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01A−031
差出人:四ケ浦 弘
送信日:01年8月24日
件 名:化学物質過敏症時代を生きる化学実験−その6−
アルケの合宿でゴミの分別回収の話がでました。沢田さんが「大阪のどこか?でプラスチックを分別して出しても回収車で一緒(その先ででしたっけ?)にされてしまっている。これでは無意味ではないか」といったら「意識付けという点で意味がある」と言う答えが返ってきた(誰からでしたっけ?)という話を紹介してくれました。
我が家では生ゴミはすべて庭に埋めていますが、ゴミの分別には困っているようです(誰がやっているのかわかってしまいますね)。よく聞かれるのが「これって燃えるゴミ?燃えないゴミ?」というやつ。「アルミコーテイングされたお菓子の袋はどっち?」「保冷剤の入ったパックは?」「容器包装プラスチックとしてCDケースが出せないのはなぜ?」これってどっちですか?
ケチャップやマヨネーズのチューブなんて「洗って出せ」ってことですが、とてもみんなが洗っているとは思えません。我が家の妻は「ケチャップやマヨネーズはビンのものを使っているし歯磨きは二つに切って中を洗っているけど中々きれいにならないで困る」といっています。こういうのは洗わなかったらどうなっているのですかね?そういえばアルケ合宿で「ビンでもダメ、ビールビンもあらってもきれいにならないので、洗ってて再利用されていないことが多い」という話が町井さんから紹介されていたと思います。
こういう質問に答えられないケミストリー(サイエンス)ではだめだなあとつくづく思うこのごろです。それぞれについてぜひ教えて下さい。皆さんのご意見もお待ちしています。
01A−032
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月25日
件 名:エントロピーで見る目(2)
こんにちは、山本です。
以前に、「槌田敦さんは、動力を作っているのは石油や石炭を燃やした熱ではなく、水で冷やすことだといっています。つまり、水が熱からエントロピーを奪いさることが駆動力になって、熱が動力に変わるというわけです。」と書いたところ、林さんから
<引用>
エントロピーを強調したいのは分かりますが、熱機関は高温の熱源とあいまって
はたらきます。つまりもう一方でエネルギー源の必要性を忘れるわけにはいきま
せん。というのは「エネルギー源は問題なく確保、利用できる」とは言えないか
らです。
<ここまで>
という意見が寄せられました。
私は槌田さんの本を読んで、上の「 」の部分に出合ったとき、目からうろこが落ちたような気がしたのです。ですから、いつか林さんの考えについてコメントしたいと思っていたのですが、自分の考えが言葉になりませんでした。その後、何冊かエントロピーの本を読んでまとめてみましたので書いてみます。
まず、議論を拡散させないために、林さんのコメントの後半、”つまりもう一方でエネルギー源の必要性を忘れるわけにはいきません。というのは「エネルギー源は問題なく確保、利用できる」とは言えないからです。”という部分は、切り離すことにします。今後、エネルギー源が確保できるかどうかと言うことは棚上げして、熱機関で動力を作るのは熱なのか、冷やすことなのかという理論的な部分だけを議論しましょう。
私も槌田さんの本を読むまでは、熱機関を動かしているのは高温の熱だと思っていました。しかし、常温の空気でもエンジンを作動させることができますよね。エンジンを常温以下に冷やしておいて、常温の空気をシリンダーに吹き込めばよいわけです。揚げ足を取っているわけではありません。ここに、熱機関の本質があると思うのです。熱機関は熱が高温側から低温側に流れるということを利用します。高温熱源と低温熱源の間にシリンダーとかピストンとかを置いて、流れる熱から有効なエネルギーを動力として取り出し、残った部分を低温熱源に拡散させるというものが熱機関でしょう。熱が流れるということが、まず第一に熱機関に必要な条件です。そして、熱が流れるには温度差が不可欠です。その温度差は、暖めることや冷やすことでつくれます。では、熱機関にはどちらが本質でしょう。普通われわれが目にする熱機関は、常温以上の熱を作って動いています。ですから、加熱することで温度差を作ることが欠かせないと思いがちですが、冷やして動くエンジンもあるわけです。ということは、熱機関には常温以上の熱が必要だという言い方は、間違いだということになりますよね。やはり、冷やすことで温度差を作り、熱を流して動力を取り出しているという方が本質的な気がします。
このことをエントロピーを使って言えば、高温の熱が持っているエントロピーを低温の熱源がぬぐい去って、エントロピーゼロの動力を作っているとなります。林さんの「熱機関は高温の熱源とあいまってはたらきます。」という部分は、低温熱源があることは暗黙の前提としていますよね。そして、高温の熱が持っているエネルギーでエンジンが動くのだと言っているのだと思います。しかし、低温熱源を暗黙の前提としてしまったがために、低温熱源の果たしている重要なはたらきも、暗闇の中に押し込めてしまっているような気がするのです。くり返しになりますが、低温熱源は、熱を流すというはたらきをします。そして、熱の流れは熱機関にとっては絶対に必要なものです。
関連しますが、「エネルギー問題はエントロピー問題だ」という言葉もあります。僕もそう思います。例えば、海洋には莫大な熱エネルギーが存在します。ですから、地球表面にエネルギーが少ないわけではないのです。有効に利用できるエネルギーが少ないわけです。海水から有効なエネルギーを取り出そうとすれば、海水よりも温度の低い熱源を用意して熱を流し、エントロピーをぬぐい去ることが必要です。それができないから、海の熱エネルギーは使えないわけですよね。エネルギー不足というのは、低エントロピーの熱源が不足することですから、エントロピー問題だと思います。
続けて林さんは、次のように書いています。
<引用>
これは、燃料と酸素に比べて燃焼生成物のエントロピーが増加するという問題が
抜けないでしょうか。物質を自然の循環システムに乗せていく、あるいは人工的
にそれを補助するという課題も忘れるわけにはいきません。ちなみにこの課題は
エントロピーの問題であるというより、まざに物質循環の問題です。
<以上>
私は、物質循環の問題とエントロピー問題は深くかかわっていて、切り離すことはできないと思います。でも、疲れました。それは、この次にします。
01A−033
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月26日
件 名:容器包装リサイクル法とCDケース
こんにちは、山本です。
四ヶ浦さんから質問があったことについて、インターネットで調べてみました。まず、CDケースです。これは、ズバリ(財)日本容器包装リサイクル協会のHPに答えがありました。アドレスは、
http://www.jcpra.or.jp/
です。このページからQ&Aのページをクリックしてみたところ、CDケースについて次のように説明されていました。
<引用開始>
容器包装リサイクル法は、中身商品と分離した際に不要になる容器包装を対象と
しています。質問の紙製ケースは、写真や情報が印刷されていることに加え、解
説書等が一緒に納められており、中身商品(CD)と分離して不要にならないた
め、対象外です。
<ここまで>
四ヶ浦さんの答えになっているでしょうか?
なお、この法律では分別されたゴミを自治体の金(つまり税金)で集めることになっています。ドイツでは、容器包装を作っている企業が、作った量に応じてリサイクルの資金を出すような制度になっています。つまり製造者責任ですね。ですから、企業はなるべく容器包装を簡素化する方向に努力しているようです。日本のこの法律は、製造している企業の責任が軽いので、そういう効果は弱いのではないかといわれていますね。
次に、ビール瓶のリサイクルについても調べました。キリンビールの次のアドレスからたどっていくと、ビンのリサイクルにふれたページが見つかります。
http://www.kirin.co.jp/active/env/recycle/index.html
そのページによりますと、ビール瓶は回収され、洗って再使用されるようです。平均8年間はリユースされ、その間24回、工場と消費者の間を往復するそうです。ですから、ビール瓶は使い捨てられているわけではないでしょう。なお、それぞれのビンの製造年月日が底に西暦の下二桁の数字で刻印されているようです。さらに、底にポッチもあります。ポッチひとつが2ヶ月を表しているようです。例えば数字が98で、ポッチが3つなら、1998年の6,7月の製造のビンということになります。これから瓶ビールを買ってきて、底を見てみますか?ただ、この製造年月日の表し方はキリンだけだそうですが。
01A−034
差出人:林 正幸
送信日:01年8月27日
件 名:「メーリングリスト」の作成
こんばんは、林です。
今夜は上半月の下に赤い火星が見えています。杉山(剛)さん、木星食の撮影など天文でも活躍していますね。火星食もあるのでしようか。
一昨日は、夫婦で日帰りのドライブをしました。一昨年の秋は霧ヶ峰でしたが、今回は足を伸ばして美ヶ原にしました。夏休み中にできれば一泊旅行をと話し合っていましたが、共働きでなかなか予定が合わないのです。6時前に起きて、握り飯とおふくろの昼ご飯を準備してからの7時出発。幸い清々しい天気です。仕事を忘れて車を走らせました。岡谷インターを下りてビーナスラインに入り、11時半に到着、そして野外美術館を見ることになりました。高原に置かれたさまざまな彫刻、というよりは現代アート、高山植物と一緒に結構楽しめました。現地には1時間半しか居られません。しかしドライブしながら広々とした自然と「行く夏」を満喫できました。そして帰り道の産直の店で、二組の息子夫婦においしい桃を買いました。
風間さんから連絡があり、ホームページのURL(アドレス)が次のように変更になっています。
http://nara.cool.ne.jp/tentoumusi/ama/
「桜の大和のホームページ」
風間さん、アルケミストのホームページの方も変更しました。
松本さん、静かだなあと思っていたら、やっぱり何かをしていたのですね。それにしても絵画とはうらやましい。ひるがえって私には、芸術的なものをつくり出す力が不足しているといつも感じています。
大場さん、アルケミスト「メーリングリスト」は掲載を控えたいときのみ、その旨をメールに書いてください。そして2つの「メーリングリスト」を切り回しているのですね。
ところで私の「メーリングリスト」の編集はまったくの手づくりです。その理由は2つです。ひとつは私にはそれを自動化するような技術がありません。もうひとつは自動化しない方が勉強になると考えるからです。アルケミスト「メーリングリスト」は「件名リスト」ファイルと「メール内容」ファイルでできています。この2つのファイルのフレーム部分が作ってあります。今回はそれを添付してみます。それらを整えては、1通々々書き入れたり、コピー・編集したりして、アップロードを重ねていきます。受信したメールは1行々々区切れていますので、それをバックスペースでつなぎます。そして見やすいようにある程度形式を整え、ときに段落を入れたりし、リターンのタグ ”<BR>”を加えます。とくに図はかなり手を加えないとホームページできちんと見えません。そして内容によって掲載を控えた方がよいと思われるときは送信者に確認のメールを送ります。また職場名、くわしい住所、それに生徒名などは隠します。こんなわけですべてのメールを意識的に読むことになり、これが何より私の勉強になるのです。大場さんの方はどのようにしているのか、機会があれば教えてください。
ではまた。
(後略)
01A−035
差出人:四ケ浦 弘
送信日:01年8月27日
件 名:RE: 容器包装リサイクル法とCDケース
山本さん,早速の回答ありがとうございました。教えていただいたホームページをそれぞれのぞいてみました。随分詳しい取り決めがあるのに驚きました。今の課題(大学でやっていること)が終わったら、詳しく調べてみたいと思います。ビールびんはちゃんとリサイクルされているのですね。アルケの合宿での話はどういうことだったのかわからなくなりました。
では!
01A−036
差出人:林 正幸
送信日:01年8月28日
件 名:エントロピーとエネルギー(その5)
こんにちは、林です。
野中さん、サイエンス・フェアでの活動、ご苦労さまでした。とんぼ玉への執念には敬意を払います。私の方も秋の企画の原稿が8月末に迫っています。
鈴木さん、塩化物イオンという名称についてです。歴史的なことは調べていませんが、生徒には命名法のルールとして
単原子陽イオンは 元素名にイオン
〃 陰イオンは 元素名の語尾を「化物」に変えてイオン
多原子イオンは 基名にイオン
ただし OH- は例外で、水酸イオンではなく、水酸化物イオンと呼ぶ。
と伝えてはどうですか。
日本の化学用語は「英語に忠実」という原則があります。陽性元素ではナトリウムは sodium であり、ナトリウムイオンは sodium ion とおなじ元素名を使います。これに対して陰性元素では塩素は chlorine であり、塩化物イオンは chloride ion と語尾が変化しています。
山本さん、熱機関についてです。 山本さんは次のように書いています。
<8月25日付けメールの引用>
このことをエントロピーを使って言えば、高温の熱が持っているエントロピー
を低温の熱源がぬぐい去って、エントロピーゼロの動力を作っているとなりま
す。林さんの「熱機関は高温の熱源とあいまってはたらきます。」という部分
は、低温熱源があることは暗黙の前提としていますよね。そして、高温の熱が持
っているエネルギーでエンジンが動くのだと言っているのだと思います。しか
し、低温熱源を暗黙の前提としてしまったがために、低温熱源の果たしている重
要なはたらきも、暗闇の中に押し込めてしまっているような気がするのです。く
り返しになりますが、低温熱源は、熱を流すというはたらきをします。そして、
熱の流れは熱機関にとっては絶対に必要なものです。
<以上>
私が書いたのは温度差、つまり高温(T1)の熱源と低温(T2)の熱源が必要ということです。この点では意見の不一致はありません。ところで多くの熱機関は低温の熱源を常温の水や空気に頼っています。その場合は高温の熱源をつくり出す必要があります。これに対してたとえば熱帯の表層の海水と深海の海水の温度差を利用する海洋発電のアイデアがあります。また「水飲み鳥」もそうですが、これらは高温の熱源を常温の水や空気に頼っています。この場合は低温の熱源を獲得する必要があります。熱機関では、その両側の気体に温度差があればピストンは動力を生み出します。これはまさに分子の運動エネルギーの差に依っています。そして内側の気体は膨張して仕事をしてエネルギーを失い温度が下がります。そして外部の気体と同じ温度になればそれ以上の仕事はできませんから、まだ熱エネルギーが残っていても捨てるしかないわけです。だから熱機関の効率は(T1−T2)/T1 より小さくなります。
このとき熱エネルギーが流れるにつれて、確かにエントロピーが高温の熱源から定温の熱源に流れます。さらに不可逆熱機関ではエントロピーが増加します。しかしこれらのことは温度差があってのことです。それではこの平均15℃、1atmというほぼ定温低圧の地球環境において、温度差はどのようにつくり出せるのでしょうか。はじめに戻りますが、たしかに定温の熱源を獲得することも可能です。しかしこの方法では大きな温度差ができません。量的にも限りがあります。やはり高温の熱源をつくり出すことが主要になります。こうしてエネルギー問題はやはりエネルギー問題なのではないでしょうか。言い換えると、熱を流すために高温熱源も同等にはたらいているのです。
もちろん付随的には、発電所の温排水とか二酸化炭素発生による温暖化などのエントロピーに係わる問題もあります。
ではまた。
01A−037
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月28日
件 名:エントロピーで見る目(3)
こんにちは、山本です。
そろそろ夏休みも終わりですね。アルケの合宿に参加したみなさん、宿題はお済みでしょうか。大会の分科会やナイター、アルケの合宿で発表したことを原稿にして私に送るというアレです。アルケのメンバーが毎日の授業でやっていることとか、考えていること、開発した実験などは化学教育の最先端をいくものだと思います。それを仲間内だけの交換で終わらせるのは、もったいない話です。是非、冊子にして広めましょう。印刷、製本は私がやります。是非送って下さい。なお、林さんからはすでに原稿が届いています。さすが。
それから、松本さんの絵の話が何人かのメールに出ています。これを知らない人も多いのではないでしょうか。彼は今日から9月2日まで自分の絵を東京のギャラリーに飾って、個展を開いているのです。こういう機会に、東京近郊のアルケの仲間で8月30日にその会場に集まろうという話になっています。
では、本題です。エントロピーとエネルギーの話の続きです。熱源にある熱から、有用なエネルギーを取り出したい。どうしたらよいか。その答えはひとつで、低温熱源を用意し、熱を低温側に移動させることですね。もちろん、高温熱源・低温熱源の間に、シリンダーとかピストンとか作業気体などの仕掛けが必要なことは言うまでもありません。ともかく、低温熱源は不可欠で、熱が低温側に移動するときにだけ仕事が取り出せるわけです。ということは、低温熱源は自分の方に熱を移動させ、結果として有用な仕事を引き出すはたらきをしていると言えるでしょう。。この点では、林さんと一致すると思います。
次に、容器に閉じこめられた高圧の気体からどうやって仕事を取り出せるか考えてみます。これも答えはひとつで、低圧の気体に高圧の気体を吹き出すことですよね。吹き出し口に発電機でも置いておけば、電気をつくれます。この場合、普通は高圧の気体が電気を作ったと考えがちです。しかし、低圧の気体がなければ有用なエネルギーは取り出せません。低圧の気体は、自分の方に高圧の気体を拡散させて、有用な仕事を引き出したと言えるでしょう。こういう低圧の気体の果たした役割には、気づかないことが多いのではないでしょうか。
上の二つの例は、高温の熱や高圧の気体から仕事を取り出そうとすれば、低温の熱や低圧の気体、つまりエントロピーの大きな状態にしなければならないことを示しています。熱や気体は拡散させることによってのみエネルギーを取り出せるということですね。
われわれ人間や動物を考えてみます。動物は、つねに食糧を摂取し、その化学エネルギーで生きているというのが一般的な見方でしょう。しかし、化学エネルギーも熱や気体同様、拡散することによってのみ、有用なエネルギーに転換できます。食糧(その中の栄養分)が拡散するということは、エントロピーの大きい二酸化炭素や水、アンモニアなどの物質に変化し、同時に廃熱になることです。それらの老廃物や廃熱が体内にたまると生きていられませんから、外に排出する機構が必要です。ここで、水が重要な役割をはたします。老廃物を溶かして排出するのも水です。廃熱を蒸発熱という形で捨てているのも水です。もちろん赤外放射で、体温を逃がすこともしてもいます。しかし、多量の熱を赤外放射だけで捨てようとすれば、体温を上げなければなりません。水の蒸発は、体温をそのままにして熱を逃がすことができる手段です。
以上を縮めて書きます。栄養物中の化学エネルギーは廃熱や老廃物というエントロピーの大きな状態に拡散することによってのみ、有用なエネルギーに転化できます。廃熱や老廃物を作らずに、栄養物の化学エネルギーが有用なエネルギーになることはできません。そして、これらを外に捨てるために水が使われます。したがって、われわれは常にエントロピーの少ない水(きれいで冷たい水)を補給しなければならないわけです。林さんは首を傾げるかも知れませんが、水がわれわれから熱を奪っているからこそ、栄養物から有用なエネルギーを取り出せるのだ、と言えると思います。水の蒸発で冷やされているから、生きていけるのだと言えると思うのです。
今までは、高温の熱とか高圧の気体、栄養物の化学エネルギーなどが有用なエネルギーを産み出しているという見方が強かったのではないでしょうか。確かにそうなのですが、それらからエネルギーを引き出す役目を果たしている低温熱源や低圧の気体、生物体の老廃物や廃熱などをもっと重視すべきだと思います。
01A−038
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月29日
件 名:エントロピーで見る目(4)
こんにちは、山本です。
おもしろい本を見つけました。エントロピー学会編『「循環型社会」を問う』藤原書店(2001)です。エントロピー学会というのは、今から20数年前、槌田敦さんが環境問題にエントロピーの光を当てたことに端を発した学会のようです。物理学者のみならず、経済学者、哲学者、さらには市民も学会に参加し、「生命系を重視する熱力学的思考」を巻き起こすことを目的に活動しているそうです。
この本の中に循環に関する記述がありました。コウジカビはデンプンを糖にかえます。コウジカビにとって、デンプンは高エネルギー・低エントロピーの物質です。それを糖と廃熱というコウジカビにとっては低エネルギー・高エントロピーの物質に拡散させ、その過程で得られる有用なエネルギーで、コウジカビは生活しているわけです。コウジカビにとって排泄物であった糖は、酵母にとっては高エネルギー・低エントロピーの資源です。酵母はそれをアルコールと廃熱に変化させます。その拡散過程で得られる有用なエネルギーが、酵母の生活を支えます。さらに、アルコールは酢酸菌にとっては高エネルギー・低エントロピー資源です。酢酸菌はそれを酢酸と廃熱に拡散させて生活しています。
このように、ある生物の排出物が、他の生物の資源になることによって物質の連鎖が成り立ちます。これをエントロピーで眺めてみます。それぞれの生物は低エントロピー資源を高エントロピーの排泄物に変えています。摂取する物質より排出する物質の方がエントロピーが大きいわけです。炭素で考えてみますと、デンプンやブドウ糖といったエントロピーの小さな状態は、それぞれの微生物によって最終的には二酸化炭素というもっともエントロピーの大きな状態にまで変化します。そして、植物が二酸化炭素をエントロピーの小さなブドウ糖にもどしていることはいうまでもありません。
それから、廃熱の問題があります。デンプンを分解する過程にいるコウジカビや酵母、酢酸菌などはがそれぞれが廃熱を出しています。それだけ地上のエントロピーをふやしているわけです。廃熱は結局、水の蒸発によって、微生物の体から取り除かれていきます。また、光合成をしている植物も、二酸化炭素のエントロピーを水に渡して処理しています。つまり、光合成反応で廃熱が出て、それを取り除くために水が使われているわけです。いろいろな生物から廃熱を吸収した水は、水蒸気になります。水蒸気は水のエントロピーが大きくなった状態です。水蒸気は上空に昇って冷やされ、熱を宇宙に放射して、再び冷たくエントロピーの小さな水として地上に戻ってきます。
地上にはもっとたくさんの生物がいて、物質循環を担っています。それぞれの物質循環の段階で発生する廃物や廃熱のエントロピーは、上の例のように、最終的には廃熱というかたちで水に渡され、上空で宇宙に放出されています。ですから、物質循環とエントロピーは切り離すことはできないと思うのです。ただ、人間がいろいろな廃棄物や多量の廃熱を出している現状をどうすればよいのかということを考えるときは、エントロピーだけを追いかけていったのではだめでしょうね。反応速度も問題になると思います。人間が捨てた廃棄物が例え微生物に分解されるものであっても、その反応にどれくらいの時間がかかるかを考慮しなければならないでしょう。富栄養化などはその例です。また、大場さんが指摘したように、木を切るにしても、森がどれくらいの速さで再生するかを考慮しなければならないでしょう。人間が使うエネルギーが太陽エネルギーの範囲であれば、森を失うことはないという声もありましたが、そうでしょうか。エントロピーは、考えている変化が起こるかどうかは予測できますが、その変化にどれくらいの時間がかかるかについては答えを出せません。物質循環が全体としてうまく機能し、地上のエントロピーが増えないためには、それぞれの反応が時間的に調和し合っていなければならないでしょう。
01A−039
差出人:藤田 勲
送信日:01年8月31日
件 名:松本さんの個展をみて
昨日、松本さんの個展を見に行きました。山本さんの音頭で私の他、町井さん、杉山さんが集まりました。私は絵を見るなどというのは久しぶりのことでした。ほとんどが風景画で、しかも失われ行く自然や建物です。派手な絵ではありません。しかし、そこには人々の暮らしが確かに息づいているようでした。それを慈しむ松本さんの感性が伝わってきます。
会場で早速絵を眺めながら山本さんと松本さんを含め5人で、例によって化学談義に花が咲きました。絵に囲こまれて一杯やりながら議論するのは格別でした。その中で幾つが疑問点が出ましたので、皆さんの意見を伺いたいと思います。
その1,砂鉄の挙動について
杉山さんからの質問です。海でとってきた砂鉄を一晩水道水に浸けておいたら水が赤く濁ってきた。これはどうしてかという質問を知り合いから受けたと言うのです。皆さんはこの件についてどう思いますか。
その2,サポニンの毒性について
町井さんの疑問です。トチの実には毒性の強いサポニンが多いので、重曹でよく煮た後に、ゆでてデンプンをとってトチ餅を作るのだそうです。古代食などの分野は町井さんの十八番です。サポニンは溶血性があると町井さんは言っていましたが、それはなぜでしょうか。また、サポニンは他にどんな生理作用を持つのでしょうか。
その3,デュポン社がフロン規制に反対した経緯について
私の質問です。フロンガスを発明したデュポン社はフロンがオゾン層破壊の元凶であろう分かっていながら、代替フロン開発の目処が立つまでフロン安全キャンペーンを展開した(町井さんの弁)らしいのですが、この辺りの事情(盛口さんの本にも少しは書いてある)を詳しくご存じの方はいませんか。文献を紹介してください。
その4,過塩素酸カリウムの安定性について
松本さんから、塩素酸カリウムに較べて過塩素酸カリウムが使われるようになった背景には、過塩素酸が安定で爆発事故を起こしにくいからだと言う話がありました。目下、松本さんは打ち上げ花火に凝っているようです。過塩素酸カリウムの安定なわけをその化学構造からどのように説明できるでしょうか。
アルコールの入っていた関係ではっきりはしていないのですが、だいたいこのようなことが話題の中で疑問として残ったのではないかと思います。情報をお持ちの方は教えてください。
01A−040
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月31日
件 名:エントロピーで見る目(5)
こんにちは、山本です。
ブドウ糖が微生物の連鎖によって、二酸化炭素というエントロピーの大きな物質になり、植物がそれを再びエントロピーの小さなブドウ糖に変えていることを書きました。この光合成の過程で、二酸化炭素が持っていたエントロピーと光合成反応で生まれるエントロピーは、どこへ行ったのでしょう。昨日のメールで書きましたが、それは水に渡されたのです。その結果、水は水蒸気になります。このように、物エントロピーは熱エントロピーに変わることができます。もちろん、熱エントロピーが物エントロピーに変わることもあります。ですから、物質の変化に伴うエントロピー変化を追いかけるときには、熱エントロピーと物エントロピーの両方(合計)を考えなければならないわけです。
ともかく、地上での物循環がうまくいっているときには、地上で発生するエントロピーは、最終的には熱エントロピーになって、宇宙に捨てられます。ですから、地上のエントロピーは増えないわけです。ところが、人間の活動で、物循環に乗らないような物質が環境に排出されたときは、エントロピーが増えてしまいます。放射性廃棄物はその典型でしょう。
昨日紹介しました『「循環型社会」を問う』という本の中に、原発による放射能の問題として3つ指摘されています。一つ目は巨大事故による放射性物質の拡散です。東海地震の震源地に近い浜岡原発が地震の直撃を受けたとき、風向きによっては東北地方南部から中国地方東部の範囲が居住不能になるそうです。二つめは、被爆労働問題です。原発が順調に運転を続けているときでも、下請け、孫請けの労働者が被爆作業に従事しています。労働者の被爆という犠牲を強いながら運転を続けなければならないのが原発なのですね。3番目は放射性廃棄物の問題です。放射能の影響がなくなる目安は、およそ半減期の10倍です。プルトニウムでいえば24万年。今から30万年前といえば、猿人の時代でした。現在のプルトニウムがそういう長い期間、安全に保管できるとは思えませんよね。
この本の中の原子力の部分は、藤田祐幸という人が書いています。放射能問題だけでなく、増殖炉の位置づけとその事故の影響とか、原子力は電気の3分の1を作っているという迷信について、脱原発への道などが述べられています。20ページ程度の字数で、これほど原発の問題がまとまっている文章にお目にかかったことはありません。一読の価値があると思います。
01A−041
差出人:山本 喜一
送信日:01年8月31日
件 名:リサイクルの現場
昨日、松本さんの個展に行って来ました。町井さん、杉山さん、藤田さんも来てくれました。松本さんは佐伯祐三の絵が好きだそうです。なるほど、彼も絵は建物や風景を描いた物がほとんどでした。パリに行って町並みを描いたものもありました。「やさしい絵ですね」と僕は彼にいいました。みんなの心をおだやかにしてくれるような、そういう絵だと思いました。
個展の会場で酒を飲みながら、リサイクルの話になりました。四ヶ浦さんはビール瓶がリサイクルされないと合宿で聞いたといっていましたね。しかし、僕にはそういう記憶がなかったので、改めて聞いてみました。やはり、ビール瓶と一升瓶はリサイクルされていて、ワインビン(特に緑色の)がリサイクルできずに問題になっているという話でした。
リサイクルといえば、8月24,25日に川崎の製鉄所に見学に行って、リサイクルの現場を見てきました。これは、中臺さんから誘われた見学会で、松本さんも来ていました。この製鉄所では、家庭から出る廃プラスチックをコークスといっしょに燃やして鉄を作っています。プラスチックを燃やすといってもそのまま燃やせるわけではなくて、いろいろな加工が必要でした。まず、プラスチックを容器のような大きな物と、フイルムのような薄い物に分けます。工場の一角に3mくらいに積み上げられたプラスチックの山があります。その一部を、ショベルカーがつまみ上げて、コンベアーに乗せて、容器類とフイルム類に分けます。廃プラスチックには生ゴミが付着しているため、その部屋はゴミ捨て場のような臭いが漂っていました。容器とフイルムに分た後、人間が雑ゴミを取り除きます。マスクをしたおばさんたちが、コンベアーから流れてくるプラスチックの中から、燃せない物をより分けていました。もちろんクーラーもなく、蒸し暑くて臭い部屋での仕事は過酷だと思いました。そして、容器類は小片に分断され、遠心分離器で塩ビとその他のプラスチックの分けられます。塩ビは高炉で燃せないのだそうです。一方フイルム類は、細かくした後、熱を加えて小さな鉄砲玉のような形に固められます。フイルムのままだと、高炉に入れる管の中でつかえてしまうので、こうやって固めてから投入するという話でした。
その工場では、家電製品のリサイクルも行っていました。テレビ、クーラー、冷蔵庫、洗濯機のリサイクルです。これらもまずは手作業による分解からはじまります。ねじをはずして、プラスチックと鉄、アルミなどに大きく分けるのが手作業なのです。テレビのプラウン管はハンマーでたたき割って、中からコアと呼ばれる鉄の部分を取り出していました。20mm以上の厚みのあるブラウン管を手にしたハンマーで割るのです。今の家電は、つらくて、危険な作業がなければリサイクルなどできないんだということがよく分かりました。
この工場がなぜリサイクルに熱心なのか、担当の人に聞きました。きっかけは、リサイクルに関する法律(容器リサイクル法とか家電リサイクル法など)ができたことだそうです。廃プラスチックを高炉で燃やすのは、補助金が出るのでやっているという話でした。企業はもうからないリサイクルには消極的ですよね。当たり前ですが。やはり、リサイクルを進めるには法整備が第一ですね。
01A−042
差出人:澤田 史郎
送信日:01年8月31日
件 名:事務局連絡発送しました
いよいよ2学期ですね。もう少し休みが欲しいですが、いつもの9月より少し涼しいのでがまんしましょう。
さて事務局通信昨日発送しました。なんとか休み中に送れてほっとしています。名簿の確認をお願いします。年会費は一部未入金ですが全員継続です。未入の会費の送金、変更連絡よろしくお願いします。
昨日喫茶店で雑誌を見ていたら、S電気の洗剤のいらない洗濯機が売れていることと、洗剤工業界がテストをして、洗剤の必要性を証明するためのデータを取っているという記事が出ていました。この洗濯機は汚れを落とすために超音波による洗浄と電解水を組み合わせており、汗や泥などの汚れでは洗剤がいらない。ということが売り物になっているようです。洗剤が節約できるので経済的で環境にやさしい。ということです。確かに環境汚染を防ぐためには洗剤の使用を減らすことは重要です。記事の中にもあったのですが、消費者の商品選択の基準に「環境に優しい」ということが入ってきているということは進歩だと思います。しかし、超音波洗浄(水流に振動を与え強弱をつけるということらしい)はともかく電気分解した水で洗浄効果は上がるのでしょうか?S電気に問い合わせても詳しいデータは出せないとのことでした。以前のメールでも話題になっていましたが、仕組みがきちんとわからないことが宣伝によって一人歩きすることには気持ちの悪さがのこります。大手のメーカーがこれだけ宣伝をして出す以上きちんと根拠やデータを示すべきではないでしょうか。
01A−043
差出人:藤田 勲
送信日:01年9月2日
件 名:過塩素酸カリウムのこと
過塩素酸カリウムがどうして塩素酸カリウムに変わったか、と言う点について皆さんにお尋ねしているところですが、今のところまだ回答が寄せられていません。私が調べた範囲内ですが、一応の回答を出しましたのでお知らせします。皆さんからのコメントをお願いします。
(1)構造式から分かること
塩素のオキソ酸イオンの構造式とCl-O間の結合距離を調べてみました(ピメンテル「化学結合」東京化学同人、1974より)。メール上では点電子式で表示することができませんが、酸素原子が結合するにつれて塩化物イオンが持っている非共有電子対が次々に酸素原子の方に供与されて配位結合を作ります。
ClO- ClO2- ClO3- ClO4-
O
|
Cl−O Cl−O O−Cl−O O−Cl−O
| | |
O O O
(不明) 1.57A 1.48A 1.43A
(Cl-O間の結合距離)
これから分かることは、酸素原子が多くなるにつれて結合距離が短くなることです。これは酸素の方が塩素よりも電気陰性度が高いために塩素から酸素に電荷移動が起こり、Cl-O間がイオン性になるためです。塩素原子の電子密度が減りますから原子半径が小さくなり、酸素原子がどんどん接近できるようになるわけです。同様のことはCl2OとClO2の間(各Cl-O間の結合距離は1.71Aと1.47Aである)にも言えます。この結果からはClO3-イオンよりClO4-イオンの方が安定であると言えそうです。
(2)酸性度から分かること
オキソ酸の酸性度をシュライバー「無機化学(下)」(東京化学同人、1996)で調べました。
HOCl HClO2 HClO3 HClO4
pKa 7.53 2.00 −1.2 −10
リン酸(T)と酢酸のpKaが各々2.1と4.75ですから、HClO3とHClO4は共に強酸で、特にHClO4は特に強い酸であるといえます。言い換えると、その共役塩基であるClO4-イオンは極めて弱いブレンステッドの塩基です。HOClO3上の中心のCl原子は、結合している3つのO原子から電子対を強く引っ張られますので、H−O−Cl中のO原子上の電子対もCl原子の方の引っ張られてH原子がH+イオンとして抜けやすくなると考えることができます。また、正四面体型のClO4-イオンの対称性の良さも安定性に寄与しているのでしょう。
O
↑
H→ O→Cl→O = H+ + ClO4-
↓ (安定)
O
他と較べてClO4-イオンのCl原子には非共有電子対がないのでルイス塩基性が弱く、水溶液中ではほとんどの金属イオンと錯体を作りません。
(3)酸化還元電位から分かること
各化学種の酸性側及びアルカリ性側での酸化還元電位を調べてみました(コットン・ウィルキンソン「無機化学上」培風館、1987より)。
HOCl + H+ + e- = 1/2Cl2 + H2O 1.63V
HClO2 + 3H+ + 3e- = 1/2Cl2 + 2H2O 1.64V
ClO3- + 6H+ + 5e- = 1/2Cl2 + 3H2O 1.47V @
ClO4- + 8H+ + 7e- = 1/2Cl2 + 4H2O 1.42V A
1/2Cl2 + e- = Cl- 1.36V B
ClO- + H2O + 2e- = Cl- + 2OH- 0.89V
ClO2- + 2H2O + 4e- = Cl- + 4OH- 0.78V
ClO3- + 3H2O + 6e- = Cl- + 6OH- 0.63V C
ClO4- + 4H2O + 8e- = Cl- + 8OH- 0.56V D
このことからオキソ酸の酸化力は酸性側ではいずれも塩素よりも強いことが分かります。また、オキソ酸(イオン)の酸化力はアルカリ側では酸性側よりいずれも弱いが、酸性、アルカリ性に関わらずClO3-イオンよりClO4-イオンの方が酸化力が弱いことが分かります。
また、ClO3-イオンに関してはCl-イオンとClO4-イオンとの関係でCとDの半反応式から次の反応式を導くことができます(@、A、Bからも同様の式を導くと電位は0.04Vになる)。
4ClO3- = Cl- + 3ClO4- E
E=0.63−0.56=0.07V
K=10~(24×0.07/0.0591)=2.7×10~28
Eの反応は塩素酸イオンの不均一化反応ですから、塩素酸イオンは酸性中でも塩基性中でも不均一化して塩素酸イオンを生じることを示しています。つまり、ClO3-イオンは熱力学的にはClO4-イオンより不安定だと考えることができそうです。ただし、この反応は水溶液中では大変遅いことが分かっていますので、ClO3-イオンは水中では安定な化学種として扱うことができます。
また、オキソ酸イオンの酸化剤としての反応速度は下に示すように塩素原子の酸化数が低いほどしだいに速くなることが知られています。
Cl2 = ClO- = ClO2- > ClO3- > ClO4-
例えば、Fe2+イオンとClO4-イオンを含む水溶液は溶存酸素がなければ数ヶ月も安定である一方、Fe2+イオンはCl2とClO-イオンの混合水溶液で速やかに酸化されてしまうことが分かっています。
(4)まとめ
以上のことより、KClO4がKClO3より安全なのは、ClO4-イオンがCl-O間の結合力が強く安定なこと、ルイス塩基性が弱く金属イオンと錯体を作りにくいこと、酸化力が弱く、その反応速度も遅いことがあげられると思います。
ただし、酸化力が弱いとは言っても(酸性側では塩素よりは)強い酸化剤ですから、ClO4-イオンを含む化合物に機械的な刺激や熱・静電気などが加わってひとたび反応が開始されるとやはり大爆発を起こすことがあるようです。例えば、ロケット燃料工場での地震による過塩素酸アンモニウムの爆発やランタノイド錯体の過塩素酸塩の爆発が知られています。
(5)反応熱から分かること
各化学種の反応熱を水素との反応で比較してみます(ピメンテル「化学結合」より)。
H2 + HClO2(aq) = H2O(l) + HClO(aq)
ΔH=−82.5kcal/mol
2H2 + HClO3(aq) = 2H2O(l) + HClO(aq)
ΔH=−140,9kcal/mol 1/2ΔH=−70.5kcal/mol
3H2 + HClO4(aq) = 3H2O(l) + HClO(aq)
ΔH=−201.3kcal/mol 1/3ΔH=−67.1kcal/mol
H2 + 1/2O2 = H2O(l) ΔH=−68,3kcal/mol
このことから、水素1モル当たりに発生する熱量で較べるとHClO2(aq)が最も発熱量が大きく良好な酸化剤だと言えますが、HClO4(aq)でも酸素に近い発熱量を出していることが分かります。したがって、KClO4と言えども爆発力は相当なものですから、取り扱いは十分に注意する必要があることは言うまでもありません。
急いで調べましたので間違いも多いのではないかと思います。ご検討ください。では、また。
01A−044
差出人:佐藤 琢夫
送信日:01年9月3日
件 名:理科がおもしろくなる12話
岩手の佐藤です。
理科がおもしろくなる12話(山口幸夫著)を読んでの感想と検討した内容を以下のようにまとめました。
理科がおもしろくなる12話
山口幸夫著/2001年8月
岩波ジュニア新書/207頁/780円+税
これまで「理科ばなれ」が叫ばれる中、テレビなどのメディアを通して、おもしろ実験、楽しい理科の類いに接する機会が数多くありました。この書のタイトルは、「理科がおもしろくなる12話」となっていますが、楽しく興味ある12話を通して、さらに21世紀の理科や科学技術はどうあるべきか、ということまで言及されているのが特徴だと思います。
20世紀は科学技術が輝き、発達してきました。この科学技術に後押しされた文明は、現在地球の温暖化や環境ホルモンによって、危機に瀕しています。この現状を、T科学の歴史、U最先端の科学そしてV「環境の時代」の中で、の構成の中にとらえなおしています。
97年、京都での地球の温暖化防止の国際会議で、議定書が合意されました。現在この議定書をめぐって、二酸化炭素の排出量の評価が問題とされています。この二酸化炭素が地球の温暖化を象徴している物質として脚光を浴びていますが、この温暖化はそれだけでしょうか。
カルノーが研究した「捨て熱」が第4話「効率と能率」で取上げられています。化石燃料のみならず、核分裂による原子力においてもこのエネルギー取得は、取り出したエネルギー以上の「捨て熱」が、環境に排出されます。これまでの理科教育でスポットライトの浴びせ方が不十分であった部分だと思います。
無駄の多いニューコメンの蒸気機関を大幅に向上させたワットのひらめき。石炭資源が不十分なフランスにあって、エネルギーの効率的な利用ということで研究したカルノーが紹介されています。
これを受けて、第11話「地球の温暖化と異常気象」より。「つまり三分の二は結局のところ廃熱と言う形で環境に出ていく、ということです。電気に変換するときの損失も三分の二でした。こんなことでいいんだろうか、総エネルギーは一定らしいのにもっと上手にエネルギーを使う方法、科学技術を考えなくちゃ、と思いませんか……。」ヒート・アイランドに代表される廃熱の問題、廃熱と同時に放出される二酸化炭素。新たな考えに立って科学技術を考え直さないと、地球に対する負荷は膨れ上がるばかりです。
生徒達は、現在の環境問題の解決は科学技術のハード面で解決できるのではという期待感を抱いています。そもそもこの科学技術は18世紀に形作られた進歩の思想が一つの背景にあります。そういう意味で、思想というバックボーン無しに、この21世紀に何をなすべきなのか見えてこないと思います。
著者は、第8話「生命のつながり」で次のように提言しています。「くり返し、くり返し、同じ状態がめぐってくること。これが循環です。それを断ち切ってしまわないことです。地球上、そのことが現代ほど重要になったことはありませんでした。」「いままでの科学技術はそれを考えてきませんでした。21世紀を生きるあなたは、新しい視点で、これまでかえりみられなかった科学や技術に取り組むことが可能で
す。ひとことで言うと、循環を断ち切らないシステムをつくる、そういう科学や技術です。」
教育に携わるものとして、生徒に未来を語る責務があります。理科教育では現在山積している環境問題だと思います。この現代の科学技術に未来が見えない閉塞感をどう断ち切り、どう「持続可能な社会」を考えていくのか、この書を通して生徒と一緒に考えてみてはどうでしょうか。
検討した内容について
T 科学の歴史
第1話 物質の最小単位を求めて
2頁 血液中の鉄は空気中の酸素を吸って肺に送り込んでいます。
→ 酸素を吸ってという下りが気にかかりました。肺の中で、血液中の鉄は空気中の酸素と結びつき、体内に送り込まれる…・
10頁 その元素の特徴を失わない最小の粒子が原子である。つまり、ある一つの元素にはその元素に固有の原子が存在する。
→ 原子という実体はあるのでしょうか。物質の実存の究極は、希ガスを除くとイオン又は分子です。イオンであっても分子であっても、どちらにも対応しているのが元素だと思います。その元素の特徴を失わない最小の粒子が原子であるというのが、よくわかりません。原子が輝いて見えたのは、ドルトンの時代の原子だと思います。元素ということしかわからなかった時代に、ドルトンの素晴らしさは演繹的に水素の原子の相対質量を1と決め、定量的な考えを行使したところです。原子という実体は希ガス以外にあるのでしょうか。原子は階層構造としての位置付けしかないように思います。
12頁 半導体(111頁)の項として周期表が取上げられていますが、元素の周期表で現在でも科学者は活用している事例を取上げていただきたかったところです。例えば、超電導物質の研究など。
第2話 生命とは何か
25頁 細胞分裂と「核分裂と呼ばれたのは生物学からの知恵でした」は言われてみればそうですが、意外でした。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
31頁 今日、遺伝子についての科学技術がものすごい速さで進んでいます。………科学上の競争だけでなく、特許がからみ、国家間の経済発展が関係し、複雑な様相を呈しつつあります。………かつては、神の手にあった生命が、今は科学という俎の上に載っているかのようです。
第3話 宇宙をどうみるのか
42頁 時間の向きを逆にしても、運動の方程式は変わらない。正負二つの時間を区別しない、という結論を導いた、と言えます。
→ 正負二つの時間ということが、よく読み取れません。不可逆的な時間を負としてニュートンの時代、又はニュートン力学で取り扱ったのかよくわかりません。
45頁 疑問が生じませんか。ビックバンが起こる前はどうであったのか、と。難題です。
47頁 アインシュタインの絶対空間、絶対時間について紙面の関係でこれ以上の説明はできないのでしょう。ニュートンとの違いがイラストを使って浮き彫りになればと思いましたが。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
42頁 科学というものの特徴といっていいことですが、現在の状態を説明することはできても、最初はどうだったのか、しばしば科学は説明ができません。近代科学はキリストの神なしで存在できないことがよくわかります。科学は最初が説明できないと言うこのことが、45頁の「ビックバンが起こる前はどうだったのか」に繋がっていきます。
第4話 効率と能率
先生がこれまで強調されてきたところで、我々の理科で欠如している所でもあります。第11話を展開するためのベース。エネルギーは「捨て熱」なしには利用できないということは、理科の基礎・基本で重要な柱です。私が知っているこれまで出版されたこの種の理科の本に「効率と能率」について言及されたものに接したことはありませんでした。異色であり、大事な視点だと思いました。
随所に古典と言われる文学作品が挿入されているのはアイディアだと思いました。私自身、学生の時以来、漱石の作品から遠ざかっています。時間があれば是非文明批評の観点からも再読したいものだと思いました。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
65頁 「人間の不安は科学の発展から来る。進んで止まることの知らない科学は、かつて我々に止まることを許して呉れたことがない。徒歩から俥、俥から馬車、馬車から汽車、汽車から自動車、それから航空船、それから飛行機と、何処まで行っても休ませて呉れない。何処まで伴れていかれるか分からない。実に恐ろしい」
66頁 現代ではなんでも速く仕上げることが良いこととされるけれど、そのときのエネルギー消費はどうなっているだろうか?カルノーの研究によれば「捨て熱」を避けることはできない。それは環境へ捨てられる。
U わたしたちと最先端の科学
第5話 電波とは何だろうか
74頁 クーロンが土木工学者というのが意外でした。
81頁 電磁波の速さが示されています。電磁波も光も同じであること、光の速さは取上げられます。電磁波の速度を生徒はどのくらい答えることができるのかと思い、3年理系の生徒にアンケートしました。46名中、物理選択者は27名です。光以上:1名 光と同じ:15名 光と音との中間:24名 音と同じ:1名 わからない:5名。携帯電話間、電波が飛び交っているのですが、電波の理解よく無かったです。
83頁 「クオーク」というものが素粒子ではないかと考えるようになりました。
→ 素粒子より一つ下の階層だと思っていましたが。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
83頁 IT革命という言葉が最近よく聞かれます。情報通信技術を電磁波を使ってもっと発展させようという考えがその中心です。電磁波の利用は、しかし健康への影響を考えておかないと、とり返しがつかないことにもなりかねません。
第6話 量子力学の舞台
特に問題なく読み終えました。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術へ俥の展望》
101頁 小型化はどこまで行くのでしょうか。むしろ、空恐ろしくなってきました。このめざしている先にロボットがあるように思われますが、どうでしょうか。
第7話 ピーピー・エムの世界
108頁 アルミニウムの精錬に関わるエピソードは興味深く、ホール(米)とエルー(仏)の発明と死亡は奇遇です。
112頁 半導体とトランジスターは現在物理TBで取上げられています。導電性高分子とか非金属での伝導性が脚光を浴びています。私の授業実践の現代科学を伝えるということで今後の課題です。
115頁 血液中のトランスフェリンという、鉄を運ぶ大事なタンパク質は中心に三価の鉄Fe3+を持っています。
→ 鉄Fe3+でいいのか気になりました。動脈、静脈での違いとか…・。赤血球のヘモグロビンについては「グロビンというタンパク質と、ヘムという2価の鉄イオンFe2+を含む錯体とからなる色素タンパク質である」(化学物質小事典、岩波ジュニア新書)とありました。血清鉄、トランフェリンと結びついた鉄は何価なのか、今調べているところです。
115頁 …それがアルツハイマー病を引き起こすのではないか、と心配されています。
→ 私は授業では断定していますが、どうでしょうか。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
116頁 文明が進み、科学技術が発展し、豊かで便利な社会が実現してくると、こういう心配事が出てきたわけですね。
第8話 生命のつながり
徒然草の堂々巡りの問答(127頁)は実に面白いです。42頁でも事の始まりについて同様のことが述べられています。この鶏と卵の堂堂巡りは高校生に考えさせたいと思いますが、このことに終止符を設けています。「科学者たちは、過去のある時点で、少なくとも一回は自然発生が起こった、と考えないわけにゆきません。今日のような複雑な生物に進化してくるには、数えきれない偶発的な出来事があったに違いあ
りません。私たちひとり一人の生命がものすごく大切なものという思いが、ひしひしと迫ってきませんか。」(130頁)
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
133頁 「くり返し、くり返し、同じ状態がめぐってくること。これが循環です。それを断ち切ってしまわないことです。地球上、そのことが現代ほど重要になったことはありませんでした。」
134頁 「いままでの科学技術はそれを考えてきませんでした。21世紀を生きるあなたは、新しい視点で、これまでかえりみられなかった科学や技術に取り組むことが可能です。ひとことで言うと、循環を断ち切らないシステムをつくる、そういう科学や技術です。」
21世紀の科学技術に対して、自然に対してどのように関わり、どうシステムを作るのか、という提言が述べられています。生徒に伝えたいところです。
V 「環境の時代」の中で
第9話 原子力発電と放射能のゴミ
153頁 燃えないウラン238、プルトニウムを燃やす→私はこの言葉に違和感を覚えます。核分裂として使いたいです。
154頁 日本が使うあてのないプルトニウムを、大量に、すでに約33トンを持っているので、核兵器を作るのではないかと疑われます。
→ 前にも進めず、後にも戻られない行き詰まった日本の原子力政策を通し、原子力の今後のあり方を考えさせたい所です。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
155頁 それにしても、私たちにとって最も深刻なことは、放射能のゴミの後始末の方法が見つかっていません。地下深く埋めても、地下水に浸み出す恐れがあったり、地震で地表近くに出てきてしまうかもしれません。原発は電気を作ってくれましたが、現代を生きる私たちにとって最も難しい問題をも同時に生み出してしまった、と言えるでしょう。
第10話 動く大地
165頁 「活断層」とは、………・・・・・・・…。最近動いていれば将来も動く、と考えられています。いわば「活きて」いるわけです。
→ 阪神・淡路大震災で注目を集めた「活断層」。安定な地層が見当たらない現状で、使用済み燃料の地層処分ができない。プルトニウムに加えて、二重三重に原子力を推進することの難しさが見えてきます。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
166頁 震災被害はいうまでもなく、洪水や環境汚染などにも行政の果たすべき責任はきわめて重大なわけです。冒頭の寺田寅彦の警告の「忘れたころ」というのは、行政が忘れたころ、あるいは対策をおこたっているとき、ということにもなるでしょう。私たち一般市民がつねに対策を立てておく、というのはできない相談ではないでしょうか。
168頁 もし、地上で、注意しながら、環境に放射能が漏れないように管理するならば、管理に要するエネルギー・費用・人件費など膨大なものになるでしょう。予想外の事故も起きるでしょう。
170頁 こういう難問、これぞという解は存在しない、を抱えて、なお原子力発電を推進するのは、間違っているのではないでしょうか。
第11話 地球温暖化と異常気象
180頁 化石エネルギーは、石炭・石油・天然ガス、それにウランです。
→ 化石とは生物を介したものと考えます。ウランをこのジャンルに分類したのは、エネルギーを「二種類」と定義しているところに無理があるように思います。ウランと化石燃料を同レベルに位置づけるため、「太陽と関係があるかもしれません」と述べています。化石エネルギーは燃料で、ウランは核分裂であるので、エネルギーの形態を三種類にすべきだと思いましたが。
183頁 ………つまり三分の二は結局のところ廃熱と言う形で環境に出ていく、ということです。電気に変換するときの損失も三分の二でした。
→ ヒート・アイランドの事例も引き合いに出されています。第4話「効率と能率」と重複しますが、生徒に示さなければならない理科教育の基礎基本だと思います。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
188頁 フロンに代わりうるような適当な物質はいまだに見つかっていません。オゾン層には優しいけれど、温室効果が大きかったりするのです。あちらを立てればこちらが立たず…・。科学や技術に本来的に「単目的性」という性格があるためでしょう。新しい発想が必要です。ヒトや生き物が健康に生きることのほうが便利さや快適さよりもずっと大事だ、という考え方が求められています。
自然という多種多様に絡みあって関連しあっている中で、科学技術を考える時、大事な視点です。この「単目的性」ということが、自然の破壊につながると強調したいところです。
第12話 環境ホルモン
195頁 身の回りに溢れている合成化学物質が、ホルモンに似た作用をしたり、免疫機能を低下させたり、動物やヒトの生殖機能に悪影響を及ぼしていることは、疑うことのできない事実だと思います。それらがどのようなメカニズムでそうなるのか、というところはいまだにはっきりわかっていませんが・・…。
→ これまでの有害な物質は、現在の経済活動を維持する中で、どこまでだったら国民の健康に与える影響を少なくて済むのか、そういう考えで設定された許容量。環境ホルモンはこのような考えが適用できません。絶対安全という考えしかありません。微量の化学物質が引き起こす内分泌攪乱物質は、メカニズムがわからないところからくる不明な因果関係、厄介な問題です。核化学の次に現代科学を伝えるということで、実践しなければと思っています。
205頁 石けんはそれにひきかえ、自然に分解されてしまい、むしろ、魚などのえさになるので、環境に対する悪影響は心配ありません。もちろん、使いすぎはいけませんが。
→このように言い切れるのですか。
《科学技術文明批評/21世紀の科学技術への展望》
202頁 いま、環境ホルモンの一つとして恐れられているDDTもダイオキシンも、まぎれもなく20世紀の科学技術が生み出したものです。
206頁 便利さと環境ホルモンと難問をかかえ込んでしまいました。
著者にも同様のものを送付いたしました。それでは。
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