによる化学ポテンシャルの不足を、圧力が大きいことによる化学ポテンシャルの増分でカバーしていると捉えます(浸透現象における平衡が定温定圧系として捉えられるのか疑問がありますが、物理化学の教科書はこのような書き方をしています)。となると圧力とモル濃度は本質的に異なる概念になってきます。
 私はモル濃度を、1L当たりに物質がどれくらいの量だけ存在するか、つまり密度に近い概念として捉えます。そして気体の場合は、圧力が高いほどそれに比例してモル濃度が高いとします。つまり圧力は濃度に近い概念です。しかし液体ではあるいは固体ではどうでしょうか。圧力が10倍になっても、1L当たりの物質の量はほとんど変わりません。と言うことは、圧力が濃度に近いのは限られた条件の下での話であり、本質的に似ているのではないことになります。
 私は、「物質の状態」(講座プラン、前回のアルケ通信07A−4の資料)において、次のように捉えることにしました。
    「分子がまわりから押し込められている程度」
あるいは
    「分子がまわりを押し返している程度を示す」
すると、それぞれの物質の濃度は様々ですが、圧力はどの物質も同じであると捉えています。混合気体の分圧は特殊な概念であり、全圧こそが普遍性があると考えます。
 この圧力のミクロのイメージをどう捉えるか。ここで1月12日の山本さんのメールがヒントになりました。
<引用>
 半透膜をはさんで溶液と溶媒が同じ高さで接しているとき、半透膜を通過する分子数は、溶媒から溶液へ向かう方が多いので、溶液の液面はだんだん高くなる。すると、溶液の下部にはより大きな重力がかかっるようになるので、分子間距離が小さくなる。すると、分子どうしの反発力も強くなるので、半透膜の穴を通って溶媒側へ移動する分子のいきおい(?)が強くなる。こうして、溶液から溶媒へ向かう分子数と溶媒から溶液へ向かう分子数が同じになって平衡状態になる。
<以上>
私は始めはすっきりと受け止められませんでした。しかし上に書いたように頭を整理し直すと、「分子どうしの反発力」でよいと納得しました。その中身ですが一見すると、温度に関係する熱運動が反発力の源のように思えます。しかし熱運動の激しさが同じでも(温度が同じでも)、圧力は様々な値を持ちます。分子間の力は、近づくと引力が大きくなり、さらに近づくと小さくなり続いて反発力に変わって急激に大きくなります。この反発力の領域のどこまで分子どうし踏み込むか、これが圧力に関係します。そのとき受ける反発力と同じ力で分子はまわりを押すことになります。分子どうしがギュウギュウに押し込められると分子間の力の様子は変化しますが、事は同じです。熱運動とは別に、「分子どうしの反発力」があると考えられます。温度とは別に、この力が圧力として化学ポテンシャルを大きくするわけです。
 私が「物質の状態」で考えた圧力の概念は、このような思考を経て深まり、結果としてよい提案になっていたと思えます。もうすこし吟味も必要でしょうが、化学平衡における圧力の影響(講座プラン)も、時間を見つけて書き直してみようと考えました。
 ではまた。


08A−040
差出人:林 正幸
送信日:09年2月24日
件 名:圧力の意味(その2)

こんにちは、林です。
 圧力について私の頭を整理するために、もうすこし書いてみたいと思います。気体の場合は、分子どうしの位置エネルギーは、衝突のときだけ大きくなります。そして熱運動の並進の運動エネルギーと位置エネルギーがやり取りされます。圧力は体積に反比例し、ミクロにはそれぞれの分子が壁にぶつかる頻度に関係します。分子は運動量の変化で壁に衝撃力を与えますが、温度が同じ(運動量が同じ)でも、頻度が小さくなれば圧力は小さくなります。
 液体や固体ではどうでしょうか。温度が一定としてこの場合も体積は圧力に関係します。しかし気体ほど顕著ではありません。むしろ分子どうしの位置エネルギーに注目するのが分かりやすいように思います。圧力が高くなり、分子が「押し込められる」ほど、位置エネルギーは大きくなっていきます。これと熱運動の運動エネルギー、この両者が圧力を支配していると考えてはどうでしょうか。そして気体では位置エネルギーの項は消えている・・・。私たちは気体の分子運動論が印象的で、運動エネルギーによる圧力に偏り過ぎているのではないでしょうか。(前回のメールでは私の頭の中ははっきりしていなかったようです。)
 さらに気体にもどって、衝突のときの位置エネルギーを運動エネルギーに託して壁に圧力を掛けている・・・。とすると、圧力は本質的には位置エネルギーであると考えることはできないでしょうか。となると、圧力にさらに新しい概念を加える必要があるのか・・・?
 ではまた。


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