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01A−166
差出人:山本 喜一
送信日:02年2月8日
件 名:基礎と基本
こんにちは、山本です。
今年も日教組の全国大会へ行って来ました。速いもので、もう3年になります。今年は宮崎でしたから、現地では馬場さんに大変お世話になりました。
さて、今年の収穫は、基礎と基本はどう違うかという議論でした。共同研究者の最首さんは、次のように提起しています。「基本とは、教師が子どもに学び取らせようと思ったこと、あるいは、教師と子どもが共有しようと思ったこと。そして、基礎とは、それを教えるための手段である。」
つまり、子どもを主権者に育て上げたいとか、循環型社会を作り上げられるような子どもにしたいという思いが基本。そのために授業で使う教材や教具、教え方などが基礎だというわけです。ですから、実験開発などは基礎に属するものです。そして、その実験で子どもたちに何を教えたいのかというところが基本になってきます。この言い方の当否は別にしても、こうやって整理してみますと、問題がはっきり見えてくるような気がします。本質的なところは、私たちは何を基本におくかということでしょう。それをしっかり捕まえておいて、それぞれの教材や実験を有機的に配置する工夫が必要になってくるのだと思います。実験開発や教え方の工夫に心を砕くことはもちろん大切ですが、それ以上に、何のために教えるのかと言うことを捕まえておくべきでしょう。そしてそれは、いったん捕まえたら良しとするものではなく、常に問い直し、練り直すべきでしょう。
ちょっと前まで私は、科学的なものの考え方ができる子どもにしたい、ということを基本にしていたような気がします。しかし、それだけでは足りないことを知りました。科学的なものの考え方という言い方の中身を吟味しなければなりませんが、いわゆる一流の大学に進学できるような生徒は、多かれ少なかれそういう考え方ができる生徒でしょう。しかし、そういう生徒の中にも、非常に利己的で、目先の利益しか考えられない生徒が見られました。「ああいう子どもがいい大学に行って、将来、日本の中心になるんだから、日本はいい国になるわけないよな」などと、同僚とささやきあったこともありました。ですから、科学的なものの考え方ができるだけでは、だめなのだと思います。もう一歩進めて、自分やまわりの人の命の大切さや、幸福を考えられる生徒でなければならないのだと思います。それを基本に理科を教えるべきだと、思っています。
では、また。
01A−167
差出人:澤田 史郎
送信日:02年2月8日
件 名:アルケ通信2号
澤田です。
さきほど鈴木さんからの資料を受け取りました。三連休中に作ろうと固く決意しています。みなさん、もうしばらくお待ちください。
01A−168
差出人:藤田 勲
送信日:02年2月9日
件 名:RE:除湿剤についてのお礼
こんにちは、藤田です。
山本さん、全国教研ご苦労様でした。「実験開発や教え方の工夫に心を砕くことはもちろん大切ですが、それ以上に、何のために教えるのかと言うことを捕まえておくべきでしょう。」という指摘は尤もですね。今求められているのは、「自分やまわりの人の命の大切さや、幸福を考えられる生徒」に育てるための1年間を通した具体的な授業プランではないでしょうか。私は各論を具体的にその視点で議論すべき時期に来ていると思っています。「実験開発や教え方の工夫」は数多く出回っているし、「自分やまわりの人の命の大切さや、幸福を考えられる生徒」という視点に反対する人はいないでしょう。
ところで、前回は寒剤について分かったような事を書きました。しかし、実はその後色々なものを砕いた氷に加えて寒剤を作ってみたところ、寒剤というのもの冷える原理が分からなくなってしまいました。今日はそのことを書きたいと思います。
(1)まず、前回の続きからです。
(a)飽和食塩水
これは予想通り冷えて、-10度ぐらいになりました。食塩そのものではもっと冷えるはず(文献値は-21度)ですから、飽和食塩水では食塩の溶解熱の分だけの吸熱が稼げないと考えればよいと思います。
(b)塩化アルミニウム6水塩
-10度ぐらいになりました。飽和塩化アルミニウム水溶液では-5度程度でした。この6水塩はおそらく溶解熱が発熱なのでしょう。このため温度が思いのほか下がらなかったのでしょうか。私としては、塩化アルミニウムは完全電離すればその1モルが4モル分に相当しますから、凝固点降下が食塩や塩化カルシウムよりも効いてもっと下がると予想していたので意外でした。この点については後で議論したいと思います。
(c)尿素
これも-10度程度した。尿素の溶解熱は吸熱ですから、もっと下がるものと期待していたのですが意外でした。
(2)寒剤になる塩と寒剤にならない塩
ここまででは予想通りにはいかなかったものの、私は氷に塩類などを加えてかき混ぜれば、溶解熱を考慮に入れても凝固点降下で何でも冷えるんだと思っていました。ところが、この後他の塩類でやってみたところ、説明のつかない結果になってしまいました。
(d)ミョウバン
0度付近のままほとんど変化なし。塩化アルミニウム6水塩が冷えるのに、どうして同じアルミニウム塩の結晶ミョウバンが冷えないのでしょう。凝固点降下が起こらないということはありえませんね。
(e)硫酸ナトリウム10水塩
これも0度付近のままほとんど変化なし。この結晶の溶解熱は吸熱でしたから、なぜ冷えないのかが不思議でした。アンモニウムミョウバン(硫酸アルミニウムアンモニウム12水塩)0度付近のまま変化がありませんでしたから、とりあえず硫酸塩は冷えないのかも知れないと考えました。
(f)硫酸アンモニウムと炭酸アンモニウム
前者は-12度付近まで(文献値は−19度)、後者は−3度付近まで冷える。これは硫酸塩は冷えないが、アンモニウム塩は冷えるとう実験結果です。濃アンモニア水でも−12度付近まで冷えましたから、この経験則を支持しています。
(g)その他は煩雑になりますので、結果を記しておきます。
硝酸カルシウム4水塩 塩化鉄(V)6水塩 炭酸ナトリウム10水塩
-15度 -6度 -1度
氷酢酸 水酸化カリウム
-13度 -14度
この結果は硝酸塩や塩化物、アンモニウム塩、酸、アルカリでは寒剤としてはよく働くが、硫酸塩や炭酸塩はあまり効果がないということを意味しています。
(3)塩類が寒剤になる訳
では、なぜ寒剤としての性能に差があるのでしょうか。次にこれを考えてみたいと思います。これは食塩よりなぜ塩化カルシウムの方が寒剤として優れているのかという疑問を解くことにもなります。
(a)食塩と塩化カルシウムの状態図
実は先の実験結果から寒剤として優れている塩類とそうではない硫酸塩や炭酸塩との違いがどこにあるか気づかれた方もいると思います。寒剤としての性能は凝固点降下だけでは決まらず、塩類の0度以下の低温における溶解度にも関係しているのです。つまり、凝固点降下が効いてくるためには氷が0度でわずかにとけ出した水に塩類が溶けて、その溶けた塩類の電離したイオンのモル濃度に比例して凝固点降下を起こして氷が急激に溶け出していくわけですね。これで水溶液の温度が下がりますが、この融け出した水で薄まった低温の水溶液にさらに塩類が溶け込んでいくことができれば凝固点降下で氷はさらに融けて温度は下がります。そして、これ以上低温の水溶液に塩類が溶けなくなったら凝固点降下もこれ以上起こらず、温度が一定になると考えられます。この時は氷と溶け残った塩類とその温度での飽和水溶液が共存していることになり、これがこの寒剤の最低到達温度で共晶点と呼ばれる点です。
温度
|
0℃ |
|\ 氷に塩をかけたときに
| \ (22%で塩が溶け残る)
| \
-21℃ | \
|
|
________________食塩水の濃度
22.4 (%)
塩類の飽和水溶液を冷却していくと初めに結晶の析出があり、残った水溶液はどんどん薄くなっていきますが、さらに冷却していくと塩類の析出だけではなくついには水までが凍っていく時点がきます。塩類が濃いうちは凝固点降下により凍らなかった水が、結晶析出で水溶液が薄くなると凝固点降下による効果が効かなくなって水溶液中の水が凍ってくるというわけです。この温度が共晶点で、これ以上冷却しても水溶液の組成は変わらずに氷と塩が一定の割合で同時に析出するだけで、温度も下がりません。
温度
|
0℃ | /
| /
| /
-21℃ | / 0度の飽和食塩水(26%)を冷やした時
| (22%で氷も析出してくる)
|
________________食塩水の濃度
22 26 (%)
これに対して、塩化カルシウムの場合にはその溶解度が0度では37%で溶ける溶質の量が多い上に、完全電離した時には食塩の1.5倍のイオン数になりますから凝固点降下度も大きくそのグラフは食塩より深い谷底がある形になります。このため、共晶点が−55度と大きく下がるのです。
温度
| 食塩 塩化カルシウム
0℃ |\ / /
|\\ / /
| \ \ / /
-21℃ | \ \/ /
| \ /
| \ /
| \ /
| \ /
-55℃ | \/
________________塩類の濃度
22 26 33 37 (%)
(b)その他の塩の0度における溶解度と寒剤にした場合の到達温度
以上の推論が正しいかどうか、使った各塩類の0度の溶解度(100gの飽和溶液中の溶質のg数)と寒剤にした場合の到達温度(すでに紹介した実際に私がやった実験値)との相関を見てみます。
(@)塩化物の場合
塩化ナトリウム 塩化カルシウム 塩化アルミニウム 塩化鉄(V)
26.3 37.3 30.5 42.7
(-15度) (-25度) (-10度) (-6度)
塩化物は一般に0度の水によく溶けますから寒剤の効果があると言えます。
(A)硫酸塩の場合
硫酸ナトリウム ミョウバン アンモニウムミョウバン 硫酸アンモニウム
4.3 3.0 3.0 41.4
(0度) (0度) (0度) (-12度)
0度の水に溶けにくい硫酸塩は当然のことながらいずれも寒剤としての効果はないと言えます。
(B)アルカリの場合
水酸化ナトリウム 水酸化カリウム
29.6 49.2
(-28度) (-65度)
この温度は私の測定値ではありませんが、0度における溶解度と良い相関があることが分かると思います。
(C)その他
尿素 ショ糖
40.0 64.2
(-10度) (-3度)
私は固体の有機物ではこの2つしか測っていません。これらは溶解度が大きい割にはモル濃度に換算すれば非電解質ですから、それによる凝固点降下はわずかだと考えられます。したがって、思いのほか温度は下がらないのです。
有機物では水とどんな割合でも溶けるアセトンやエタノール、それからメタノールでも氷に加えて温度を測ってみました。それぞれ−13度、-18度、-15度という温度になりました。非電解質でも溶ける量が途方もなく多ければ寒剤としての効果が当然大きいわけですね。これらはドライアイスとの寒剤としてだけでなく氷との混合でも十分に寒剤になるわけです。転がしアイスクリームを作る際に、塩を使った寒剤ではスチール缶が良く洗わないとすぐに腐食してしまうけ欠点がありましたが、これからはメタノールと氷で寒剤にすれば良さそうです。この液は回収して、ちょっと面倒くさいですが蒸留すれば再び使えるわけですから便利ですね。
(4)まとめ
分かってしまえば、寒剤の原理は簡単ですね。要するに、低温でもよく水に溶ける物質(できれば電解質がなお良い)を使えばよいということです。化学便覧の溶解度のところを眺めれば、どれが優れた寒剤になる予想がつきますね。
でも、ここまで理解するのに私は以上のような単純な実験を繰り返し、ようやく一定の結論に達したのです。何という回り道でしょう。この1週間かなり疲れました。勘違いがあるかもしれません。皆さんで検討願えれば幸いです。
では、また。
01A−169
01A−170
差出人:藤田 勲
送信日:02年2月11日
件 名:RE:イオン交換樹脂
藤田です。
林さんのイオン交換樹脂を使ったアミノ酸の実験、面白いですね。ちょっと分かりにくかったので自分なりに整理してみました。間違いがあったら指摘してください。
アミノ酸の双性イオンの特性はちょうど酢酸アンモニウムのようなイオン結晶(イオン化したアミノ基がアンモニウムイオンに、イオン化したカルボキシル基がカルボン酸イオンに対応)と考えると分かりやすいですね。
酸
NH3^+━Gly━COO^- →→→ NH3^+━Gly━COOH
(NH4CH3COO →→→ NH4^+ + CH3COOH )
アルカリ
NH3^+━Gly━COO^- →→→ NH2━Gly━COO^-
(NH4CH3COO →→→ NH3 + CH3COO^- )
つまり、グリシンは酸性下では陽電荷を持ち、アルカリ性下では陰電荷を持つというわけです。
同様に、陽イオン交換樹脂は巨大な有機陰イオンを持った強酸、すなわち固体の強酸(R-Hと略す)と考えると、この電離で生じた巨大固体の陰イオン(R-)が水中の陽イオンを吸着する特性を持つと考えることができます。したがって、酸性下でのグリシンとの反応は次のようになります。カッコ内は酢酸アンモニウムとの反応です。
NH3^+━Gly━COOH + R-H →→→ R-NH3━Gly━COOH + H+
(NH4^+ R-H →→→ R-NH4 + H+ )
生成物は一種の塩(イオン結晶)で、より強い酸の塩酸で加水分解を受けて再生し、グリシンを塩酸塩として遊離します。これを中性付近に戻してニンヒドリンで検出したというわけですね。
R-NH3━Gly━COOH + HCl
→→→ R-H + NH3+━Gly━COOH・Cl-
(R-NH3 + HCl →→→ R-H + NH4Cl )
これに対して、アルカリに溶かしたグリシン(NH2━Gly━COO^-)は陽電荷を持ちませんから樹脂に吸着できず、こちらの樹脂からはグリシンが検出できないというわけですね。こっちにはアルカリ中の陽イオン(Na+イオン)が吸着しているわけです。
一方、中性の条件での陽イオン交換樹脂との反応はどうでしょうか。グリシンは中性下では双性イオン型がごくわずか陰イオン型と陽イオン型との混合物の平衡にあります。
2NH3^+━Gly━COO^-
←→ NH3^+━Gly━COOH + NH2━Gly━COO^-
しかし、林さんが書いているように、樹脂中に吸着された双性イオン型のグリシンは一旦吸着されれば平衡はどんどん左に寄るでしょうから、最終的にはこの形で吸着されてしまうでしょう。
NH3^+━Gly━COO^- + R-H →→→ R-NH3+━Gly━COOH
(NaCl + R-H →→→ R-Na + HCl )
ここで、樹脂から溶出した水素イオンは、グリシン中のカルボン酸陰イオンが弱酸のイオンですから、そこと結合してカルボキシル基に変わることになりますね。したがって、ろ液はグリシンからのものは中性、食塩からのものは酸性ということですね。
林さんのメールその1にある、蒸留水をイオン交換樹脂でろ過したろ液がユニバーサル指示薬で中性の緑ではなく、弱酸性の黄色なのは空気中の炭酸ガスの影響でしょうか。中性下でのグリシンからのろ液は何色でしたか。食塩からは赤でしょうから、気になるところです。
実は、双性イオン型のアンモニウムイオンの酸性度とカルボン酸イオンの塩基性度を比較すると、アンモニウムイオンの酸性度がいくらか強いことが知られています。つまり、グリシンを水に溶かした場合は完全に中性なのではなく、若干酸性なのです(等電点は6.1)。
水
NH3^+━Gly━COO^- →→→ NH2━Gly━COO^- + H+
したがって、ろ液中に吸着していないグリシンが混じっていると、ろ液は中性ではなく、やはり若干酸性になるわけで、食塩からのろ液との区別はなおさら難しくなるものと思われます。
ところで、私が書きたかったことのもう一つの点は、イオン交換樹脂を巨大な固体酸に見立てることができるように、粘土も巨大な無機高分子を陰イオンとして、小さなナトリウムやマグネシウムなどを陽イオンとするイオン結晶と見ると良いのではないかということについてです。粘土をコロイド粒子と見て吸着性からイオン交換力を説明する視点と巨大イオン結晶とみて加水分解からイオン交換力を説明する視点も持ち
たいと思います。
ちょっと疲れてきましたので、この点についてはまたの機会にします。では。
01A−171
差出人:山本 喜一
送信日:02年2月11日
件 名:寒剤について
こんにちは、山本です。
藤田さんの実験と考察を興味深く読みました。寒剤について、私も藤田さんと同じように理解しています。私の頭の中にあることを書いてみます。
ある温度で、氷と水溶液が共存しているときは、氷と水溶液の自由エネルギーが等しくなっています。氷も水溶液も、自由エネルギーはその飽和蒸気圧に比例しますから、次のようなことが言えると思います。
(1)氷は低温になれば、それだけ飽和蒸気圧が低くなりますから、自由エネルギーも小さくなります。
(2)水溶液の飽和蒸気圧は、溶質のモル濃度が大きくなると、小さくなります(ラウールの法則)。したがって、濃い溶液ほど自由エネルギーが小さくなります。なお、このときのモル濃度は、溶質が電解質の場合、電離によってイオンの数が増えますので、それを考慮したものです。
(1)と(2)を合わせて考えますと、モル濃度が大きな溶液ほど、より低温の氷と共存すると言えます。これは溶液の凝固点降下のしくみでもあり、寒剤のしくみでもあります。
以上ですが、メタノールやアセトンなどに氷を入れて寒剤にする話は、はじめて聞きました。なお、ドライアイスをメタノールに入れる場合は凝固点降下ではなく、ドライアイスの昇華熱がメタノールから奪われるために温度が下がるのだと思います。いかがでしょうか。
01A−172
差出人:山本 喜一
送信日:02年2月11日
件 名:寒剤について(2)
すいません、付け足しです。
「モル濃度が大きな溶液ほど、より低温の氷と共存すると言えます。」と書きましたが、この時のモル濃度はもちろん、氷と共存している低温でのモル濃度です。これは、藤田さんがもっとも書きたかったポイントですよね。
では、また。
01A−173
差出人:林 正幸
送信日:02年2月17日
件 名:イオン交換樹脂と寒剤について
こんにちは、林です。
藤田さん、イオン交換樹脂に対してくわしい解説をありがとうございます。
<2月11日のメールの引用>
林さんのメールその1にある、蒸留水をイオン交換樹脂でろ過したろ液がユニバーサル指示薬で中性の緑ではなく、弱酸性の黄色なのは空気中の炭酸ガスの影響でしょうか。中性下でのグリシンからのろ液は何色でしたか。食塩からは赤でしょうから、気になるところです。
<以上>
前半の方ですが、私は水道水で実験しています。しかし水道水自身は黄緑色の中性を示しますので、むしろ塩酸で再生した陽イオン交換樹脂の洗浄が十分にできないためと考えられます。また後半の方ですが、食塩の場合とほとんど同じ赤色(pH4)で、すこし黄色が混ざっているかな(pH3.5)という感じでした。メールでも書いたようにこれはきちんとした確認にはなっていません。しかし藤田さんが書いてくれたようにグリシンの等電点が6.1なら、ユニバーサル指示薬はもっと黄色になるはずですね。これはもう一度実験してみたいと思います。それによって新しいことが分かるかもしれません。
なお中性グリシンの平衡移動の向きは「左」ではなく「右」ですね。
そして粘土の陽イオン吸着は、生徒の学習が進めばイオン交換で説明したいと思います。
続いて寒剤、ないし凝固点降下についてです。藤田さん、さすがこだわり実験ですね。そして山本さんも書いていますが、私は授業では水のモル濃度(本当は活動度)から説明します。つまり林流は、物質が変化する勢い(自由エネルギーのこと)はそのモル濃度に比例(正比例ではない)する。凝固点降下は、氷のモル濃度は決まっているので、水のモル濃度が小さいほど起こりやすい。つまり低温で溶解度が大きい物質が、大きい凝固点降下を示すことになります。したがって氷に加える物質をけちると温度が下がりにくくなります。もちろん他方でこれは水の融解熱に依っています。MOLの会でも話題にしたのですが、氷と水溶液の「寒剤」は水のモル濃度に注目しやすい点が優れていますね。なおこの視点は浸透にも応用しています。
ではまた。
01A−174
差出人:野中 直彦
送信日:02年2月17日
件 名:とんぼ玉の鉛害?
佐竹ガラスにガラスを注文する時に聞いてみました。「鉛の蒸発による健康障害はありませんか?」ありません。昔は、鉛をそのまま入れていた時はそうようなこともあったかも知れないが、今は、鉛を酸化鉛の形でいれるので、全くそのようなことはないとのことでした。ガラスを引く職人さん(佐竹のHPにその様子がイラストである)にも全く鉛による障害はないとのことでした。じかの鉛と酸化鉛でおおくき違うんでしょうか。
私は安心して、とんぼ玉実験を生徒とやっています。今年も3年生に最後の3時間ぐらいをとんぼ玉制作にあてましたが、昨年より少し進歩です。1人ひとりに順番に作業を手ほどきしていきました。「おお先公、なかなかやるじゃん」「職人やな」とか言われながらやりました。後かたづけはいいかげんですが、昼休みなどにやってきて喜んで持ち帰っていきました。
01A−175
差出人:山本 喜一
送信日:02年2月20日
件 名:ガラスと重金属
こんにちは、山本です。
野中さんが調べてくれましたが、鉛ガラスは、加工や使用においては安全なものだと私も思います。重金属もガラスに閉じこめてしまえば、溶け出さないので、毒性が気にならなくなると言うことでしょうね。トンボ玉はOKだとしても、ガス化溶融炉では焼却した灰をガラス化して、それを舗装道路に使おうとしています。いくらガラスにしても、こういうふうに環境中に放り出したのでは、長い年月の間にガラスが分解して、重金属などが溶け出すおそれがあると思います。それから、原発で出た高レベル放射性廃棄物もガラス化して金属容器につめ、地層深く処分しようという計画があります。これも、いくらガラスにしても、何万年も安定に存在するとは思えませんよね。
前にも書きましたが、今まで、ガラスの教材はおもしろい実験として紹介されていたような気がします。しかし、重金属の挙動と毒性をからめてガラスを見直してみると、環境問題を考えさせる教材になると思います。いかがでしょうか。
01A−176
差出人:澤田 史郎
送信日:02年2月21日
件 名:通信2号発送しました
澤田です。
通信2号今日発送しました。着実に2週間から3週間遅れのペースを守っています。(?)今回の通信では野中さんのトンボ玉が付録で入っています。すごいですよ。袋の中に直接入れましたから、見落とさないで下さい。残念ながらきれいなやつがいくつか割れてしまっていて少し形の悪いものにあたった人もいます。不満な方は野中さんにおねだりしてみてください。
学期末で授業をまとめる時期ですね。次回通信も引き続きよろしくお願いします。
01A−177
差出人:澤田 史郎
送信日:02年2月21日
件 名:寒剤の利用法についての質問
澤田です。
先日ソルトレークで雪不足のため食塩をまいて雪を固めている。というテレビニュースがあったそうです。それは寒剤でしょ。といってから?になりました。食塩をまくと凝固点効果で雪が融けるはずですね。
これはニュースがまちがっているのでしょうか。残念ながら私自身はそのニュースを見ていないので詳しいことはわからないのですが、ニュースを見た人は信頼のおける人です。その前日に寒剤の話をしていてニュースに気がついたというのです。確かに食塩を寒剤にして氷に使った場合は目に見えて氷が融解するということはありませんよね。このことは関係があるのでしょうか。
01A−178
差出人:中臺 文夫
送信日:02年2月21日
件 名:RE:寒剤の利用法についての質問
今晩は、ナカダイです。
ハッキリとした事は分かりませんが、スキー場などでも食塩や、塩化カルシウムなどの塩を撒いているようです。これは、凝固点を下げて雪を固めるためと聞いています。そのための塩害で、野沢菜などの野菜の生育に被害が出ていると聞いておりますが・・・?
とりあえず知っているだけです。
01A−179
01A−180
差出人:藤田 勲
送信日:02年2月22日
件 名:RE:寒剤について
藤田です。山本さん、林さん、コメントありがとうございます。
(1)共晶点のこと
ある寒剤の最低到達温度では、氷と結晶とその結晶が水に溶けた飽和水溶液の3つが共存するのだと思います。この時、氷と水溶液と結晶の自由エネルギーが等しい、すなわち平衡になっていると考えられると思います。したがって、これ以上温度が下がらない(一定)というわけです。
塩水を氷に加えた場合には、塩水は薄まる一方ですから塩の析出はなく、平衡時の最低到達温度までは達せずあまり温度は下がらないのでしょう。
また、アルコールを氷に加えた場合には、平衡時の最低到達温度では氷とアルコール水溶液と水に溶け込んでいないアルコールの3成分が共存することになりそうですが、本当なのか自信がありません。つまり、アルコール水溶液を冷却していった場合、ある温度で水が凍ってアルコール濃度の高い水溶液になりますが、さらに冷却した場合にアルコールが水溶液から相分離してくるのかどうかが私には分からないのです。もし、アルコール水溶液がどんな温度でも(アルコールの凝固点以上の)水と相分離しないのであれば、氷にアルコールを加えた場合には平衡に達せず一定温度にはならないということになります。多分、私は後者だと思いますが、皆さんはどう思いますか。
なお、ドライメタの主な熱源はドライアイスの昇華熱でしょうが、発泡した炭酸ガスと一緒に蒸発するメタノールの蒸発熱も多少は関係するでしょうね。
(2)寒剤の利用法について
澤田さんの「ソルトレークで雪不足のため食塩をまいて雪を固めている」ということの意味について私も一言述べてみたいと思います。
高速道路などに塩をまく意味は一つは竹野さんが指摘しているように「路面凍結対策」ですね。1992年のスパイクタイヤ禁止以降、「凍結防止剤」として大量散布された塩や塩化カルシウムが車のブレーキパイプやラジエーターに穴を開けて多くの事故を起こしていることが新聞(1998、4.20朝日新聞)でも報じられています。
日本では塩化カルシウムよりコストの安い塩の散布がほとんどのようですが、この2つの融雪剤の特徴(グレイ、メール「防雪技術ハンドブック」、築地書館、1990)を以下にまとめておきます。
塩化カルシウム 塩化ナトリウム
共融点 -51度 -21度
融雪速度 早い 遅い
潮解性 あり なし
融解熱 発熱 吸熱
塩溶液 再結晶せず 再結晶する
価格 塩の2〜3倍 安価
要するに、塩は共融点が高いために非常に寒冷な気象条件には向かず、融解熱が吸熱であるために急速に氷を融かすこともできないわけです。氷に塩をかけてもかき混ぜないとなかなか水溶液が生じず、温度も下がらないことは経験済みのことですね。しかし、潮解性がないためにその荒い粒子が氷に穴をあけて内部までもぐり込ん、最終的には路面と氷層との間の結合を弱めるため、車の走行や除雪により路面上の氷の破壊が容易になると考えられています。
しかし、頻繁な除雪では溶けきっていない塩も一緒に捨てられてしまうために無駄が多く、また路面乾燥時には結晶として析出して吹き飛ばされ、車体の奥深くまで侵入して腐食を促進させることも考えられるでしょう。また、コンクリートの劣化を早めたり、中台さんが指摘するように周辺農作物への被害も起こるものと思われます。
塩の道路からの距離に対する土壌中の濃度は、路肩の端及び長期薬剤散布地点で最も増加していたものの、面白いことにナトリウムイオンの方が塩化物イオンよりも倍以上の高濃度で増加していたという報告(前掲書)が載っています。塩化物イオンはどこへ行ったのでしょうね。土壌は陽イオンのナトリウムは捕まえても、陰イオンの塩素は捕まえることが難しくて、さらに河川や地下水に流れるのでしょうか。
一方、塩化カルシウムは融雪速度が大きく水溶液になりやすいために、頻繁な除雪作業でも薬剤が雪と共に失われることは少なく無駄が少ないという点や潮解性を持つために路面から飛ばされにくく効果が持続的であるという点で優れているものの、結晶化しないわけですから、塩カル混じりの泥や飛沫が車体につくと車体から離れにくく腐食を進行させてしまうことも考えられると思います。
というわけで、融雪剤としての塩カルと塩は一長一短ですので、この混合物の使用が望ましいとされているようですが、日本では先ほども述べたようにコストの関係でほとんどが塩です。しかし、腐食性など塩害についてはどちらも問題が大きいわけですから、腐食防止薬剤入りの融雪剤も北海道を中心に使用され、また空港においては尿素やエチレングリコールを用いるようです。
以上の考察からソルトレークでの塩まきはその散布する量にもよりますが、塩の融雪速度は遅いわけですから融雪効果をねらって雪を全部融かしてしまうために撒いたというのではなく、雪を一部融かしてその表面積を小さくして固めて固結した氷状態にしておくことで、その表面からの水の蒸散を減らし、太陽熱による融解も少なくしようという思いからではないでしょうか。
私の想像もずいぶん含みましたが、皆さんはどうお考えですか。
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