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03A−091
差出人:野中 直彦
送信日:04年2月28日
件 名:離型剤(とんぼ玉)について
離型剤は基本的には、粘土です。ですから、SiO2とAl2O3の混合物です。
とんぼ玉の質問コーナーは役にたちます。覗いてみてください。
http://www.tonbodama.com/q&a/
離型剤は
<引用>
離型剤 房州粉:土粉:クレー粉=5:3:1
またははボーシ粉:5、土粉:3、クレー粉:2
(ボーシ粉・土粉・クレー粉を別々に買って自分の秘伝の離型剤を調合しても良
いでしょう。)
<以上>
の割合だそうですが、、茶色の「との粉」も使えます。
離型剤の使い方は
http://www3.plala.or.jp/tombo/koubou/kyousitu/rikeizai.htm
が参考になります。
なお、鉄心は、ホームセンターで売っている「番線」(太いの、できるだけ曲がっていないもの)を買ってきて、1本を4つに切断するのがいいです。1組200円で、10×4=40本できます。
03A−092
差出人:澤田 史郎
送信日:04年2月28日
件 名:RE:離型剤(とんぼ玉)について
大阪の澤田です。
鉄線からトンボ玉がとれないのは、ガラスを融解させた温度が低くて巻き付けたときに離型剤に力がかかりはがれてしまうからだと思います。対策としては なにより練習と離型剤の乾燥を上手くやることだと思います。私はやや薄目の離型剤つかっています。鉄線につけた後、放置せずに直接バーナーで乾燥させていますが鉄線を動かしながらまんべんなく加熱するようにしています。
佐竹ガラスで見学させてもらったときはやや濃いめの離型剤(野中さん紹介のHPにあったようにマヨネーズよりやわらかいくらい)を強力なバーナーで一気に加熱して使っていました。学校のバーナーではうまくいかないのでやや薄目にして1本ずつ時間をかけてつくっていますが10本に1本くらいはうまくいかないことがありますね。野中さんはどのようにしているんですか?
ps
うちでは鉄線は自転車のスポークを使っています。昔は廃物の自転車から切りとっていましたが、自転車屋でやすく分けてもらっています。100本で1000円以下だったと思います。
03A−093
差出人:杉山 剛英
送信日:04年2月29日
件 名:東レ
杉山剛英です。
風間先生、東レお見事です。20万円では少ないかなと思ったりします。東レそのもので気になるのですが、去年は生物・地学で授賞が1件もなく、今年も総授賞件数が8件くらいしかないのですが、いったいどうしたのでしょう。
あと、伊藤家の食卓やトリビアの泉というパクリ番組はやはり腹立ちますね。ただ、ご紹介だけならともかく不当な賞金まで付いてくるんですから。
03A−094
差出人:野中 直彦
送信日:04年3月3日
件 名:過冷却の道具
風間さん、おめでとうございました。わたしも、 過冷却用のクーラーボックスは大枚をだして買いましたが、まだ、実験をしていません。まことに勝手ですが、あの時の資料をメールで送ってもらうわけにはいきませんか。東レの資料をみればいいのですが。よろしくお願いします。
03A−095
差出人:野中 直彦
送信日:04年3月3日
件 名:トンボ玉の離型剤の扱い
基本的には、離型剤は、前日につけて、24時間以上乾かすことを心がけています。あと、どうしても強い炎ではがれてしまうときは、普通のブンゼンバーナーで余熱をしてから使います。(ガラス棒もブンゼンバーナーで余熱をすると、バリバリわれません)
03A−096
差出人:藤田 勲
送信日:04年3月14日
件 名:ダイオキシンのことなど その2
藤田です。
前述の『環境ホルモン』(高杉暹ほか、丸善ライブラリー、1998)をほぼ読みました。横浜市立大の井口泰泉氏は高杉氏のお弟子さんだったのですね。高杉氏は日本における実験内分泌学の草分けの一人で、マウスによる「連続発情」の研究をしてきた人です。
(1)環境ホルモン問題の源流
〜合成女性ホルモン ジエチルスチルベストロールの悲劇〜
(a)ジエチルスチルベストロールの生殖器官への影響
高杉氏の研究した「連続発情」とは、マウスに周期的にくる自発的な発情期を、出生直後にエストロゲンを与えることで作り出した、卵巣に依存しないの持続的な発情状態のことです。成熟したマウスは出生直後のエストロゲン投与が原因で正常な性周期を示さず、毎日発情することになります。この時にどんなことが起こるかを高杉氏は調べたのです。この結果、マウスは生殖器官に不可逆的な異常が起こり、雌では増殖し続ける膣上皮がガン化し、雄では停留睾丸、精巣の上皮退化などの異常が見られたといいます。さらに、どちらのマウスも免疫機能の低下や行動の異常が見られました。この他、この「連続発情」とそれに続く異常は生後3日以内のエストロゲン処理でないと起きない、つまり連続発情の誘導には臨界期と呼ばれる特別な期間があることも分かりました。
その後、合成エストロゲンのジエチルスチルベストロール(DES)も天然エストロゲンと同様の効果があることが分かり、高杉氏は1964年に当時の留学先の同僚(?)のバーン氏と共に、出生直後のマウスは人の妊娠3〜4ヶ月の胎児に相当するから、胎児に対するエストロゲン処理は将来、生殖器官系に重大な異常を引き起こすと警告するのです。今から40年も前のことですが、環境ホルモン問題を予見するような警告ですね。
DESは1938年にイギリスの内科医によって開発され、当時の産婦人科領域では無限の可能性を持つ薬として非常に注目されたといいます。妊婦のエストロゲン不足が原因の流産防止の目的で切迫早産治療の治療薬として使用された他、更年期症、老人性膣炎、不妊症、さらには前立腺ガンの治療薬としても用いられました。また、家畜を太らすためのホルモン剤としても使われた経緯があります。
しかし、当時の医学界や製薬業界からは何の反響もなく時は過ぎていきます。そして6年後の1970年になって妊娠中にDESを服用した母親から生まれた女性に膣ガンが発生することが明らかになります。ハーベストとスカリーは、当時老人に発症すると考えられていた膣ガンを15〜22歳の低年齢で起こした女性の、8人中の7人までが胎児期にDESの影響を受けていたと発表したのです。そして彼らはその後10年間にわたってDES処置を受けた母親から生まれた女性の膣ガン発生調査を行い、胎児期に受けたDESと出生後の膣ガン発生の間に相関のあることを疫学的に明らかにしていくのです。
DESは1971年には流産防止用には禁止されますが、使用されていた30年間に600万の男女がDES投与環境の胎内から生まれたといわれています。現在では胎児期にDES処理を受けると、男性では停留精巣や精子減少、精巣ガン、前立腺異常などが、女性では不妊、子宮機能不全、卵管や卵巣の異常など、男女共に内性器の異常を含んだ不妊になる確率が高くなることが明らかになっています。
(b)ジエチルスチルベストロールの脳神経への影響
また、生殖器系だけではなく脳神経系への影響も報告されています。それによると胎児期にDESにさらされた女性では性的空想、性的反応や性的関係が両性愛あるいは同性愛の傾向にあることが明らかになっています。
人の脳の性分化、すなわち性中枢の男女差の出現も胎児期に起こります。男の胎児では妊娠8週から精巣にアンドロゲンが分泌され始め、16週を最高に26週まで多量に分泌されますが、この胎児期におけるアンドロゲンシャワーが男の脳にするのではないかと考えられています。動物実験の結果から、出生直後のマウスの脳(視床下部)は芳香化酵素(アロマターゼ)の活性が高く、脳神経細胞内に入ったアンドロゲンはこの酵素で芳香化されてエストロゲンに転換することが分かっています。つまり、男児における胎児期のアンドロゲンシャワーは胎児の血液を通って神経細胞に入り、視床下部で芳香化されてエストロゲンに変わり、その脳内エストロゲンが元々「女の脳」型にプログラムされている性中枢の神経機能を「男の脳」型に変えると考えられています。
一方、胎児の血液中にはエストロゲン結合タンパク質があるため、仮に女児の胎児からエストロゲンが分泌されたとしても、エストロゲンはこのタンパク質と結合していると脳内神経細胞には入れないため脳内でエストロゲン作用は発揮できないことになります。このため、普通は女の胎児の脳は「男の脳」に変わることはないのです。しかし、DESのような合成エストロゲンはアンドロゲンと同様にこの結合タンパク質と結合しませんので、神経細胞内に容易に入ることができ、ここで脳内エストロゲンと同じように「女の脳」を男性化してしまうのです。現在、胎児期にDESにさらされた女性の性的志向の男性化現象はこうして起こるのだと考えられています。つまり、不思議なことに性分化における「男の脳」は胎児期の脳内エストロゲンが作っているのです。
(C)ジエチルスチルベストロールの悲劇から学ぶべきこと
DESの悲劇はそのまま現在の環境ホルモン問題につながっていますね。大事はポイントは2つあると思います。
一つはDESに限らずエストロゲン様の働きをする物質は、その作用する時期が胎児期だと生殖器官などに不可逆的な影響を与えるという点です。この臨界期があるという点が大切だと思います。大人には影響が少なくても胎児にはきわめて甚大な影響を与えるということを「DESの悲劇」は教えています。しかも、その深刻な障害の多くは大人になってから現れるのです。
もう一つは、ホルモンの撹乱は生殖機能だけではなく神経系や免疫系にも重大な影響を与えるという点です。DESが女の脳を男の脳に変えてしまうように、環境ホルモンは脳の発達に重大な影響を与える可能性があります。ホルモンは成長、分化、生殖機能、糖脂質代謝、電解質平衡、神経、免疫系の発育や機能に深く関わっています。生体の恒常性(ホメオシタシス)の維持には内分泌(ホルモン)系と神経系と免疫系が一体になって働いているのです。環境ホルモンは単に生殖毒性にとどまらない広範な毒性を生体に与えるという点を忘れてはなりません。
DESは1971年に流産防止用には禁止されたものの、1979年までは家畜の肥育に使われていましたし、流産防止以外にも臨床的に多用されていたといわれています。1,2−ジフェニルエチレンの誘導体であるDESは体内では代謝されにくいため、食肉や家畜の排泄物を通して環境に放出されていたと考えられています。つまり、DESは医薬品としてだけではなく、その一部はすでに環境ホルモンになって地球環境を汚染していたといえるのです。その意味でも環境ホルモン問題の源流はDESにあると考えられます。
このDESの構造や活性については後で詳しく述べたいと思います。以上は『環境ホルモン』(高杉暹ほか、丸善ライブラリー、1998)のほかに、『環境ホルモン&ダイオキシン』(『化学』編集部、化学同人、1999)などを参考にしました。
03A−097
差出人:林 正幸b
送信日:04年3月16日
件 名:溶液の体積減少
おはよう、林です。
本格的に春めき、昨日は1日庭の手入れをしました。沈丁花もよく香っています。散歩もジャンバーが不要になりました。
藤田さん、「環境ホルモン」のまとめ、参考になります。脳の男性化に女性ホルモンが活躍するとは驚きです。エストロゲンとタンパク質の結合は「奪われし未来」にも出てきますね。
前にも触れた溶液の体積減少について一応のまとめをしてみました。くわしくはアルケ資料として送りますが、すこし紹介してみたいと思います。
水ではその水素結合の方向性から、固体はもちろんのこと、液体でも大きな空間を抱え込んでいます。イオン性物質を溶解すると、イオンとの間に極性による引力がはたらくようになり、それによって水素結合を壊すためのエネルギーは補われて水素結合が減少し、その方向性の制約が小さくなって体積が減少する。また同じく水素結合をつくる分子性物質を溶解しても、異なる相手との水素結合が方向性の制約を小さくして体積減少すると考えられます。
1価よりも2価のイオンの体積減少が大きいです。たとえば塩化カルシウムは40%の濃度で14.0%も減少します。また1価のイオンでも水素イオン(オキソニウムイオン)と水酸化物イオンは体積減少が大きいです。硝酸は60%の濃度で8.1%、水酸化ナトリウムは40%で11.3%減少します。これだけ大きいと簡単な実験でもそれを検出できます。そして溶解をのぞくひとつの手がかりになります。
またアルコールでは、メタノール、エタノールともに50%の濃度で3.5%体積減少します。
アンモニアが体積増加することは知っている人が多いと思いますが、16%の濃度で3.1%増加します。アンモニア分子は単独では分子1つあたり1つの弱い水素結合しか形成できないが、水分子が存在するとより強い水素結合を複数形成できて、かえって方向性の制約が大きくなるからと考えます。
1年ほど前にエントロピーのデータを整理し始めたことがあるのですが、これも実に面白いことになっています。近日中にまとめをしておきたいと思います。双極子モーメントにも関心を寄せています。
野中さん、すこし前になりますが「70%アルコールを50%アルコールにする」計算はかなり大雑把ですね。モル濃度ならそれでよいのですが、質量パーセント濃度(や体積パーセント濃度)ではもうすこし厳密な計算が必要ではないでしょうか。卒業生もそのあたりがひっかかっていたのかもしれません。
ではまた。
03A−098
差出人:林 正幸
送信日:04年3月18日
件 名:エントロピー考
こんばんは、林です。
冬が一時戻ってきてしまいました。しかし明日は終業式、そして明後日は春分の日ですね。あぜ道を歩くとつくしを見かけます。そして東京では桜が開花したとか・・・、春は確実にやってきています。
前のメールで触れたエントロピーについてのまとめができ、ホームページにも掲載しました。298K(25℃)、1atmの下におけるさまざまな物質1molの生成エントロピーについては、単体を基準にする数値なら化学便覧のデータから簡単に計算できます。具体的には次の関係式を使います。
ΔS =(ΔH−ΔG)/T
しかしいちいち絶対温度 T で割るのは面倒ですので、TΔSの数値を中心に見ていきます。
TΔS = ΔH−ΔG
私はこれを原子を基準にする生成エントロピーに換算してみたのです。それには便覧にある単体が原子に分解するときのデータを利用すればよいわけです。そしてその結果は私にとって驚くべきものでした。そこには「個数の原理」が貫かれているのです。このことは単体を基準にしていては見えてきません。
気体の生成エントロピーについては、次のような関係式にまとめられます。
TΔS = −32×( 原子数 − 1 )[kJ/mol]
(エントロピー自身に直すと、 ΔS = −107×( 原子数 − 1 )[J/K・mol])
たとえば四原子分子のアンモニアは
−32×3=−96
と計算できるのですが、実際には−90.9であるといった具合です。
定温定圧の下における気体のデータですから、アボガドロの法則が成り立ちます。したがって原子を含めて気体では、298K、1atmの下において、粒子1molが持つエントロピーは107J/Kであり、粒子がいくつの原子からできているかには概ね無関係であると言えます。
固体の生成エントロピーについては、 次のような関係式にまとめられます。
TΔS = −42×(原子数)[kJ/mol]
(エントロピー自身に直すと、 ΔS = −141×(原子数)[J/K・mol])
たとえば4原子組成の塩化アルミニウムは
−42×4=ー168
と計算できるのですが、実際には−164.6であるといった具合です。この場合も原子1molあたりエントロピーが141J/K減少するという「個数の原理」が見られます。
気体の場合と結びつけると、1原子組成では、気体が固体になるとき物質1molあたりでエントロピーが141J/K減少する。2原子組成では、原子が気体になる段階で107J/K減少するので、それが固体になるとき(141+34)J/K減少する。3原子組成では、原子が気体になる段階で(107×2)J/K減少するので、それが固体になるとき(141+34×2)J/K減少する・・・。
定温定圧の下における気体と固体の生成エントロピーの差は、融解エントロピー ΔSm と蒸発エントロピー ΔSv の合計です。
ΔSm + ΔSv = 141 + 34( 原子数 − 1 )[J/K・mol]
つまり、298K、1atmの下において、融解エントロピーと蒸発エントロピーの合計は、原子が1つ増えるたびに34J/K・molずつ大きくなる。
液体はやはり複雑な面がありますが、それでも「個数の原理」はそれなりに貫かれています。液体の生成エントロピーについては、原子数が小さい(3まで)場合は
TΔS = −30×(原子数)[kJ/mol]
原子数が大きい(4から)場合は
TΔS = −33×(原子数)[kJ/mol]
という関係式にまとめられます。たとえば14原子組成のn−ブタンは
−33×14=−462
と計算できるのですが、実際には−459.6であるといった具合です。そして水素結合がはたらいたり、分子の対象性が高いとより減少する傾向があります。
より詳細な内容については、ホームページを参考にしてください。
http://www.water.sannet.ne.jp/masasuma/masa/nc2-2.htm
なおこれも次のアルケ資料として送るつもりです。
ではまた。
03A−099
差出人:林 正幸
送信日:04年4月5日
件 名:メタノールの燃焼熱
こんにちは、林です。
皆さん、いかがお過ごしですか。実は家内もこの春に退職して新しい生活が始まりました。今朝は2人で散歩してから、喫茶店で朝食をしました。
前から書いていた燃焼熱の計測ですが、いろいろ工夫をしてみましたが結局のところ原形に近いところに落ち着きました。この実験では生成する水はほとんど凝縮しませんので、メタノールの燃焼熱は727kJ/molではなく、次の熱化学方程式のように645kJ/molでした。
CH3OH + (3/2)O2 = CO2 + 2H2O(気) +645kJ
したがって初期の段階から効率は80%を越えていたのです。そして調子のよい計測では90%に近づくことができるのです。
詳しくはホームページを見てほしいのですが、熱媒体には水ではなくLアングルを2cmに切断したアルミ片523g(缶の熱容量を加えると600gに相当する)を使います。これをお菓子の缶に入れ、網を被せて逆さにし、アルコールランプで加熱し、水1000mlを加えて温度上昇を調べるのです。ポイントはアルミ片を均等に加熱することです。それに比べれば断熱材の効果は小さいものです。
典型的な実験データは次のようです。
アルミ片 5.0℃
水 4.8℃
到達温度 9.4℃
燃焼したメタノール 1.26g
これから次のように計算されます。
アルミ片が得た熱エネルギー
0.88×600×4.4 = 2320[J]
水が得た熱エネルギー
4.2×1000×4.6 = 19320[J]
全体の熱エネルギー
21640[J]= 21.64[kJ]
メタノール1molあたりの燃焼熱
21.64×32/1.26 = 550[kJ/mol]
得られた数値は文献値の85%に相当します。
これに絡んで断熱容器をつくるために、発泡スチロールのカッターを自作しました。糸鋸式で40cm角を切り出せる大きなものになりました。また水平にニクロム線を張ってスライスもできます。
ではまた。
03A−100
差出人:林 正幸
送信日:04年4月6日
件 名:蒸気機関車など
おはよう、林です。
このところ講座プラン「物質とエネルギーの世界」の実験の検討を続けています。そこからの話題提供です。
熱エネルギーに仕事をさせる分かりやすい例として、蒸気機関車を使うことにし、ナカムラから大枚はたいて購入しました。胴体部に水を入れ、固形燃料で加熱するとやがて動き出します。蒸気も吐いてなかなか面白いものです。ただし機械油を注さないとまさつが大きくて無理です。本当は円形の線路を走らせるとよいのですが、お金の都合でこれは止めました。この機関車を見ながら蒸気エンジンの仕組みを理解させようというわけです。
燃料電池は物質エネルギーを直接に電気エネルギー(と熱エネルギー)に変換する、人類の歴史の中では画期的なものですが、今回は生徒に実験できるようにしました。いたって簡単で、2枚の炭素板に水酸化ナトリウム水溶液を染み込ませたクッキングペーパーをはさむだけです。まず手まわし発電機で2分ほど電気分解して燃料電池にします。するとメロディテスターはもちろんのこと、ソーラーモーターも楽々とまわります。電圧は1.5Vです。
物質が持つ運動エネルギーは、ブラウン運動の観察から熱運動を導入して納得させますが、位置エネルギーについてはどうでしょうか。私はニクロム線の伸長を思い付きました。これは50cmのニクロム線を水平に張り、おもりを吊して電気を流すとおもりが数cm下がって、エネルギーを得るとニクロム線が伸長することが観察できます。電気を切ったときのおもりの戻りも見事です。前にも書いたように、私は位置エネルギーを「引き合う物体どうしがある距離で位置していることに対応して持つエネルギー」であり、距離が大きいほど位置エネルギーが大きい、教えます。つまりエネルギーを得てニッケルやクロムの原子間距離が伸びてニクロム線が伸長する。これは物質が位置エネルギーを持つことの裏付けになるという理屈です。
太陽エネルギーに関心を向けるための大陽炉も製作したのですが、これは次のメールにします。
ではまた。
03A−101
差出人:林 正幸
送信日:04年4月8日
件 名:ひかり玉子
こんにちは、林まさです。
このところ大陽炉にこっています。目的は講座プラン「物質とエネルギーの世界」の中で、太陽エネルギーに関心を持たせるためです。
10年ほど前に部活動で生徒と一緒に、250枚くらいの5cm角の塩ビミラーを、1枚々々レーザーを当てて角度を決めながら固定して大陽炉を製作したことがあります。これは新聞紙が炎上する威力がありました。
今回はもうすこし簡単に作れるものを目指し、等辺台形を貼り合わせる方式を採用することにしました。工作紙で次の等辺台形を12枚ずつ切り出します。
1段目 上底:62mm 下底:104mm 高さ80mm
2段目 上底:104mm 下底:142mm 高さ80mm
3段目 上底:142mm 下底:178mm 高さ80mm
そしてアルミホイルを貼り、粘着テープで貼り合わせます。細かいところは例によって近日中にホームページに掲載するつもりですが、これで焦点距離240mmのパラボラができあがります。
計算では台形の傾きを求めるのに苦労しました。三角公式
a^2 = b^2+c^2−2bc×cosA
を使って方程式をつくります。1段目の場合は次のようです。
64−853B+2841B^2 = 4A^2(726−213B)
ただし A = cos(90−α)
B = cos(115.78−α)
ところがこれは代数的に解くのは困難です。そこで適当な数値を仮定して代入し、次第に解に近づくことにしました。αを大きくすると左辺は小さくなり、右辺は大きくなる。近づいたら比例配分で解を得る。
α = = 17.02[°]
となります。これはプログラムをつくれば簡単にできますが、残念ながら現在の私のパソコンはそこから離れています。逆にその体制づくりの必要性を感じた次第です。
もうすこし苦労話を書くと、いきなりこの形になったのではありません。はじめは焦点距離を40cm、台形は2段で高さが10cmなどとして製作しました。そして計算間違いもしました。上の数値の方は、できたパラボラにレーザーを当てて確認をしたものです。
計算はかなり複雑ですが、得られた数値を利用すれば比較的簡単に製作できます。そして今日は天気がよいので、ゆで玉子づくりに挑戦しました。1時間で完璧なゆで玉子ができました(もうすこし短くてもよいはずです)。いやいやこれは「ひかり玉子」と呼ぶべきでしょう。これはオリンピックの聖火と同じように神聖な食べ物と言えます。
いまポリカーボネートミラーを使って同じものを製作中です。この威力は論を待たないでしょう。また工作紙とアルミホイルを使って短時間でできる簡易型も製作してみるつもりです。ただしこれではひかり玉子はできませんが・・・。
講座プラン「物質とエネルギーの世界」も近日中にホームページに掲載します。
ではまた。
03A−102
差出人:杉原 和男
送信日:04年4月9日
件 名:なぜ理科?
アルケミストの皆さん
ホームページを開設していると,毎日,さまざまなメールが届きます。(最近は,ウィルスの方が圧倒的ですが…)先日,届いたメールを紹介します。
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感想or質問=杉原先生はじめまして!
私は○○××といいます。小学四年生です。
私は理科の勉強はおもしろくて好きですが、
理科ってしょうらいなんの役に立つのかよくわかりません。
算数はしょうらい計算ができるようになるためだし、
国語は漢字が読めるようになったり、ことばの意味がわかるように
なるためだし、社会は自分の地域のくらしをしるためだし、
だけど、理科はなんのために勉強するのですか。
どうか教えてください。
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このメールの質問は,ずいぶんと衝撃的なものでした。
勤務先は,小中高の理科の教師がおり,小学校の教科書や研修内容を見る機会は多いのです。熱心さと丁寧さは,小学校の先生が圧倒的で,教科書も,とても見やすくて楽しそうな内容に満たされています。しかし,学ぶ意義に結びつくような方向にはないようです。小学生の理科だから,興味付けにつながる楽しい実験があればよいということだろうと安易に考えていましたが,質問の小学生は,そういった大人の誤魔化しを見事に見抜いたようです。そういえば,楽しい算数や国語や社会…てあるのだろうかと考えると?ですが,理科は「楽しい事がすべて!」といった開き直りのおもしろ実験で満たされつつあるような気がします。
さて,皆さんなら,この小学4年生に,どのような返事をしますか?私は,不意をつかれたような気持ちで,ずいぶんと悩みました。今の教科書では,多くの児童が,同じような疑問を抱くような気がします。「理科離れ」とは,よく言われますが,児童の納得ずくの判断かもしれません。
03A−103
差出人:山本 喜一
送信日:04年4月16日
件 名:世界がもし100人の村だったら
お久しぶりです。山本です。
今年は化学I(3単位・2年生)を主に担当することになりました。最初の授業くらいは、化学から離れても、生徒が聞いてくれるだろうと思って、「 世界がもし100人の村だったら」というメール(絵本にもなっていますが)を紹介しました。下の文の( )に人数を入れながら、解説し、自分が世界の中ではどれくらいの位置にいて、何ができるのかを考えさせました。
<ここから>
世界がもし100人の村だったら
C.ダグラス.ラミス
今朝、目が覚めたとき
あなたは今日という日に
わくわくしましたか?
今夜、眠るとき
あなたは今日という日にとっくりと
満足できそうですか?
今いるところが、
こよなく大切だと思いますか?
すぐに「はい、もちろん」と
いえなかったあなたに
このメールを贈ります
これを読んだら
まわりが少し違って見えるかもしれません
世界には63億人の人がいますが
もしそれを100人の村に縮めると、どうなるでしょう
100人のうち
(52)人が女性です
(48)人が男性です
(30)人が子どもで
(70)人が大人です
そのうち(7)人がお年寄りです
(90)人が異性愛者で
(10)人が同性愛者です
(70)人が有色人種で
(30)人が白人です
(61)人がアジア人です
(13)人がアフリカ人
(13)人が南北アメリカ人
(12)人がヨーロッパ人
あとは南太平洋地域の人です
(33)人がキリスト教
(19)人がイスラム教
(13)人がヒンドゥー教
(6)人が仏教を信じています
(5)人は、木や石など、すべての自然に霊魂があると信じています
(24)人は、ほかのさまざまな宗教を信じているか
あるいは何も信じていません
(17)人は中国語をしゃべり
(9)人は英語を
(8)人はヒンディー語とウルドゥー語を
(6)人はスペイン語を
(6)人はロシア語を
(4)人はアラビア語を話します
これでようやく、村人の半分です
あと半分は
ベンガル語、ポルトガル語
インドネシア語、日本語
ドイツ語、フランス語などを
しゃべります
いろいろな人がいる
この村では
あなたとは違う人を
理解すること
相手をあるがままに
受け入れること
そしてなにより
そういうことを知ることが
とても大切です
また、こんなふうにも
考えてみて下さい
村に住む人びと100人のうち
(20)人は栄養が充分ではなく
(1)人は死にそうなほどです
でも(15)人は太りすぎです
すべての富のうち
(6)人が(59)%を持っていて
みんなアメリカ合衆国の人です
(74)人が(39)%を
(20)人が、たったの(2)%を
分けあっています
すべてのエネルギーのうち
(20)人が(80)%を使い
(80)人が(20)%を分けあっています
(75)人は食べ物の蓄えがあり
雨露をしのぐところがあります
でも、あとの(25)人は
そうではありません
(17)人は、きれいで安全な水を飲めません
銀行に貯金があり
財布にお金があり
家のどこかに小銭が転がっている人は
いちばん豊かな(8)人のうちの一人です
自分の車を持っている人は
(7)人のうちの一人です
村人のうち
(1)人が大学教育を受け
(2)人がコンピュータを持っています
けれど、(14)人は文字が読めません
もしもあなたが
いやがらせや逮捕や拷問や死を恐れずに
信仰や信条、良心に従って
なにかをし、ものが言えるなら
そうでない(48)人より恵まれています
もしもあなたが
空爆や襲撃や地雷による殺戮や
武装集団のレイプや拉致に
おびえていなければ
そうでない(20)人より
恵まれています
1年の間に、村では
1人が亡くなります
でも、1年に2人
赤ちゃんが生まれるので
来年、村人は101人になります
もしもこのメールを読めたなら、
この瞬間、あなたの幸せは
2倍にも3倍にもなります
なぜならあなたには
あなたのことを思って
これを送った
誰かがいるだけでなく
文字も読めるからです
けれどなにより
あなたは生きているからです
昔の人は言いました
巡り往くもの、
また巡り還る、と
だからあなたは、
深ぶかと歌ってください
のびやかに踊ってください
心をこめて生きてください
たとえあなたが、傷ついていても
傷ついたことなどないかのように
愛してください
まずあなたが
愛してください
あなた自身と、人が
この村に生きてある
ということを
もしもたくさんのわたし・たちが
この村を愛することを知ったなら
まだ間にあいます
人々を引き裂いている非道な力から
この村を救えます
きっと
<ここまで>
これを読んで単に「自分は幸せな境遇のもとで生活しているのだ」と思わせたのでは、このメールの真意は伝わっていないでしょう。ポイントは、
昔の人は言いました
巡り往くもの、
また巡り還る、と
という部分をどう解釈するかだと思います。私はここを、「今、困っている人の手助けをすれば、将来自分が困ったときに助けてくれる人が現れるということだ」と説明しました。
「学校にも通える、文字も読める、食べ物にも困らない。そんな生活をしている君たちは、もっと勉強すれば、困っている人をたくさん助けることができるはずだ。そして、それは自分のためでもある。」そんなことを最初の授業で言ってみました。
この文章と私の説明がどれくらい伝わったのかを知るために、次のような問いを作って書かせたのですが、「戦争」とか「差別」とか、ありきたりの答えしか書いてくれませんでした。もっと本音を書かせる問にすべきだったと思っています。
問 「人々を引き裂いている非道な力」とはどんなものだと思いますか。できるだけたくさん、具体的に書いてください。
みなさんはどんな授業開きをしましたか?
03A−104
差出人:野中 直彦
送信日:04年4月18日
件 名:ウィルス対策
ここのところ、ウィルスがたくさんやってきます。私のパソコンは、macafeeのウィルススキャンで対応しているために、outlookの何とかがすぐに感染してしまい、送受信がうまくできなくなります。そこでの対応ですが、最近やっと覚えたのですが、windowsのアクセサーの中にある、システムツールのシステムの復元を使っています。これで、outlookに感染した分はそれ以前に復元でき、メールなども消すことなく戻ります。
今年も岐阜の高山から、遠く下呂市(先に町の方が統合してしまいました)に1時間、往復で2時間通っています。1日の活動時間の内、2時間を車の中にいることが大変です。学校では、3年生の担任と学年主任になり、進路面でかなり多忙になりつつあります。(たった1学年3クラスの小さながっこうでもやることは結構あります)また、今年は、生物T(新課程)、情報A、化学1B、物理Uとなんとも変則な授業をもっています。久しぶりの物理で、予習があり、情報なる授業もシステムやコンピュータのメンテナンスとこれまた、いろんなことをやっています。
次期アルケレポートは送るように準備しています。
03A−105
差出人:林 正幸
送信日:04年4月20日
件 名:理科を学ぶ意義
こんにちは、林です。
春もたけなわになってきました。日曜、月曜と夫婦で出かけました。この日程の取り方は2人ともフリーであるおかげです。日曜は長男の子どもの「はし祝い」(関西では「お食い初め」と言うのですね)で神戸まで、そしてその後京都にもどり、昔の都ホテル(今はウエルティン都ホテル)に宿泊しました。学生時代の印象では、都ホテルはとても庶民が利用できるようには思えなかったのですが、格安で驚きました。月曜は近くの平安神宮、南禅寺(学生時代はこの近くに下宿をしていた)を散策してから、比叡山に行きました。小雨が降る中でかえって雰囲気があり、延暦寺の根本中堂には感動を覚えました。
さて私としてはこのところ仕事(「遊び」かも!)は一段落しています。「物質とエネルギーの世界」が一応の完成を見たからです。そして新しい講座プランとして、今年中に「元素と原子の発見」「原子はどのように結合するか」をつくろうと考えました。前者には化学史と哲学を組み込みたいと思います。でもその前にすこしコンピュータの勉強をするつもりです。
杉原さんが理科を学ぶ意義の希薄さについて書いています。確かに「楽しい事がすべて!」では不十分ですよね。愛知でも「面白ければよい」という論調があります。反論すると「教師が面白いと感じればそれでよい」という返事が返ってきます。教師が面白いと感じるのは学ぶ意義も含めてのはずだからというわけです。しかしこれでは議論が深まりません。もうひとつの問題は、サークルにしろ研修にしろ、実験は面白いし、即役に立つので歓迎されます。それに高校では格差があり過ぎて、ある学校の授業プランを検討しても他の多くの教師は別の世界になってしまいます。これが「面白い実験」に偏重する傾向を産み出します。もちろんこれは重要な必要条件ではあるわけですが・・・。
前にも書いたのですが、私が新任のころは教研で「何を、どのように、何のため、誰のために教えるのか」とよく言われました。これは分かりやすい提示です。学ぶ意義とは「何のため、誰のために教えるか」です。
私のいくつかの思いをまとめてみます。第1には「生活や産業に役立つ」です。科学と技術を分離して考える人たちもいますが、私は科学・技術と一体化して捉えています。つまり科学が生活や産業の中でどのように活かされているかを積極的に教えたいと考えます。
第2は「社会の問題を理解し、展望を切り開く」です。環境問題を例に取れば明白かと思います。ここで私が強調したいのは、「市民のために奉仕するエリート」の重要性です。なかには「エリート教育」と聞くだけで毛嫌いする人も居ます。しかし現代の問題は複雑で、それを理解し、自ら展望を切り開くには高い能力が要求されます。企業の利益にのみ奉仕するのではなく、肝心なところでは市民の立場に立てるエリートを、私たちの手で育成したのです。それとその提起を受け止められる市民の両方が必要です。
第3は「教養として人生を豊かにする」です。「学問は心の糧である」と言った哲学者がいます(古代ギリシャですが、名前を覚えていない)。「宇宙の成り立ち」や「生命の神秘」にも思いを馳せることができるような、あるいは実験やものづくりを趣味にできるような豊かさです。ちなみに私は「知識と共に科学的な思考力を習得させたい」と考えていますが、これは「何を、どのように」に入れています。
「理科離れ」が言われて久しく、その対策も久しいのすが、杉原さんの指摘のように、その中身は限定的です。そして私自身が現在その限界を超える実践の難しさを改めて感じています。プランをつくることはできるのですが、それが受け入れられる場はできていくのだろうかと・・・。
ではまた。
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