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01A−196
差出人:藤田 勲
送信日:02年3月23日
件 名:アルツハイマー、狂牛病など
こんにちは、藤田です。
春休みになりましたね。皆さん、いかがお過ごしですか。
(1)古本のこと
私は久しぶりに神田に行ってきました。2月末から3月にかけての学期末は年末についで古本が多いので、掘り出し物が見つかるチャンスです。今回はちょっと時期が遅かったのであまりめぼしいものはありませんでしたが、多いときには未整理の本が通路や階段に山積みなっていますし、本棚に新しく並べられた幾つかの本のタイトルの特徴から、どういう専門分野の人が持っていたものなのかが想像がつくこともあります。つまり、この時期には特定の分野の本が急に増えるのです。それは、たとえば表面物性だったり、植物色素関係だったり、合成鉱物だったりするわけですが、こういう本の中に普通の本屋さんでは手に入らない、すでに絶版になっている名著があったりするのです。私がほしいのは純粋な学術理論書というよりはその分野のことが実験を交えて詳しく解説してあるものなのですが、今回はそういう本に残念ながらめぐり合えなかったわけです。でも、手ぶらで帰るのは惜しいので2冊ほど買ってきました。ついでに紹介しておきます。
@グリーンウッド、『イオン結晶―格子欠陥と不定比性―』(培風館、1974)
これは『異端の化合物―不定比性とはなにか―』(館野淳、大月書店、1993)で紹介されていたものです。定比例の法則に従わない化合物は遷移金属の酸化物や硫化物など非常に多く、その物性は磁石や半導体、各種のセンサーなどに広く利用されていますが、高校での取り扱いは非常に弱いように思います。
合金は溶液のように原子レベルで金属原子が均一に溶解した固体すなわち固溶体ですが、化合物の中でも、結晶格子中のイオンを他のイオンで置き換えたり、結晶格子中に抜け穴(空格子点)を生じたり、格子の隙間に余分にイオンを詰め込んだりするものがあります。これが不定比化合物です。このような各種の格子欠陥も一種のイオンとして扱うことにすれば、不定比化合物は格子欠陥を溶かし込んだ溶液、すなわち固溶体の一種と見なせる訳です。こういったことへの理解を深めることは結晶をさらに深く知ることにつながると思っています。
Aバン、『化学結晶学―X線構造解析入門―』(培風館、1970)
私は結晶作りに一時はまったことがあって、そのせいか今もって具体的な結晶の作り方や成長理論の書いてある本を見るとつい買ってしまう癖があります。この本は結晶の形、結晶の光学的性質、構造決定の方法などについて具体的に解説してあります。副題にあるように主はX線による構造解析法の説明ですから、ちょっと難しく、買い急いだかなという気がしないでもありません。
また、この時期は4月からの新入学予定の学生が親と一緒に古本屋を回っている姿を目にする季節です。通常は母親らしき人と女子学生のペアが多いのですが、今回は男親と男子学生の親子連れを見かけました。いずれにしてもほほえましい光景には違いなく、否応なく1年が終わりまた新しい1年が始まる季節なのだと実感させられる光景でもあります。
(2)アルツハイマー、狂牛病など
最近、アミロイド状のタンパク質(ペプチド)の異常蓄積が病気を引き起こすと考えられるアルツハイマーや狂牛病のことが相次いで各種の雑誌で取り上げられています。「大阪化学サークルニュース」(NO.104)にも興味深い解説がありますが、以下にその幾つかを紹介しておきたいと思います。
@西道隆臣,「アルツハイマー病を科学する」(『現代化学』、2001.12)
脳の老化と関わりでアルツハイマーを捉えることの重要性を指摘しています。
A森啓、「脳の老化と金属―アルツハイマー病におけるアミロイド仮説ー」
川原正博、黒田洋一郎、「アルミニウムとアルツハイマー病との関連」(『金属』、2002.1)
いずれもアルツハイマーにおけるアルミの役割を論じています。3価の陽イオンであるがゆえに3価の鉄イオンと似た挙動をするらしく、タンパク質の変性に関わり、その重合に関与するかもしれない。アルミは主犯ではなくても、進行には関わっているらしい(?)。要するにまだアルミは灰色という段階のようです。
B福岡伸一、「日本でも発生!狂牛病のサイエンス」(『化学』、2002.2)
百瀬春生、「プリオンタンパク質とプリオン病について―狂牛病―」(『理大科学フォーラム』、2002.3)
上の2つに較べればちょっと物足りない解説ですが、分かりやすいです。
アミロイド状のタンパク質とは、何らかの生理的な機能を担っていると思われる正常型のアミロイドβペプチドが何らかの原因でその構造の一部のα構造が次々にβ構造に転位していくことで、水に溶けにくくなり互いに凝集してタンパク質分解酵素による分解を受けにくくなり、脳内の細胞膜(?)上に蓄積して神経細胞の死を引き起こすと考えられているタンパク質です。
アルツハイマーの場合のアミロイド化を引き起こす原因は何なのか、また、狂牛病の場合の異常型プリオンはどのようにして腸から吸収され脳内に入っていくのか、さらにそもそもタンパク質上のαらせんが安定なβ構造に相転位・増殖していく自己触媒システムはどのようなものなのか、など私には分からない点がたくさんあります。皆さんになにか情報がありましたら紹介してください。
(3)フラックスのことの補足
@以前のこの件でメール(2・24)を送りましたが、解説に間違いがありましたので補足しておきたいと思います。
問題は塩化亜鉛の加水分解が酸性を示す次の部分です。
「その一部はわずかにジクロロヒドロキソ亜鉛酸イオン[Zn(OH)Cl2]-を生じて加水分解して酸性を示し、飽和溶液中ではテトラクロロ亜鉛酸イオン[ZnCl4]2-のような錯イオンを生じているようです。
ZnCl2 + H2O = [Zn(OH)Cl2]- + H+ 」
この反応式は次のようになり、水酸化亜鉛を一部生じて白濁して酸性になるようです。
ZnCl2 + 2H2O = Zn(OH)2 + 2HCl
この反応は塩化迭(V)の加水分解反応とよく似ています。
FeCl3 + 3H2O = Fe(OH)3 + 3HCl
A同じメールで塩化亜鉛が銅板を腐食しないことの不思議さを記しておきましたが、この点の補足をしてきます。
塩化亜鉛は塩化アンモニウムよりも酸性が強く、飽和水溶液では塩化アンモが万能試験紙でPH=6(次第に4ぐらいになる)なのに対し、塩化亜鉛では4(次第に2程度になる)です。各飽和溶液にマグネシウムリボンを浸すとアンモの方は穏やかに泡を発生するのに対して亜鉛の方では激しく反応しマグネシウムは灰色に膨れてきます。また、アルミ箔を加えるとアンモの方では変化がないのに対して、亜鉛の方では激しく反応して灰色のどろどろしたアルミの粉末になります。
このように確かに塩化亜鉛の方が塩化アンモニウムよりも反応性の高い金属に対する腐食性が強いのに、どうして反応性の弱い銅板に対しては塩化亜鉛はさびを生じさせないのでしょうか。これが前回は疑問だったわけです。
ところが、答えは簡単でした。銅板にたらした塩化亜鉛の飽和水溶液に水をさらに垂らして薄めたてみたのです。そうしたら、溶液は白濁してしばらくすると黄緑色のさびを生じているではありませんか。飽和の塩化亜鉛は粘り気が強いために、水素イオンの拡散に時間がかり反応が極めて遅くなったのです。これに対して、塩化アンモの飽和溶液の方は粘り気は少なく、酸性は弱いもののアンモニアの錯形成能力が大きいのでさびの形成が早かったと思われます。さびの色は亜鉛のほうは黄緑色でアンモの方は濃い青色ですから、錯形成能力の違いを反映していると言えます。万能試験紙でPHを調べた時にも液を試験紙にたらした初めと最終的なPHに違いが出るのはやはり反応に時間がかかっている証拠でしょう。マグネシウムとアルミが塩化亜鉛の飽和溶液中で発熱しながら激しく発泡して灰色に膨れてくるのも、酸性は強いものの水が少なく粘り気が強いノリ状態になるために溶けきれい粉末が残ると考えればよいと思います。
アルミ箔は濃塩酸でもその酸化皮膜が溶けて反応が始まるまでには時間がかかるのに、飽和塩化亜鉛水溶液ではすぐに激しく反応が始まるのは不思議ですが、とりあえずは塩化亜鉛でも薄ければ銅をさびさせるのであり、飽和の場合には拡散速度が極めて遅くなるのでさびの進行が遅いのだと考えればよい、ということで前回の答えとしたいと思います。
01A−197
差出人:林 正幸
送信日:02年3月24日
件 名:等温変化のこと
こんばんは、林です。
花冷えですね。体調を崩さないようにしましょう。
このところ私のコンピュータも奇怪な行動をします。よく分からないのですが、今日はとうとうホームページにアップロード不能になりました。例によってその理由が分かりません。メールはつながるのですが・・・。しばらく様子をみるつもりですが、6年も酷使したのだから思い切って買い替えるべきか。
授業プリント「物質とエネルギー」を検討していて気付いたのですが、反応熱は等温変化が前提なのに、教科書などはそれにはまったく触れていません。実際に実験をすると、たとえば使い捨てかいろのような発熱反応では、物質が反応して発生する熱エネルギーは、それを自分自身に与えて温度が高くなります。生徒にとって発熱とは物質の温度が高くなることです。その意味では物質は反応してもまわりにエネルギーを与えません。つまり常温だった反応物質と温度が高くなった生成物質の持つエネルギーは等しいわけです。これでは熱化学方程式も意味を持ちません。
使い捨てかいろは時間が経てば、発生した熱エネルギーをすべてまわりに伝わり、元の常温にもどります。そのとき発熱変化はまわりにエネルギーを与える変化になります。このように最終的に温度が最初と等しくなる変化は等温変化と呼ばれます。もちろん常に同じ温度に保たれていてもかまわないわけです。
発熱変化は物質の内部エネルギーの一部が熱エネルギーに変化することです。そしてこれは等温変化を前提にすれば、まわりにエネルギーを与える変化であると納得できます。生徒には発熱変化の意味自身が論理的には理解されていないおそれもあります。このあたりをすっきりさせて、等温変化の考えを導入して、発熱変化はまわりにエネルギーを与える変化であるという認識をつくることが、正確なエネルギー概念の構築には大切ではないでしょうか。
ところで藤田さん、「塩化亜鉛水溶液が銅をさびさせる」というには、酸化銅を溶かすという意味ではないのですか。フラックスの話でしたから私はそう理解していたのですが、銅そのものとも取れて混乱しています。亜鉛は銅よりイオン化傾向が大きいから、単純には反応しなくて当然ですよね。このあたりどうなんでしょうか。
ではまた。
01A−198
差出人:藤田 勲
送信日:02年3月25日
件 名:「塩化亜鉛水溶液が銅をさびさせる」の補足
林さん、私の説明が不足していたようです。失礼しました。少し補足しておきます。
銅を塩化亜鉛の水溶液がさびさせると言った場合の酸化剤は酸素です。この酸素は銅表面に吸着した空気中の酸素か、水溶液に溶けた溶存酸素です。塩化亜鉛の場合、黄緑色のさびは溶液の周辺から現れますから、次々に表面吸着してくる空気中の酸素が銅を酸化銅にする酸化剤として働いているものと思われます。
問題は、常温で生じている目に見えないほど薄い酸化皮膜、これはピカピカに見える銅表面にも生じているわけですが、これがどうして塩化亜鉛飽和水溶液では溶けずに、塩化アンモニウム飽和水溶液では溶けてさびが広がっていくのかということです。塩化亜鉛の方が塩化アンモよりもアルミやマグネシウムをすぐ溶かすほど酸性が強いのに、塩化亜鉛のほうがさびを進行させないのが不思議だったわけです。
繰り返しになりますが、ここに塩化亜鉛飽和液の粘性が大きいゆえに反応速度が遅くなることや、塩化アンモでは反応を早めるアンモニア錯化剤の影響があるのではないかと思っているわけです。
ところで、林さんは昨年は「エントロピー」、そして今年は「エネルギー」とこだわっているようですね。どういう授業書として反応熱の所が出来上がってくるのか楽しみです。私は目に見えるモノへは結構こだわれるのですが、目に見えない「エネルギー」や「エントロピー」になると全然頭が働きません。この辺りはこれから勉強しなければいけないなあと思っている所です。
01A−199
差出人:野中 直彦
送信日:02年3月25日
件 名:鉛ガラスの危険性が指摘され
野中です。
ここのところトンボ玉に熱中していました。鉛ガラスの危険性が指摘され、うーんと悩んでいます。私も、そのジチゾン法をやってみたいと思います。詳しい資料などがありましたら教えてください。少し硬いソーダガラスなら・・・・でもおなじか?
食べられるシャボン玉
テンヨーから発売されています。
1番の液
甘味料(ステビア・アスパルテーム・L−フェニアラニン化合物)、香料、還元麦芽糖、増粘剤(キサンタンガム)、保存料(安息香酸Na、パラオキシ安息香酸エステル)
2番の液
乳化剤、酒精
写真を貼付します。ウイルスではありません。
01A−200
差出人:藤田 勲
送信日:02年3月26日
件 名:RE:鉛ガラスの危険性が指摘され
藤田です。
鉛検出法は、その概要が『新訂 定性分析化学 中巻』(高木誠司、南江堂、1964)に、詳しい分析法が『鉛−大気中の鉛−』(米国研究協議会、東京化学同人、1979)に出ています。比色により定量もでき、その検出限界は0.1〜0.2ppm程度ですからかなり鋭敏です。私は比色定量をしたわけではありませんので、ガラスから気化した鉛がどの程度の濃度で、人体に対する影響がどの程度の期間で現れるのかなどは皆目分かりません。
でも前も少触れましたが、欧米では環境汚染金属の中で鉛が最も関心が高く、国連の専門機関(FAO)とWHOが共同して食品中の国際基準つくりを進めているようです(『金属』、2002年1月号)。その案(CCFAC案)による基準で日本の20品目の食品中の鉛濃度を比較すると、かんきつ類ではその平均値が基準案の2倍を超え、キュウリとカレイ・ヒラメとイワシと豚肉では1〜2倍の間で、1以下ではあるが0.9を超えている食品がジャガイモとリンゴとアジであったそうです。調査した20品目中の8品目が基準値ぎりぎりかそれを超えているわけですから、日本における鉛による慢性的な毒性が懸念されるところです。
それから、『食べられるシャボン玉』の件ですが、ここに使われている乳化剤について私には特定はできませんがある程度の目星がついています。細部がつめられたら、近いうちに弾むシャボン玉とセットにして理科教室に投稿しようと思っています。
では、また。
01A−201
差出人:野中 直彦
送信日:02年4月1日
件 名:学校5日制がスタート
いよいよ新学期が始まります。私は、1年生の担任で、学年主任そして、特活部長ということだそうです。何やら忙しい毎日になりそうです。本校では関係ないのですが、5日制のために、毎日45分7時間で多い人は22コマの授業があるようで、7時間のうちの4時間が授業という日があるとか、土曜日に模試をやったり、土日の宿題のための課題テストが毎週月曜日にあるとか、なんやら変な5日制があるようです。
01A−202
差出人:林 正幸
送信日:02年4月13日
件 名:薄氷を踏む思い
こんばんは、林です。
。杉原さん、お父上のご逝去、お悔やみ申し上げます。身近な人を失うと、なにか運命のようなものを感じます。どのように思ってみても、この流れには逆らえない。残される者はそれを受け入れ、今を誠実に生きるしかありません。
さて新年度のスタートはいつもながら忙しいですね。そんな最中にコンピュータが立ち上がらなくなりました。2月から準備してきた授業プリントを始め、1年数カ月の間のデータが読み出せない! くり返し始動しても言うことを聞いてくれません。翌日気を取り直して試しても駄目。泣く泣く、頭の中からデータを引っ張り出してプリントを作り始めました。しかしそんなに正確に覚えていられるわけがありません。それに授業に間に合うのか? 私は行きがかり上3台のコンピュータを使っているのですが、最新の手づくりしたものがトラブルを起こしたのです。まさかとバックアップがしてなかったのです。むしろ残り2台のデータをこのコンピュータでバックアップしていたのです。
3日目も言うことを聞いてくれませんでした。しかし4日目にプリントの再生作業の前にひょっとしてとスイッチを入れると、何ごとも無かったように立ち上がってくれるではありませんこれが4月8日のことです。直ちにバックアップを取りました。うれしさと同時にどっと疲れが出てきました。こんなわけで今年度は一層忙しいスタートになりました。まさに薄氷を踏む思いです。
本当は1年後にと考えていたのですが、新しいコンピュータを購入してきちんとシステムを整える決心をしました。引き続いて、立ち上がらなかったコンピュータのフロッピーデスクドライブの不調が出てきているのです。
こんなこともあって連絡が遅れました。佐藤琢夫さんのホームページのアドレスが次のように変更になっています。
www8.plala.or.jp/grasia/
ちなみに、私のホームページへのアップロードの方も復旧しました。どうやらこれはプロバイダーの責任であったようです。
授業が始まるとまた生徒たちとの新しいつながりが生まれてきます。幸い教室に行くと、林先生で良かったと歓迎してくれます。逆に担当しない生徒から、先生来てくれないのかと残念がられます。教師になって20年以上は、努力しても努力してもそうはなりませんでした。生徒たちとうまくつながりが持てる先生がうらやましく感じられました。それが今ではどうやら納得ができる状態になりました。
授業の内容の方も、先生になった教え子に出会ったりすると、不十分な授業だったと恥ずかしい思いでやり切れませんでした。こちらの方はやっとここ2、3年で少しばかりの自信が持てるようになりました。これは定年が近づいたためかもしれません。もちろん十分な授業ができるようになったと言っているのではありません。これは永遠の課題なのですから。
ではまた。
01A−203
差出人:澤田 史郎
送信日:02年4月14日
件 名:事務局です
澤田です。
3号のプレ通信を出す期限になっているのですが、まだ発送できていません。1年の担任予定者の移動で急に担任に入ったこと、教務といういままでやったことのない分掌にはいったいることなどで大変な新学期なのです。なんとか1週間の遅れくらいでいきたいのですがもう少し待ってください。
それしても5日制は大変ですね。私の学校は5日制と同時に週2日の7時間授業が始まりました。放課後の時間が一気になくなった感じがします。教師はまだ空き時間のやりくりで何とかできますが生徒はもっと大変です。まだ1週間ですがHRやクラブに相当大きな影響がでそうです。みなさんのところはいかがでしょうか。
01A−1204
差出人:佐藤 琢夫
送信日:02年4月15日
件 名:春休みの読書から
岩手の佐藤です。
春休みに、 板倉聖宣・湯沢光男著 原子と原子が出会うとき(触媒のなぞをとく)を読みました。今年度における触媒の指導の参考になりました。
高校での触媒の授業は、化学Uで取上げられています。次の二点が読後の感想です。ひとつは、触媒の導入として今後の授業に使えると思いました。次に、これまで点であった知識が、点から線に繋がり出す面白さがこの本にはありました。 仮説社から発行されている「たのしい授業」を購読し、これまで仮説実験授業の楽しさを垣間見てきました。以前、表面張力の学習ということで、水の表面に一円玉やモールで作ったアメンボウを浮かせたりしていました。これらの実験は小・中学生を対象としています。高校の授業で取り上げても実に面白い実験だと思います。高校生だとこれらに興じるというレベルを脱して、表面張力という理屈に眼がいくと思われます。今後是非取り組みたいと思っています。
表面張力という入り口から、その奥の物質・物体の表面の特殊・特異性(触媒作用)へと知識が繋がっていきます。一見脈絡のない、表面張力と触媒の働きが繋がり出した時の生徒たちの様子を見たいものです。
第一幕 分子と分子が出会うとき
水素の爆鳴が取り上げられています。これまで三徳ビンの実験と称して行ってきた類似実験が紹介されています。紹介されている実験は実に簡便に見えます。水上置換で水素を捕集しないで、上方置換で捕集しています。ペットボトルを使い安全性に配慮されています。
次に、アイディアと気になっている点について述べたいと思います。長さ6メートルのビニール管を使った爆鳴が紹介されています。この実験をする時、水素と酸素を別々に入れると混合が難しくなります。そこで、混合をよくするために、ビニール管に水素と酸素を同時に入れる工夫をしています。
「ホースの両端を持ち上げたり下げたりすると、中のビー玉があっちへ行ったりこっちへ来たりして、中の気体をかき混ぜるように仕組んであります。」(20ページ)
ビニール管にビー玉を入れるという一文は、はなかなかのアイディアだと思います。気になることは、ビー玉が入るということですから、直径がどのくらいのビニール管を使用したのかということです。演示が行われたとき安全に行われたと思います。直径の大きさが大きいと尻好みするような気がします。今後の改訂の際、『実験器具について』(26ページ)のページにビニール管の直径が示されていると大変参考になると思います。
第二幕 固体と液体の表面
これまで「楽しい授業」等に掲載されていた表面張力が編集され、まとめてあります。
「コップいっぱいの水に10円玉は何枚入る?」、「水の表面に1円玉を浮かせられるか」、「もう1枚の1円玉は動くか?」、「ナマリ同士を押し付けるとくっつくのか?」の4項目の実験が紹介されています。前述の通り、「10円玉は何枚入る?」ということで取り組んでみたいと思います。
表面の力から表面の科学へ展開されていきます。活性炭の表面、金属の表面の原子の特異性が順序だてて展開されています。
「粉末冶金」という言葉は、はじめて耳にしました。実験「銅の化学変化の旅」で、最後に塩化銅の溶液にアルミニウム板を入れると、スポンジ状の銅が析出します。この銅を乳鉢に入れ、乳棒で押し付けると、金属光沢を持つ銅に変わります。
「もしかすると、ナマリだけでなく、銅やアルミニウムの粉末でも、少し強くこすりつけただけで、くっつきあってしまうかも知れません。」(49ページ)
私の経験からも、この記述はその通りだと思いました。
第三幕 白金の不思議なはたらき
金属がさびるということは、酸素分子が金属の表面の力で原子状に分解され化合が起きる変化です。これに対して不活性な金や白金の取り扱いを考えさせられました。イオン化傾向の学習で、金や白金の取り扱いが皮相すぎたきらいがあります是非今年度の授業では次に引用する発問をしたいとものだと考えています。
「白金の表面の原子には、空気中の酸素が化合しないということです。ということは、・・・・・・・空気中の酸素分子は、白金の表面の原子にはまったく寄りつかないということなのでしょうか。」(56ページ)
触媒の主役であるd軌道を取り上げることなく、本書で説明している固体表面の力で、すんなりと触媒の説明ができそうです。
活性である鉄は、表面の力で分解された酸素原子と化合するのに対して、白金は酸素原子に分解するけれど、この酸素原子と化合しません。この酸素原子は酸素分子に再び戻り、気体として拡散します。結果は白金に酸素が寄り付かないように見えるけれど、白金の固体表面では酸素が活性化されているわけです。
酸素と水素ガスを同居させると、この白金の固体表面で原子状に活性化され、容易に2種類のガスが化合することを是非見せたいものだと思います。本書では、白金を用いた実験は次の通りです。
「白金でメチルアルコールに火がつくか?」、「アルコール蒸気の中に白金黒をいれたら」、「白金黒に水素ガスを吹きつけたら」、「爆鳴気に白金黒を入れたら?」など大変面白い実験が紹介されています。
白金の触媒の授業を行った場合予想されることをふれて、この本の紹介を終えたいと思います。金もイオン化傾向が小さいので触媒として使えるのですかという生徒からの投げかけが予想されます。金は触媒になりません。このことは化学が一筋縄でいかない、生徒にとって難しいところとなります。
触媒に関しておすすめの本ありませんか。ありましたら紹介していただけませんか。
では、また。
01A−205
差出人:杉原 和男
送信日:02年4月17日
件 名:塩素と格闘しております
sugihara です。
勤務先では「センター学習」という、京都市立小学校6年生全員と中学校2年生全員対象の実験室学習を実施しております。1年毎に内容を更新しておりますが、本年度の第1回目の中2の学習が本日ありました(準備で大変でした)。今回は、塩素系の漂白剤に関する内容です。化学だけでも2000名以上の参加者がありますから、費用や安全面など、かなり丁寧な組み立てが必要となります。
特に、今回は塩素の黄色い色をはっきりと見せたいので、慎重になりました。最初は、直径30mm程度のグループ数のガラス瓶に塩素を封入しました。ところが、数時間経過すると、はっきりしていた黄色が薄黄色になるのです。水滴の影響ではと思い、塩化カルシウムで乾燥してから封入しましたが同じです。ガラス壁面の汚れや水分が原因かと思い、丁寧に洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥しましたが同じです。
※余談ながら、この目立たなくなったガラス瓶の蓋を開けた同僚の先生が呼吸困難のパニックとなり、病院に行かれました。
仕方なく、教卓での演示実験に変更しました。三角フラスコ内で発生させ、それを大きな丸底フラスコに導きました。サラシ粉と濃塩酸の量を調整し、ちょうど丸底フラスコに塩素が満たされるようにしました。しかし、塩素があふれる可能性もあり、チューブで屋外に導きました。
予備実験すると、部屋中に塩素臭が満ちて大変でした。しばらく原因がわからず悩みましたが、シリコンチューブが塩素をかなり通している事がわかりました。普通のビニルチューブ(塩ビです)の方が漏れませんでした。
塩素はチオ硫酸ナトリウムで処理しましたが、熱帯魚の水槽のカルキ抜きに用いている関係で、理解してくれる生徒がいました。
私は、わざと何度も塩素を吸いました。ミスがあったときの影響を知りたかったからです。やはり、呼吸困難になり、死ぬかと思いました(酸素を吸って命拾いしました)。貴重な経験でした。
皆さんの中に黄色い色を安定したまま封入に成功された方はおられませんか? 塩素は、「色のある気体」「毒ガス」「多用途」「豊富な資源」といった理由で、もっと教材化されてもよい気体です。
※多忙な中、極めて軽いネタをアップしました。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sugicom/kazuo/neta/bake39.html
01A−206
差出人:山本 喜一
送信日:02年4月21日
件 名:塩素について
こんにちは、山本です。
入学式から今までの2週間、新入生に対するさまざまなガイダンスや、個別の生徒・保護者への対応に追われ、嵐のような毎日でした。やっと2連休を迎え、家でごろごろ休んでいたので、メールを書く元気もでてきました。
塩素については、私ももっと教材化されて良い物質だと思っています。さまざまな方面で有用な化合物として使われている反面、PCBやダイオキシンに象徴されるように、環境破壊の大きな原因になっている物質ですから。
杉原さんの塩素の封入実験を、興味深く読みました。塩素の黄緑色が薄くなるのは、塩素の乾燥が不十分だったか、塩素がガラスの反応したかのいずれかではないかと思います。化学大辞典によりますと、塩素はさまざまな金属酸化物と反応して、塩化物あるいはオキシ塩化物をつくるそうです。ガラス中の金属酸化物が塩素と反応した可能性もあるのではないでしょうか。
それにしても、塩素を直接吸い込む体験をすすんでするとは、すごいですね。塩素には発がん性がある(?)と聞いたこともありますからで、気をつけた方が良いと思います。
01A−207
差出人:野中 直彦
送信日:02年4月23日
件 名:最近のこと
アルケのみなさん、こんばんは
私も、今の学校で2度目の担任・1年学年主任・特別教育活動部長なるものをやることになり、忙しさの中でばたばたしています。幸い、授業が成り立たないクラスは今のところなく、その点では平穏に過ぎております。ただ、担任であるといろいろ苦労があります。通勤も片道55kmの1時間です。益田南高校は廃校の対象になっており、3年後には募集停止になるとの発表がありました。
01A−208
差出人:野中 直彦
送信日:02年4月23日
件 名:実験の失敗
ところで
早々に実験で失敗しました。(とてもばかなことで恥ずかしい)
1)テルミット反応で
古いアルミニウムの粉を使ったために、何度やっても失敗。
古いか新しいかを見分ける方法はあるのでしょうか
2)ヨウ素と亜鉛粉末に水の反応
これまた、亜鉛粉末が古いので失敗かな
3)時計反応
KIO3とNaHSO3とでんぷんでA液とB液をつくる
なぜか、この溶液をプラスチックの容器にいれると呈色しない
これを、ガラス瓶にいれて保存して取りだすとうまく反応する
4)青いフラスコ
ブドウ糖とアルカリとメチレンブルーで振ると青くなるもの
ブドウ糖が品切れ(私の学校準備室)のため、代用で乳糖をつかうとOKで、ショ糖と果糖はダメでした。
01A−209
差出人:野中 直彦
送信日:02年4月23日
件 名:炭素スス?
またまたとろこで
1)トンボ玉のススについて
藤田さんにトンボ玉の危険性を指摘されんがら、この魅力から脱却できず困っています。
藤田さんの指摘の中で、「ススがはいる」と言う表現はまちがっているのではないかとあり、私もその通りだと思いました。ふーんと感心しました。でも、みんなすす=炭素と思っている人は多いと思います。ガラスの中にススが入り込むことがおかしいですよね。あの高温状態で。関係ないけど、アセチレンの爆発でススがいっぱいでるのは、生徒は不思議に思うようです。見えないところからぼあーとでてくるものだから
2)マガネシウムリボンの黒
マグネシウムリボンの黒くなるのは窒化マグネシウムだと思いこんでいたのですが、どうもこれはススではないかということです。これこそ、炭素かな。地区の高校の化学部が森下先生の指導のもと解明しました、詳しくは、アルケ通信で送りたいと思います。
01A−210
差出人:林 正幸
送信日:02年4月26日
件 名:炭酸カルシウムのpH
こんばんは、林です。
澤田さん、事務局の仕事をご苦労さまです。5月始めに通信資料を発送します。前にも書いたように、この1年間で私のすべての「授業プリント」を届けたいと考えています。
先日、企業の方から、炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムのpHはどのように計算するのか、という質問を受けました。化学平衡に係わり自分の勉強になると取り組んでみました。ところが結構難しく、計算ミズも重なって手間取りました。それがやっと答が出てほっとしました。以下にその返事を転載します。なお水酸化アルミニウムに関しては簡単でないように思います。もし参考になる情報がありましたら教えてください。
<メールの転載>
炭酸カルシウムの方は次のように計算ができます。これは溶解すると次のように電離します。
CaCO3 ―→ Ca^2+ + CO3^2- (A)
そして炭酸イオンの一部は次のように水と反応して水酸化物イオンを生じ、そのためにすこし塩基性になります。
CO3^2- + H2O ―→ HCO3^- + OH^- (B)
この全体としての反応は塩の加水分解と呼ばれます。
以下では1[l]の水溶液で考えることにします。こうすると物質量とモル濃度の数値が一致するから便利です。そして炭酸カルシウムx[mol]が溶解して電離し、さらに水酸化物イオンy[mol]が生成すると、各物質のモル濃度は次のようになります。
[Ca^2+] x [mol/l]
[CO3^2-] (x−y)
[HCO3^-] y
[OH^-] y
化学便覧を調べると
◎炭酸カルシウムの溶解度積 2.9×10^-9
これは次のように表されます。
[Ca^2+][CO3^2-]= 2.9×10^-9 = x・(x−y)
対数を取ると
log{x・(x−y)}=−8.54 (1)
また便覧に依ると
◎炭酸の解離指数(−pK)
第1 3.9 第2 10.33
後者を質量作用の法則に基づいて式に直すと次のようになります。
HCO3^- ―→ H^+ + CO3^2-
log([H^+][CO3^2-]/[HCO3^-])= −10.33
先を見越して両辺に−1を掛け算して
[HCO3^-]/[H^+][CO3^2-]=10.33 (2)
ここで反応式(B)に対して、水のモル濃度は事実上純水に等しく一定であることを踏まえて、質量作用の法則を書いてみます。
[HCO3^-][OH^-]/[CO3^2-]= K = y^2/(x−y)
この式を高校でも学習する水のイオン積
[H^+][OH^-]=10^-14
で辺々割り算します。
[HCO3^-]/[H^+][CO3^2-]= y^2/10^-14・(x−y)
さらに両辺の対数を取り
log([HCO3^-]/[H^+][CO3^2-])= 14+log{y^2/(x−y)}
これで(2)式が代入できます。
10.33 = 14+log{y^2/(x−y)}
log{y^2/(x−y)}= −3.67 (3)
これで(1)と(3)からyが求められるはずです。はじめに計算しやすいように両式を辺々足し算します。
logxy^2 = −12.21
対数を除き
xy^2 = 6.2×10^-13
x = 6.2×10^-13/y^2
(1)の対数を除いた元の式に代入すると
6.2×10^-13/y^2(6.2×10^-13/y^2 −y)= 2.9×10^-9
これを整理して
(6.2×10^-13)^2/y^4 − 6.2×10^-13/y = 2.9×10^-9
38×10^-26 = 2.9×10^-9・y^3(y + 6.2×10^-13/2.9×10^-9)
1.3×10^-16 = y^3(y + 2.1×10^-4)
この方程式は次のようにすれば解けます。はじめに
(y + 2.1×10^-4)= y
とすると
1.3×10^-16 = y^4
y= 1.07×10^-4
この数値を使って
(y + 2.1×10^-4)= 3.2×10^-4
したがって
1.3×10^-16/3.2×10^-4 = y^3 = 0.40×10^-12
y= 0.74×10^-4
もう一度くり返すと
(y + 2.1×10^-4)= 2.8×10^-4
y^3 = 0.46×10^-12
y= 0.77×10^-4
これを答としてよいでしょう。
最後に水のイオン積から水素イオン濃度を求め、pHを計算します。
[H^+]= 10^-14/0.77×10^-4 = 1.3×10^-10
pH = 9.9
水酸化アルミニウムの方ですが、化学便覧によると
◎水酸化アルミニウムの溶解度積 1.1×10^-33
水酸化物イオンのモル濃度をx[mol/l]とすると
[Al][OH^-]^3 = 1.1×10^-33 = (x/3)x^3 == x^4/3
x^4 = 3.3×10^-33 = 0.33×10^-32
x = 0.76×10^-8
これはかなり中性に近い数値で、水の電離を考慮した計算が求められます。しかしその前に水酸化アルミニウムに関してはそれを水に溶かしたときの電離がアクア錯イオンの係わる反応になるはずであり、溶解度積のみからの単純な計算は意味がないように思われます。そしてもうひとつ、これは前者にも言えることですが、現実には不純物の影響があるはずです。
<以上>
ではまた。
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