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07A−061
差出人:杉山 剛英
送信日:08年2月23日
件 名:粒子概念
杉山剛英@札幌 です。
**先生の情報は興味深いです。今月本校で理科研修会を開催したときに(87名も来てくれました)私が本やインターネットを参考にして「フィンランドの理科教育」という講演もどきをしました。とっくに知られていることですが、その調べる過程で学力世界一のフィンランドの小学校理科教育に驚かされました。
まず、小学校4年までに1冊200ページ以上ある理科の教科書を6冊やること。(もちろん選択)日本式の試験はなく、論述を求められること。そのためには正しい知識と経験が必要なので、生徒にはその材料をたっぷり与えること。生徒は「勉強する」とは言わず「読む」ということ。小学校5年で原子の構造やイオンが出てくることなどがわかり、当然だよなぁ。と思いました。日本は「粒子」概念がないまま「溶ける」ことへの考察とか気体の膨張とかやるもので、生徒の考えがとんでもない方向に行ってしまい、教師がそれを修正もしない事例が多々あると聞きました。きれいな音楽を聴かせるときれいな結晶が出来る、などという科学ではなくエハラやホンコワみたいなエセ宗教的なかんじにもなってるようです。私もごくたまに文科省の方と話す機会がありましたが、その印象は「彼らはかなり正しく現状を認識している」ということです。しかし、それが教育再生無責任素人会議やらの色眼鏡政策や不見識なトップ官僚のゴリ押しでおかしくなっているのかなぁとも思いました。小学校の理科教育の改善は急務だと思います。高校では手遅れです。95年に教育改革をしたときフィンランドの教育相は29才、首相は35才。5年後のPISA2000で結果を出しています。しかるに日本は・・・・
高校での○○基礎2単位×3科目必修で喜んでいる場合ではありません。2単位でどんな理科の面白さを伝えるつもりなのか。だれも話せるようにならない英語を削減して、私の高校生時代の様に3単位×4科目必修にしなければ科学技術はアジアの同胞に抜き去られると思います。
07A−062
差出人:山本 喜一
送信日:08年3月4日
件 名:ネツリキ問答
こんにちは、山本です。
時々、熱力学に挑戦してみようかと思うことがあります。今回はブルーバックスの「熱力学で理解する化学反応のしくみ」という本を読んで、そんな気持ちになりました。この本は、場合の数とエントロピーの関係について丁寧な解説があります。
授業も終わって期末テストの時期になり、多少余裕が出てきましたので、自分の頭で理解したネツリキを記録に残そうと思いました。これを続けるには、MLで勉強した内容を送る義務を自分に課すのが一番良いと思い、第1回目を送ることにします。
私の原稿につきあっていただける方がいましたら、間違いや勘違いなどを見つけていただければ幸いです。よろしくお願いします。
1.エンタルピーのイメージ
僕:ネツリキには何度か挑戦したけれど、そのたびに挫折して、なかなか極められないよ。
君:いろいろな数式が出てくるし、エンタルピーとかエントロピーはイメージしにくいから、実体がつかめないんだと思うよ。なるべく頭の中に絵や図が浮かぶように解説してみようか。
僕:ありがたい。是非お願いするよ。
君:じゃあ、まずエンタルピーからだ。これは熱力学の第1法則だね。
僕:エネルギー保存の法則というやつか。
君:そうだ。どんな物質でも何らかのエネルギーを持っている。そのエネルギーを内部エネルギーUとしよう。
僕:内部エネルギーの正体は?
君:物質が持っている化学エネルギーや分子の運動エネルギーなどさ。でも、熱力学では物質の状態が変わったときのエネルギーの差が問題だから、内部エネルギーの中身についてはあまり立ち入らなくてもいいと思うよ。
僕:とにかくUというエネルギーを持っているわけだね。
君:物質が外からエネルギーをもらうと、内部エネルギーが増える。増えた分をΔUとしよう。最初の内部エネルギーをU_1 、エネルギーをもらった後をU_2とすると、次のようになる。
ΔU = U_2 − U_1

僕:なるほど。
君:物質がもらうエネルギーは熱と仕事のことが多い。図1のように、注射器に気体を閉じこめて、この気体にエネルギーを与えるとしよう。熱を与えるには、まわりから加熱すればいい。仕事を与えるには、ピストンを押して圧縮すればいい。
僕:ピストンを押すと、気体の内部エネルギーが増えるの?
君:そういうことだ。圧力Pと体積Vを掛け算しよう。圧力の単位をパスカルつまりJ/m^3 として、体積をm^3 とすると、計算結果にはJという単位がつく。だから、PVはエネルギーになるわけだ。
僕:なるほど。
君:注射器内の気体が受け取った熱をQ、受け取った仕事をWとすると、内部エネルギーの変化量ΔUはこうなる。
ΔU = Q + W ・・・ @
熱力学では、注目しているものが獲得したエネルギーには+の符号を付け、放出したエネルギーには−をつける。ここでは気体に注目しているから@のような式になるんだ。ところが、本によっては気体が外にした仕事、つまり気体が放出した仕事のエネルギーを+Wとしているものがある。この場合、もらった仕事は−Wになるから、ΔU = Q − W と書いてある。この辺も学ぶ側からすると混乱する一因になっているんだが、最近では、もらったエネルギーを+にする書き方が増えてきた。
僕:要するに、着目している物質のエネルギーが増えれば、プラスのエネルギーをもらったということだね。
君:そういうことだ。ところで、気体を圧縮したときもらうエネルギーPVは次のように計算される。熱力学では、エンタルピーやエントロピーなどの変化量は、
(変化後の状態)−(変化前の状態)
で求める。化学反応は一定の圧力で起こることが多いので、圧力は一定のPとし、変化前の体積をV_1 、変化後をV_2 とすると、気体が受け取ったエネルギーは
PV_2 − PV_1 = P(V_2 − V_1 )= PΔV
となる。(図2)

しかし、ここで大事なことがある。気体を圧縮すると、
V_2 < V_1
になるから、PΔVの値はマイナスになってしまう。気体は圧縮されてエネルギーをもらっているから、これではまずい。そこで、−PΔVをもらったエネルギーとして表す。
僕:マイナスがついていても、値としてはプラスになるわけか。
君:そういうことだ。それから、図を見るとピストンが押し込まれているのに圧力が変化しないのに違和感があるかも知れない。これは例えば注射器内で次のような反応が起こっていることを想定している。
N_2 + 3H_2 = 2NH_3
この反応が右に進めば、全体の物質量が減って圧力が小さくなる。そして、外からの圧力Pで押し込まれるわけだ。
僕:なるほど。それで注射器内の気体の圧力は変わらないわけだ。
君:加えられた仕事は−PΔVだから、@の式はこうなる。
ΔU = Q − PΔV
はじめの状態の内部エネルギーをU_1 、体積をV_1 、変化後の状態をそれぞれU_2 、V_2 とすると、
ΔU = U_2 − U_1 = Q − P(V_2 − V_1 )
Q = (U_2 +PV_2 )−(U_1 +PV_1 )
となる。ここで、エンタルピーHを次のように定義しよう。
H = U + PV ・・・A
すると、
Q = H_2 − H_1 = ΔH
つまり、エンタルピーの差ΔHは定圧での反応熱Qになるわけだ。ただし、Qは注目している物質が獲得するときはプラス、放出するときはマイナスに定義されているから、Q>0は吸熱反応(したがってΔH>0は吸熱反応)、Q<0は発熱反応(ΔH<0は発熱反応)になる。
僕:数式を追っていくとそうなるんだけど、やっぱりエンタルピーのイメージがわかないなあ。
君:Aの式から、エンタルピーの変化量ΔHは次のようになるよね。
ΔH = ΔU + PΔV
変形して、
ΔU = ΔH − PΔV
つまり、物質がΔHと(−PΔV)の仕事を獲得すると、内部エネルギーがΔUだけ増えると読めるね。
僕:圧縮される時、(−PΔV)はプラスの値だったよね。そして、ΔHだけの熱を吸収するから、内部エネルギーの増加分は両方の合計になるわけか。じゃあ、発熱反応して、外に仕事をするときはどうなる。
君:物質が外にエネルギーを出すときは、内部エネルギーが減る。つまり、ΔUがマイナスの値になる。そして、発熱するからΔHもマイナス、(−PΔV)もマイナスになる。また、周囲から熱をもらって仕事をする場合や、仕事をされて熱を放出する場合などもある。図にすると、次のようになるだろう。(図3)
ΔH>0・・・吸熱、ΔH<0・・・発熱
−PΔV>0・・・仕事をされる、−PΔV<0・・・仕事をする

07A−063
差出人:林 正幸
送信日:08年3月4日
件 名:RE:ネツリキ問答
こんにちは、林です。
山本さん、藤田さん、出版活動がんばっていますね。
私はこの間にゴア著「地球の掟〜文明と環境のバランスを求めて」を読みました。原作ではなく、加筆され昨年出版された新装版の方です。その幅広い知性に感銘を受けました。もし8年前に彼が大統領になっていたら、米国は大きく変わっていただろうと思いました。私としては15章「地球環境版マーシャルプラン」に加えて、3章「気候と文明の歴史」、10章「エコノミックス(生態経済学)」、13章「魂の環境主義」がとくに興味深かったです。
山本さん、熱力学に挑戦ですね。早速ですが、いくつか意見を書きます。
@<引用>
君:物質が持っている化学エネルギーや分子の運動エネルギーなどさ。でも、熱力学では物質の状態が変わったときのエネルギーの差が問題だから、内部エネルギーの中身についてはあまり立ち入らなくてもいいと思うよ。
<以上>
ピストンの中は気体が発生したり、水蒸気が凝縮したりする化学系を想定した方がよいように思います。現に後からアンモニア合成の平衡が出てきています。それから内部エネルギーの中身にはいつか立ち入った方がよいと思います。
A<引用>
僕:なるほど。それで注射器内の気体の圧力は変わらないわけだ。
<以上>
エンタルピーは定圧系で実際的な意味を持ちます。だから定圧系を扱うとしてしまった方が話が早いと思います。
B<引用>
君:Aの式から、エンタルピーの変化量ΔHは次のようになるよね。
ΔH = ΔU + PΔV
変形して、
ΔU = ΔH − PΔV
つまり、物質がΔHと(−PΔV)の仕事を獲得すると、内部エネルギーがΔUだけ増えると読めるね。
<以上>
定圧系では、体積変化によって受ける仕事以外の受ける仕事をW’とすると
ΔU = Q − PΔV + W’
変形して
Q + W’= ΔU +PΔV = ΔH
となります。エンタルピーは内部エネルギーの増加に体積変化によって外部にする仕事を加えたものです。つまり定圧系において、どうしても受けてしまう体積変化による仕事を除いた、受ける「正味の仕事」と吸収する熱の合計は、内部エネルギーの増加にではなく、エンタルピーの増加に結びつきます。言い換えるとエンタルピーの減少だけ、系は正味の仕事と熱を与えることができます。通常の化学的変化ではW'はゼロですから
Q = ΔH
エンタルピーの増加が吸収する熱になります。つまり反応熱などはエンタルピーの減少になります。このように定圧系ではエンタルピーは内部エネルギーより便利な状態量になります。さらに定温系という条件が加わると自由エネルギーが登場しますが、それは次の機会にします。
私も山本さんと一緒に再勉強したいと思います。
ではまた。
07A−064
差出人:山本 喜一
送信日:08年3月4日
件 名:RE:ネツリキ問答
こんにちは、山本です。
林さん、早速のコメントありがとうございます。つきあっていただいて感謝します。
「ピストンの中は気体が発生したり、水蒸気が凝縮したりする化学系を想定した方がよいように思います。現に後からアンモニア合成の平衡が出てきています。それから内部エネルギーの中身にはいつか立ち入った方がよいと思います。」
「エンタルピーは定圧系で実際的な意味を持ちます。だから定圧系を扱うとしてしまった方が話が早いと思います。」
そうですね、最初から定圧系として、注射器の中身は化学反応が起こるものにした方がすっきりしますね。
「定圧系では、体積変化によって受ける仕事以外の受ける仕事をW’とすると
ΔU = Q − PΔV + W’
変形して
Q + W’= ΔU +PΔV = ΔH
となります。」
有効仕事については自由エネルギーとの関連で書こうと思っていました。この文章では、仕事は体積変化に限定しようという前提がどこかに必要ですね。
話は変わりますが、松本さんがアルケの資料で紹介していた石川英輔さんの「大江戸エネルギー事情」や「大江戸リサイクル事情」など数冊の本も読みました。やや分厚い文庫本ですが、短時間で読めます。江戸時代は衣・食・住、そしてエネルギーの大半を植物に頼っていた時代であったこと。だから1,2年前の太陽エネルギーだけで生活していた言えること。徹底したリサイクルや節約、人間の知恵、人間の手間によって、当時としては世界的にも多人数の都市を支え、しかも衛生的であったこと、などが書かれています。これから先、石油や石炭の枯渇やゴミ問題、温暖化などを考えるとき、参考にできる本だと思います。
07A−065
差出人:山本 喜一
送信日:08年3月7日
件 名:ネツリキ問答
こんにちは、山本です。
林さんのコメントを参考に、エンタルピーのところを一部修正しました。そして、可逆・不可逆変化、エントロピーについて書いてみました。今回、改めて熱力学を勉強してみて、Q/TのQは可逆反応におけるものだということを知り、一気にエントロピーが分かってきたような気がします。大学を出てから?十年もたってこのありさまですから、情けないですね。コメントをいただければ幸いです。
(添付ファイルは省略)
07A−066
差出人:林 正幸
送信日:08年3月8日
件 名:モル熱容量など
こんにちは、林です。
今年の前半は、「物質の状態」「気体状態」という2つの講座プランをつくり、関連して「物質とエネルギー」をつくり直そうと勉強しています。物質の状態は簡単そうで難しい。中学段階のくり返しではつまらないし、踏み込もうとすると自分が分かっていない。私としては3つほど課題を設定しています。ひとつは「状態は温度と圧力によって変化する」、ふたつは「状態とエネルギーを結び付ける」、みっつは「熱と熱エネルギーを説明する」です。
そんな中で10種あまりの単純な物質について、化学便覧をひっくり返して、固体、液体、気体状態のモル熱容量(モル比熱)とモル融解熱、モル蒸発熱を調べてみました。いずれも定圧下のものです。すると次の特徴が見えました。
モル熱容量の大きさは 液体>固体(結晶)>気体
もちろん モル蒸発熱>モル融解熱>>モル熱容量
の順になる。
水の例では、
固体37、液体75、気体37[J/K・mol]
融解熱6000、蒸発熱(100℃)40670[J/mol]
です。気体に関しては、定圧熱容量は体積を圧し広げるエネルギーもあるので、定積比熱との比熱比(1.4あたり)で割ったものが内部エネルギーに関係します。だからその意味で水の場合も 固体>気体 なのです。
つまり液体の熱運動の自由度が最大で、気体になると却って減るのです。ということは、融解熱の一部は新しく生まれる自由度に対して融点までのエネルギーを補充するために使われると考えられます(残念ながらその大きさを見積もることができません)。また逆に蒸発熱では、位置エネルギーが大きく増えますが、消滅する自由度が貯めていたエネルギーもそのために利用されることになります。この考えは正しいのか。このあたりをくわしく書いた本が見当たりません。
ではまた。
07A−067
差出人:山本 喜一
送信日:08年3月10日
件 名:RE:モル熱容量など
こんにちは、山本です。
モル比熱が 液体>気体 になる理由について、液体は気体並みの自由度を持ち、さらに位置エネルギーにも熱が振り分けられるためと考えられないでしょうか。つまり、気体ではほとんど引力がありませんので、加えられたエネルギーは並進や回転、振動などに分けられますが、液体の場合はそれらに加えて分子同士の引力に基づく位置エネルギーにも熱が回されるのではないかと思うのです。単なる思いつきで、根拠はありませんが。
07A−068
差出人:林 正幸
送信日:08年3月14日
件 名:RE:ネツリキ問答(その2)
こんにちは、林です。
比熱(熱容量)については、物質の運動エネルギーだけでなく、位置エネルギーも増えると思います。現に固体でも液体でも体積膨張しますからね。水の場合、比熱は固体で37、液体で75J/molです。ちょっと差が大きすぎるようにも思えますが、分かりません。ちなみに1自由度あたりのエネルギーは、(1/2)R≒4[J/mol]です。固体の金属では3方向の振動の自由度は6で、どれも24[J/mol]くらいです。デュロン・プティの法則ですね。また1原子分子の気体は自由度が3で、12[J/mol]くらい、2原子分子の気体では2方向の回転が加わるので自由度が5になり、15[J/mol]くらいとなります。それに対して液体はどうなっているのでしょうか。
エントロピーの方は、抽象論をよく目にしますが、具体例で考えるのはよいと思います。ただし例示の思考実験にはひとつ疑問があります。たとえば圧力を1/5にする場合ですが、(ピストンと)残ったおもりは位置エネルギーと運動エネルギーを得ます。このままだと体積が5V1の位置を中心に永久に上下に振動しないでしょうか。
もうひとつは、エントロピーが状態量であることが納得できる説明が必要ではないでしょうか。可逆膨張と可逆圧縮で熱の出入りが等しいだけでは、この場合は偶然にそうなるのではないかと指摘されると反論できないと思います。
四ケ浦さん、アルケ合宿の宿の確保ありがとうございます。私は参加するつもりです。
ではまた。
07A−069
差出人:林 正幸
送信日:08年3月24日
件 名:「物質とエネルギー(改訂)」が完成
こんにちは、林です。
1週間前には以前の職場の仲間と長野県の飯田(松川温泉)に行ってきました。雪を被った南アルプスがきらきら輝いてきれいでした。そして昨日は、これまた別の以前の職場の仲間の飲み会でした。退職すると忙しさから解放され、これまで以上に人間どうしのつながりを大切にしようと思うわけです。
さて4年前につくった講座プラン「物質とエネルギーの世界」をつくり直していたのですが、それが「物質とエネルギー(改訂)」として完成し、昨日ホームページにも掲載しました。
化学でエネルギーをどう教えるか。
<引用>
まとめると、物質は種類によって、温度によって、状態によって、それぞれ固有のエネルギーを持つ。エネルギーとは、物質をして、その種類であり、その温度であり、その状態であらしめる根源になるものである。エネルギーを持たずに物質が存在することはない。
備考:深入りはしないが、物質のエネルギーは圧力によっても異なる。
<以上>
これをベースにしたいという思いはずいぶん前からあったのですが、思いが先行して生徒には納得しにくい状況でした。それが今回はかなり整理でき、スムーズに頭に入ってくるようになったのではないでしょうか。
もうひとつは熱をどう扱うかです。これは私が新任のころからの課題でした。物理学では仕事と等価の「ひとつの過程」なのです。「加熱する」は正しいが、「風邪を引いて熱がある」はまちがいです。しかし日常的な熱のイメージは後者です。この矛盾を何とか解決したい。それは「熱エネルギー」という用語です。熱エネルギーとは熱運動に関わるエネルギー(理化学辞典)です。言ってみれば、熱とは移動する熱エネルギーです。厳密には放射(輻射)も熱ですからまちがいかも知れませんが、私としては放射エネルギーは別枠で扱った方がよいと考えます。こうして「風邪を引いて(いつもより)熱エネルギーがある」は正しいのです。付随して大切なのは、エネルギーは姿を変えることです。「潜熱」という奇妙な用語がありますが、熱エネルギーを吸収してそれが位置エネルギーに姿を変えることはあるわけです。私が主張したいのは熱素説ではありませんから。
感想など寄せてもらえば幸いです。
ではまた。
07A−070
差出人:林 正幸
送信日:08年4月2日
件 名:高圧の融点など
こんばんは、林まさです。
愛知では今、桜が満開です。一昨日は母を車に乗せて花見に出かけ、今日は桜の下で孫たちと遊びました。
そして講座プランの方は「物質の状態」が2/3ほど形になってきました。最も重視しているのは、圧力の位置づけです。物質の状態は、温度と共に圧力によって決まってきます。その一部は次のようです。
<引用>
[2]ここで圧力を別の視点から捉えてみよう。気体や液体の内部に仮想的な箱を考える。この箱にはまわりから圧力が及んでいる。つまり箱の中の分子は圧し込められている。箱はどの部分でも考えることができる。したがって
「圧力は分子が圧し込めらている程度を示す」
と言える。
気体の圧力が高いとは、分子どうしが分子間の引力圏に存在することが多いことを意味する。液体の圧力が高いとは、分子どうしのすき間が少なくなっていることを意味する。いずれの場合も圧力が高いとは、分子間の引力がはたらきやすいことを意味する。
<以上>
そこで困っているのが、高圧での二酸化炭素や水の融点のデータが見当たらないことです。いくら調べても三重点のデータしかありません。10,20あるいは100atmでの融点が知りたいのです。誰か情報があったら、ぜひ教えてください。
これとは別に、友人の田中さんと共同で、「電源・デジタル表示装置」に取り組み、原理的にはうまくいくところまできました。たとえば圧力計は、これまではデータの表示はミリアンメーターを使ってきました。これを単位を含めてデジタル表示できるようにしようと言うのです。そして汎用性を持たせて、温度でも電流でも、検
出部の回路を載せれば、どれでも首尾よく表示できるようにしようというアイデアです。PICマイコンを組み込み、テンキーをつないで単位および目盛りの最大値と最小値などを入力すれば、調整ができ計測ができるようになるというわけです。圧力計に関してはボイルの法則がばっちり表示されました。さらに検出部がリニアーでない場合に、補正曲線を入力して正しく表示させようというのです。これは7月の先進科学塾「目に見えない気体を科学する」に7台製作して投入しようと準備しています。またEHCでも製作講習会をしていきたいと考えています。
ではまた。
07A−071
差出人:竹野 徹美
送信日:08年4月3日
件 名:RE:高圧の融点など
竹野です。
林さんのQ.の意味がよくわからないのです。融点とは、1atm(1013hpa)においてその物質が融解する温度、三重点とは、固体・液体・気体が共存する状態での温度…と理解していたのですが。ただ、正式な語句かどうか不明ですが、一部で水の1013hpaにおける融点を「標準融点」という…なんていう使い方はあるようです。
また、林さんのおっしゃる「高圧での二酸化炭素や水の融点のデータ」は、状態図の融解曲線というかたちで存在しているのではないでしょうか。…そりゃそうだが…と言われそうで申し訳ございません。
07A−072
差出人:林 正幸
送信日:08年4月4日
件 名:水の融点
こんにちは、林まさです。
竹野さん、沸点にさまざまな圧力の下におけるものがあるように、融点もそうなっています。ただし圧力の影響は比較的小さいので、1atm=1013hPaの下のものが融点として通っていることも事実です。そして三重点は、特殊な融点でもあり、かつ沸点でもあると捉えます。
やっと水の情報が得られました。それは概念図でなく、正確なグラフの状態図も含んでいました。通常の物質と反対に水では圧力とともに融点が下がり、0.2GPaで−20℃に達するのですが、その後は上昇に転じて2.5GPaでは100℃を越えるとのことです。後半は知らなかったので、参考になります。確かに考えてみると、超高圧でも水の融点が下がり続けるというのは変ですよね。さてさて二酸化炭素の情報はないでしょうか。
高校化学では物質の状態において圧力を重視するべきです。低圧の方では次のように講座プランに書いてみました。
<引用>
とくに気体ではその影響は顕著である。したがって逆に圧力が低くなるほど、気体は凝縮して液体になる傾向は小さくなる。圧力が低くなると分子どううしはいくらでも離れていくので、気体が凝縮するあるいは昇華して固体になる傾向は、いくらでも小さくなっていくのである。こうして圧力さえ低ければどんなに低い温度におい
ても気体は存在することができる。より具体的には、その温度における蒸気圧より低い圧力であれば、気体として存在できる。・・・
<以上>
ではまた。
07A−073
差出人:野中 直彦
送信日:08年4月10日
件 名:工業高校へ転勤になりました
自宅から歩いて10分の工業高校への転勤になりました。
2年間の養護学校から学んだこともたくさんありました。
工業高校では、2年生の正担任、学年主任、やったことのないソフトテニス部の正顧問などのたくさんの課題をいただきました。担任している子も、羊年生まれなんです。特別支援学校時代は、時間がない、ものがない、お金がない環境でしたが、工業高校は、人はいる、時間はある、お金はある、いまのところ良い環境の中で、授業がスタートしました。はじめは、アルコール大砲の実験からスタートしました。
まだ、学校の様子がわからないので、これからいろいろ考えていきますが、とりあえずは、修学旅行からです。6月にあります。
07A−074
差出人:林 正幸
送信日:08年4月14日
件 名:クラウジウス−クラペイロンの式
こんにちは、林です。
圧力と融点に関して、熱力学の本をめくっていて、クラウジウス−クラペイロンの式があったことに気付きました。これはすべての相変化に成り立ち、次のようです。
dP/dT = ΔH/TΔV
比較的狭い領域なら
ΔP/ΔT = ΔH/TΔV
となり、基準をデータが得られる三重点に選ぶことにしました。
CO2 −56.2℃ 5.1atm
H2O 0.01 0.006
ただし(ΔH/T)とΔVは、その付近の入手できるデータを使います。ΔH/Tは次のようです。
CO2 217K 8330J/mol
H2O 273 6010
ΔVは密度から計算します。
CO2 液体 d=1.101(−37℃) → 1/1.101 = 0.908[cm^3/g]
固体 1.56(−79) → 1/1.56 = 0.641
モル体積 0.267×44×10^-6 = 11.7×10^-6[m^3/mol]
H2O 液体 d=1.000(0℃) → 1.000[cm^3/g]
固体 0.915(0℃) → 1/0.915 = 1.093
モル体積 (−0.093)×18×10^-6 = (−1.67)×10^-6[m^3/mol]
したがって関係式は
CO2 ΔP/ΔT = 3.28×10^6
H2O ΔP/ΔT = (−1.32)×10^6
圧力に[atm]を使うとして変形すると
CO2 ΔT = ΔP/32.8
H2O ΔT = ΔP/(−132)
となります。
水の関しては2つのデータがあるので、関係式の計算値と比べてみます。
1atmにおける融点 0℃
ΔT = 1/(−132) = −0.007 ≒ −0.01
0.01−0.01 = 0
ぴったりです。
2000atmにおける融点 −20℃
ΔT = 2000/(−132) = −15
0.01−15 ≒ −15
これも基準から離れている割にいい値ではないでしょうか。
これで二酸化炭素の10atmや20atmあたりの融点が計算で求められることが確認できました。熱力学はすごい!
ではまた。
07A−075
差出人:林 正幸
送信日:08年5月7日
件 名:分圧の法則
こんにちは、林です。
しばらくご無沙汰ですね。現在私は、1ヶ月ほど前にメールで書いた「電源・デジタル表示装置」のプログラミングに忙しいです。今回はPICマイコンのためのC言語を使います。これまで何ヶ国語の、いやいや何種のプログラム言語を勉強したことでしょう。もっともC言語は3つ目で、方言のようでもあります。集中的に時間が必要でかなりきついですが、私には気に入った仕事と言えます。
そんな中で、今日は分圧の法則の実験をしました。ゴムせんに圧力センサーとガラスコックを付けて250mLの試薬びんに締め、おもりをつけて30℃の水に浸けます。そしてコックを閉じ、注射器の針をゴムせんに刺して少量のメタノールを注入し、圧力増加を計測します。水流ポンプで減圧した空気でも同じように計測します。
1atmの空気の場合 1.185−1.000 = 0.185[atm]
0.5atm 〃 0.705−0.510 = 0.195
どちらもメタノールの蒸気圧(正確な値は0.215atmのはず)で、ほぼ同じ数値です。これからメタノールの蒸気圧は空気があっても真空でも変わらない。混合気体においてある成分気体の振る舞いは他の成分気体が存在しないかのようである。また全体の圧力は成分気体の分圧の合計になる。などということに導こうというわけです。なおもっと低い圧力でも実験したいのですが、漏れ対策が難しくなります。
ではまた。
07A−076
差出人:林 正幸
送信日:08年5月19日
件 名:「電源・デジタル表示装置」が可動
こんにちは、林です。
アルケ通信3号を受け取りました(峰島さん、ご苦労さまです)。盛口さんのことが気になります。
「電源・デジタル表示装置」が、最初に搭載することになる圧力計(以前に製作したアンメーター表示の圧力計とはすこし異なりこの装置に対応するもの)を含めてやっと完成し、うまく可動しました。土曜の朝にプログラムのバグ取りが成功したときはさすがに嬉しかったです。そして昨日日曜にはさっそくMOLの会で実験「分圧の法則」(前回のメールに書いたときは、まだアンメーター表示の圧力計を使いっていた)の紹介をしました。ところが自分が製作者であるのに、デジタル表示の調整に手こずってしまいました。デジタルはデジタルで慣れる必要があるのですね。これから残り6台を量産し、プログラムを改良しようと考えています。
ではまた。
07A−077
差出人:林 正幸
送信日:08年6月6日
件 名:科学の祭典に吸水ビーズ
こんにちは、林まさです。
昨日、「電源・デジタル表示装置」と当面それに搭載する圧力計が、7台そろって完全稼動するようになり、満足な気分に浸っています。これは科教協東海支部の「実験広場」や、科教協石川大会の「お楽しみ広場」などで紹介していきたいと考えています。実践としては、7月の先進科学塾「目に見えない気体を科学する」に投入します。
さて秋の「科学の祭典」(名古屋)でMOLの会が出展するテーマのひとつに、高吸水性高分子が上がっていたので、今日検討して次のようなプランをつくりました。
これはアクリル酸ナトリウムを中心に重合させた高分子です。最近は「プランツボール」として水を吸うとビー玉くらいになるものもありますが、これは割高で反応も遅いので、従来の「吸水ビーズ」で組み立ててみました。
@水30mlに吸水ビーズ0.3gを加えてかき混ぜると、水を吸って逆さにしてもこぼれない。
(吸水能力は自重の100培以上)
A薬さじ山盛り1杯を試験管に移し、半分まで水を加え、ゴムせんをして振ると姿が消えてしまう。傾けるとビーズがあることが分かる。
(水の粒に水を加えたようなもので、屈折率がほとんど同じであるため)
B残りに3mol/L塩酸1mLを加えると、水がはき出され、流動性がもどる。
(弱酸の塩のカルボン酸ナトリウム(−COONa)が強酸と反応してカルボン酸自身(−COOH)になり、ナトリウムイオンは自由になって高分子から離れることができる。したがって吸水能力が無くなる。
ちなみに固体の食塩薬さじ1杯を加えても水がはき出される。これは吸水を浸透として説明するのに対応する。)
C別に水30mLにフェノールフタレイン5滴を加え、これに吸水ビーズ0.3gを加えてかき混ぜると、水を吸って薄いピンク色になる。
(カルボン酸ナトリウムは加水分解してすこし塩基性になる)
D0.1mol/L水酸化ナトリウム3滴を加えてかき混ぜると、鮮やかなピンク色になる。
E食酢1滴を加えてかき混ぜていくと、やがて無色になる。
(食酢中の酢酸は弱酸で、塩酸のように吸水能力を奪わない。)
F0.1mol/L水酸化ナトリウム10滴を加えてかき混ぜていくと、やがて鮮やかなピンク色にもどる。
(E、Fは中和反応をゆっくりと体験できる)
このプランは9月のMOLの会などで、検討したいと考えています。
ではまた。
07A−078
差出人:野中 直彦
送信日:08年6月6日
件 名:理科備品
理科振興法の請求の時期に来ています。これは、購入しやすいとかこれを購入した方がいいというアドヴァイスがあればください。液晶TVなどはいいのではないかと思っています。
はじめての「ソフトテニス」なるものの顧問でとまどっています。明日は、テニスコートにラインテープをはるのですが、なぜか、クレーコートに塩化カルシウムをまくといいとかで、融雪剤をまくことにしています。
07A−079
差出人:高橋 匡之
送信日:08年6月15日
件 名:地震について
アルケミストのみなさん 岩手の高橋です。
元気にしています。学校も家も、私のところは、大丈夫でした。まず、自宅ですが、私の机の上の重ねておいたものが地滑り現象で落ちた程度で、5分もしないうちに片づきました。
昨日は、来週からの期末考査の問題を作成しに、学校へ到着したトタンに揺れました。駐車場に居たので、そんなに怖さはありませんでしたが、相当大きい揺れだなと感じました。私が鍵をもっていたので、あけると校舎内は、防火扉が全て閉まっており、非常用の警報機が鳴りっぱなしという状況でした。
すぐに、化学実験室や薬品室を見ましたが、50本ほど薬品の瓶が倒れていましたが、割れているものはありませんでした。ひとまずホッとして職員室にもどると、事務長・校長が駆けつけてきて非常用のサイレンを停止しました。手分けして、被害状況を調査することになり、私は理科室関係を見回りました。
地学室の岩石標本の陳列棚のガラスが破損し、岩石が廊下に飛び出している状況。次に、生物実験室を見回ったのですが、水槽の水があふれ出たなと床を確認して、後部のドアから出ようとしたとたんに、ホルマリンの臭いがしました。よくみたら、器具戸棚の最下段にホルマリン標本があり、倒れていて、ホルマリンが漏れだしていました。かなり、きついにおいだったのですが、3人ほどの応援をいただいて、ホルマリンをぞうきんですいとり、処理できました。机の上の書類が若干落ちた程度で、被害としてはその程度で済みました。
薬品戸棚は、中の薬品瓶が転倒していても、ガラス戸をしめていると、そこで支えられて割れないんだなということを実感しました。もちろん、揺れがもっとひどいと、ガラス戸を打ち破って、落下することは考えられます。それから、硫酸や硝酸は、しきりのついた薬品箱に入れて、薬品庫にいれておいたのですが、こちらはびくともしていませんでした。薬品箱の威力を実感しました。小さな小瓶は、たくさん倒れていました。これらも薬品箱に入れておく方が良いと思います。結局、ビュレット1本、ビュレット台1個、ビーカー3個程度の破損で済みました。ペーパーグロマトグラフィー用の大きな試験管が、試験管立てにはさまれたまま、落ちていたのですが、ビュレット台にひっかかって、1本も割れていませんでした。これは、ラッキーでした。
これらの処理をするのに、約3時間くらいかかり、気がついたら12時、昼食をとり終えると、怪我した方を搬送するために、自衛隊のヘリコプターがグランドに着陸してもいいかという電話がなったりで、とうとう問題つくりまで手が回らずに帰ってきました。色々なことがあって、ホルマリンを吸い込んだせいもあるのか、疲れて帰ってきましたが、家族全員元気でいます。ご安心ください。
私が、勤務している**高校は、奥州市にあり、テレビや新聞などで良く出てくる地名ですが、3年ほど前に合併して巨大な面積をもつ市となりましたので、震源地からは、50km以上はなれていると思います。余震は、結構感じますが、この程度の被害でホッとしていますが、震源地に近い地域の生徒もいますので心配です。
07A−080
差出人:四ケ浦 弘
送信日:08年6月15日
件 名:RE:地震について
高橋さん、とりあえず無事でよかったです。佐藤さんのほうは、いかがだったでしょうか?また薬品の状況等は参考になります。薬品庫は固定してあったのでしょうか?私のところでは、棚に薬品庫を固定しないでおいてあるので、少々心配でs。ホルマリンについて、ホルマリン標本はとても不安です。わずかづづでも揮発して化学物質過敏症につながらないかと思うからです。
さて皆さん。大会準備も何とか進めているのですが、各種申し込みがほとんど届きません。化学分科会の申し込みも岡田さんの1のみです。大会そのものとアルケ合宿にはたくさんのかたから参加の連絡を頂いているのに、申し込みがないのは、ホームページからの申し込みに不具合があるからではないかと心配しています。昨年度の愛知大会で同様の申し込みをされた方は、その情報が残っていて、パスワード等不具合がある場合があるのです。私もそうで、登録がうまくできず、頭に来て?そのままほったらかしにしていました。状況を知らせて頂ければ幸いです。
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