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01A−061
差出人:山本 喜一
送信日:01年9月23日
件 名:テロと原発
こんにちは、山本です。
四ヶ浦さん、文化祭も学会発表も盛況だったようですね。私も新しい学校でそのうち、トンボ玉を文化祭でやろうと思っています。
ところで、アメリカのテロはショックでしたね。テロといえば、機関銃とかロケット砲とかの兵器を使って攻撃するものだとばかり思っていました。しかし、民間機をハイジャックして、それで体当たりするとは誰が予想したでしょう。さらに、激突された貿易センタービルが数十分の後に跡形もなく崩壊するなんて・・・。これも、予想できなかったのではないでしょうか。警察も消防署も予想できなかったから、救助に入った人まで巻き添えになってしまったのでしょうね。
あの激突の後、米軍はいろいろな場所の警戒を強めました。原発もその一つに入っていたことをご存じでしょうか。私はそのことを1回だけTVニュースで見ました。そのことについてもっと知りたくて、いろいろな新聞を読みあさりました。関連がでていたのは、9月13日の読売新聞でした。といっても、アメリカの原発護衛についてではなく、日本の核燃料サイクル基地の航空機防護についてです。その記事によりますと、六ヶ所村のこの基地で、F4EJ戦闘機をコンクリート壁に激突させる実験が行われたそうです。戦闘機の重量は22トン。時速560kmでコンクリート壁に激突させたところ、厚さ80cmだと貫通するというデータが得られたそうです。今回、貿易センタービルにつっこんだ旅客機は重さ190トン。時速500km前後だったようです。衝突のエネルギーはこの実験よりも大きかったはずですね。
日本の核燃料リサイクル基地や原発などが、どれくらいの厚さのコンクリート壁でできているか、また、原発の格納容器はどれくらいの強さがあるか分かりません。しかし、大型の旅客機が(それも燃料を満タンにして)つっこんできたら、ひとたまりもないのではないでしょうか。まして、戦争にでもなって、ミサイルのようなもので原発がねらわれたら大惨事を引き起こすでしょう。
あのテロ事件以来、アメリカの報復作戦とそれに協力体制を作りつつある日本の政治の話が続いています。しかし、原発が攻撃対象になったら大変なことになるという話はまったくでてきませんね。みなさん、どうお考えですか。
01A−062
差出人:岡田 晴彦
送信日:01年9月23日
件 名:白金と王水のその後1
アルケの皆さんご無沙汰しております。名古屋の岡田です。
白金と王水の反応について温度の影響を確認する実験を暑い時期にすることになっておりましたが、9月22日(土)のモルの会でやっとすることができました。(林先生にも確認していただきました)
気温が27℃でしたので、水温は25度前後でしょう(不覚にも水温を測定しませんでした)。会が始まるときに試験管に白金箔と王水を入れておき、会が終了した5時間後に見たところ、白金箔が溶けていました!昨年の12月から今年2月までは何度実験しても溶けなかったのですが、(四ケ浦さんに教えていただいた方法、ホットプレートにシャーレを置き、王水を入れた上に白金箔をかぶせるようにして加熱した場合には溶けました)その他、試験管に白金と王水を入れて加熱しても溶けませんでした。文献には白金は熱王水に溶けるとありましたが、この王水はある範囲の温度であるようです。冬場の10℃〜15℃くらいでは溶けないが、ある温度の範囲内で(まとまった時間で)溶けるようです。
恒温槽を借りることができて、時間がとれたら検証する実験をしたいものです。結果が出ましたら、また報告します。
01A−063
差出人:鈴木 久
送信日:01年9月23日
件 名:エントロピー学会のお知らせ
山本さん アルケのみなさん こんにちは 鈴木 久です。
> あのテロ事件以来、アメリカの報復作戦とそれに協力体制を作りつつある日本
> の政治の話が続いています。しかし、原発が攻撃対象になったら大変なことにな
> るという話はまったくでてきませんね。みなさん、どうお考えですか。
理科MLかどこかで読んだような気がします。原発は、そういう意味でも大変なものですね。
ところで、山本さんのことだから知っては見えると思いますが、他の方のためにも念のために情報を書き込みます。
10月6日(土) 14時〜 8日まで
第19回エントロピー学会シンポジウム
東京大学教養学部13号館(京王井の頭線駒場東大前駅)
3日間通し 2500円 1日・学生1000円
メインシンポジウム 『循環型社会』を問う
エントロピー学会事務局(045・562・2279藤田)
もし興味のある方は参加してみてください。
なお、
9月29日(土)
エントロピー学会名古屋懇親会9月例会
15時〜18時 名古屋工業大学会館3階会議室(鶴舞駅)
会場カンパ500円(学生無料)
テーマ 循環型社会を問う
問い合わせ 052−735−5284大里
何とかテストを早く作ってしまって参加したいです。どちらも、週刊金曜日の9月21日号掲示板に載っていたものです。
それでは。
01A−064
01A−065
差出人:藤田 勲
送信日:01年9月24日
件 名:RE:塩化物イオン(その1)
こんにちは、藤田です。
塩素陽イオンなどハロゲン陽イオンのことを調べてみましたので、良かった読んでみてください。コットン・ウィルキンソン「無機化学(原著第4版)上」(培風館、1987)によれば、X+(ハロゲン陽イオン)の単塩があるという証拠はない、とのことです。しかし、I+イオンを含む錯体やX2+とX3+などのポリハロゲン陽イオンは存在することが分かっています。
(1)I+イオンを含む錯体について
X+(ハロゲン陽イオン)の単塩は不安定で存在しなくても、錯体でならば存在します。まず、この錯体のことを調べてみました。I+イオンを含む錯体とは、ピリジン(C5H5N、通常pyと略す)を配位子としたものす。その一つは、2個のピリジンのN原子がI+イオンに配位した[Ipy2]+イオンを含む[Ipy2]+X-(X=NO3-、RCO2-)という塩です。各ピリジン環は同一平面上にあります。この塩はイオン性で、クロロホルム中で電気分解すると陰極でヨウ素を生じるそうですから、I+イオンが還元を受けていることになります。水は求核性が強いのでこの錯体は分解してしまうのでしょうか?水中の挙動は不明です。
[C5H5N→I←NC5H5]+ ・X-
陰極 2[Ipy2]+ + 2e- → I2 + 4py
この錯塩はクロロホルム中で銀塩とヨウ素を過剰のピリジンで処理して作るそうです。銀塩がクロロホルムにどの程度溶けるのか分かりませんが、沈殿したヨウ化銀を除いて溶媒のクロロホルムを気化させれば錯体が得られるようです。これはヨウ素の不均一化反応ですね。
AgNO3 + I2 + 2py = [Ipy2]NO3 + AgI
もう一つは、IpyX(X=NO3-、RCO2-)というタイプのものです。この場合はI+イオンに配位しているのはピリジンと硝酸イオン(またはカルボン酸イオン)です。各陰イオンはO原子が配位しています。この塩は共有結合的で、アセトンに溶けて伝導性のほとんどない溶液になるそうです。水には溶けないのでしょうか(水はアセトンより求核性が強いので分解してしまうのでしょうか?)、この点も不明です。
C5H5N→I←ONO2 C5H5N→I←OCOR
いずれにしてもI+イオンは2配位の錯体を作ると考えられます。同じような塩素や臭素の陽イオンを含む錯体が不安定ながら存在するようです。この本には、ベンゼン環がピリジンに結合した複素環のキノリンC9H7Nを配位子とする臭素陽イオンの錯体[Br(quinoline)2]+・ClO4-が紹介されています。
(2)ベンゼンの塩素化について
林さんの次の指摘は本当でしょうか。
>ベンゼ ンの塩素化では反応中間体としてなら存在します。
> C6H6 Cl2 ―→ C6H5Cl + HCl
>つまり塩素分子 Cl−Cl が触媒の塩化鉄(V)に塩素陰イオンの部分を引き抜
>かれ、塩素陽イオンが生成します。
モリソン・ボイド「有機化学(中)第4版」(東京化学同人、1985)によれば、塩素と塩化鉄(V)の反応は酸・塩基反応だということです。つまり、塩素はルイス塩基、塩化鉄(V)はルイス酸として働き、次のような錯体(1)を作る考えられています。そして、この錯体から直接に電気的に陽性な塩素原子の部分がベンゼン環のπ電子を攻撃(付加反応)して中間体の陽イオン(2)を生成します。この陽イオンは正の電荷が1個の炭素原子にではなく、分子全体に分布(共鳴安定化)しているので比較的安定です。最後に、脱離した安定な塩化鉄錯体(FeCl4-)が今度はルイス塩基として中間体(2)からプロトンを引き抜いて、ベンゼン環の芳香族性を回復して置換反応が終了するようです。
Θ +
Cl2 + FeCl3 = Cl3Fe←Cl-Cl (錯体(1)の生成)
H
Θ + +/
Cl3Fe←Cl-Cl + C6H6 = C6H5 + FeCl4- (中間体陽イオン(2)の生成)
\
H Cl
+/
C6H5 + FeCl4- = C6H5Cl + HCl + FeCl3
\
Cl
要するに、この置換反応の場合には塩素陽イオンは単独では存在せず、塩素が塩化鉄と作る錯体(1)の中に陽性を帯びた塩素電子として存在すると考えるのが妥当なようです。
(3)ハロゲンの付加反応について
エチレンなどへの塩素や臭素付加では、今度は塩素や臭素がルイス酸、エチレンがルイス塩基として働き、中間体陽イオン(2)に似たハロニウムイオン(T)を生成し、ハロゲン化物イオンが脱離基として抜けます。エチレンの2重結合が切れて、そのπ電子が臭素陽イオンとσ結合したような環状イオンです。この環状イオン中の臭素はオクテットを満足していますので、6個の電子か持たない鎖状の炭素陽イオン(U)よりも安定な中間体として考えられています。また、その前駆体は臭素分子とエチレンのπ錯体であろうと考えられていますので、この場合にも臭素陽イオンを仮定しなくても良さそうです。
Br Br+
| + / \
CH2−CH2 CH2−CH2
中間体(T) 中間体(U)
反応は次のように進むと考えられています。
Br+
/ \
Br-Br + CH2=CH2 = Br- + CH2−CH2 (ブロモニウムイオンの生成)
この中間体は電気陰性度の高い臭素が正電荷を帯びたイオンですから、環形成をしている炭素原子は電気的に陽性になっています。したがって、この中間体の炭素原子に臭化物イオンが結合して付加反応が終了します。
Br+
/ \
CH2−CH2 + Br- = CH2Br−CH2Br
以上、有機化学の中に出てくるハロゲン陽イオンの話でした。次回は、無機化学に出てくるポリハロゲン陽イオンの話を書きたいと思います。
では、また。
01A−066
差出人:林 正幸
送信日:01年9月25日
件 名:電気泳動の実験
こんばんは、林です。
ドライアイスを液化するのに圧気発火器をつかうとは、やはり石川さんは「博士」ですね。
さて天然高分子をまとめる中で、アミノ酸の分析やDNAの塩基配列の解析にこれが利用されていることから、そしてもっと単純にイオンの動きが実感できることから、電気泳動の簡便な実験に取り組んでみました。実験書を下調べする中で、電極付近の撹乱を受けないようにすることとろ紙の乾燥を防ぐことが重要と分かりました。
バットの底に5cm角のステンレス板を2枚向かい合わせてビニールテープで固定します。そしてスライドガラスにマッチの軸を貼った低いテーブルを間に縦に置きます。スライドガラスとステンレス板は1cm離れるようにします。そして約12cmに切ったペーパークロマト用のろ紙を2枚、両方のステンレス板にまたがるように平行に乗せます。そして5cm角のクッキングペーパーを、ろ紙に被せるようにステンレス板の上に乗せます。こうして5%硫酸ナトリウム水溶液をピペットで染み込ませます。スライドガラスの上は、ろ紙との間に水溶液を含ませないように別のろ紙で吸い取ります。この部分のろ紙は表面に液があふれないように注意します。
9V乾電池(006P)2つで電気分解を始めます。そして1cm角に切ったクロマト用ろ紙に、一方は濃度が高いテトラアンミン銅イオン、他方は過マンガン酸イオンの溶液を染み込ませて液を切り、それぞれのろ紙の中央に置きます。5分もすると銅の錯イオンは陰極の方に、過マンガン酸イオンは陽極の方に移動していることが観察できます。10分で3mmほど移動します。おまけで20分すれば5mmほどになります。しかしこれ以上はろ紙が乾燥してきて無理があります。陽極のクッキングペーパーはステンレス板の端の部分が黄色のなります。反応して鉄イオンができているのです。
もっと簡便にできるかもしれません。たとえばスライドガラスをテーブルにしない、クッキングペーパーを使わない・・・。どうせ簡便法なのですから。
ではまた。
01A−067
差出人:林 正幸
送信日:01年9月25日
件 名:塩素陽イオンについて(その2)
こんばんは、林です。
藤田さん、最新の情報をありがとう。私が大学で学んだのは40年近く前になるのですが、当時はベンゼンの塩素化は私が書いたように、求電子試薬の塩素陽イオンがベンゼン環のπ−電子を攻撃すると説明されていました。実は私自身、大学で研究のまねことをしたのが有機反応機構だったのです。私が先生から与えられたテーマは、α−フェニルエチルクロリドのフェノール・水混合溶媒中における加溶媒分解だったのです。反応物質は中心炭素原子に水素、エチル基、フェニル基、塩素原子が結合する光学活性体です。自分で光学分割してつくりました。化学反応の後はひたすらカラムクロマトグラフィで分離します。当時は高速クロマトなどはなく、時間と忍耐が要る作業でした。そして主生成物質であるα−フェニルエチルフェニルエーテルの旋光度を測定するのです。結果は立体的構造が保持(リテンション)され、フェノールの濃度が高いほど保持率が高まりました。私としては、塩素原子とフェノールのπ−電子とのコンプレックスを想定しました。幸い、この研究は米国化学会の報文集(JACS)に採用されました。
こんなことをしていながら、反応機構は状況証拠の世界だなあ、と感じていました。それからしばらくして各種のスペクトル分析が脚光を浴びるようになりました。これはより直接的に反応中間体や遷移状態の情報が得られます。私自身は教職の道を選んで離れましたが、その後の成果が藤田さんの指摘になっていると思います。
ではまた。
01A−068
差出人:野中 直彦
送信日:01年9月29日
件 名:**高校の文化祭
四か浦さんへ
科学部が「ガラス館」なる部屋でトンボ玉をやっていた様子を手紙でもらいました。部員からの暖かいメッセージももらい感激でした。エアポンプをすぐに購入するなど、すばやい対応がすばらしいですね。その行動力が四か浦さんのパワーだと思います。私も、エアポンプを購入して授業での理科実験に挑戦したいと思います。エアポンプを購入するだけで、随分とちがうものだと実感できました。みなんさんも。ぜひトンボ玉をやるときはエアポンプをとりつけてみてください。
01A−069
差出人:中臺 文夫
送信日:01年9月30日
件 名:近況報告
今晩は、中台です。狂牛病、同時多発テロと物騒な世の中になりました。アメリカの出方一つで、西欧先進国とイスラム圏のにらみ合いになりそうで、心配です。そんな事になったら、一編で日本への石油の供給がストップし、日本は大変な事になるんじゃないかと知り合いの人が心配していました。
さて、私は今年は藍と、紫と黄色のサツマイモとポップコーンを生徒と農場の片隅に作っています。普通科の生徒も草取等の農作業を結構楽しそうにやっております。ただ、草だらけにすると園芸科の先生に気を使いますし、とても世話は焼けます。2学期に入って、白菜とキャベツを作ろうと考えています。青虫に食べられて網だらけのキャベツや、煮ると虫の浮いてくる白菜などを見せて、ただ農薬は悪だという生徒に現実を考えさせたいと思います。虫取り当番を作って毎日虫取りをさせます。そうしないとボロボロになりますし、農薬は嫌だとか、机上だけで現実を知らない生徒にしないように気をつけ様と考えています。皆さんはどのような野菜を食べていますか? 安全なら虫のついた野菜を食べられますか? 生徒にはどのように言っていますか? このごろ、虫の嫌いな生徒が増えています。虫を見た事がないようです。でもそれって恐ろしくないですか? でも、先生方の周りにも虫が居ないのではないですか?
居るのはゴキブリと蚊くらいで、あと何がいますか? 生徒が面白い事をいっていました。パンでカビをはやそうとしたら、カビが生えずに干からびてしまった。先生パンは賞味期限過ぎても大丈夫、カビないよ、と。 これは科学の勝利でしょうか? 野菜を自分の排出する汚物で作っている方が茨城に居られます。生活廃水からトイレまで処理して野菜を作るのです。その方は出す水にとても気をつけています。当然自分が直接食べるのですから当然なのですが、その気の使い方はすさまじいものです。当然シャンプーや洗剤は使えません。石鹸もなるべく使わないようにしているようです。年頃の娘さんがいらして、娘さんはいろいろなチャレンジをするようですが、ご両親は必死で暮らしています。本来の姿でしょう。でも、私には出来ない生活でした。
しかし、考えるに、私たちは、安易に管理しやすいという理由で水を集中管理する事により、免罪符を得たように、自由に水を汚せるようになったのではないでしょうか。かえって水を汚す事にとても鈍感になってしまったのではないでしょうか。
今年は空豆と絹さやを作っていたのは報告しました。空豆は、鳥にやられて、とうとう1粒も食べられませんでした。半年間の苦労は・・・、絹さやも悲惨な目にあい、豆もつつかれた物ばかりというありさまで、4/5は鳥に取られてしまいました。近くの農家はとても大変なようです。でも、もっと大変なのは、生きなくてはいけない雉などの鳥のようです。我が家を襲う雉は夏以来姿が見えません。殺されたのでしょうか、えさが無くて引っ越したのでしょうか? お隣さんだったので今心配しています。畑を荒らされることは困るのですが、無事に食べ物のなくなる冬に出てくることを祈ります。
01A−070
差出人:澤田 史郎
送信日:01年10月5日
件 名:プレ通信発送しました
澤田です。
予定より10日以上遅れていますがようやくプレ通信を発送しました。いや たいへんですね。スケジュールを区切られるのは苦手です。しかし だからこそ続いているという面もあるのでしょうね。本通信もよろしくお願いします。
学校では科学部(化学部)をやってもいいという1年生がみつかりました。授業にいっているクラスで
「夢とロマンのサイエンスクラブ」をやらないかと呼びかけたら、数人がやってもいいよと応えてくれました。中間明けに開始するつもりですがやっと新しい学校のホームグラウンドがもてそうです。四ヶ浦さんのところに追いつけるようにやってみます。
01A−071
差出人:鈴木 久
送信日:0110月6日
件 名:RE:プレ通信発送しました
澤田 史郎さん こんにちは 鈴木 久です。
過去に1度事務局をやったものとして、心配しておりました。個人的に応援のメールを送ろうかどうか考えていたところでした。いろいろ大変なことが多いと思いますががんばってください。私も何か送れるようにがんばってみます。
(科学部について)
おめでとうございます。応援してもらえるといいですね。私の質問紙プリントの冊子でよければ部員の方の分もお送りします。沢田さんは沢田さんなりの科学部を部員と作られますように。
プレ通信。楽しみに待っています。ところでみなさん。科教協のレポートは私はほとんど化学分科会はでませんのでアルケのみなさんのものをもらえないこともあるので入れてくださるとうれしいです。大会に参加できなかった会員にとっても同じなのではないでしょうか?
01A−072
差出人:藤田 勲
送信日:01年10月6日
件 名:RE:塩化物イオン(その2)
こんばんは、藤田です。
林さん、コメントありがとうございました。今回は林さんが研究されたという加溶媒分解について書いてみたいと思います。
前回引用したモリソン・ボイドによれば、ハロゲン化アルキルの置換反応は基質が3級の場合にはSN1型、1級の場合にはSN2型で反応が進行すると書いてあります。少し復習しておきましょう。代表例を下に示しておきます。
(1)SN1とSN2の求核置換反応
まず、SN1型の置換反応です。これは反応の速さが求核体(OH-)の濃度に無関係で、中間体の炭素陽イオンの生成速度に依存する置換反応です。
(CH3)3CBr + OH- = (CH3)3OH +Br- (SN1型求核置換反応)
反応速度=k[(CH3)3CBr](1次の速度式)
δ+ δ-
遷移状態 [(CH3)3C・・・Br]
ラセミ化
一方、SN2型はその反応速度が基質と求核体の両方(2次)に依存する反応で、求核体は脱離基の背後から攻撃するために、その立体配置は完全に反転することになります。
CH3Br + OH- = CH3OH +Br- (SN2型求核置換反応)
反応速度=k[CH3Br][OH-](2次の速度式)
δ- δ-
遷移状態 [HO・・・CH3・・・Br]
立体反転
(2)加溶媒分解
林さんが研究された基質は2級ハロゲン化アルキルのα−フェニルエチルクロリドのフェノールによる加溶媒分解ですね。加溶媒分解も1級基質ではSN2型で、3級ではSN1型と考えられています。そして、今問題にしている2級ではこの2つの反応型の中間のような機構、すなわち溶媒の求核的な補佐を伴うSN1型、あるいは中間体の形成を含むSN2型と考えられているようです。また、その中間体は求核的に溶媒和された炭素陽イオンです。
具体的に林さんの例で考えてみましょう。まず、α−フェニルエチルクロリドの脱離基にあたる塩素原子の背後から、溶媒のフェノールが求核体として炭素原子を攻撃します。これで脱離基の塩素原子が陰イオンとして抜けやすくなり、炭素陽イオンを中間体として生成します。この炭素陽イオンの後ろにくっついているのが溶媒のフェノールで、その前面には脱離基の塩化物イオンがくっついています。
C6H5 C6H5
| |δ+ δ-
C6H5OH + CH-Cl = C6H5OH・・・CH・・・Cl
| |
CH3 CH3
遷移状態
C6H5
|
= C6H5OH・・・CH+・Cl-
|
CH3
中間体(炭素陽イオン)
C6H5
|
= C6H5O−CH + HCl
|
CH3
生成物(α-フェニルエチルフェニルエーテル)
この反応はSN2反応と違い、生成物が1段階で生成せずに炭素陽イオンを中間体として生成します。この点ではSN1反応に似ています。しかし、SN1反応との違いはこの中間体が通常の溶媒和のように多くの分子に囲まれて安定化しているのではなく、1分子のフェノールによって溶媒和を受けている点です。フェノールは基質を背後から求核体として攻撃して、脱離基の塩素原子を押し出していると考えることができます。これがフェノールの求核的な補助と言われる役割であり、中間体の求核的に溶媒和された炭素陽イオンの正体だと考えられています。
今もし、この中間体の寿命が非常に短く、脱離基の塩化物イオンが前面に結合したままの状態であれば、中間体は背後に求核的に溶媒和しているフェノールとそのまま結合して生成物を与えることになります。この場合には攻撃はSN2反応のように背後からだけですから、生成物の立体配置は完全に反転するはずです。他方、この中間体の寿命が、脱離基の塩化物イオンが溶媒のフェノールと交換する程度に長ければ、溶媒との反応は中間体の前面と背面で等しく起こることになります。この場合の生成物は、SN1反応のようにラセミ化を伴うでしょう。
C6H5 −−−−→立体反転した生成物
| |短い寿命
C6H5OH・・・CH+ + Cl- −→
| |
CH3 −−−−−→ラセミ化した生成物
中間体(炭素陽イオン) 長い寿命
ところで、この中間体は、基質が求核的にフェノールに攻撃された結果として、炭素と塩素の距離が徐々に広がり両者の共有結合が開裂して、互いに反対電荷を帯びた2種のイオンから生じるわけです。したがって、初めは両イオンは静電気的な引力で強く引きつけ合い、ごく近くにいるはずです。この強いイオン対状態を自由なイオンに分けるものは言うまでもなく溶媒のフェノールですね。したがって、フェノールの溶媒和の能力が中間体の陽イオン及び脱離基の塩化物イオンを安定化させると考えられます。
林さんの指摘している「立体的構造が保持(リテンション)され、フェノールの濃度が高いほど保持率が高まりました」と言う実験結果は、溶媒和するフェノールが増えた分だけ、イオン対から解き放たれたフリーの炭素陽イオンが安定的に生成した結果だと考えられるかもしれません。林さんは触れていませんが、フェノールが少ないときには立体反転したものが圧倒的に多いと私は想像していますがどうなのでしょうか。フェノールの濃度や生成物の光学的な純度の具体的なデータが分かりませんので、これはあくまで私の想像です。それから、林さんの「私としては、塩素原子とフェノールのπ−電子とのコンプレックスを想定しました」という指摘は私には良く理解できませんでした。このコンプレックスが立体保持とどう関係があるのでしょうか。
(3)最後に
今の学校では有機分野を本格的に扱う機会はないのですが、SN1やSN2は有機反応の基本の一つでしょう。でも、こういう分類自体は人が勝手に決めたものなのですね。2級の基質ではちょうどこの中間のようなシステムで反応が進行するようです。色分けをして分かったような気になるのはどの分野でも同じでしょう。自然というのは奥深いし、我々は常に事実に即して自然(実験対象)をみることが大切ですね。自戒したいと思います。この考察が的外れでなければいいのですが。
なお、私が参考にしたモリソン・ボイドは4版ですが、今は6版まで出ています。したがって、ここに書いた内容はもう古い考察になっているかもしれません。でも、この教科書は大変にわかりやすく有機化学の基礎が書かれていると思います。生化学につながる内容もなかなかいいです。問題の解説書も出ていで、自学自習できます。私は大学ではクラムでしたが、教員になってからこれで勉強しました。単に学生の頃に勉強しなかったからだけかもしれませんが、これでモヤモヤしていた頭がかなり整理されたことを覚えています。訳者の一人が中西香爾であることも読みやすさの一因かもしれません。
無機分野の塩素陽イオンの話は次回にします。では、また。
01A−073
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