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07A−021
差出人:林 正幸
送信日:07年11月1日
件 名:カタラーゼの悩み
こんにちは、林です。
このところ酵素カタラーゼを使い、以下のように実験しているのですが、あまりよい結果が得られません。期待しているのは、酸素の発生速度が、濃度が低い部分では過酸化水素のモル濃度に比例し(1次反応)、濃度が高くなると一定になる(0次反応)ことです。後者は、酵素に比べて基質(過酸化水素)が多すぎると酵素の鍵穴が基質の鍵でふさがってしまうためです。
比較的よさそうなデータ(水温18℃)は次のようです。
35%過酸化水素の体積 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8[mL]
所要時間 76 44 34 25 21 22[s]
しかし別の一連の実験では
108 −− 44 37 33 30「s」
になったりします。
反応速度をはかるガラス管25cmの体積は3.2mL、35%過酸化水素0.3mLで発生する酸素は43mL(常温)ですから、それぞれの過酸化水素の初濃度における速度を計測できているはずです。
現在私が気になっているのは、ニンジンをすりさらしに包んで絞ったカタラーゼ液です。これは濁っており、ピペットで2mL採るときに毎回かき混ぜているのでが、不均一系ですよね。あるいは時間と共に酵素の活性が上がってきているようにも思えます。なかなか悩ましいのですが、何かヒントになるような情報をお持ちの方はみえないでしょうか。
ではまた。
<引用>
実験4 酵素反応の速度
過酸化水素は酵素カタラーゼで分解が促進され、酸素を発生する。その反応速度が過酸化水素の濃度によってどのように変化するか、ガラス管の水位が25cm下がるのに要する時間を計測して調べる。
[a]準 備
(1)図のように水の入ったビーカーにレトルト台を利用してガラス管を立て、ゴムせんの先から吸ってポリチューブの頂点付近まで水位を上げ、ピンチコックで固定する。
注意:ピンチコックの使い方が悪いと空気が入ってしまう。
(図略)
(2)ゴムせんをY字管に締めて常温の水が入った容器に収め、ピンチコックをゆるめ、1,2分待って水位が安定することを確認する。
注意:手のぬくもりでY字管の温度が上がらないようにする(以下同じ)。
参考:小さいビニールテープを貼って水位の動きをチェックする。
(3)2mLメスピペットの練習をする。
(4)ニンジンをおろし金ですり、さらしに包んで100mLビーカーに絞り、水を加えて約3倍に薄め(カタラーゼ溶液)、2mLピペットを添える。
[b]計 測
(5)試験管にメスピペットで35%過酸化水素水0.30mLを入れ、駒込ピペットで水9.7mLを加えて全体を10mLにし、Y字管のくぼみがない方に注ぐ。
(6)他方にカタラーゼ溶液2mLを入れる。
(7)[a]のように水を吸い上げ、Y字管にゴムせんを締める。
(8)1、2分して水位が安定したら、その位置から25cm下に輪ゴムをずらす。
(9)Y字管を傾けて過酸化水素水をカタラーゼ溶液に流し込むと同時にストップウオッチをスタートする。
(10)そして水位が輪ゴムを通過した瞬間にストップする。
参考:所用時間の逆数が反応速度に対応する。
(11)Y字管をブラシで水洗いし、過酸化水素の量を次のように変え(全体は10mL)、同じように反応速度を計測する。
0.6 0.9 1.2 1.5 1.8[mL]
<以上>
07A−022
差出人:吉田 耕三
送信日:07年11月2日
件 名:RE:カタラーゼの悩み
こんばんわ。
「カタラーゼの悩み」拝見しました。「時間と共に酵素の活性が上がってきているようにも」の原因についてふと思いついたことをお知らせします。
触媒液は不均一系だということですが、それならば固体の部分に細胞が残っていて時間とともに細胞が壊れてカタラーゼの量が増えるのではないでしょうか。不均一な触媒液をろ過して均一系の触媒にしてみてはどうでしょうか。
私も酸化マンガン(W)の粉末を合成洗剤液と混合した不均一系の触媒液で過酸化水素分解の反応速度を測る実験を何度もしましたが、なかなか同じ量の触媒をとることができず、均一系の触媒液はないかなと思っていたところでした。もしかすると、私の悩みもカタラーゼで解決するのかも知れません。貴重な情報ありがとうございました。
07A−023
差出人:林 正幸
送信日:07年11月8日
件 名:近況報告など
こんにちは、林です。
現役の人たちには申し訳ないですが、11月の1日から6日まで、家内とオーストラリアに行って来ました。ケアンズをベースにして、キュランダの熱帯雨林、ウルル・カタジュタ(いわゆるエアーズロック)の岩山と乾燥地帯、グリーン島のサンゴ礁の海、と日本では見られない自然にたっぷりと浸ることができました。
まだ余韻の中ですが、さて、カタラーゼについて吉田さんレスポンスありがとう。カタラーゼ液はろ過もしてみたのですが相変わらず濁っているので、これまでのところそのまま使っていました。進展状況によってはろ過も試してみたいと思いますが、愛知の仲間の伊藤政夫さん(生物、前回のみ彼にも同じメールを送った)から、カタラーゼは不安定化すると一時的に活性が高くなる(過酸化水素も接触時間が長いと影響する)ようだ。またカタラーゼ液は氷冷しているかという返事を受け取りました。短時間で使用する場合でも氷冷が必要か確かめますが、もしそうなら実験に工夫を加える必要が生まれます。
今日は、愛知科教協の正月明けの研究会の会場予約に名古屋まで行ってきました。明日は、妹夫婦が預かってくれた私の母を連れてきてくれるので、明後日からは日常生活に戻したいと考えています。
ではまた。
07A−024
差出人:林 正幸
送信日:07年11月18日
件 名:カタラーゼの悩み(その2)
こんにちは、林です。
昨日は一宮EHCで、1年半前に入院中に思いついて提案した、高性能マイコンH8を使った汎用性の計測制御システム(H8UMCS)の、製作が始まりました。これを機会に新しいメンバーも増え(アルケでは鈴木さんが参加、なお伊藤さんは最初からのメンバー)、これからが楽しみです。そして手がけてくれた田中さん(一宮EHCの一貫した講師)に感謝です。
さてカタラーゼですが、カタラーゼ液について行き違いがあったようで、最近受け取ったレポート(向陽高校科学部 私のテーマとは異なる研究)によると、No1ろ紙でろ過していました。そのようにすると、2回の速度データがほぼ一致しました。これで一歩前進です。
35%過酸化水素の体積 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8[mL]
所要時間 1回目 66 35 22 19 16 15[s]
2回目 62 32 22 19 16 15
残りの問題は、カタラーゼが過酸化水素によって不活性化していく可能性です。とくに濃度が高い場合、そのために速度が一定になる可能性をはらんでいます。これでは私の目標から外れてしまいます。もうひとつは反応開始時(Y字管を手で持って両液を混合する)の水位の「とまどい」です。後者は、5cm下がってから後20cm下がる時間を計測しようと考えています。そして前者は、10cmずつに分け、前半と後半の速度にあまり差がなければとくに問題なしとなります。しかし前者の問題は、さらに実験条件の検討を迫られる可能性も秘めています。
ではまた。
07A−025
差出人:林 正幸
送信日:07年11月19日
件 名:カタラーゼ実験が完成
こんばんは、林です。
昨日のメールで書いたように実験してみたら、次のような結果が得られました。
35%過酸化水素水の体積 10cm通過時間 20cm通過時間
0.3[mL] 49[s] 106[s]
0.6 23 50
0.9 17 36
1.2 14 31
1.5 13 31
1.8 13 34
(気温、水温:11℃)
前半10cmと後半10cmの通過時間は、後半がいくらか長く速度が小さくなっており、過酸化水素の濃度が高い領域ではカタラーゼが部分的に失活している可能性があります。それは35%過酸化水素水の体積が1.8mLではっきりしてきますが、逆から見ると1.5mLまではさしたる影響はないと判断できます(生徒実験では1.8mLはカットします)。そしてデータから、酸素の発生速度が、濃度が低い部分では過酸化水素のモル濃度に比例し(1次反応)、濃度が高くなると一定になる(0次反応)ことが分かります。
なおストップウオッチは数cm下がった所でスタートしましたが、反応開始時は液面が動きません。これは発生する酸素が反応溶液に溶けたりするためと考えられます(他の理由もあるでしょう)。だから順調に泡が発生するようになってから計測を始めるのは、正解だと考えます。
これで懸案の実験「酵素反応の速度」が完成しました。これで12月の先進科学塾「生命の化学」の実験がすべてでき上がり、すこしほっとしました。明日は、純粋なショ糖(スクロース)が購入してあるので、前に話題になったことがある、べっこうあめづくりで「ショ糖は部分的に加水分解する」ことの確認実験をしてみようと思います。また近いうちに、ブドウ糖(グルコース)をメタノールで配糖体(エーテル)にする実験にも挑戦したいです。
ではまた。
07A−026
差出人:林 正幸
送信日:07年11月22日
件 名:べっこうあめのこと
こんばんは、林です。
カタラーゼは見通しは立ったのですが、さらにカタラーゼ液の持ち具合などを調べることにし、なお継続しています。結果、カタラーゼ液は当日に調製するのが良さそうです。1日置くと却って活性が上がったり、2日置くとかなりダウンしたりするようで、なまものは難しいと感じました。カタラーゼは変質の過程で一時的に活性が上がり不安定になるという話も聞いています。
そしてデータを重ねる中で、もう少し低い濃度で計測した方がよいことも分かりました。また意図的にカタラーゼの濃度(にんじんのしぼり汁を水で薄める程度)を変えて実験もしました。それによって納得できることもありました(Kmが一定であることなどですが、深入りしません)。
なお35%過酸化水素水の濃度ですが、酸化マンガン(W)を加えて発生する酸素量から、購入3ヶ月で1%減少しているかどうか程度(ほとんど変わっていない)であることが分かりました。
さてべっこうあめです。以前に調べたときは手元に純粋なスクロースがなかったのですが、今日は試薬のスクロースでべっこうあめをつくりました。ベネディクト試薬はあめになった後の溶液とのみ反応しました。またテス・テープAでグルコースの検出もできました。これで味が砂糖菓子とは異なることも納得できます。ただし加水分解の程度までは調べていません。
ではまた。
07A−027
差出人:林 正幸
送信日:07年12月4日
件 名:アルコール発酵
こんにちは、林です。
アルケ通信の資料を送りました。昨日には届いたかと思います。今回は、科教協大会レポートはじめ5点です。
カタラーゼはその後もいろいろ気になることが出て来ましたが、どうやら11月18日付けのメールで書いていたように実験してよいと判断しました。一番の問題はカタラーゼ液がけん濁状態であることのようですが、科学館の遠心分離器でも透明な液は得られませんでした。この実験は今年もっとも手間の掛かったものになりました。
アルコール発酵は生物ではよく取り上げられ、キューネ発酵管という特殊な容器を使いますが、私流に工夫してみました。10%グルコース液にドライイーストを加えて50mL三角フラスコに入れ、45℃の湯浴に浸けます。そして風船を縛ったガラス管付きゴムせんをして30分ほど放置します。細かい泡が盛んに発生して発酵が起きていることが分かります。風船に捕集された気体はポリチューブを付けて石灰水に吹き込むと白濁します。反応混合物は100mL三角フラスコに移し換え、長いガラス管の付いたゴムせんをして加熱します。凝縮液がガラス管に付き始めたところで加熱を止め、凝縮液を試験管に洗い入れ、硝酸セリウム試薬を加えると黄橙色に変化します。この試薬はアルコール検出用に、前の講座プランのとき使ったものです。これで反応式書けます。
通常の実験ではアルコールは反応混合物にヨードホルム反応を使いますが、実はアルコール発酵はピルビン酸からアセトアルデヒドを経てエタノールができるので、この方式にしました。また二酸化炭素も容器の特殊性から間接的な検出になっていますが、風船を使えば簡単に検出できます。
ではまた。
07A−028
差出人:林 正幸
送信日:07年12月4日
件 名:苦肉の策、アミノ酸の両性
こんばんは、林です。
アミノ酸が酸性のカルボキシル基と塩基性のアミノ基をもつことは基本中の基本であると思うのですが、何故かそれを確かめる実験が見当たりません。
たとえば余分にカルボキシル基やアミノ基を持たないグリシンですが、等モルの塩酸が加わるあたりと、等モルの水酸化ナトリウムが加わるところは滴定曲線が立つはずですが、pHが0や14付近で、ユニバーサル指示薬やpHメーターでは検出が難しいです。もちろん自身の中和点=等電点は中性付近ですので検出できます。
そこで考えた苦肉の策が、次のような実験です。
<引用>
[b]アミノ酸の両性
(1)50mLビーカーに水約40mLを入れ、pHメーターで計ってpHが3付近になるように、1mol/L塩酸2,3滴を加える。
(2)これにグリシン小さじ1杯を加え、ガラス棒でかき混ぜ、pHを計測する。さらに小さじ1杯を加えてpHを計測する。
(3)ビーカーを洗い、水約40mLを入れ、pHが11付近になるように、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液2,3滴を加える。
(4)これにグリシン小さじ1杯を加え、ガラス棒でかき混ぜ、pHを計測する。さらに小さじ1杯を加えてpHを計測する。
<以上>
これなら、グリシンが酸を中和する能力と、塩基を中和する能力の両方を持つことが窺えます。実験例は
塩酸:3.0 → 3.8 → 4.0
水酸化ナトリウム:11.3 → 9.4 → 9.0
です。
これからアミノ酸がカルボキシル基とアミノ基を持つ両性の化合物であることを導入してはどうでしょうか。
ではまた。
07A−029
差出人:林 正幸
送信日:07年12月12日
件 名:アミノ酸の両性について
こんにちは、林です。
吉田さん、実験「アミノ酸の両性」に関心を頂き、ありがとう。ただしこの実験は、メールに書いたように指示薬を使うのが困難であり、pHメーターに頼るところが「苦肉の策」の一部なのです。しかし実験から引き出せることは重要であると思います。次に現在作成中の講座プラン「生命の化学」から、その部分を引用してみます。
<プランの引用>
[3]実験1[b]では、アミノ酸の代表として取り上げたグリシン(構造式は後出)が、
酸である塩酸を中和し、同時に塩基である水酸化ナトリウムも中和することを、pHメー
ターを使って確認した。
これはグリシンが、酸を中和する塩基の官能基と塩基を中和する酸の官能基の両方を持
つ、つまり両性であることを示す。とすればグリシンそのものが、自身で中和した塩にな
る。
さらに塩であるグリシンが強酸である塩酸を中和したのは、酸の官能基が弱酸であるこ
とを示す。講座プラン「酸と塩基」で、「弱酸の塩に強酸を加えると弱酸と強酸の塩が生
成する」ことに触れたのを思い出そう。同様な理由で、塩であるグリシンが強塩基である
水酸化ナトリウムを中和したのは、塩基の官能基が弱塩基であることを示す。
<以上>
これを踏まえてアミノ酸の導入をするのです。
年の瀬を迎え、私もかなり忙しくなってきました。にも関わらず、12月28、29日の安房科学塾には参加する予定です。
ではまた。
07A−030
差出人:四ケ浦 弘
送信日:08年1月2日
件 名:あけましておめでとうございます
みなさん、明けましておめでとうございます。
3年前から模索してきた科教協全国大会石川大会をいよいよ開催する年になりました。まだまだ準備はこれからですが、みなさんとここまで進めてくることができました。きっと「やってよかった」と思える画期的な大会になる、そんな気がします。年賀状を添付させて頂きます。これからもよろしくお願い致します。
(年賀状は省略)
07A−031
差出人:山本 喜一
送信日:08年1月8日
件 名:ヨウ素でんぷん反応
明けましておめでとうございます。山本です。
昨年はいろいろと忙しくて、メールをなかなか送れませんでした。今年は、気づいたことがあればお送りしたいと思っています。
早速ですが、アルケの資料にあった佐藤さんのヨウ素でんぷん反応を興味深く読みました。下記HPにも掲載されていますね。
http://www8.plala.or.jp/grasia/frameindex.htm
ヨウ素でんぷん反応については、教科書にもI2がでんぷんのらせんに取り込まれると書いてあるのですが、佐藤さんは文献でI3-やI5-が取り込まれることを見つけたようですね。この文献を読んでみたいのですが、どんな文献なのか教えてもらえないでしょうか。よろしくお願いします。
07A−032
差出人:佐藤 琢夫
送信日:08年1月9日
件 名:RE:ヨウ素でんぷん反応
こんばんは。岩手の佐藤です。今年もよろしくお願いします。
山本さんからの問合せがありましたヨウ素の文献は、古いですが、1980年化学教育に掲載されたものです。
第28巻 第3号 ヨウ素デンプン反応の色 田仲二郎 257頁
一昨年、スチロール球でデンプンの分子模型を制作しました。このデンプンのなかに、ヨウ素がどのようにデンプンに取り込まれるのか調べていく中、出会った文献です。
アルケ通信に送付したこのヨウ素の実験について簡単にコメントします。多くの生徒はヨウ素デンプン反応がどのようなからくりで発色するのかということより、ヘキサンの抽出の操作と抽出された鮮やかなヨウ素の色に感激しておりました。この抽出という基本的なことを、溶解などのところで見せてなかったつけが回ってきたという思いです。先を見通した下準備が大事ですね。
追伸:この化学教育をお持ちでない方の為に、明日PDFファイルを送信します。化学教育を学校に忘れてきてしまいました。
07A−033
差出人:藤田 勲
送信日:08年1月9日
件 名:RE:ヨウ素でんぷん反応
藤田です。
私も文献、調べましたのでお知らせします。
竹本 喜一、『包接化合物』、p.56、東京化学同人(1989)
浅岡 久俊、『糖質』、p.50、丸善(1986)
I3^-やI5^-はポリヨウ化物イオンで、シュライバーの無機化学にその構造が詳しかったと思います。このイオンがアミロース中の酸素原子との間で電荷移動錯体(ヨウ素の電荷が酸素原子の空軌道に一部移動するのでしょう)を作って、I3^-やI5^-イオンの吸収帯がずれることで青色に呈色するようです。
07A−034
差出人:山本 喜一
送信日:08年1月9日
件 名:ヨウ素でんぷん反応
山本です。
藤田さん、佐藤さんありがとうございます。PDFを楽しみにしています。I3-やI5-がヨウ素でんぷん反応の主体であるならば、ヨウ素水でもこの反応が起こるのは、次の反応が起こるからだと思います。
I2 + H2O ←→ HIO + HI
HI + I2 → H+ + I3-
それから、教科書や図説の副教材にはあたかもI2がでんぷんにはいるような説明がありますが、これは間違いだということになりますよね。
07A−035
差出人:佐藤 琢夫
送信日:08年1月10日
件 名:PDFファイルついて
岩手の佐藤です。
PDFファイルを送信します。
ヨウ素デンプン反応の実験プリントは、下記の観点で作成した。ヨウ素デンプン反応の発色について、ヨウ素分子がデンプンのラセン構造を温度によって出入りするという説明があります。青紫の色が消えた高温でヨウ素分子はどうなっているのか疑問でした。決してヨウ素分子として蒸気となり逃げていきません。ヨウ素分子は溶液中で生成した三ヨウ化物イオンなどとして留まり、冷却されると再びデンプンと包摂化合物を形成し、発色するものと理解しています。
ヨウ素分子だけをデンプンのらせん構造に取り込ませることは無理があります。ヘキサンを使いヨウ素分子だけを抽出しても、デンプン水溶液中でヨウ素分子が水と反応し、ヨウ化物イオンとなります。さらに、ヨウ化物イオンとヨウ素分子が反応し、三ヨウ化物イオンが形成します。この形でデンプンの中に包摂されていきます。
I2 + I− ⇔ I3− K=800
ヨウ化カリウム水溶液にヨウ素を溶かしたヨウ素液には、すでに多量の三ヨウ化物イオンが生成しているので、すんなりとデンプンに包摂されます。
高校でこのデンプンの包摂化合物を取り扱うということを考えると、三ヨウ化物イオンの直線型が限度だと思います。五ヨウ化物イオンは、構造などを考えると手に負えません。名前だけの紹介程度だと思います。
化学同人の「分子の世界」(113頁 1985年)からの引用
分子で寵をつくって,それに電荷移動力が働いてできた「包接化合物」と呼ばれる一群の分子間化合物がある。それにはさまざまなものがあるが,最も身近な例として,ヨウ素デンプン反応でできる美しい青紫色の物質を取り上げよう。小学校でジャガイモの中からデンプンの白い粉を取り出す実験をした経験をもっている読者は,それにヨウ素を作用させると,美しい色調の変化が生じたことを思いだすだろう。この現象は,次のような理由に基づいている。ヨウ素(T2)は代表的なアクセプターである。これをデンプンの分子(下図)に触れさせると,そのラセン状高分子の中にヨウ素分子が入り込んで電荷移動を起こし,美しい青紫色を呈する。このように、ある種の分子が多種の分子を包み込んでできた化合物が包摂化合物であり、多くは電荷移動錯体の一種である。
上記のヨウ素分子も三ヨウ化物イオン又は五ヨウ化物イオンに置き換えなければなりません。
(PDFは省略)
07A−036
差出人:山本 喜一
送信日:08年1月10日
件 名:ヨウ素デンプン反応
こんにちは、山本です。
佐藤さんPDFファイルをありがとうございます。早速読ませていただきました。この田仲論文のいくつかのポイントをまとめてみました。
(1)ヨウ素デンプン反応の機構について詳細がわかり始めたのは1970年代の後半からである(この論文は1980年)。
(2)ヨウ素デンプン反応は電荷移動型の相互作用によるものではない。
(3)ヨウ素はI3-としてらせんに取り込まれ、80%はI5-になる。
I5- + I- ←→ 2I3-
(4)I3-やI5-は励起することによって光を吸収し、ヨウ素デンプン反応を起こす。
藤田さんのメールには、I3-やI5-から電荷がデンプンに移動して錯体を作り、光を吸収するということがかかれています。これは田仲論文の(2)と異なる考えですが、藤田さんの資料の方が新しいので、研究が進んでわかったのかもしれません。
今日、私も資料を調べてみたところ、添付PDFのような中原さんの論文が見つかりました。これは1995年の「化学と教育」にあったものです。デンプンにI2が取り込まれること。そして、デンプンから電子がI2に移動しI2-になって光を吸収すると書いてあります。(藤田さんのメールには、ヨウ素の電荷がデンプンに移動すると書いてありますが、電荷の移動はその逆になっています。)中原さんが、田仲論文や藤田さんがあげてくれた本を知らなかった可能性もあるでしょう。
藤田さん、もし余裕があれば、文献の該当ページをPDF等の何らかの方法で送っていただけないでしょうか。よろしくお願いします。
(PDFは省略)
07A−037
差出人:藤田 勲
送信日:08年1月12日
件 名:RE:ヨウ素デンプン反応
藤田です。
私の紹介した書籍の基になっている参照文献(J.Chem.Phys.1954)は佐藤さんの紹介しているものよりもずっと古く当てになりそうもありません。ヨウ素でんぷん反応の部分は同じ著者の『包接化合物の化学』(1969)のほとんど焼き直しです。それから、『糖質』の方は何のデータからの引用なのか、参考文献が記されていません。ですから皆さんにこの書籍の該当部分のコピーをお送りする価値はないと考えています。もっとも、私にはどうやってPDFファイルにするのかも分かりません。
さて、佐藤さんと山本さんの紹介してある資料を読んでも分からないことがいくつかあります。
@中原論文(1995年)ではI2分子とデンプンの電荷移動相互作用で青色発色が起こるとあり、田仲論文(1980年)ではデンプンに取り込まれたI3−またはI5-自身の発色だとあります。これはどっちが正しいのでしょうか。
A田仲論文ではヨウ素分子だけではヨウ素デンプン反応が起こらないとありますが、それはなぜかということです。@と同じような質問ですね。
結局は、水溶液中のデンプン内のヨウ素の存在状態がわからないと結論が出ないのかもしれません。
07A−038
差出人:山本 喜一
送信日:08年1月14日
件 名:ヨウ素デンプン反応
こんにちは、山本です。
藤田さん、ありがとうございます。佐藤さんから田仲論文を送ってもらい、藤田さんから参考文献を紹介したもらったときには、教科書が間違いではないかと思いました。しかし、いろいろと考えてみますと、藤田さんと同じような疑問が浮かんできました。
(1)田仲論文はI3−やI5−を持つ化合物との類推でヨウ素デンプン反応を解明しようとしていますが、デンプンのらせんをヨウ素を並べる「入れ物」と見なしているのではないだろうか。ヨウ素とデンプンとの相互作用(電荷移動や配位子場のようなもの)を無視しているのではないだろうか。
(2)中原論文はヨウ素と溶媒との相互作用がヨウ素とデンプンとの間にも起こっていると決めつけているのではないだろうか。ヨウ素とデンプンが電荷移動を起こしているという証拠が示されていないのはなぜか。
という疑問です。
なお、理化学事典第5版(1998)には次のように書いてあります。
・・・・・・(ヨウ素デンプン反応は)ヨウ素イオンの存在かでいっそう顕著に
呈色する。・・・・ヨウ素分子がらせんの内部に包接されるためと考えられている。
この説明もやはりI2分子がらせんにはいるという内容です。理化学事典の第4版にはどんな説明があったのでしょうか。私は第4版を持っていませんので比べられませんが、第5版と同じ説明なら、1998年時点でこの項目の説明が見直されなかった可能性があると思います。
いずれにせよ、よくわからなくなってきました。いろいろなMLに投稿して意見を聞いてみようかと思っています。
07A−039
差出人:藤田 勲
送信日:08年1月15日
件 名:ヨウ素デンプン反応について
藤田です。
身近なヨウ素デンプン反応ですが、分からないことが多いですね。私はヨウ素が溶液中で分子状態なのかイオン状なのかを調べよう思い、以下の実験をしました。
@蒸留水にヨウ素を加え、加熱して茶色になったところで冷やした溶液の電導度を測定し、その溶液にデンプン溶液を加えました。
結果 電導度 25 μS/cm(蒸留水は6μS/cm)
デンプン液 青
Aエタノールにヨウ素を溶かし、その1mlを5mLの水にくわえたものの電導度を測定し、その溶液にデンプン溶液を加えました。
結果 電導度 55 μS/cm(エタノールのみではほぼ24μS/cm)
デンプン液 青 (エタノールと水の等量溶液ではほぼ30μS/cm)
Bエタノールにごくわずかにヨウ素を加えたものにデンプン溶液を少量加える。
結果 茶色ににごる。→さらに水をこのエタノール溶液の2倍量を加えると青紫になる
以上の結果から何が分かるでしょうか。@からは電導度の上昇は次の不均一反応で三ヨウ化物イオン(I3-)が生成したとも思えますが、Aの結果はそれを否定しているようにも思われます。
I2 + H2O ←→ HIO + HI
HI + I2 → H+ + I3-
@での伝導率の上昇は水の電離にヨウ素が何らかの促進する影響を与えていることは間違いありませんが、それは分極率の大きなヨウ素分子が水の電離を促進したということなのかもしれません。Aのエタノール中でヨウ素は三ヨウ化物イオン(I3-)を生成しているとは考えにくいと思います。この伝導率の上昇もOH基の分極効果のような気がします(エタノールの伝導率が文献の8μS/cmよりも異常に大きいのはセンサー部分は水で濡れていたからでしょう)。この時のエタノール中にあるのは分子状態のヨウ素の可能性が高いと思います。Bではデンプンも水中に分散しなければ呈色しないことを示していると思います。
つまり、ヨウ化物イオンが水中になくても、ヨウ素が水中に分散していればヨウ素デンプン反応が起こるのではないかと私には思われます。もちろんヨウ化物イオンがあれば速やかに三ヨウ化物イオン(I3-)として分散して呈色するわけです。もしそうだとすると、デンプンラセン内のヨウ素はヨウ素分子でも構わないことになります。
みなさんはどう思いますか。
07A−040
差出人:山本 喜一
送信日:08年1月15日
件 名:ヨウ素デンプン反応
山本です。
私もそのうちヨウ素の実験をしようと思っていたのですが、藤田さんに先を越されてしまいました。ヨウ素を水に溶かしたときには、HIOやHIなどが生じていることは間違いないと思います。共立出版の「化学大事典」のヨウ素の項目には次のような平衡定数がでています。
I2 + H2O ←→ HIO + H+ + I− K=4.6×10^−13
I2I− ←→ I3− K=1.39×10^−3
I2 ←→ I+ + I− K=1.90×10^−5
この平衡でわずかに生じたI3−がデンプンと反応している可能性もあるし、I2がデンプンと反応しているのかもしれないと思っています。
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