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00A−211
差出人:杉原 和男
送信日:01年2月15日
件 名:私もドタバタ始めました

アルケミストの会の皆さん
 四ケ浦先生のおかげで、新生出版のことがわかり、とても助かりました。ありがとうございます。一企業の私的な問題ではないのです。出来る限りオープンにして、早めに対策を講じるべきです。「理科教室」が赤字で別の出版社に移ることは生源時さんに聞いていましたが、それ以上の事態に発展するとは思ってみませんでした。
 そこで、京都パスカルの「遊々サイエンス」の執筆者16名に、昨日、状況報告の手紙を出しました。16名からご意見をいただいて、至急に新生出版と交渉するつもりです。交渉の方向は、印税を現物でいただくということでいいのです。裁断は、何があっても避けたいのです。残部もすべて買い取りたいと思います。
 そこで、提案ですが、どうせ裁断されるなら残部すべてを格安で買い取れないでしょうか? このほうが、新生出版にとっても絶対によいはずです。新生出版に版権をお持ちのすべての方が一緒になって交渉すれば何とかなると思います。買い取った貴重な本は、研究会やイベントやホームページ上で販売できます。

※新生出版のたくさんの理科関係の本が裁断してなくなるということは、理科教育の歴史上、許しがたい大問題です。内密にせず、もっと広く、早く連絡すべきだと思います。


00A−212
差出人:山本 喜一
送信日:01年2月18日
件 名: 基礎基本について(5)

こんにちは、山本です。
 林さんから指摘のあった部分は、重要な論点だと思います。
<引用開始>
 どうなんでしょう。ここまで「生きるための基礎基本」を膨らませると、個々
の授業でその節における自然法則や科学的考え方を学ばせることを矮小化させて
しまわないでしょうか。私が1月29日付けメールで左巻さんの発言を引用した
意図はこのことに関わっています。つまり「学問体系から見た基礎基本」のうら
付けの上に、「不用意に未知物質を合成し、ばらまくことは危険だ」とか、「電
気を使っていると、どこかで放射性物質がたまっている」という認識が育たない
と、生徒たちは展望が見えなくなる恐れがあると思います。
<ここまで>
 私も自然法則や科学的な考え方を学ばせることは、重要だと思っています。問題は、視点を広げすぎると、教えようとすることがぼけてくるのではないかという点でしょう。私は、一つの現象のいろいろな側面を、全部子どもたちに教えるべきだと言うつもりはありません。そんなことをしたら、林さんが言うとおり、話が散らかってしまって、教えたいことは何一つ定着しないでしょう。私が「基礎基本について(4)」で書いたことは、子どもたちに教えるべき内容というよりは、理科教師のものの見方が中心です。教師が教材を見るときは、自然科学の(あるいはその中の化学という分野の)範囲でしか、見ないことが多いのではないでしょうか。そして、その範囲で組み立てた授業を子どもたちに教え続けていても、「生きるための基礎基本」を育てることはできないのではないかと思うのです。むしろ、そういう授業では、ハードパスを礼賛してしまうような授業になることだってあると思います。
 例えば、教科書の有機化学の分野は、こうすれば医薬品ができる、染料ができる、プラスチックができるというオンパレードです。これらは、科学(化学)の分野だけから見る限りでは、間違いではありません。化学という学問の基礎になる反応を教えているとも思います。また、このへんは楽しい実験も多く、生徒の興味を引き出すこともできるでしょう。さらに、有機化学の分野では構造式の推定など、パズル的な問題も作りやすく、生徒の思考力の訓練にもなるでしょう。しかし、そういうことだけやっていれば、よいとは思いません。医薬品やプラスチックは、日常的にはいろいろな問題を引き起こし、社会に大きな影響を与えています。耐性菌の出現、薬害、環境ホルモン、ゴミ問題、ダイオキシン・・・、数え上げればきりがありません。そして、「生きるため」にはそういう問題をどう考えるかということの方が大切だと思います。授業で、これらの問題を取り上げるかどうかは、まず、教師が科学の枠を越えた視点から、物事を見ているかどうかにかかっているでしょう。そして、そういう話題を授業することが大切だと思ったら、次はどれくらいそれらを授業に入れるかを考えなければなりません。それは、教師の価値観と生徒の実体が左右するでしょう。
 ここまでの話は、林さんの考えと同じだったかも知れません。しかし、私が「電気では、オームの法則の計算ができるということより、電気を使っていると、どこかで放射性物質がたまっているということの方が大切なのではないか」といったことに対して、林さんは「「学問体系から見た基礎基本」のうら付け」が必要であると言っています。放射性物質についての学問的な裏付けというものが、どの程度のものを指しているのか分かりませんが、今の教科書で言えば、放射性物質は物理Uの最後に出ていますね。林さんも、そこまでの裏付けがなければ「電気を使っていると、どこかで放射性物質がたまっている」という話は持ち出せないと言っているのではないと思うのです。アメリカの教科書では、小学校でも電気と放射能の関係を扱っています。小学生に分かる程度の「裏付け」を出して、原発の問題点を指摘しているわけです。もしかしたら、私が「電気を使っていると、どこかで放射性物質がたまっている」と言ったとき、何の説明もなしに、そういう知識を教え、子どもたちにそれを暗記させることが大切だと言っているように受け取られたのかも知れません。私も、そういう話には発達段階に応じた科学的な説明や裏付けは必要だと思います。
 林さんは左巻さんの講演の一部を引用しています。引用以外の部分で、左巻さんが何を言っているのか分かりませんが、もし世界観を作るために物理を勉強することが必要であると強調しているのであれば、僕の考えとはちょっと違います。物理学には、原子爆弾を反省する視点がなければならないと思うのです。たとえが良くないかも知れませんが、教師が子どもたちにまっ先に教えるべきことは、何が危険かと言うことではないでしょうか。ヨチヨチ歩きの子どもに、親がまっ先に教えることは、けがをしないための知識でしょう。あるいは、私たちのように漁業にはズブの素人が、漁業を始めたとします。その時、一番大切なことは、海に落ちずにいかに仕事をするかでしょう。それらが「生きる基礎基本」「仕事の上での基礎基本」のもっとも根底におくべきことだと思います。それを、化学や物理の授業に当てはめてみると、どういう方向に社会が進んでいったら危ないのか、生きていけなくなるのかを教えることがもっとも根本的な基礎基本ではないかと思うのです。世界観を作るのは、その次の課題でしょう。「理科教室」2月号の「全教 今次理科教研分科会の課題」や、安房塾でもらった滝川さんたちのカリキュラム構想には、何が危険なのかを次世代に伝えることが第一に大切なことだという視点が薄いのではないかと思います。いかがでしょうか。


00A−213
差出人:林 正幸
送信日:01年2月20日
件 名:化学で色をどう教えるか

こんばんは、林まさです。
 いま第15章「芳香族化合物」の授業プリントを作成していますが、染料を扱う中でやはり「色とは何か」を教えたいと思いました。色に関係することは第2章「化学結合と物質」でも触れています。そして同じ15章の終節「スペクトル分析」で赤外吸収スペクトルに発展させようと考えています。最後の部分はまだできていませんが、一体こんな教材を皆さんがどのように思うのか、感想や意見が聞ければと思い、以下に引用してみます。なお第11章「典型金属元素の単体と化合物」で、原子スペクトルに関連づけて炎色反応を取り上げています。
 ではまた。

<第2章の「2.原子の構造と電子配置」の引用>
[c]電子配置
[1]化学にとっては原子核のまわりをいくつかの電子がどのように運動しているかがも
っとも重要である。1913年に(ボーア)は水素についての(原子スペクトル)の研究
から、原子核のまわりを運動する電子の軌道は(とびとび)であることを解明した。それ
は内側から(K殻)、(L殻)、(M殻)、N殻・・・と呼ばれ、その中間の軌道は(存
在しない)。その軌道はとりあえず円で表されるが、本当は球面になっていると考えられ、
それは何重もの玉子の殻のようであり、(電子殻)と呼ばれる。そしてそれぞれの電気殻
には電子の(定員)があり、K殻は(2)個まで、L殻は(8)個まで、M殻は(18)
個まで、N殻は32個まで・・・となっている。
[2]そして18番までは原子番号が増えるにつれて(内側)の電子殻から電子が入って
いく。このようにいくつかの電子がどの電子殻(軌道)にいくつ入って運動しているかは
(電子配置)と呼ばれる。この電子配置こそは、原子の結合を考えるカギになる。
問2 次のプリントに1から20番までの原子の電気配置の表を完成せよ。

参考:原子番号を知ったら、電子配置が描けるようにする。

[d]原子スペクトル
[1](手づくり分光器)で水素放電管の原子スペクトルを調べると
    赤色、青緑色、藍色、紫色
という(特定の)色の光のみが、そして水銀では
    黄色、黄緑色、藍色、紫色
という特定の色の光のみが観察された。これは太陽が虹の7色すべての光を含んでいるの
と対照的である。
参考:蛍光灯のスペクトルでは水銀の原子スペクトルとして観察された色が強い(明る
   い)。これは蛍光灯に(水銀)が含まれていることを示している。
[2]光は波の性質を持っており、それぞれの色は(波長)でいうと次のようになる。
    赤外線(見えない)   770nm(ナノメートル)以上
    赤色          770〜640
    橙色             〜590
    黄色             〜550
    緑色             〜490
    青&藍色           〜430
    紫色             〜380
    紫外線(見えない)   380nm以下
  (参考:1 nm=1/1000,000,000m=1000万分の1センチ)
 そして光は粒の性質も持っており、それは(光子)と呼ばれる。波長が短い光ほどより
大きい(エネルギー)を持った光子からできている。紫外線の化学的作用が強いのはその
一例である。
[3]すでに学習したように放電では電子が走り抜けるので、その中の原子は電子殻に入
っている電子がはじき飛ばされたり、より外側の電子殻に(持ち上げられたり)する。そ
して外側の電子殻の電子がより内側の空いた電子殻に(落ち込む)ときに光が発生する。
 一般に軌道のエネルギーは外側ほど(大きく)、また軌道のエネルギー差に応じたエネ
ルギーを持つ光子が発生するので、水素原子や水銀原子が特定の色の光のみを発生すると
いうのは、電子の軌道がとびとびであることを想起させる。

                   図3
<以上>
<第15章の「5.染料、医薬と農薬」の引用>
[a]アゾ染料の合成と染色(実験のまとめ)
 水酸化ナトリウム水溶液に2−ナフトールを加えて塩にして溶解させ、これをさらし布
に染み込ませておく。塩酸にアニリンと亜硝酸ナトリウムを加えると次の反応が起こり、
塩化ベンゼンジアゾニウムが生成する。この反応はジアゾ化と呼ばれる。

                  図22
 さらし布がこれに浸かるようにすると、2−ナフトールと次のように反応して赤橙色染
料が生成し、染着するので余分な染料を洗い落とす。

                  図23
 1−フェニルアゾ−2−ナフトールは(アゾ基 −N=N−)を持つ。このようなもの
はアゾ染料と呼ばれ、現在もっとも多量に合成されているタイプの染料である。
 ちなみに、ザルツマン試薬をポリ袋に入れ空気を包み込んでよく振ると、汚染物質の二
酸化窒素と反応して赤紫色になる。このとき二酸窒素が亜硝酸になってジアゾ化が起こり
、続いて着色性物質が生成する。この反応は実際の汚染調査にも利用されている。
参考:ザルツマン試薬には、スルファニル酸という芳香族アミンと、N−(1−ナフチ
   ル)エチレンジアミンというナフタレン環をもつ化合物が含まれる。

[b]染料の色
(1)現代のファッションは色抜きには考えられないが、そもそも色とはなんであろうか。
光がない暗闇は黒色である。ノートも光が当たってこそ白色である。しかし同じ光が当た
っても、タンポポの花は黄色である。
 2章では、光の色が波長によっていることを学習した。人間の眼と脳は、すべての波長
を含む光を受けると白色と感じ、光を受けないと黒色と感じる。そして特定の波長の光を
受けると、それに応じた色を感じる。
(2)太陽光はすべての波長の光を含んでおり、通常の照明もそのように作られている。
これに対して、染料のような着色性物質はある波長の光を吸収し、残りを散乱することに
よってさまざまな色を眼と脳に感じさせる。色覚のしくみは生物学にゆだねるとして、残
された波長が何色に見えるかは補色として分かっている。たとえば赤色が吸収されれば青
色になり、植物が緑色に見えるは、葉緑素(クロロフィル)という色素が桃色を吸収して
いるためである。したがって植物に桃色の光を当てれば黒色に見えるのである。
(3)それでは物質はどうして特定の領域の波長の光を吸収するのだろうか。これは簡単
に言うと、原子スペクトルと逆の現象である。原子の電子殻は原子軌道と呼ばれるが、こ
れに対して分子中の共有結合している電子もとびとびの分子軌道と呼ばれる電子殻を形成
しており、通常は電子はエネルギーが小さい一番内側の電子殻に入っている。
 この共有結合している電子は光を当てるとより外側の電子殻に持ち上げられる。ただし
それは2つの電子殻のエネルギー差に等しいエネルギーを持つ光を、言い換えると特定の
色の光を受けるときである。そしてこの電子は熱エネルギーを与えてより内側の軌道に落
ち込む。これは光が当たると物体の温度が上昇する理由でもある。

                  図24
(4)多くの分子の電子殻のエネルギー差は紫外線のエネルギー領域であるが、二重結合
と単結合が繰り返し連なる共役系と呼ばれる電子殻ではそのエネルギー差が可視光線の領
域になる。染料は長い共役系の電子殻を持つ分子である。
<以上>


00A−214
差出人:野中 直彦
送信日:01年2月21日
件 名:大変だ46

 唯一、大学受験をした生徒がいました。環境化学がやりたいと言っていて、放課後私の準備室にきて、ほんの少し化学の補習をしました。
 名城大学、千葉工業大学、工学院大学を受験し、受かったがどこにしたらいいのか相談にきてくれました。インターネットで大学の案内をみて、本人のやりたい化学の基本を学べる工学院大学をすすめました。はじめに合格しておさめた20万円は捨てることになりました。
 もうすぐ、1年のサイクルが終わります。指折り数えて、この日を待っていたような気分です。


00A−215
差出人:杉山 美次
送信日:01年2月22日
件 名:RE:基礎基本について(5)

こんにちは、神奈川の杉山美次です。
 山本さんと林さんを中心に、「基礎基本」について、真摯な発言が述べられています。「基礎基本」についてメールを読むだけで、勉強しようとしない怠けの私ですが、ずっと感じていたことを少し述べたいと思います。
 感覚的で申し訳けないのですが。まず、第一印象。なんか違う。どこが違うか、まだはっきりまとまっていません。ずっーと考えています。そこで、断片的に自分なりの疑問をだします。
1、生徒の勉強する力(前向きに生きようとする力)を教師が、つくることができるのは、授業の内容やカリキュラムでなく、教師自身の生き様を生徒にぶっけて感じてもらったときではないか。
2、生徒が勉強する力(前向きに生きようとする力)を持たせないで、どんな素晴らしい授業を展開しても、生徒には浸透せず、自己満足にすぎないのではないか。 すべて自己満足といったらそれまでですが。
3、生徒自身、自分の進路に希望を持てるかどうかが重要な要素を占めないか。
4、すべての生徒に、教師が生きる力をつけさせるなんてうぬぼれではないか。
5、教師も、授業も多様でいいとおもう。こうあるべきだというのは、なんか束縛されている気がする。

>しかし、そういうことだけやっていれば、よいとは思いません。医薬品やプラス
>チックは、日常的にはいろいろな問題を引き起こし、社会に大きな影響を与えて
>います。耐性菌の出現、薬害、環境ホルモン、ゴミ問題、ダイオキシン・・・、
>上げればきりがありません。そして、「生きるため」にはそういう問題をど
>う考えるかということの方が大切だと思います。授業で、これらの問題を取り上
>げるかどうかは、まず、教師が科学の枠を越えた視点から、物事を見ているかど
>うかにかかっているでしょう。そして、そういう話題を授業することが大切だと
>思ったら、次はどれくらいそれらを授業に入れるかを考えなければなりません。
>それは、教師の価値観と生徒の実体が左右するでしょう。

6、「教師の価値観と生徒の実体が左右するでしょう」このとおりです。個性ある教師に影響される生徒が必ず一人や二人は、どんな学校でもでててきます。この程度でいいのではないか。

>                教師が子どもたちにまっ先に教えるべきこと
>は、何が危険かと言うことではないでしょうか。ヨチヨチ歩きの子どもに、親が
>まっ先に教えることは、けがをしないための知識でしょう。あるいは、私たちの
>ように漁業にはズブの素人が、漁業を始めたとします。その時、一番大切なこと
>は、海に落ちずにいかに仕事をするかでしょう。それらが「生きる基礎基本」
>「仕事の上での基礎基本」のもっとも根底におくべきことだと思います。それ
>を、化学や物理の授業に当てはめてみると、どういう方向に社会が進んでいった
>ら危ないのか、生きていけなくなるのかを教えることがもっとも根本的な基礎基
>本ではないかと思うのです。世界観を作るのは、その次の課題でしょう。「理科
>教室」2月号の「全教 今次理科教研分科会の課題」や、安房塾でもらった滝川
>さんたちのカリキュラム構想には、何が危険なのかを次世代に伝えることが第一
>に大切なことだという視点が薄いのではないかと思います。いかがでしょうか。

7、自己実現に向けて、希望の持てない生徒に、「生きる基礎基本」はどんな意味があるのでしょうか。社会の中で、いろいろな原因で、夢やプライドをなくされた者に、どんな意味があるのでしょうか。
8、山本さん、林さんそのものが、生徒に大きな影響を与えているのであって、授業の内容やカリキュラムは2番手でないでしょうか。そうならば、「基礎基本」をあえていう意味はなんなんでしようか。

*思いつきの発言で、まとまっていなくてすみません。考えがまとまったらまた、発言します。


00A−216
差出人:林 正幸
送信日:01年2月22日
件 名:基礎基本をめぐって(6)

こんばんは、林です。
 皆さん、アルケ通信第2号の締め切りは2月末日です。私は次の2つの資料を送るつもりです。
  授業プリント 11章「典型金属元素の単体と化合物」
  MOLの会通信00−10
 今日から学年末試験ですが、昨日一昨日と授業後から6時過ぎまで、20名ほどの生徒に質問攻めに会い、うれしい悲鳴を上げました。
 さて山本さんとの意見交換ですが、確かに授業に社会的課題を欠落させてはならないと思います。私もかって「公害の科学」という章を設けたこともありますし、3時間で原発の問題点に触れる授業も企画しています。そして企業に奉仕するだけでなく、社会的課題に国民的立場から立ち向かえる科学者も育ってほしいと願っています。
 2月18日メールに次のような一節がありました。
<引用> 
たとえが良くないかも知れませんが、教師が子どもたちにまっ先に教えるべきことは、何が危険かと言うことではないでしょうか。ヨチヨチ歩きの子どもに、親がまっ先に教えることは、けがをしないための知識でしょう。あるいは、私たちのように漁業にはズブの素人が、漁業を始めたとします。その時、一番大切なことは、海に落ちずにいかに仕事をするかでしょう。それらが「生きる基礎基本」「仕事の上での基礎基本」のもっとも根底におくべきことだと思います。それを、化学や物理の授業に当てはめてみると、どういう方向に社会が進んでいったら危ないのか、生きていけなくなるのかを教えることがもっとも根本的な基礎基本ではないかと思うのです。世界観を作るのは、その次の課題でしょう。
<以上>
私としては生徒が学習の中で、実験を通して学ぶ楽しさを体験したり、疑問が科学的に説明できて感動したり、自然の全体像をかいま見て感動したり、科学技術が生活や生産に応用される素晴らしさに満足したりすることも、社会的課題に目を向けると同等にあってよいと考えます。生徒たちはゆったりと豊かに教育され、その中で自分たちが進むべき道を見付けてほしいと思います。むしろ社会的課題の深刻さはもっと大人たちの間で共有され、大人たちが次の世代のためにも立ち向かっていくべきであると考えます。
 もちろん教育の中身は、時代、相手にする生徒、そして教師によって幅広く変化するものであり、そうあってこそ大きな力を発揮すると思います。それぞれの教師が自分の思いを生徒にぶつけていくことが、生徒にとっても価値あることと確信しています。私が書いたのはあくまで一般論です。
 ではまた。


00A−217
差出人:山本 喜一
送信日:01年2月28日
件 名:基礎基本について(6)

こんにちは、山本です。
 杉山さん、林さん、コメントありがとうございます。杉山さんの原点は、次の部分だと理解しました。
<引用開始>
2、生徒が勉強する力(前向きに生きようとする力)を持たせないで、どんな素
晴らしい授業を展開しても、生徒には浸透せず、自己満足にすぎないのではない
か。
<ここまで>
杉山さんは、どんな内容を学習させるかというよりも、学習する意欲を持たせるにはどうしたらよいのか、そっちの方が重要な問題だと指摘しているのだと思います。その話に入る前に、勉強に意欲を持ち、いろいろな知識を吸収しようとする高校生も多いことは確認しておきたいと思いまず。彼らはおそらく受験のため、つまり立身出世のために勉強が必要だと思っているのでしょう。そうであっても、こういう高校生には、「生きるため」に学習の成果を使うべきだという考えは伝えやすいと思います。
 次に、杉山さんが言うように、学習意欲も、前向きに生きる意欲もない生徒たちに、どんな授業をするかという問題を考えてみます。彼らに学習の動機付け、つまりモチベーションをどうやって与えたらよいのかという問題です。これには、点数や進級で脅して勉強させるというものから、おもしろ実験を取り入れたり、分かりやすい説明を心がけたり、あるいは一つの知識から目の前の世界が違って見えてくる体験をさせるなど、いろいろな工夫が行われていることは、書くまでもないことでしょう。
 私は「生きるための基礎基本」が、モチベーションのひとつになるのではないかと思うのです。このまま二酸化炭素を排出し続ければ、大変な事態になることを知らせること。女子であれば、近い将来、自分のおなかの中に宿る小さな命が、環境ホルモンの影響を受けるかも知れないということ。ゴミが増え続けて、ゴミ捨て場がなくなっていること。そういう実態を知らせることが、彼らに学習意欲を喚起させるのではないかと思うのです。もちろん、私の授業のように新聞記事を見せれば良いというものではないでしょう。杉山さんが書いているように、教 師自身の生き方として、そういうことを生徒に提示できなければ、生徒の心の中に入っていくことはできないと思います。
 杉山さんは、チェルノブイリの甲状腺の手術の写真を生徒に見せた授業を語っていましたね。やはり杉山さん自身がその写真を見て深く感じるものがあったからこそ、生徒に通じる授業になったのでしょう。環境問題や遺伝子操作などの科学技術についても、そんなふうに、教師自身の生き方をとおして生徒にぶつけられないだろうかと思っています。科学技術の問題点や環境問題は、生徒自身が「生きていく」ためには避けて通れないものですから、自分の命を守るためにも、勉強しなければならないということことをどうにかして伝えたいと思うのです。そういう実態を知らせることによって、勉強する意欲を引き出したいと思うのです。
 次に林さんのコメントについて、私の考えを書いてみます。
<引用開始>
私としては生徒が学習の中で、実験を通して学ぶ楽しさを体験したり、疑問が科
学的に説明できて感動したり、自然の全体像をかいま見て感動したり、科学技術
が生活や生産に応用される素晴らしさに満足したりすることも、社会的課題に目
を向けると同等にあってよいと考えます。生徒たちはゆったりと豊かに教育さ
れ、その中で自分たちが進むべき道を見付けてほしいと思います。
<ここまで>
私が性急なのかも知れませんが、私はあと30年とか50年の間に、とんでもないことが起こって、人間は生きていけなくなるのではないかと思っています。ですから、ゆったりと科学の世界を堪能させて、それぞれの生き方を見つけさせるというゆとりは持てそうもありません。温暖化による食糧危機とか、原発の大事故とか、環境ホルモンによる遺伝障害とか、近いうちに何かが起こるのではないかと思うのです。ですから、「生きていく」ための基礎基本ということを第一に掲げたいのです。環境破壊が進んでいるといっても、そこまで大げさに考える必要はないのではないかという人もたくさんいます。でも、私には近未来に大きな不安を持っています。それが、基礎基本を考える私の原点です。
 それから、政治的な動きも気になります。今月号の「理科教室」には、総合的な学習の時間を使って原発”安全”教育を進めようという動きがあることが書かれています。自然科学の枠の中だけで、私たちが授業を進めていったのでは、こういう教育に太刀打ちできなくなってしまうのではないかと思うのです。自分の命を守り「生きる」ために学習し、「生き続ける」ために技術や社会がどうあるべきなのかを考えるということを生徒に示す必要性を強く感じています。
 最後に、基礎基本は杉山さんが言うように、どれか一つに決まるものではないと思います。一人ひとり違って良いものだと思います。その違いをこうやって交換し合って、常に自分の考えを発展させたり、打ちこわしたりすることが大切だと思います。
 では、また。


00A−218


00A−219
差出人:山本 喜一
送信日:01年3月1日
件 名:マグネシウムと冷水の反応

こんにちは、山本です。
 以前、岡田さんがマグネシウムは冷水と反応するというようなメールを送ってくれました。私はそれを読んで、水に溶けている酸素がマグネシウムを酸化しているのではないかと思って、実験してみました。
(1)マグネシウムとイオン交換水の反応
 三角フラスコにイオン交換水とフェノールフタレインを入れて、ピカピカに磨いたマグネシウムリボンを放り込んでみました。すると、岡田さんのメールのとおり、すぐにマグネシウムリボンのまわりがピンク色になり、リボンに小さな泡も付着してきました。
(2)マグネシウムリボンと酸素抜きのイオン交換水との反応
 ゴム栓の下(口径が小さい方)にカッターで切れ目を入れ、そこに短いマグネシウムリボンをはさみました。次に、三角フラスコに半分ほどイオン交換水とフェノールフタレインを入れ、十分に沸騰させました。そして、火を止め、水蒸気の泡が出なくなったところを見計らって、上記のマグネシウムリボン付きのゴム栓をしっかりはめました。この時、マグネシウムリボンの先端は、水に入っていない状態になっています。そのまましばらく放置し、水温が下がったことを確認して、フラスコを逆さまにしました。ここで、初めてマグネシウムリボンは(液体の)水と接しました。こうしてしばらくおいたところ、やはり水はピンク色になり、リボンのまわりに泡も付着しました。水に酸素が溶けていなくても、マグネシウムは水と反応するようです。
 そこで、「化学大辞典」を見たところ、次のように書いてありました。<冷水にはほとんど侵されないが、これは酸化被膜によって表面が保護されているからである。マグネシウムアマルガムは冷水とも激しく反応し、マグネシウム粉末は熱水中で水素を発生し、水酸化マグネシウムを生ずる。>
 (1)のフラスコも(2)も、2,3日するとマグネシウムリボンに泡が付着しなくなり、反応が止まったように見えます。リボンは真っ黒になっていますから、表面が酸化されて、できた被膜が内部を保護しているのかも知れないと思いました。それにしても、教科書の「イオン化傾向と金属の性質」の部分にある記述(冷水と反応するのはK、Ca、Na)は間違っていると思いますね。岡田さん、ありがとうございました。
 では、また。


00A−220
差出人:林 正幸
送信日:01年3月2日
件 名:化学で色をどう教えるか(その2)

こんばんは、林まさです。
 試験中を利用して授業プリントの15章「芳香族化合物」を完成させることができました。2、3日うちにホームページにも掲載します。その7節「スペクトル分析」に次のような文章を作りました。この部分も含めて感想を聞かせてください。
 ではまた。

<引用>
[a]赤外吸収スペクトル
 5節では染料が可視光線を吸収するしくみを説明した。多くの物質はそれより小さいエ
ネルギー領域の(赤外線)を吸収する。ただし赤外線を吸収するのは共有結合している電
子ではない。
 4章では分子が熱運動していることを学習した。そして13章では分子内で単結合を軸
に回転していることに触れた。つまり分子内のそれぞれの(原子)も熱運動をしているの
であり、それはひとつの化学結合の両側の原子どうしの距離が増減する、つまりは結合が
伸縮するような振動であったり、板ばねの両端におもりを固定して中央を持ってゆするよ
うな3つの原子のなす角度が変化する、つまり2つの化学結合が変角するような振動であ
ったりする。もちろん回転の熱運動もあるが、赤外線を吸収するのは化学結合の(振動)
である。
                   図30

 さて量子力学が教えるところでは、この化学結合の振動においても、その激しさがとび
とびになっている、言い換えるとその振動のエネルギーも(とびとびに)なっていること
である。そしてそのエネルギー差は化学結合によって異なる。したがって物質が受ける赤
外線の波長はその物質に含まれる化学結合によるわけである。
 具体的な例を上げてみよう。(赤外吸収スペクトル)では横軸が波長に対応する波数で
あり、縦軸はその波数の赤外線の吸光度(その波数の赤外線を吸収する度合)が記録され
る。次は酢酸のスペクトルである。
参考:波数は波長の逆数(1/波長)として計算される数値である。

                   図31

  波数3000cm-1  O−H の伸縮(水素結合のため幅が広がっている)
    1717     C=O の変角

[b]スペクトル分析
 くわしい解析はさておき、物質と相互作用した光はその物質についての(情報)を持っ
ているということが根本である。天文学においてはるか彼方の星について、まるでそばで
調べてきたように研究できるのはこのためである。ちなみに現代天文学では電波やX線の
スペクトルも観察している。
 医療で使われるようになった核磁気共鳴画像診断(MRI)は、(核磁気共鳴スペクト
ル)の応用である。核磁気共鳴スペクトルは、強い磁場の中におかれた物質(の原子核)
が吸収する電磁波のスペクトルを解析するものである。
 現代では多種多様なスペクトル分析が物質の構造や(状態)の解析に利用されている。
<以上>


00A−221
差出人:林 正幸
送信日:01年3月3日
件 名:リチウムイオン電池について

こんばんは、林です。
 電池教材にリチウムイオン電池を取り入れられないかと思いましたが、自分がよく分かっていないのです。一般的には、放電時は負極に炭素材からリチウムイオンが正極の酸化コバルト(酸化マンガンも開発されている)に移動し、充電時はその逆になる、というようにリチウムイオンの移動で説明されています。
 しかし炭素材にドープされたリチウムとはどのようになっているのでしょうか。イオンのまま炭素層間に吸着されているのか、それとも電子と結合してリチウムになっているのか。名称からは前者のようですが、有機電解質を必要とすることからすると後者のようでもあるわけです。負極の方は放電時は単純化すれば次の反応が起こっていると言えるでしょう。
    e- + CoO2 ―→ CoO2 -
生成する陰イオンはリチウムイオンが移動してきて電気的に中和します。
 もし負極が
    Li ―→ Li+ +e-
と書いてよいなら高校生に教えられる教材になりますが、前者なら却って混乱を引き起こす恐れがあります。だれか教えてください。
 ではまた。


00A−222
差出人:野中 直彦
送信日:01年3月4日
件 名:変な手紙2

 web110に問い合わせたところ
<引用>
債権回収詐欺ですね。 下記ページを参考にしてください。
http://web110.com/newsbn/bn1114.html
被害届は出せませんが情報提供という意味で警察に渡すといいでしょう。
<以上>
との返事をいただきました。
 では、さっそくコピーを取っておいて、警察に届けることにしました。


00A−223
差出人:山本 喜一
送信日:01年3月6日
件 名:RE:化学で色をどう教えるか

こんにちは、山本です。
 林さんは、常に化学の本質的な理論を、分かりやすく教える努力をしていますね。これまでにも、自由エネルギーを反応の「いきおい」と表して授業に持ち込んだり、化学平衡をルシャトリエの法則からではなく、もっと本質から説明しようとしたりしています。今回の色に関する授業も、その流れだと思いました。
 分子が色を持つ説明のポイントは次の説明ですね。
<引用開始>
(3)それでは物質はどうして特定の領域の波長の光を吸収するのだろうか。こ
れは 簡単に言うと、原子スペクトルと逆の現象である。原子の電子殻は原子軌
道と呼ばれるが、これに対して分子中の共有結合している電子もとびとびの分子
軌道と呼ばれる電子殻を形成しており、通常は電子はエネルギーが小さい一番内
側の電子殻に入っている。
 この共有結合している電子は光を当てるとより外側の電子殻に持ち上げられ
る。ただしそれは2つの電子殻のエネルギー差に等しいエネルギーを持つ光を、
言い換えると特定の色の光を受けるときである。そしてこの電子は熱エネルギー
を与えてより内側の軌道に落ち込む。これは光が当たると物体の温度が上昇する
理由でもある。
                  図24
<ここまで>
ここで、分子の軌道というものを生徒がどんなふうにイメージできるかが、重要だと思います。おそらく、図24でそのイメージを描いているんだと思いますが、林さんはどんな図を書いたのでしょう?それから、私が上のような説明をしたとすると、生徒からは「分子の軌道にもKとかLとかいう名前がついているのか」とか、「HとOはK軌道とL軌道で共有結合するのだが、KとLでできた分子軌道は何という名前だ」とか、「分子軌道も電子の満員の数があるのか」などという質問が来るような気がします。林さんのところの生徒からは、そういう質問はありませんでしたか?


00A−224
差出人:山本 喜一
送信日:01年3月7日
件 名:石灰水と二酸化炭素

こんにちは、山本です。
 今さらなんですが、私は、石灰水に二酸化炭素を通すと白濁した後、無色透明になるものだとばかり思っていました。しかし、飽和石灰水では、いつまで二酸化炭素を通しても、無色透明にならないことを知りました。以前、授業で1リットルのメスシリンダーに飽和石灰水を入れ、ドライアイスを放り込んで、生徒に観察させました。しかし、いつまでたっても白濁は消えませんでした。この時は、石灰水がドライアイスで冷やされて、溶解度が落ちたのかも知れないと思いました。
 今回、この実験をもう一度やることになったので、今度は飽和石灰水を試験管に取り、自分の息をストローで入れ続けてみました。しかし、いつまでも白濁は消えません。どうやら、温度は関係なさそうです。そこで、あれこれ調べてみますと、藤木源吾の「化学実験講義法」に、この実験に使う石灰水は水で2倍に薄めるようにと書いてありました。炭酸水素カルシウムは、溶解度が低いので、飽和石灰水では白濁が消えないそうです。
 みなさんは知っていたことだと思いますが、私は今頃こんなことに気づくなんて・・・、という恥ずかしいお話でした。では、また。


00A−225
差出人:小林 敏夫
送信日:01年3月8日
件 名:塩化銅(U)の電気分解の機構について

小林です。久しぶりにメールします。毎日楽しく拝見させていただいています。
 今年久しぶりに、一年から持ちあがって三年生を卒業させました。私は自分は案外冷たい人間と心の底で思ってましたから、卒業させても、「それが仕事」程度にしか感じられないだろうと思っていましたが、何だか、心に穴が空いたような寂しさを感じています。特に教室を通る時・・・。あと、定年まで、担任をして頑張ろうという気になっています。
 さて、高校入試の問題を見て考えたのですが、塩化銅を電気分解した時、陽極では塩化物イオンはいったん原子(ラジカル)になりさらに共有結合を形成し塩素分子を造るのでしょうか。それとも、適当な言葉とは思えませんが「協奏的に」あるいは電極上でなにがしかの遷移状態(中間体)を作るのでしょうか。私は後者ではないかと思うのですが、データーとか研究成果とか説明とかをご存知の方教えていただけないでしょうか。


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